欧州海上安全レポート
(author)
三好登志行(弁護士、海事補佐人)
きょうどう法律事務所(前佐藤健宗法律事務所)
令和7年度無人運航船の法的責任に係る国際的な検討状況に関する調査業務報告書
令和7年12月8日
標記の件について、次のとおり、調査業務を完了しましたので、報告します。
目次
第1 非強制MASSコード制定に向けた検討状況を踏まえた今後の課題
1 国際海事機関におけるMASSコード策定に至るこれまでの経過
(1)MSC98における決定
(2)MSC103での承認
(3)MSC105におけるロードマップの承認
(4)MSC107からMSC110にかけてのロードマップの修正
(5)ISWG-4-MASSでの最終化
(6)非強制MASSコードの概要
2 英国における衝突事故に関する法規制の枠組み
(1)英国における衝突予防規則
(2)英国における運航に関する資格
(3)The Workboat Code Edition 3について
(4)英国における刑事司法手続
(5)衝突事故発生時の刑事責任
(6)英国における自動車の自動運転時の刑事責任
3 今後の課題
第2 通信、プログラムの不具合等に起因する法的責任について
1 通信の遮断による運転不自由(船)について
(1)通信遮断の原因別にみた罪責
(2)英国の場合
2 通信遅延による衝突事故発生について
(1)MASS船長等運航に関わる職員の責任
(2)プログラム設計者等
(3)船舶所有者等
(4)英国の場合
第3 小括
本文
第1 非強制MASSコード制定に向けた検討状況を踏まえた今後の課題
1 国際海事機関におけるMASSコード策定に至るこれまでの経過
(1)MSC98における決定
国際海事機関(International Maritime Organization(以下、「IMO」という))において、Maritime Autonomous Surface Ship(以下、「MASS」という)の検討が開始されたのは、2017年に開催されたMaritime Safety Committee(以下、「MSC」という)98が始まりである。
MSC98においては、MASSに関する課題をMSCの議題とすることが合意され、IMOの規則において、MASSの運航における安全、保安、環境保全がどのように導入されるかをスコーピング作業という形式で実施することとなった[1]。
(2)MSC103での承認
IMOは、2021年5月に開催されたMSC103において、MASSの規制可能性を評価するための規制スコーピング作業を完了し、その成果を承認した[2]。
そして、自律化の様々な段階が考慮され、Degree One:乗組員が乗船し、自動化されたプロセス及び決定の支援を含む船舶、Degree Two:乗組員が乗船している遠隔操作船、Degree Three:乗組員が乗船していない遠隔操作船、Degree Four:完全自律船、に分類された。
また、規制スコーピング作業では、SOLAS条約及びその下位コードやCOLREGなどが評価対象に含まれ、その結果、複数の規則類にまたがる優先度の高い課題が多数存在し、対処する必要があることが示された。これらの課題には、MASSの用語及び定義の整理が含まれ、特にDegree 3や4において、国際的に合意されたMASSの定義の策定及び、船長、乗員又は責任のある職員の意味の明確化を含んでいる。
そして、委員会は、IMOの規制枠組みにおいてMASSに対処する最善の今後の進め方として、目標基準型(Goal-Based Standards、以下、「GBS」という)のMASS規則を包括的に策定することが望ましいことを示した。
なお、IMOで規則を制定する場合、他に処方型(Prescriptive Regulations)、性能基準型(Performance-Based Standards)といった形式が存在すると言われている。たとえば、処方型の例として、SOLAS条約における防火扉の耐火性能や煙探知機の設置間隔などが挙げられる。GBSは、これらの両者に比べて、手段や解釈において柔軟性があり、新技術の導入などの場合にメリットがあるとされている。
(3)MSC105におけるロードマップの承認
IMOは、2022年4月に開かれたMSC105において、MASSの運航を規制する目標指向型の文書の策定作業を開始し、策定に向けた作業計画を含むロードマップを承認した[3]。ロードマップでは、第一段階として非強制コード(non-mandatory Code)を策定し、2024年後半に採択することを想定した。その後、この非強制MASSコードの適用経験を踏まえて、2028年1月1日の発効を目指す強制MASSコードの策定を予定した。
また、MASS Correspondence Groupが再設置され、以下の事項を検討・実施するよう指示された。
・新たな文書の目的および目標に関する主要原則と共通理解の検討
・非強制的な目標指向型MASSコードの策定開始
・規制スコーピング作業(RSE)(MSC.1/Circ.1638、セクション5)で特定された共通の潜在的ギャップやテーマのうち、優先度の高い項目に焦点を当てた検討
・可能であれば、以下の点に関するMSCとしての立場を策定し、将来のMSC/LEG/FAL合同作業部会(Joint Working Group(以下、「JWG」という))に提出:
- MASSの定義とそれぞれの自律度を修正すべきか否か
- 船長(master)、乗組員(crew)、責任者(responsible person)などの用語の意味
- 遠隔操作ステーション/センターの定義
- 遠隔操作者を船員とすべきかどうか
・非強制MASSコードの対象を貨物船に限定し、将来的に旅客船への適用可能性を検討すること
・MSC 107(2023年春)に書面報告書を提出し、MSC 106では口頭で進捗報告
(4)MSC107からMSC110にかけてのロードマップの修正
ア、JWGにおける承認
その後、2022年9月及び2023年4月にJWGが開催され、MASSの運航においては、レベルにかかわらず、人間の船長が責任を負うべきであること、使用される技術や船内に人が乗船しているかどうかに応じて、船長が船上にいる必要はない場合もあること、レベルにかかわらず、MASSの船長は必要に応じて介入できる手段を有すべきであるといったことが承認された[4]。
イ、MSC107での留意事項
そして、MSC107(2023年6月開催)では、訓練・証明・能力要件に関するグループの共通見解を特に留意した。すなわち、 1.MASSに乗船している船員には、STCW条約が適用されること、2.遠隔操船センター(ROC)にいる遠隔操船者や船長が船上にいない場合には、STCWは適用されず、MASSコードにおいて訓練・証明・能力要件をすべて規定する必要があること、その際、STCWの要件は基礎として考慮されるべきであること、3.自律性や遠隔操船を考慮する際には、STCWに含まれる一定の原則(例:当直体制に関するもの)については、STCWの適用の有無にかかわらず、MASSコードにおいて取り扱うべきことである。
なお、MSC107は、船舶の運航形態(従来型またはMASS)にかかわらず、COLREG(国際海上衝突予防規則)の要件は関連性を持ち、適用されるものであると認識し、現時点ではMASSに対応するためにCOLREGを改正する必要はないと判断した[5]。
ウ、MSC108でのロードマップの修正、同109等での合意
また、MSC108(2024年5月開催)では、MASSコードの最終化にはさらなる作業が必要であることが明らかとなったため、ロードマップを、2025年5月:非強制MASSコードを最終化し採択する、2026年前半:経験蓄積フェーズ(EBP)の枠組みを策定する、2028年:非強制MASSコードを基礎として、強制MASSコードの策定を開始し、SOLAS条約への新章追加を含む改正を検討する、2030年7月1日までに:強制MASSコードを採択し、2032年1月1日に発効させる[6]。もっとも、MSC109(2024年12月開催)では、残された作業を踏まえ、ロードマップを以下のとおり改訂することが合意された(非強制MASSコードの採択が1年先送りされている)。
2026年5月:非強制MASSコードを最終化・採択
2026年12月:非強制MASSコード採択後の経験蓄積フェーズ(EBP)の枠組みを策定
2028年:非強制MASSコード及びEBPの成果、関連小委員会によるレビューを踏まえ、強制的MASSコードの策定を開始。SOLAS条約への新章追加による採択も検討
2030年7月1日までに:義務的MASSコードを採択し、2032年1月1日に発効
MSC110(2025年5月開催)においても、上記のスケジュールが確認されている[7]。
(5)ISWG-4-MASSでの最終化
MSC110では、ISWG-4-MASSが2025年9月29日から10月3日までの会合を予定して、再設置されることとなった[8]。ISWG-4-MASSは、非強制MASSコード第15章(人的要素)及びその他関連章の最終化に注力し、MSC111に報告を行う予定となった。
そして、2025年9月29日から行われたISWG-MASS-4では、以下の事項が確認された。
①船員および遠隔操作者の両方に対して、STCW条約が適用されることの確認、②乗員が乗船している場合には物理的な乗船が必要であることの確認、③任意の時点で指揮を執る船長は一人のみであることの明確化、④自律システムには常に人による介入(オーバーライド)機能が必要であることの要求、⑤導入段階では、船員が遠隔操縦センター(ROC)において遠隔操作者として勤務することの確認など[9]
これらの結果が、2026年6月に開催されるMSC111において正式に承認されることとなる。
(6)非強制MASSコードの概要
非強制MASSコードは、現時点においてもその内容は公表されていない。
もっとも、2024年5月にIMOで開催されたシンポジウムでは、以下の内容が議論されていることが報告されており[10]、MSC111に報告される非強制MASSコードもこれらの内容を含んだものとなることが予定されている。
- MASSコードを目標指向型(Goal Based)として維持すること:適切なレベル、一貫性の確保などを含む
- 専門小委員会(Sub-Committees)の関与
- 用語および定義:IMO文書では通常使用されない複数の用語の使用に関する検討
- MASSにおける遠隔操縦センター(ROC)からの運航管理の円滑化
- 船長および乗組員の役割と責任の明確化
- 「MASS」および「MASS船長」とは何かの理解
- 船舶を「MASS」と呼ぶとき、それは何を意味するのか
- 「MASS船長」とは何か
- 検査および証明に関する章
- 「補完的(Supplementary)」と「相補的(Complementary)」の使い分け
- MASSコードの適用範囲
- 人的要素に関する事項(乗員の訓練・資格証明など)
2 英国における衝突事故に関する法規制の枠組み
以下においては、英国[11]の衝突事故に関連するルール及びその枠組みという観点から、COLREG(1)、運航に関する資格(2)、MASSに関する規則(3)、刑事司法手続(4)、及び衝突事故発生時の刑事責任(5)について概観する。また近年成立した英国の自動車の自動運転に関する立法措置も紹介する。
(1)英国における衝突予防規則
英国においては、COLREGは、規則において定められている。
The Merchant Shipping Act 1995(以下、「MSA1995」という)第85条1項は、国務大臣(Secretary of State)に、「安全規則(safety regulations)」と呼ばれる規則制定権を付与している。そして、同条3項(k)は、船舶が関与する衝突を防止するため、また、船舶が関与した衝突の結果に対処するために講ずべき措置を制定することができることを明示している。
これらを受け、The Merchant Shipping (Distress Signals and Prevention of Collisions) Regulations 1996が制定されている。同規則のIntroductory Textにも、同規則がMSA1995第85条に基づいて規定されたこと[12]が明示されている。
同規則4条は、原則として、規則の適用を受ける船舶は、国際規則(International Regulations)の第1条から第36条までの規定および附属書I〜IIIの規定を遵守しなければならない旨定めている。
加えて、MSN 1781 (M+F) AMENDMENT 2[13]もCOLREGの内容を補完する重要な位置付けを持っている。
このように、英国においては、いわゆる予防法がMSA1995に基づく委任として、国務大臣が定めており、他方で一部の除外規定を除き、COLREGをそのまま引用するという形を取っているという点で我が国とは異なるものである。
もっとも、MSA1995第86条4項は、国務大臣は、安全規則を制定しようとする場合、その提案を実施する前に、英国においてその提案により影響を受けると考えられる者に対して協議を行う義務を負う、とされ[14]、専門的・技術的内容について海技従事者の意見が反映され、また濫用的な立法措置を防止する効果が期待されているものと思われている。
(2)英国における運航に関する資格
英国の分類は、我が国が基本的には、一級海技士(航海)から六級海技士(航海)(船舶職員及び小型船舶操縦士法5条1項1号)及び小型船舶操縦士一級、二級及び小型特殊(同法23条3第1項)に分類されるのに比較すると、やや複雑である。
まず、大きな分類として、商業利用目的か否か、船舶の長さが24メートルを超えるか否かによって大きく異なる。商業利用目的の船舶については、総トン数500トン未満かそれ以上かによって区別されている(MSA1995第47条等参照)。概略を示すと、日本の船舶職員及び小型船舶操縦士法の1級海技士(航海)から3級海技士(航海)に対応するものとして、Master(Unlimited)、Chief Mate(Unlimited)、OOW(Officer of the Watch)が存在する(The Merchant Shipping (Standards of Training, Certification and Watchkeeping) Regulations 2022、3条、4条、6条及び7条、MSN 1856 (M+F) Amendment 1)がある[15]。
また、長さ24メートル未満の船舶のうち、レジャー及びスポーツ目的以外の非商業利用については、操船資格が不要である[16]。もっとも、港湾の利用や保険加入の要件として、RYA(Royal Yacht Association)の資格が求められることがあるようである。RYAの資格については、細分化されたものが同協会のHP上に掲載されている[17]。
商業利用については、現行法上、MSA1995第85条に基づき、プレジャーボートについては、The Merchant Shipping (Vessels in Commercial Use for Sport or Pleasure) Regulations 1998[18]が、作業船(遠隔無人操作船(ROUV)を含む)、水先船については、Merchant Shipping (Small Workboats and Pilot Boats) Regulations 2023[19]が、漁船については、MGN 411(M+F)[20] が操船資格を定める。このうちThe Merchant Shipping (Vessels in Commercial Use for Sport or Pleasure) Regulations 1998については、The Merchant Shipping (Vessels in Commercial Use for Sport or Pleasure) Regulations 2025に置き換えられる予定である。また、Workboat、Pilot boat、Remote Operated Unmanned Vesselの定義[21]は、次の通りである。
Workboat(作業船):スポーツまたは娯楽以外の目的で商業利用される小型船舶を意味し、専用の水先船を含むもの。
Pilot boat(水先船):水先業務(人員・郵便物・少量の物資などを水先区域内の船舶との間で運搬するなどの補助的業務を行う場合もある)に従事し、またはそのために使用される予定の船舶を指す。
Remote Operated Unmanned Vessel(遠隔操作無人船):船内に人が乗っておらず、船舶から離れた場所(遠隔地)から操作される船舶を指す。
このように、航海士としての操船資格が船舶の使用目的、商業・非商業利用かによって異なり、24メートル未満の非商業利用のプレジャーボートや16.5メートル未満の漁船については操船資格が不要とされているのは、我が国の法制度と比べると大きく異なる点である。
(3)The Workboat Code Edition 3について
英国においては、The Workboat Code Edition 3 -The Safety of Small Workboats and Pilot boats- a Code of Practice-[22]がRemote Operated Unmanned Vessel(以下、「ROUV」又は「遠隔操作無人船」という)について、運航のための要件を詳細に定めている。節も1 Application and Definitionsから26 Annex References and Updatesに分かれており、COLREGとの関係では、5 Navigational and Anchoring Equipmentや7 Remote Control of Remotely Operated Unmanned Vesselsなどがある。
同コードは、The Merchant Shipping Act 1995(以下、「MSA1995」という)の85条に基づくもので、法的拘束力を有する[23]。以下その概略をCOLREG、運航に関する資格の観点から紹介する。
ア、対象船舶について
The Workboat Code Edition 3(以下、「ワークボートコード」という)は、作業船として運航する満載喫水長24メートル未満の遠隔操作無人船舶に適用される(同コード、ANNEX2、前文(特に断りのない限り、本稿の条文等はANNEX2を指すものとする))。
また、当然のことであるが、適用される船舶は英国籍船及び英国領海内の船舶である(同1.1.1)。また、パイロットボートとして認証されることや危険物の登載などは禁止されている(同2.1.1)。
イ、記録等
ROUV及びRemote Control Center(以下、「遠隔操縦センター」または「ROC」という)の双方において、最低限以下の船舶データを記録しなければならないとされている(コード2.2.3)。
①日付および時刻、②船位(位置情報)、③船速などに始まり、④どの遠隔操縦センターが船舶を制御しているか、⑤船舶の音声、⑥遠隔操縦センターの音声、⑦遠隔操縦センターおよびワークステーションの映像記録、⑧音声通信記録、⑨ECDIS(電子海図情報表示システム)データ、⑩推進装置およびスラスターの指令と応答、⑪ハッチまたはドアの開放状況、⑫加速度、⑬船体の応力、⑭風速および風向、⑮ローリング(横揺れ)動作、⑯AIS(船舶自動識別装置)データなど多岐にわたる。特に⑧音声の記録や⑪のハッチ等の開放状況、⑮の横揺れ等多くのセンサーや機器が必要になるものと思われる。
ウ、通信
通信に関する要件は、主にコード4節と7節に規定されている。
例えば、原則として、通信にはバックアップが求められ、ROUVは、主通信システムが故障した場合に使用可能な二次通信システムを備えていなければならないとされ、そのシステムは常時利用可能であることや、船舶の位置情報および基本的な機能を操作可能であることが求められている(コード4.2.4)。
また、安全な運航に関するリスクアセスメントとして、ROCからROUVへの接続の喪失、ROUVからROCへの接続喪失、両者の接続を再確立できない場合のリスク、ROCからの制御喪失が求められ、これらが定められた許容時間内に解決されない場合には運航状態に応じた安全状態への移行が求められている(具体例として、減速や他の水域利用者への聴覚・視覚での警告などが挙げられている)(コード7.7.1)。この点は、緊急システムの項でも補足されている(コード7.9.1)。そして、許容時間を超えて接続が喪失された全ての事例は一定事項の記録が必要とされる(コード7.7.2)
さらに、ROUVがROCとの接続を喪失した場合、「運転不自由船」であることを示す音響及び視覚信号を表示又は発信し他船に対し運転不自由船であること及び避航できないかもしれないことを警告しなければならない(コード7.7.5)としている。
エ、カメラ、センサー、音響等
カメラについても詳細な要件が定められており、例えば、水平および垂直の視野角を確保するように設置されること(コード5.2.1)や認証機関の承認(同5.2.6)などが要求される。また、遠隔操船者(Remote Operator(以下、「RO」という))は、他の水上利用者からの信号を解釈できるよう、適切なセンサーおよびカメラ出力を備えていなければならないといった要件も求められている(同5.4.3)。さらには、Dynamic Position System(DPS)の登載が義務づけられている(同5.5.1)。
また、アラーム、カメラ、センサー、レーダーおよび通信の出力が、水中または水上の人物を検出できる状況認識を提供する(同7.3.1.6)ことや、聴覚アラームが遠隔操縦センターのすべての環境下で聴取可能である(ヘッドセットやスピーカーの使用を含む)(同7.3.1.12)ことといった要件を満たす必要がある。さらには、パン・チルト・ズーム機能を用いて、最低225度の前方視野を確保し、360度全周の視野を監視できることが求められている(同7.4.1.4及び同5)。
さらに、ROUVは、音声指示を送信するためのスピーカーシステムを装備しなければならない(同4.3.3節参照)(同7.7.4)。
オ、配乗(人員配置)と資格について
また、コード7.2.1では、ROCでの人員配置について、相応しい能力をもった必要な人数の①リモートオペレーター、②船長、③技術担当者[24]が求められている。そして、リモートオペレーターの訓練と資格は、MIN698[25]において言及されている。
船長は、自らが責任を負うROUVが運航する最も厳しい運航区域カテゴリに対応できる、最低限の適切な資格を有していなければならない(コード7.2.9)。
カ、COLREGに関係する条文
同コード2.2.15は、すべてのニアミス(衝突寸前の事象)について記録を残すこと。COLREGから逸脱する必要があった場合には、その逸脱が差し迫った危険を回避するために必要だったことを証明する補足情報も記録することを定めている。
同コード4.2.4は、ROUVは主通信システムが故障した際利用できる二次通信システムを備えなければならず、このシステムは、常時利用可能であり、位置情報や基本的なROUVの機能を操作できること並びに、①船舶を安全状態に入る指令ができること、②運転不自由船の灯火を点灯できること、③重大な警報を受け、反応できることが必要とされている。
同コード5.2.2は、適切な見張りの提供は、COLREGより義務付けられている旨定めている。
また、同コード5.3.2は、リモートオペレーターは、操船位置において見張りと操舵の両方の職務を遂行しなければならない旨定め、その際に①全方位の視界が遮られていないこと、②夜間視認能力に支障がないこと、③適切な見張りの維持を妨げるその他の障害がないことを条件としている。
加えて、同コード7.3.1は、 船舶の種類を識別・認識できること(灯火、形状、音響および光信号を含む)を規定し、これは1972年の国際海上衝突予防規則(COLREG)のパートCおよびDに準拠することを定めている。
キ、ROCについて
ROCには安全な運用として、緊急事態に備えた定期的な訓練を受けることが求められるとともに(コード7.8.1)、重要機器の非常電源装備(同7.8.1)、ROCが機能不全となった場合にバックアップのROCを利用可能とすること(同7.8.5)やバックアップのROCの要件が定められている。
ク、その他
SMSとサイバーセキュリティ(コード8.1)、運用手順とリスクアセスメント(同8.2)、緊急事態と安全対策(同8.3)、火災と安全手順(同8.4)、重要機器(同8.5)、PES(Programmable Electric Systems)、並びにソフトウェア及びバージョン管理(同8.6)などが定められている。
ケ、商業利用の開始
以上の要件を満たしたものとして、2025年8月、英国においてPIONEER号が初の認証を受けた[26]。同号は、英国プリマスに拠点を置く ACUA Ocean(アクア・オーシャン)社によって開発された[27]ものであり、洋上監視・モニタリング・インフラ点検などを目的とするものである。船体の長さは14.2メートルであり、水素を燃料としている[28]。
(4)英国における刑事司法手続
ア、捜査権限について
英国においては、海上における船員に労働が関係する事故が発生した場合、Health and Safety Executive(以下、「HSE」という)、Maritime and Coastguard Agency(以下、「MCA」という)及びMaritime Accident Investigation Branch(以下、「MAIB」という)の管轄が重複することとなる。
MCAは、MSA1995第258条に基づき、船舶とその装備について検査する権限を有しており、船舶の安全性やMS1995の各規定の遵守状況などを確認することができる。
MAIBは、日本の運輸安全委員会に相当する。MAIBによる事故調査は、MSA1995第267条及びThe Merchant Shipping (Accident Reporting and Investigation) Regulations 2012に基づく調査として実施される。その目的は、当該事故の原因および状況を明らかにすることを通じて、将来の事故の防止を図ることであり、責任の有無を判断することではなく、またその目的を達成するために必要な範囲を除き、非難の所在を明らかにすることでもない(同規則5条1項、2項)とされており、268条の調査目的とは異なるものである。
HSEは、Health and Safety at Work etc. Act 1974(以下、「HSWA」という)第10条に基づいて設立された機関である。HSEの検査官には、立入調査、質問・検査、証拠の収集などの権限が付与されている(同法20条)。
イ、各機関の役割について
各機関の役割は、Operational Working Agreement[29](以下、「OWA」という)により、次のとおり、整理されている。
HSEは、労働に関連する健康・安全および重大事故災害の検査・規制を担っており、沖合の石油・ガスの探査、採掘、貯蔵、洋上再生可能エネルギー構造物、ドック(港湾施設)が含まれる。また、MCAの主な機能は、海上安全の高度な基準を策定・推進・執行すること、船員および沿岸利用者の生命の損失を最小限に抑えること並びに、船舶による海洋および沿岸の汚染を最小限に抑えることである。MCAは、労働安全衛生、船舶の安全性、安全な航行および運航(乗員数や乗組員の能力を含む)に関する商船規則のすべてを執行する責任を負っている。商船に関する労働安全衛生規則は、船内で働くすべての者および船上で行われるすべての作業活動に適用される。MAIBは、英国領海内で発生した船舶および乗組員に関連する事故、ならびに世界中で発生した英国籍船舶に関する事故を調査する責任を負っており、その目的は同様の事故の再発防止に資するため、事故の状況および原因を明らかにすることにある。
そして、OWAの4項では、基本原則(Overarching Principle)が示され、船長の管理下にある通常の船内活動(HSWAの適用の有無を問わない)、または、HSWAの適用対象外の活動(船長の管理下にあるか否かを問わない)の場合、執行(enforcement)についてはMCAまたは旗国(Flag State)が主導し、事故調査についてはMAIBが主導する、という基準が示されている。次に、対象となる活動が、船長の管理下にある通常の船内活動ではなく、かつその活動がHSWAの適用対象である場合には、HSEが主導機関となる、という基準が採用されている。また、HSE、MCAおよびMAIBは、管轄が重複する領域においてはこの基本原則を採用する。もっとも、HSEとMCAが協働して捜査を行うことも存在するようである。
また、衝突など船舶の航行に直接起因する事故の場合は、HSEの関心があるとしても、MCAまたはMAIBがその事故の該当部分の調査を主導することとなる[30]。
ウ、MCAの捜査
MCAは、商船法および関連法令の執行を担う[31]法定機関であり、MSA1995違反に対して法執行が行われる。
MCAが調査の対象とすることが多い、犯罪類型は次の通りである[32]。
– 汚染
– 衝突違反(IRPCS)
– 安全ではない運航(船舶所有者・オペレーター・使用者による)
– 危険を及ぼす行為(船長および乗組員による)
– 危険物の輸送
– 詐欺行為(船員資格証明書に関する)
MCAは、単なる行政機関であるにとどまらず、違反に対する各種の制裁に関して、証拠等を収集する。語弊を恐れずに別の言い方をすれば、行政機関としての調査(日本法でいう、いわゆる監査に近いものと思われる)と司法機関としての捜査とが重なる役割を果たしている。
MCAも自ら、「商船法および関連法令の執行を担う法定機関で」あり、「英国全域において法令違反の重大性に応じた法的措置を講じ、制裁を科す広範な権限を有してい」ると述べ、「起訴はMCAが取り得る最も重大な法的措置ですが、起訴に先立ち検討されるべき行政制裁の選択肢も複数存在」[33]する、と述べている。
エ、MCAの捜査の特徴
MCAには、Regulatory Compliance Investigations Team (以下、「RCIT」という)というチームが存在する。RCITは、個人、船舶、環境の安全および保安に影響を及ぼす可能性のある海事法規違反の疑いのあるものについて調査を担う[34]。実際には、MCAの法執行活動を主導[35]しているようである[36]。現在、同チームは10名で構成されている[37]とのことである。
日本との比較においては、日本では、同種の組織は存在しない。語弊を恐れずに例えるのであれば、国交省海事局内部に、警視庁からの捜査経験者の出向者のチームがあるようなものだと思われる(もっとも、MCAにおいては出向ではなく、職員として在籍している)。このように考える理由としては、現在のチームのトップであるニール・カニンガム氏が、警察での20年以上のキャリアを持っていることや、副チーム長の募集要項には、①PACE:Police and Criminal Evidence Act 1984(警察及び刑事証拠法)、②CPIA:Criminal Procedure and Investigations Act 1996(刑事訴訟及び捜査法)、③RIPA:Regulation of Investigatory Powers Act 2000(捜査権限規制法)、④Coroners Courts(検視官裁判所)、⑤Fatal Accident Inquiry(死亡事故調査)での経験が求められていること[38]から推測されるものである。
RCITによる調査が完了すると、MCAの省庁検査官(Departmental Inspector)が証拠を分析し、起訴すべきかどうかを含む勧告を行う[39]。公平な意思決定プロセスを確保するために、起訴の決定は調査担当者とは独立して行われる(「フィリップス原則(Phillips Principle)」)。これにより、検査官の勧告に対して慎重かつ中立的な評価が行われ、正当かつ適切な対応が選択されることが保証されることとなる。刑事訴追の最終決定権は、MCAの最高経営責任者(CEO)または適切な権限を有する執行役員にある。
オ、警察の関与
以上がMCAとのHSEとの所管の整理並びにMCAによる調査ないし捜査の基本的な考え方である。
両機関の他、英国においては、homicide offences(殺人関連罪)の場合においては、警察も捜査を行うこととなる。警察と他機関との役割分担については、Work-related Deaths: A protocol for liaison (England and Wales)[40]に詳しく定められている。具体的には、「過失による殺人の疑いがある場合(または医学的見解により死亡の可能性が高いとされる場合)、警察が調査を行う。」ことや、「調査(捜査)は『Work-Related Deaths Protocol: Practical Guide』に従って、共同で実施・管理される。」こと、「調査(捜査)中は、いずれかの機関が『主導権(primacy)』を担う」こと、「共同調査に関与するすべての機関は、主導権の有無にかかわらず、それぞれの調査を進めるよう努める」といったことが定められている。このため、例えば、船舶の衝突事故による死亡事案で操船者の過失が疑われ、MSA1995第58条違反に該当し得る可能性があり、他方で、重過失致死(gross negligence manslaughter)の嫌疑がある場合には、両機関が捜査を行うこととなろう。
そして、重過失での立件が可能な場合には、Crown Prosecution Service(以下、「CPS」という)が起訴することとなり、重過失の立証が難しく、MSA1995違反が立件される場合には、MCAが起訴することとなる。
カ、起訴不起訴に向けた判断
また、MCAは、起訴不起訴に関する判断を実質的に行うことから、起訴を開始する前に、事件が “Code for Crown Prosecutors”に定められた “Full Code Test”を満たしているかどうかを検討することとなっている[41]。
この “Full Code Test”は、 “Evidential Stage”(証拠段階)と“Public Interest Stage”(公共の利益段階)の2段階に分けられている。前者では、証拠の許容性、信頼性、信用性を検討し、後者では、①犯罪の重大性、②被疑者の責任非難可能性、③被害者の状況と被害の程度、④事件発生時の被疑者の年齢と成熟性、⑤地域社会への影響の程度、⑥起訴に相当するものか[42]、⑦情報提供者の保護の必要性など各事件を個別の事情に基づいて評価する[43]。
そして、起訴機関の選定基準としては、証拠が「重大な規制違反(MCAの管轄)」から「重大な過失(CPSの管轄)」に越境できるかどうかにかかっている。前者に留まる場合には、MCAによる起訴となり、後者に及ぶ場合には、MCAによる起訴とCPSによる起訴という並行しての起訴となることがある。このような考え方は、検察官が起訴独占主義(刑事訴訟法247条)を採用する我が国との極めて大きな違いといえよう。なお、法人罰を採用している英国においては、法人に対しては、MCAによる規制違反の起訴が有罪判決と高額罰金を得るための現実的な手段となることが多いようである。
実際の起訴事案については、MCAの起訴事案については、全てではないが、年次報告[44]で公表され、RCITの起訴事案についても、同様に年次報告[45]で公表されている。
キ、管轄裁判所について
英国では、全ての犯罪は、治安裁判所(Magistrates’ Courts)から始まる[46](Magistrates’ Courts Act 1980第1条)。
Crime and Disorder Act 1998第51条は、成人が犯罪の嫌疑で治安裁判所に出廷または連行され、以下の第2項の条件のいずれかを満たす場合、治安裁判所は直ちにその事件をクラウンコートへ移送し、審理(起訴審理)を受けさせなければならない、と定める。
そして、同条2項は、その条件は以下の通り定める:
(a) 犯罪が起訴のみで審理可能な犯罪(indictable-only offence)であり、かつ第51B条または51C条に基づく通知が提出されていない場合
(b) 犯罪が両方式事件(either-way offence)であり、1980年治安裁判所法の特定条項(20(9)(b)、21、22A(2)(b)、23(4)(b)または(5)、25(2D))により、クラウンコートで審理すべきとされる場合
(c) 第51B条または51C条に基づく通知が治安裁判所に提出されている場合
端的に述べると、重罪(indictable offence)の場合、又は治安裁判所・クラウンコートいずれでも審理可能な場合において一定の要件を満たすときにはクラウンコートに移送される。
いずれの裁判所で審理されるべきかは、通常法律において規定されている。
例えば、MSA1995第58条5項は、次のように定める。
本条に基づく犯罪を犯した者は、以下の刑罰を受ける可能性がある:
(a) 略式審理による有罪判決の場合:法定上限額を超えない罰金
(b) 起訴審理による有罪判決の場合: 最大2年の懲役、若しくは罰金、または、その両方
したがって、負傷を伴わない軽微な運航上の過誤であれば治安判事裁判所で扱われる可能性があり、重大な事故や死亡につながるような軽率な行為であればクラウン・コートに送致されることになる。また、The Merchant Shipping (Distress Signals and Prevention of Collisions) Regulations 1996第6条は、次のように定める。
本規則のいずれかに違反した場合、船舶の所有者、船長、またはその時点で船舶の運航に責任を有する者は、それぞれ犯罪を犯したものとみなされ、以下のいずれかの方法で処罰される:
起訴審理(indictment)による有罪判決の場合:最大2年の懲役および罰金
略式審理(summary conviction)の場合: (a) 国際規則の第10条(b)(i)(分離航路における交通流に従って航行する義務)違反の場合:最大 £50,000 の罰金(この違反は1894年商船法第419条(2)に対応する犯罪とされる)、(b) その他の違反の場合:法定上限額までの罰金。
こちらも同様にいずれかの裁判所で審理される可能性があり、クラウン・コートで審理される場合は、最大2年の懲役となる可能性がある[47]。
(5)衝突事故発生時の刑事責任
ア、COLREG違反の罪
The Merchant Shipping (Distress Signals and Prevention of Collisions) Regulations 1996の第6条に刑事罰(Penalties)が設けられている。この点は、前回の報告書で報告した通りである。なお、同規則は、前記(1)で述べたように、The Merchant Shipping Act 1995第85条の委任に基づく規則である。
犯行の主体は、操船者(その時船舶の運航に責任がある者)や船長にとどまらず、所有者をも含むものである(この点は、我が国の業務上過失往来危険罪(刑法129条2項及び1項)の処罰範囲と異なるものである)。処罰の対象となる行為は、The Merchant Shipping (Distress Signals and Prevention of Collisions) Regulations 1996への違反であり、具体的には、同規則4条1項により、COLREGの第1条から第36条および附属書IからIIIの規定が適用されることとなり、これらの条項への違反が犯罪となる。
イ、MSA1995第58条違反の罪
同法58条は、①英国籍船又は英国領海内にある船舶の船長又は船員(同条1項)が、②自身の船舶上またはその近傍において(a)又は(b)の行為を行い(同条2項)、ウの条件を満たす場合(同条3項)には、犯罪を構成する。
(a) 以下のいずれかを引き起こす、または引き起こす可能性のある行為を行った場合:
(i) 自身の船舶、またはその機関、航海機器、安全装置の喪失、破壊、または重大な損傷
(ii) 他の船舶または構造物の喪失、破壊、または重大な損傷
(iii) 人の死亡または重大な傷害
(b) 以下のいずれかを防ぐために必要な行為を怠った場合:
(i) 自身の船舶、またはその機関、航海機器、安全装置が喪失、破壊、または重大な損傷を受けることを防止するため
(ii) 自身の船舶に乗船している人の死亡または重大な傷害を防止するため
(iii) 自身の船舶が他の船舶または構造物の喪失、破壊、または重大な損傷、または自身の船舶に乗っていない人の死亡または重大な傷害を引き起こすことを防止するため
また、条件として、ウ、(a)作為または不作為が、故意であったか、または職務上の義務違反または怠慢に相当するものであった場合、(b) 当該船長または船員が、当該行為または不作為の時点において、酒類または薬物の影響下にあった場合が責任要素として規定されている。
過失による船舶の衝突事故は、イ(b)及びウ(a)に該当しうることとなる。
刑事罰は、裁判所の種別により、法定上限額までの罰金、最長2年の懲役または罰金、またはその両方、とされている(同条5項)ことは前記(4)キで指摘したとおりである。
ウ、その他のMSA1995違反の罪
同法第58条違反の罪の他、衝突事故に直接かかわることは少ないと思われるが、第94条・第98条(不安全な船舶(dangerously unsafe ship))の罪、第100条(不安全な運航(unsafe operation of ship))の罪などがあり、(a)略式裁判の場合には、最大£50,000の罰金、公判請求の場合は、最長2年の懲役、若しくは罰金、またはその両方の罰則が科される可能性がある。
エ、死亡結果発生時に成立し得る犯罪について
COLREG違反や MSA 1995違反の罪 第94条・第98条(不安全な船舶)、第100条(不安全な運航)に違反し、死亡事故が発生した場合、過失致死罪の起訴につながる可能性がある。重過失致死罪(gross negligence manslaughter)や法人過失致死(corporate manslaughter)の罪である。
(ア)重過失致死罪について
重過失致死罪が成立する場合、量刑は以下の通り[48]となっており、我が国の業務上過失致死罪(刑法211条)の法定刑が5年以下の拘禁刑となっているのと比べ、格段に重い内容となっている。なお、最高刑は終身刑(life imprisonment)である。
Culpability A:非常に高い過失(Very High Culpability):出発点は12年、量刑範囲は、10から18年
Culpability B:高い過失(High Culpability):出発点は8年、量刑範囲は6~12年
Culpability C:中程度の過失(Medium Culpability):出発点は4年、量刑範囲は3~7年
Culpability D:低い過失(Lower Culpability):出発点は2年:量刑範囲は1~4年
(イ)法人過失致死罪
英国においては、法人等が
(a) その活動の管理または運営の方法が人の死亡を引き起こし、
かつ
(b) 当該死亡が、組織が被害者に対して負っていた「関連する注意義務(relevant duty of care)」に対する重大な違反(gross breach)に該当する場合であって、
その活動の管理または運営の方法における違反の重要な部分が、当該組織の「上級管理層(senior management)」によるものであるときは、
法人過失致死罪(Corporate Manslaughter)が成立する(Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007、1条1項及び3項)。
同法は、1987年3月6日に発生したヘラルド・オブ・フリーエンタープライズ号沈没事故[49]により193名の死者が出たものの、検死官により、manslaughterでは処罰できないとの意見が示された後、法人に対する起訴が行われたが結局、不可罰となったことなどをきっかけに法人処罰を求める声が高まり、法律委員会による報告などを経て、2007年に制定されたものである。
罰金に上限はない(同法1条6項)[50]。
法人過失致死罪の実際上の意義としては、①法人に対する社会的評価の低下や、②財政的負担(我が国と異なり実効性のある金額とすることが可能)などが言われている。
我が国においては、(業務上)過失致死罪について、法人の責任を問う法律は存在せず、法人過失致死罪は不可罰である[51]。
オ、各犯罪の関係等
英国においては、重過失致傷罪は、不可罰である。これは、重度の傷害が生じた場合であっても、同様である。
衝突による沈没が発生したが死者が出なかった場合、規制違反の領域に留まり、MCA によって起訴される。通常は罰金刑となり、クラウン・コートで起訴された場合、罰金額に上限はない。企業が重大な危害または致死寸前の事故を引き起こした場合には、労働安全衛生違反に関する量刑ガイドラインが類推適用され、数十万ポンド規模の罰金が科されることもあるようである。罰金額は、企業の売上高や過失の程度に応じて増加する。なお、MSA1995第58条違反は、COLREG違反に対する罪の代替または補足的な起訴理由として用いられることが多く、特に負傷や重大な損害が発生した場合に適用される。
衝突によって死者が出た場合、MSA1995 やCOLREGに基づく規制違反は引き続き適用されるものの、「殺人(homicide)」に焦点が移る。この場合、規制違反(MSA1995)と殺人関連罪(重過失致死罪または法人過失致死罪)の両方が、警察および MCA によって調査される。重大な過失が認定されれば、CPSが重過失致死罪で起訴する可能性がある。
そして、CPSとMCAが同時に起訴を行う場合がある。2024年 Scot Carrier 衝突事故は、CPSとMCAによる共同捜査の事案である。二等航海士(飲酒・警報解除・オンラインチャット)がデンマークで過失致死罪により有罪となった。英国では、船長と会社が規則違反で起訴され、船長は、SMS(安全管理システム)違反(2014年規則第7条)、会社は、MSA 1995 第100条違反(不安全な運航)により処罰された[52](もっとも、CPSによる起訴は見送られたため、同時に起訴が行われた事案ではない)。
(6)英国における自動車の自動運転時の刑事責任
船舶の自動運航の場合、既存船での有人操船の場合と比べて、過失の立証が困難となる場合がある。
英国では、自動車の交通事故の場合、1988年道路交通法(Road Traffic Act 1988)[53]第34条に、2024年自動運転車法(Automated Vehicles Act 2024)[54]第53条により、第34条B及び同Cが追加されている。条文の操作及び解釈は難解であるが、自動車の自動運転機能が作動している間は、「責任者(User-in-Charge, UiC)」は運転方法に起因する犯罪から免責され、法人(認可自動運転主体:Authorised Self-Driving Entity, ASDE)が死亡事故を引き起こした危険運転の刑事責任を問う内容となっている。同条は、個人の重過失を立証する必要がある重過失致死罪とは異なり、システムが死亡事故を引き起こしたという事実に焦点を当てているため、製造業者や開発者に対する検察官の立証負担を軽減する効果がある、と言われている。そして、欠陥のあるシステムの使用に焦点を当てることで、自動化された致死事故の起訴をより簡素化できる可能性があると言われている。
我が国では、このような立法は存在しない。
3 今後の課題
我が国における衝突事故発生時の刑事責任を負うのは、あくまで個人である。
これまで、操船における過失は主に、当直航海士の見張りを中心とした問題に集約していた。
しかしながら、今後、遠隔操船及び自動運航システムによる操船が導入されるに伴い、状況認識(他船の針路及び速力の識別等)、避航に関する意思決定、針路及び速力の決定など役割・機能の一部又は全部が一時的又は断続的に、当直航海士から、ROC(Remote Operation Centre)やANS(Autonomous Navigation System)に移される。
これまで以上に、操船に関し、ソフトウェアや関わる場面が大きく広がることになる。
衝突事故が自己学習型AIや複雑な潜在的ソフトウェア欠陥によって引き起こされた場合、ソフトウェア開発者(個人)がその特定の故障シナリオを合理的に予見できたと、捜査機関が立証することは通常困難である。したがって、プログラム製作及び更新時に予見できなかった欠陥やバグなどが原因となって衝突事故が発生し致傷の結果が生じた場合、ソフトウェアを開発した個人の責任を追及することは難しい。
さらに、特に我が国においては、事故について法人過失致死傷罪がないことから、組織を全体としてみると当罰的な過失が認められる場合であっても、個々人のレベルに還元すれば、予見義務がないか又は結果回避可能性が乏しい場合には、誰も刑事責任が発生しない、という事態が発生しうる。
また、有人による操船(既存船)との同等性を考えた場合、有人による操船の場合は可罰的であるが、MASSの場合は不可罰となるのは、衝突事故予防の観点からは、好ましいことではない。より具体的には、既存船であれば過失が認められるような針路及び速力でMASSが航行したような場合に、操船に関与する個々人のそれぞれの過失のみでは予見可能性や結果回避義務が認められないとき、または具体性が認めらないとき、関与した個人の過失責任を問うことはできない。
今後、自動運航船の登場により、益々組織化、機能分化されることが想定され、何らかの立法措置の検討は必要ではないかと思われる。
第2 通信、プログラムの不具合等に起因する法的責任について
第1では、非強制MASSコードの作成経過を確認した後、英国の法制度を我が国の法制度と適宜比較しつつ紹介してきた。
以下では、自動運航船に関するいくつかの論点について、刑事責任の成否を検討する。なお、その際、英国では、どのような刑事責任が発生するか否かについて言及することにより、今後の我が国における課題を示すものとしたい。
1 通信の遮断による運転不自由(船)について
自動運航船Aの通信の遮断により、針路及び速力が保持できなくなり、漂泊の状態に陥った場合(予防法27条1項所定の灯火又は形象物の表示もできなかった場合)、
業務上過失往来危険罪(刑法129条2項)は成立し得るか。ここでは、過失の成否について検討する。
(1)通信遮断の原因別にみた罪責
本件の場合、通信の遮断の原因が何によるものかが問題となる。なお、通信が遮断された場合であっても、最低限の安全な場所へ移動するための自律的航行が求められ、又は運転不自由船としての灯火又は形象物の表示(海上衝突予防法27条1項)が必要となることは、一般論として承認されているものと思われるため、このことを前提とした検討を行う。
ア、通信遮断の原因が外的要因にある場合
沿海であったとしても、通信が不安定となることは往々にして存在する。このため、外的要因により、通信が遮断したことを理由とする操船不能は通常予見が可能であり、このような状態であっても、避航操船を行うか、運転不自由船としての表示を行う若しくは錨泊等が往来の危険を回避する措置として必要となろう(もっとも、輻輳海域あるいは主要な航路筋上において運転不自由船としての漂泊や、錨泊を行った場合、往来の危険が逆に生じてしまう可能性があることから、少なくとも他船との衝突の可能性が低い海域への移動が必要となろう)。
このような場合、我が国においては、法人処罰が立法化されていないため、あくまで個人の責任追及を検討することとなるが、罪責を負う可能性があるのは誰か。
船舶安全法及びそれらに付随する各種の規則の解釈によれば、遠隔支援業務の認定を受けた者や船舶所有者が第一義的には、安全な船舶の運航に対する責任を有するものと解釈することができるももの、これらは通常、法人であるため、我が国では処罰の対象とならない。代わりに、当該業務及び事務につき管理監督責任を有する者の過失を検討することが考えられるが、権限と責任の個別具体的な検討を踏まえた検討が必要となろう。また、船舶の安全な運航につき終局的に責任を負う者とされている、いわゆる、MASS 船長と呼ばれる者については、出航前の時点で、通信遮断の場合にどのような措置が可能か否かの検討を行い、往来危険の発生を予防できる措置を取る必要があり、それらの点検を怠った状態で本件のような事情が生じた場合には、MASS船長個人に過失が認められる可能性はある(もっとも、現実の事案における過失の認定は、様々な事実の積み重ねの上に検討され、さらに個別具体的な、直近の過失が重視されることもあるから、最終的には事案によることとなる)。
イ、内的要因(プログラムや機器の欠陥やブラックアウト)により通信が遮断した場合
続いて、内的要因により通信が遮断した(プログラムや機器の欠陥やブラックアウト)場合について検討を行う。
プログラムや機器の欠陥により通信が遮断した場合、プログラム設計者または製作者(以下、「プログラム設計者等)という)に対し、過失責任を問い得るかは、そのような欠陥の存在をプログラム設計者等が予見できたか否かによる。そもそもANSの避航アルゴリズムは、極めて複雑であり、プログラム設計者等は、欠陥が存在しないようプログラムを設計または製作し、また機器が通常の性能を発揮することを前提としているため、欠陥の存在を予見できたものとするのは、通常困難であろう(また、設計、製作過程全体を通じてみれば、予見可能性が肯定できるように見える場合であっても、我が国では法人は、不可罰であるから、過失の存在を肯定することは不可能である(もっとも、設計又は製作の一連の過程に関わる各人の注意義務を検討し、各人の複合過失(過失の共同正犯)を問いうる余地はある))。
それでは、それを用いて運航する、MASS船長やROCの職員に過失を認めることはできるか。船舶安全法施行規則50条の2第2項は、船長又は船舶所有者に対し、「自動運航システムを有する船舶において、当該自動運航システムに欠陥が発見された場合は、速やかに管海官庁に対し、その旨を報告しなければならない」と定めている。同規則はあくまで行政法規であるものの、船長や船舶所有者の義務(立場)を解釈する上で大きな参考となる。欠陥が通信遮断を招き得るようなものであることを船長が気付いていたような場合には、船長には予見可能性及び結果回避義務が認められ、過失が認められる可能性が十分にある。もっとも、どの程度のものをもって、「欠陥」と評価するかは難しい問題となろう。なお、船舶所有者は、法人であるため、不可罰である。
また、ブラックアウトについては、既存船でも発生するものであるから、ブラックアウトに対する予見及び結果回避については、自動運航船においても当然肯定される。さらに、自動運航船において、電気系統の再稼働について、保守管理職員が乗船していない場合には、外部から行い得るようにすることや、ブラックアウト発生時に、自律的に復旧する追加的な補助電気系統など避航操船を行うのに最低限の針路・速力の保持、運転不自由船としての表示、錨泊などが必要となろう。これらの結果回避措置を欠いたまま運航を行い、ブラックアウトにより通信が遮断した場合には、MASS船長、船長(又は機関長)に過失が肯定されることは十分予想される。
(2)英国の場合
あくまで一般論ではあるが、英国において同様の事象が生じた場合、何らかの刑事罰が予定されているかについても、若干言及したい。
まず、英国においては、所有者(用船契約により貸与を受けている者や運航を管理している者を含む(MSA1995第100条4項))に過失が認められる場合、MSA 1995第100条に基づき刑事責任を負う可能性がある。この点は、ワークボートコードにより、通信のバックアップや安全状態への移行などが求められることにも裏付けられている(前記第1、(3)ウ参照)。
また、COLREG第27条に定める表示をしなかった場合は、The Merchant Shipping (Distress Signals and Prevention of Collisions) Regulations 1996第6条違反の罪が成立する可能性がある。加えて、当該表示が出来ず、運転不自由船に該当しない場合には、動力船同士の航法が適用されることから、避航措置が取れなかった場合には、航法違反によりCOLREG違反となる可能性も存在する。
このように英国においては、所有者や運航者の責任が明白であり、法人処罰が認められていることから、我が国に比べて可罰的な範囲は広く、事故防止に向けた抑止力[55]が一般論としては期待できるものとなっている。
なお、前記第1、2(6)で紹介した2024年自動運転車法(Automated Vehicles Act 2024)のような立法がMASSに適用されるようになった場合には、運航者の責任の立証は容易になるものと思われる。
2 通信遅延による衝突事故発生について
自動運航船BはECDIS(エクディス:電子海図)の表示が通信遅延により30秒遅れていた。MASS船長は、時折遅れることがあることを認識していたが、常時発生しているわけではなく、許容の範囲内と判断していた。ROCの職員により、遠隔操船で操船されていたが、当該職員は主にECDIS上の画面をもとに避航していたため、横切り船状態の避航判断が遅れ、避航船に該当するにも関わらず直進し、結果として保持船がB船に衝突し、死傷者が出た。当該職員のECDIS上の表示では、他船は、B船の艫を200メートルほどあけて無難に航過するものと表示されていた。このような場合、業務上過失致死傷罪(刑法211条)は成立し得るか。前記1同様過失に着目して検討する。
(1)MASS船長等運航に関わる職員の責任
本件のような事実を前提とすれば、衝突により死傷の結果が発生し得る点は、予見可能であるから、結果回避義務が肯定できる場合は、十分に存在し得る。ROC職員としては、見張り義務を遂行するにあたり、レーダー(カメラ、スピーカー)の情報[56]や他船からの注意喚起などがあれば、当然それらを踏まえた操船が求められることから、ECDISの遅延という情報を知らずとも、レーダー等を確認すれば衝突による死傷の結果を予見できた可能性は否定できない。したがって、事情にはよるものの、両者又はどちらか一方に対して、過失が肯定される可能性は十分に存在する。
なお、当該遅延が「欠陥」に該当し得る場合には、船舶安全法施行規則50条の2の義務から、船長の予見義務はより肯定しやすいものとなろう。
(2)プログラム設計者等
プログラムを製作する会社は、法人であるため、不可罰である。
このため、プログラムを設計又は製作する個人の罪責を検討することとなる。
通信の遅延は、一般的に生じ得る問題であるものの、その発生状況については、様々な条件によって規定され、さらに何秒程度の遅延が生じ得るかは、合理的に予見することは難しいものと思われる。もっとも、遅延が欠陥のレベルにまで及ぶような場合が設計や、製造テスト段階から、データにおいて示され、例えば、発生頻度が極めて低いといった事情のみにより、それに対する対策が何等なされなかったような場合には、予見可能性は肯定される場合は、否定されないように思われる。ただし、実際の立証のハードルは極めて高いものとなろう。
(3)船舶所有者等
船舶所有者、船舶の貸与を受けている者や管理会社は法人であるため、業務上過失致死傷罪の主体となり得ない。
それでは、当該法人に属する個人に対し、過失が認められることはあるか。
船舶安全法施行規則50条の2第2項では、船舶所有者に対する欠陥の報告義務を認めていることから、船舶所有者の担当者(責任と権限を有する者に限られるものと思われる)が船舶の操船に影響を与え得る程度の通信遅延を把握していたにも関わらず、何等対応をせずに放置していた場合には、予見可能性及び結果回避義務が肯定されることはあり得ると思われる。このことは、運航の管理会社の担当者においても、おそらく、同様であろう。
(4)英国の場合
前記1同様に、あくまで一般論ではあるが英国における責任を検討してみたい。
ア、船長等
通信遅延を認識しながら、船長が航行を続け、その点について過失が認められる場合には、一般論としては、MSA1995 第58条及び第98条の罪が成立し得る可能性がある。また、ROCの職員が通信遅延を認識し得たにも関わらず、漫然と航行し、事故が発生した場合には、同法58条が成立する可能性はあり得るようである。
そして、本件では、死亡の結果が発生していることから、重過失致死罪(Gross Negligence Manslaughter)の罪の成否が検討されることとなる。
イ、船舶所有者又は運航会社
通信遅延が制度的な失敗(例:通信冗長性への投資不足、警告を無視して航行を強行)に起因する場合、運航会社の取締役や所有者は、MSA1995第58条、第98条、または第100条の罪責を負う可能性は否定されない。さらに、本件では、死亡の結果が発生していることから、法人過失致死罪(Corporate Manslaughter)の成否が検討されることとなる。
ウ、プログラム設計者等
設計上の既知の欠陥や潜在的な不具合を開示せず、それが直接的に死亡事故を引き起こした場合には、重過失致死罪、法人過失致死罪の対象となる可能性はある。もっとも、ソフトウェア設計者や製作者に対する刑事責任(故意または重過失)の立証は、現行法では困難とされている。
エ、まとめ
英国では、所有者、運航者としての法人までもが処罰の対象となっている点に大きな違いがあるのは、前記1の事例と同様である。
第3 小括
本報告書においては、この間の非強制MASSコードの作成経過を確認するとともに、主に英国の法制度の概略を確認してきた。グローバル化と言えば、使い古された言葉であるが、船舶(特に外航船)については、規制する法規が条約となるため、すでに何十年も以前から、グローバル化していた。
他方で、その執行については(対象者の範囲も含めて)、今回の報告書において、英国と我が国とで、かなり大きな違いがあることが明らかとなった。
刑事司法は基本的には各国によってある程度異なるものの、仮に多くの国が採用している執行手段を我が国が有していないということになれば、先々には我が国にとって大きな不利益となる可能性も十分に存在し得る。
本報告書によって明らかとなった違いが、英国のみの特殊な現象であるのか、それとも、英米法系と呼ばれる法体系に起因するものであるのか、あるいは、ヨーロッパ諸国においてある程度一般化されているものであるのかは、今後の調査課題として残されている。
以上
[1] https://www.imo.org/en/mediacentre/meetingsummaries/pages/msc-98th-session.aspx
[2] https://www.imo.org/en/mediacentre/pressbriefings/pages/massrse2021.aspx
[3] https://www.imo.org/en/mediacentre/meetingsummaries/pages/msc-105th-session.aspx
[4] https://www.imo.org/en/mediacentre/meetingsummaries/pages/joint-msc-leg-fal-working-group-on-maritime-autonomous-surface-ships-%28mass%29-.aspx
[5] https://www.dnv.com/news/2023/imo-maritime-safety-committee-msc-107–244383/
[6] https://www.imo.org/en/mediacentre/meetingsummaries/pages/msc-108th-session.aspx
[7] https://www.imo.org/en/mediacentre/meetingsummaries/pages/msc-110th-session.aspx
[8] 同前
[9] https://www.linkedin.com/posts/lydia-ferrad-09b6b6173_the-4th-session-of-the-intersessional-working-activity-7382036375749033984-iGa8
[10] https://wwwcdn.imo.org/localresources/en/About/Events/Documents/2024%20IMO-ROK%20MASS%20Symposium%20presentations/3-1.%20Development%20of%20MASS%20Code%20-%20Charles%20McHardy(MASS%20CG%20Chair).pdf
[11] 英国と呼ぶ場合には、主として、イングランドとウェールズを指すものとするものの、スコットランドを含む場合がある(詳しくは個別の立法の適用対象を確認する必要がある)。
[12] https://www.legislation.gov.uk/uksi/1996/75/introduction/made
[13] https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5dfa3bcced915d54a89bd4ab/MSN1781_Amendment2_2016.pdf
[14] 我が国における、パブリック・コメント制度(行政手続法39条)に近いものと思われる。
[15] 4級海技士(航海)以下についても対応を示すことは可能であるが、本稿では紙片の都合上割愛する。
[16] The Merchant Shipping (Vessels in Commercial Use for Sport or Pleasure) Regulations 2025第4条がその対象からpleasure vesselsを除外し、24メートルで差異を設け、スポーツ又は娯楽のための商業利用もののうち、24メートル以上は、REGコードPart Aの要件が適用され、24メートル未満は、SCVコードの要件が適用されことによるものである。
[18] 具体的な要件は、MGN 280(M)に置いて定められているが、同MGN 280は、複数の旧コード(Blue Code, Yellow Code, Red Codeなど)と統合・置換する形で、Sport or Pleasure Vessel Code(https://www.gov.uk/government/consultations/consultation-on-the-merchant-shipping-vessels-in-commercial-use-for-sport-or-pleasure-regulations-2025/consultation-document-the-merchant-shipping-vessels-in-commercial-use-for-sport-or-pleasure-regulations-2025-and-accompanying-code-the-code-of-pra)へ集約されることとなっている。
[19] 具体的な要件は、The Workboat Code Edition 3, https://assets.publishing.service.gov.uk/media/6790d79bb1e4f5cbd3a34db5/Workboat_Code_Edition_3.pdfに記載されている。
[20] ただし、16.5メートル未満の漁船については操船資格が不要とされている。https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5a81568fe5274a2e8ab53727/MGN_411.pdf
[21] 前掲注19・The Workboat Code Edition 3
[22] https://www.gov.uk/government/publications/the-workboat-code-edition-3
[23] 産業界の自主基準として、Maritime Autonomous Surface Ships Industry Conduct Principles & Code of Practiceがあるが、同基準は法的拘束力を持たない。
[24] なお原文は、engineering personnel であり、engineering personnelの定義は、ANNEX2には記載されていない。
[25] https://assets.publishing.service.gov.uk/media/67654c6fcdb5e64b69e30912/MIN_698_Amendment_1.pdf
[26] https://www.lr.org/en/knowledge/press-room/press-listing/press-release/2025/uks-first-rouv-certified-under-workboat-code-3-as-lloyds-register-awards-compliance-to-acua-oceans-pioneer/
[27] https://maritime-executive.com/article/uk-s-first-remotely-operated-and-unmanned-vessel-certified-ahead-of-trials
[28] 同前
[29] https://www.gov.uk/government/publications/memorandum-of-understanding-between-mca-hse-and-maib/operational-working-agreement-between-mca-hse-and-maib
[30] https://www.gov.uk/government/publications/memorandum-of-understanding-between-mca-hse-and-maib/operational-working-agreement-between-mca-hse-and-maibのSupporting Principlesの項目参照。
[31] MSA1995第257条
[32] https://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-policy-statement/mca-enforcement-policy-statement
[33] 同前
[34] https://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-policy-statement/mca-enforcement-policy-statement
[35] https://hmcoastguard.org.uk/news/spotlight-regulatory-compliance-and-investigation-team
[36] https://hmcoastguard.org.uk/news/spotlight-regulatory-compliance-and-investigation-team
[37] https://hmcoastguard.org.uk/news/spotlight-regulatory-compliance-and-investigation-team
[38] https://findajob.dwp.gov.uk/details/16376564(2025年10月25日最終閲覧)
[39] https://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-policy-statement/mca-enforcement-policy-statement
[40] https://www.orr.gov.uk/sites/default/files/om/Work-related-Death-Protocol.pdf
[41] https://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-policy-statement/mca-enforcement-policy-statement
[42] 原文は、proportionateという言葉を用いていることから、比例原則との関係で、起訴に値するものかを踏まえたものと思われる。
[43] https://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-policy-statement/mca-enforcement-policy-statement
[44] 例えば、Prosecutions report 2024(https://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-unit-prosecutions-2024/prosecutions-report-2024)、Prosecutions report 2023(http://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-unit-prosecutions-2023/prosecutions-report-2023)
[45] https://www.gov.uk/government/publications/regulatory-compliance-investigations-team-prosecutions-2025/prosecutions-report-2025
[46] https://www.gov.uk/courts/print
[47] 前回の報告書においては、この点についてやや誤解を生むような表現となっていたため、本報告書において改めて記述するものである。
[48] 英国の裁判においては、英国量刑評議会のガイドラインが存在し、過失の重大性によって、量刑範囲が異なり、考慮要素などが細かく決められている。https://sentencingcouncil.org.uk/guidelines/gross-negligence-manslaughter
[49] 同事故の調査報告書は、以下のサイトからダウンロード可能である。https://assets.publishing.service.gov.uk/media/54c1704ce5274a15b6000025/FormalInvestigation_HeraldofFreeEnterprise-MSA1894.pdf
[50] 同項は、単にa fine とのみ規定している。もっとも、実際の罰金額は、量刑ガイドラインに従い定まることとなる。
[51] 我が国の刑事法では、罪刑法定主義の要請から、法人処罰の法律がない限り、法人を処罰することはできない。最高裁は、外為法違反の従業者の行為に関する法人の刑事責任について、「事業主が人である場合の両罰規定については、その代理人、使用人その他の従業者の違反行為に対し、事業主に右行為者らの選任、監督その他違反行為を防止するために必要な注意を尽さなかつた過失の存在を推定したもの」(最判昭和40年3月26日、刑集19巻2号83頁)と説明し、過失推定説に立っている。学説上、法人処罰の理論的根拠及びそれとの関連での処罰範囲については、非常に複雑な状況になっている。かつては、犯罪不能説(法人は肉体も精神も持たず、刑法は心理的要素を犯罪の成立要件としていることと矛盾する)が存在したものの、現在は、克服されている。法人処罰の根拠としては、概括的に示せば、同一視説(法人の代表者を法人と同一視する)、組織モデル(法人自らが注意義務違反による責任を負う)などがある。我が国における法人処罰については、板倉宏「企業犯罪の理論と現実」(有斐閣、1975年)川崎友巳「企業の刑事責任」(成文堂、2004年)樋口亮介「法人処罰と刑法理論」(増補新装版、東京大学出版会、2021年)が詳しい。
[52] https://www.gov.uk/government/news/ships-master-and-operator-sentenced-over-fatal-crash-at-sea
[53] https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1988/52/contents
[54] https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2024/10/contents
[55] 個人の場合、MSA第100条違反の罪の場合の罰金刑は、5000£が上限となっている(同条3項)ものの、法人の場合、一般的には上限はないとされている。
[56] ただし、レーダーやカメラ、スピーカーがECDISと異なる通信回路を有しているような場合に限定される。ECDISと同様の通信状況であり(通信遅延の場合に、バックアップによる通信に切り替わらなかった場合など)、これらも遅延していた場合には、当該職員において、どの程度遅延しているかの状況認識が困難である。
(author詳細)
三好登志行(弁護士、海事補佐人)きょうどう法律事務所(佐藤健宗法律事務所) | |
〇略歴 1999年 東京商船大学商船システム工学過程航海学コース入学(2001年中途退学) 2008年 神戸大学法科大学院卒業 2010年 弁護士登録。 2016年 海事補佐人登録 2025年 神戸大学大学院海事科学研究科博士後期課程 修了 〇主な取扱分野 船舶衝突事故(海難審判、刑事事件、民事事件) 〇これまでの主な論文 「海上衝突予防法5条の『見張り義務』の法的意義について:自動運航船を見据えて」三好登志行、藤本昌志、海事法研究会誌2019年5月号・2頁 ・「海上衝突予防法39条の「船員の常務」の法的解釈について―海難審判裁決取消請求判決から見た検討―」三好登志行、藤本昌志、海事交通研究第68, 87-98, 2019 “Study of Principles in COLREGs and Interpretations and Amendments COLREGs for Maritime Autonomous Surface Ships (MASS)”,Toshiyuki MIYOSHI, Shoji FUJIMOTO, Matthew ROOKS, Transaction of Navigation, 2021, vol 6,no1,pp11-18. DOI: https://doi.org/10.18949/jintransnavi.6.1_11 “Rules required for operating maritime autonomous surface ships from the viewpoint of seafarers”, Toshiyuki Miyoshi, Shoji Fujimoto, Matthew Rooks, Tsukasa Konishi and Rika Suzuki, The journal of navigation, pp. 1 – 16. DOI: https://doi.org/10.1017/S0373463321000928 Published online by Cambridge University Press: 10 February 2022 ・「船舶の自動運航(MASS)と刑事責任-専門性、新技術に対する観点から-」三好登志行、藤本昌志、海事法研究会誌2025年206号・2頁 〇これまでの主な研究会委員等 海上保安庁「自動運航船の運航にかかる勉強会」(2018年、2019年) 海上保安庁「自動運航船に対するCOLREG適用の在り方に関する検討委員会」 | |
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