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26-21-2. 北極海航路を利用したアジア・欧州間輸送の動向

26-21-2. 北極海航路を利用したアジア・欧州間輸送の動向

2026年8月、中国及び韓国の海運会社による北極海航路を利用したアジア欧州間コンテナ輸送の動きが具体化しています。韓国では、新政権が北極海航路の開拓を国政課題に掲げて関連特別法の制定や推進体制の整備を進めており、その一環として、海運物流グループ「PanStar(パンスター)」による韓国初のコンテナ船試験運航を開始しました。一方、中国では海運会社「New New Shipping(新新海運)」が既に北極海航路を利用したコンテナ輸送を展開しており、アジア欧州物流における同航路の商業利用に向けた取組が進展しています。[2-1][2-2]

 

韓国海洋水産部によれば、今回の試験運航にはPanStarの中型コンテナ船「PanStar Acro」が投入され、8月22日に釜山を出港しました。同船は北東航路を経て欧州主要港(英国、オランダ、ポーランド)に寄港した後、再び北東航路を通って釜山へ帰港する約45日間の往復航海を予定しています。PanStar自身も、同航海を韓国初の北極海航路試験航海と位置付けています。[2-3]

 

今回の航海は、単発的な民間企業の試験ではなく、韓国政府による北極海航路の商業利用に向けた政策の一環です。韓国海洋水産部は2026年下半期の重点政策として、8~9月に釜山・欧州間で40~45日間の試験運航を実施し、航行経験及び物流データを蓄積した上で、韓国・欧州間の定期輸送サービス開設の基盤を整備する方針を示しています。また、釜山港をコンテナ物流、蔚山港をエネルギー物流の拠点として整備するほか、氷海航行を担う船員の育成、国産砕氷コンテナ船の中核技術の開発、北極航路総合支援センターの設置等を進め、将来的な北極海航路の恒常的利用に備えるとしています。[2-4]

 

中国では、New New Shippingが2023年以降毎年夏季に北極海航路を利用した輸送を重ね、2024年には中国港湾・ロシア・アルハンゲリスク港・モスクワを結ぶ「北極1号快線」を開設しました。同社によれば、北極海航路は気象・海氷条件が許せば概ね7月から10月末まで運航可能であり、スエズ運河経由と比べ片道約12日の航海時間短縮が可能であるといいます。また、同社船隊はアイスクラス(氷海航行に対応した耐氷構造の等級)を有し、必要に応じて砕氷船の支援を受けるほか、北極航行経験を有する船員、ロシア人水先人(パイロット)及び北極海航路の専門家を配置しています。さらに、2024年には、北極海航路の運営を所管し原子力砕氷船隊を保有するロシア国営原子力企業Rosatomとの間で、将来的な通年コンテナ輸送航路の構築に向けた協力について合意しています。[2-2][2-4][2-5]

 

これらの動きは、北極海航路が資源輸送や単発的な実証航海を中心とする段階から、コンテナ物流における商業的利用の可能性を検証する段階へ移りつつあることを示しています。特に韓国が、単発の試験航海にとどまらず、関連施策を国家戦略として一体的に進めている点は注目されます。

 

ただし、北極海航路には海氷、低温、厳しい気象、通信・航行支援設備の不足、捜索救難拠点からの遠隔性等、通常海域とは異なる安全上の制約があります。国際海事機関(IMO)も極海コード(Polar Code)において、こうした極地特有のリスクを前提に船舶構造、装備、運航、船員訓練及び捜索救難等について特別な要件を設けています。このため、北極海航路は現段階でスエズ運河又は喜望峰航路を全面的に代替するものではありません。もっとも、中国での季節的商業利用の継続に加え、韓国も独自に国家的実証を開始したことで、アジア・欧州物流における北極海航路の実用性が本格的に検証され始めたと評価できます。

 

(日本海難防止協会ロンドン事務所長 立石良介)

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