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No.26-25_1 記事
26-25-1. EU海事産業戦略に基づく官民アライアンスの発足

26-25-1. EU海事産業戦略に基づく官民アライアンスの発足

9月上旬、EUでは、3月に公表された「EU海事産業戦略」の具体化に向けて官民関係者による連携・調整の枠組みが始動しました。同戦略は、欧州の海事産業の競争力と経済安全保障を強化することを目的としており、6本の柱から構成されています。その第1の柱「建造・装備・修理(Build, Equip and Repair)」では、欧州の船舶・海事機器の製造能力を強化するため、「EU産業海事バリューチェーン・アライアンス(EU Industrial Maritime Value Chains Alliance:EMA)」を設立する方針が示されていました。[1-1] [1-2]

 

その具体策として、欧州委員会は9月2日、EMAを正式に発足させ、参加団体の募集を開始しました。同アライアンスは、造船・海事機器メーカー、船社等の利用者、加盟国・地域、投資家、研究機関等の官民関係者を結ぶ枠組みです。重点分野として、①近海・沿岸・内陸水運の脱炭素船、②砕氷船などの特殊用途船・作業船、③水上・水中ドローンなどの海洋観測機器、④クリーン推進などのネットゼロ技術、⑤スマートで持続可能な製造プロセス、⑥船舶リサイクルを掲げています。これらの分野について、需要や生産能力、サプライチェーン上の課題を把握し、欧州域内での製造・導入の拡大、戦略プロジェクトの形成、EUと加盟国による投資の優先順位の調整などに取り組むこととしています。[1-3] [1-4] [1-5]

 

背景には、欧州海事産業を取り巻く国際競争の激化があります。これについてEUは、欧州の造船業は高付加価値船や特殊船に強みを持つものの、厳しい競争にさらされていると指摘しています。その要因として、第三国(EU非加盟国)の政府による自国造船業への大規模な支援や、不当に安い価格での販売を挙げています。こうした状況を受け、6月8日にはEU理事会もEMAの立ち上げを支持し、早期設立を促していました。[1-2] [1-6] [1-7]

 

EMAへの参加には一定の条件が設けられています。参加対象は、EU域内で活動する企業、業界団体、公的機関、投資家、研究機関などです。欧州経済領域(EEA)の域外で設立された団体は個別に審査され、戦略上重要な議題では、第三国の支配下にある団体の議論への参加を制限できる仕組みも設けられています。募集は継続的に行われ、最初の締切は10月16日です。[1-3] [1-5]

 

今後は、EMAを通じた官民連携が、脱炭素船や作業船、海洋観測機器などの欧州域内での製造拡大に向けて、具体的にどのような投資につながるかが注目されます。

 

(日本海難防止協会ロンドン事務所 研究員 川上慶大)

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