欧州海上安全レポート
(author)
三好登志行(弁護士、海事補佐人)
きょうどう法律事務所(前佐藤健宗法律事務所)
令和7年度 無人運航船の法的責任に係る国際的な検討状況に関する調査業務報告書(2)
令和8年3月21日
第1 英国における各種の刑事手続き
1 海事犯罪に関する訴追権者
(1)CPS(Crown Prosecution Service)以外による訴追について
英国[1]においては、コモンロー上、私人による訴追が認められてきた[2]。
立法上も、Prosecution of Offences Act 1985第6条1項において、‟nothing in this Part shall preclude any person from instituting any criminal proceedings“とされており、「本編のいかなる規定も、いかなる者が刑事訴追を提起することを妨げるものではない」ことが明示されている。実務上も多くの私人訴追が行われている[3]。私人による訴追は、CPSによる訴追を補完する位置づけを持つものの、費用の高額化や個人での訴追は困難であることが指摘されている[4]。
この点は、検察官による起訴独占主義[5]を採用する日本との大きな違いである。
(2)MCAによる訴追
Merchant Shipping Act 1995[6](以下、「MSA1995」という)の違反及び同法違反に基づく犯罪については、Maritime and Coastguard Agency[7](以下、「MCA」という)が訴追権限を有する。これは、広くCPS以外によるコモンロー上の権利として認められていることや、Prosecution of Offences Act 1985第6条1項により明文で認められていることによる。英国では、原則として、CPS以外による刑事訴追が認められているため、我が国の刑事訴訟法247条に対置される条文は存在しない。
そして、MCAの訴追権限は、MSA1995第256条第1項[8]により国務大臣が船舶検査官に一定の事項について報告を求めることができるとしていること、同法によりMCAに付与されている法執行(enforcement)には、刑事訴追(proceeding)を含むと解釈されていること(同法第58条では、イングランドおよびウェールズにおいては、国務大臣または公益訴追局長(Director of Public Prosecutions)の同意によらない限りと訴追できないとされており、MCAに訴追権限が与えられていることが前提としている)など、法律上もMCAに訴追権限があることが当然のものとして解釈されている[9]。加えて、MCA enforcement policy statementによれば、「訴追は MCA が取り得る最も重大な執行措置である」[10]ことが明示されている。
2 起訴猶予
英国においても、わが国の起訴猶予[11]に類似した制度は存在する。
英国では、刑事訴追の前段階として、行政制裁(Administrative Sanctions)が位置づけられており、その種類も多岐に富む[12]。①検査およびフォローアップ(Inspection and Follow Up)、②禁止通知・改善通知(Prohibition / Improvement Notices)、③船舶の拘留(Detention)、④懸念通知(Notification of Concern (NOC))、⑤簡易警告(Simple Caution)、⑥資格証明書の保有適格性に関する審問(Inquiry into Fitness to hold a Certificate of Competency (CoC)がある。これらの対応の権限は、いずれもMSA1995に規定されたMCAの権限である[13]。
また起訴するか否かを判断する際、MCAにもCPSと同様、フルコードテスト(Full Code Test[14])を満たしているかどうかを検討する[15]。
MCA は、「有罪判決に至る現実的な見込み(realistic prospect of conviction)があること、そして 証拠が信頼性と信用性を備えていること に確信を持たなければならない。」とされている[16]。そして、以下のように、二段階で判断される。
①証拠段階(The evidential stage)
MCA は、各容疑者・各容疑事実について、有罪判決に至る現実的な見込みを与えるに足る十分な証拠が存在することに確信を持たなければならない。これは証拠の客観的評価に基づき、証拠の 許容性(admissibility)・信頼性(reliability)・信用性(credibility) を検討することを要する。また、MCA は、証拠の十分性に影響を与え得るその他の資料の有無についても考慮する。
②公益段階(The public interest stage)
有罪判決の現実的見込みを与える十分な証拠がある場合、MCA は 訴追が公益上必要かどうか を検討する。
判断にあたって、MCA は規範に定められた以下の事項を考慮する:
- 犯罪の重大性
- 容疑者の責任の程度
- 被害者の状況および被害の程度
- 犯罪当時の容疑者の年齢および成熟度
- 訴追が比例的な対応であるか
- 情報源の保護が必要かどうか
実務では、公益の観点から、MCAが起訴しないと判断することがしばしば存在するようである。そして、不起訴とする代わり、違反行為を行った当事者に対して、警告を行う。そして警告に従わない場合には、起訴に至ることがある。
3 刑の執行猶予
英国においても、執行猶予の制度が存在する。その根拠となるのは、Sentencing Act 2020[17]である。同法277条は、被告人に対し、14日以上2年以下の拘禁刑(imprisonment)を言い渡す場合に、執行猶予命令(suspended sentence order)を付すことができると定める(同条1項及び2項)。そして、同法286条1項は、執行猶予命令(suspended sentence order)の定義を定め、同法288条1項は、執行猶予命令には、運用期間(operational period) を明示しなければならないとし、その期間は、少なくとも6月以上2年以下の範囲内でなければならないとする。
そして、刑の執行猶予には、無償労働などが付加できるとされる[18]。
4 小括
以上のように、英国においては、わが国と異なり、検察官ではなく、捜査から訴追及びその進行までをMCAが行うこととされている。他方で、起訴猶予の制度は、行政上の制裁を含めるとわが国よりも幾分広いように思われる。
また、刑の執行猶予の制度は、わが国と同様であるものの、単なる執行猶予に加えて、無償労働などが付加され得ることが制度上明らかにされている。
第2 海難事故に関連する犯罪の成否
以下においては、前回の報告書で言及した衝突事故発生時に生じうる犯罪について、各構成要件や具体例を参照した後、自動運航船への適用の可否について言及する。
1 The Merchant Shipping (Distress Signals and Prevention of Collisions) Regulations 1996違反の罪について
The Merchant Shipping (Distress Signals and Prevention of Collisions) Regulations 1996(以下、「Regulation 1996」という)第6条は、以下の通り定めている。
(1)主体
①当該船舶の所有者、②船長、または、③その時点で船舶の運航に責任を有する者である。①には、法人が排除されていないことから法人を含む。③は、実質的な操船判断を行う者が含まれる。
(2)行為
Regulation 1996への違反である。具体的には、COLREGsへの違反が犯罪の対象となる。
(3)主観面
ア、 mens reaについて
英国では、主観面について、mens reaと呼ばれる主観的要素が求められてきた。ここでは、英国における主観的要素について、若干の説明を行う。
mens rea は心理的要素として説明され、かつては、“malice aforethought”として知られ、我が国においては、犯意などとして翻訳されることが多い。すなわち、意識的な計画や故意だけでなく、それほど意図的ではないものの非難可能な精神状態、たとえば軽率さ(recklessness)や過失(negligence)といったものも含まれる[19]。recklessnessは、結果に対する危険の認識を意味する。
mens rea の立証を必要としない犯罪 は絶対責任(absolute liability)と呼ばれる。また、犯罪行為(actus reus)の一部(ただし全部ではない)について mens rea の立証を要しない犯罪、あるいは検察が立証を終えた後に、被告側が犯罪意思の不存在を反証しなければならない犯罪は、厳格責任(strict liability)と呼ばれる[20]。
犯罪について、明示的にmens rea を要しないことを規定されなければ、mens rea の要件は法律に黙示的に読み込まれることになる[21]。
イ、 Regulation 1996違反の罪の主観的要素について
同法第6条2項は、「本規則に基づいて起訴された者は、当該違反の発生を防ぐために、あらゆる合理的な予防措置を講じていたことを示すことができれば、それを抗弁とすることができる。」としており、合理的な予防措置(reasonable precaution)の立証により、犯罪の成立が否定される。これは、英国においては、due diligence defence(相当な注意の抗弁)と呼ばれるものである。条文により、これが規定されていることなどから、本罪は、厳格責任と言われている[22]。
(4)刑罰
その刑罰は、起訴(indictment)により有罪となった場合には、2年を超えない拘禁刑及び罰金である(同条1項)。
また、略式手続(summary conviction)による有罪の場合には、COLREGs Rule 10(b)(i)の違反については、5万ポンドを超えない罰金とされ、その他のすべての場合には、法定最高額(statutory maximum)を超えない罰金とされている。なお英国においては、Legal Aid, Sentencing and Punishment of Offenders Act 2012により、罰金刑の上限が撤廃され、無制限に罰金刑を科することが可能である(同法85条)。
(5)具体例
例えば、以下の例が報告されている[23]。
【裁判所】フォークストン治安判事裁判所(Folkestone Magistrates’ Court)
【審理日】2011年2月15日
【違反日】2009年3月22日
【罪名】COLREGs第10条(d)違反
【事案】2009年3月22日、ベルギーのトロール漁船 De Zwerverがミルフォード・ヘイブンからベルギーへ向けて航行中、ドーバー海峡航行情報サービス(CNIS)によって、ブライトン沖のイングランド沿岸側インショア・トラフィックゾーンを航行しているところを探知されたが、その後も、ドーバー CNIS により同船のインショア・トラフィックゾーン内での航行状況が継続的に監視され、De Zwerver はドーバー港沖に至ってもなおインショア・トラフィックゾーンを航行しており、その際、同船はカーフェリーとのニアミス(衝突寸前の事案)を起こした。フェリーは De Zwerver を避けるために操船措置を取らざるを得ず、フェリーの船長はこの事案をドーバー CNIS に通報した。その後も De Zwerver はインショア・トラフィックゾーン内の航行を続けた。航行中、同船に対して無線で呼びかけが行われたが、応答はなかった。事件後、船主およびスキッパーに連絡を取る試みが行われたが、これにも応答はなかった。
【罪責】スキッパー(本件では、De Zwerverの船長)には罰金400ポンド、費用600ポンド、税金15ポンド が科され、会社には 罰金1,500ポンド、費用3,733ポンド、税金15ポンド が科された。
このように、個人のみならず、法人(船舶所有者)も犯罪の主体となっている。操船しているのは、スキッパーであることから、COLREGs10条違反は、本来スキッパーのみに追及されるように思われる。しかしながら、英国では、船舶の安全管理や運航方針などは会社の責任とされ、そのため、船長の違反は、会社の管理体制の不備の結果であると推定されやすく、航路選択、航行方針、安全管理システムについては、会社の責任範囲とされることが多いようである[24]。
2 Merchant Shipping Act 1995, section 58違反の罪
Merchant Shipping Act 1995(以下、「MSA1995」という)は、58条において、船員等による犯罪の見出しのもと、船舶、構造物または個人を危険にさらす行為を犯罪として規定している。ここでは、特に衝突事故に関連するもののみを取り上げる。
(1)主体
英国籍船の船長またはその船に雇用されている船員などである(同条1項)。
(2)行為及び結果
同条2項は、複数の行為を列挙しているが、衝突事故との関係では、①自船上またはその直近の場所において、人の死亡または重傷を生じる行為をしたとき、または、②-1自船に乗船している者の死亡または重傷、②-2自船が他の船舶または構造物に喪失・破壊・重大損傷を与えること、または乗船していない者の死亡または重傷を引き起こすことについて、防止するために必要な行為を怠ったときが要件として挙げられている。①は作為を②は不作為を規定している。
イ、職務違反又はその不遂行(discharges any of his duties、fails to discharge any of his duties)など
自らの職務または船舶の運航・機関・装置に関するその他の機能を遂行するにあたり、同条(2)(a)に掲げる喪失・破壊・死亡・負傷を生じ、または生じさせるおそれのある方法で行った場合(同条4項(a))、又は、その職務または機能を適切に遂行しなかったことにより、同様の結果を生じ、または生じさせるおそれがある場合(同項(b))も犯罪となる行為として挙げられている。
アとの違いは、おそらく、アが直接行為を行い又は行わなかった場合を指し、イは、職務上の義務に付随して結果が生じた場合又は職務上の義務を履行しない結果生じた場合を指すものと思われる。
(3)主観面など
上記(2)アについては、その行為または不作為が故意(deliberate)であったか、または職務の違反(breach)もしくは懈怠(neglect)に当たること(同条3項(a))が条件として規定されている[27]。上記(2)イについては、これらの要件は求められていない。
これは、前記1(3)アで述べたmens reaとの関係での要件である。
もっとも、Regulation 6(2)と同様、行為または不作為が職務違反または怠慢に当たるとされる場合、被告人がその職務を果たすために合理的なあらゆる措置(all reasonable steps)を講じたことが立証された場合には、犯罪は成立しない。我が国の過失犯における結果回避行為を行ったか否かに近いものと思われる(その意味で、主観面の問題ではないが、条文との関連でここに記述している)。
(4)刑罰
略式裁判の場合は、法定最高額を超えない罰金(同条5項(a))であり、起訴手続による裁判の場合:2年以下の懲役、または罰金、またはその併科である(同項(b))。
(5)具体例
例えば、航海当直者がブリッジ後方で荷役に関する書類を読んでおり、前方で操業中の漁船と衝突し死亡事故が発生したような場合、見張り義務を懈怠しており、58条に規定されている職務を適切に遂行していないことに該当し得るように思われる。もっとも、死亡という結果が発生しているため、次に述べるGross Negligence Manslaughter(以下、「GNM」又は「重過失致死罪」という)にも該当し得るように思われる。いずれの罪が成立するかは、gross negligence(重過失)の有無がメルクマールとなる。
3 Gross Negligence Manslaughterの罪
重過失致死罪は、成文法ではなく、判例法に基づく犯罪である。R v Adomako [1995] 1 AC 171によれば、(a)被告人が死亡した者に対して注意義務を負っていたこと(b)被告人が過失ある作為または不作為によって、その注意義務に違反したこと、(c)その過失ある作為または不作為が死亡の原因となったこと、(d)死亡の原因となったその過失が、重大な過失(gross negligence)に当たり、したがって犯罪となること、が要件として求められる[28]。
(1)主体
行為主体に法人は含まれず、自然人に限定される。なお、法人の過失致死については、次に述べる法人過失致死罪(Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007の罪)の成否が問題となる。
(2)行為及び結果など
被害者に対する注意義務を負っていたこと、過失のある作為又は不作為によって違反したこと、死亡の発生が必要とされる(上記(a)、(b))。傷害は、適用対象外である。
この注意義務違反は、重大かつ明白な死亡の危険を生じさせることが合理的に予見可能であったことが求められる。
また、注意義務違反は、重大(すなわち犯罪的)であるほど悪質でなければならない。この点は、Adomako [1994] 3 All ER 79 において次のように定義された。死亡の危険に照らして、被告人の行為は、すべての状況において、犯罪的行為または不作為に当たるほど悪質であったか。検察は次の二つの要素を立証しなければならない:①被告人の立場にある合理的に慎重な人物であれば、被告人の行為または不作為から「重大かつ明白な死亡の危険」が生じることを予見したであろうという事情が存在したこと、及び②注意義務違反が、すべての状況において、被告人の資格・経験・責任を持つ者に期待される基準から著しく逸脱し、非難に値し、犯罪に当たるほどであったことである[29]。
(3)因果関係
作為又は不作為が死亡の原因となることが必要である(上記(c))。
(4)主観面
死亡の原因となったその過失が、重大な過失(gross negligence)に該当することが求められる[30]。有罪の現実的見込みがあるかどうかを判断するにあたり、検察官は、裁判所がこの犯罪に必要な過失の程度をどのように判断してきたかも考慮する必要がある[31]。
(5)刑罰
重過失致死罪は、コモンロー上の犯罪であり、最高刑は終身刑である。量刑の範囲は、前回の報告書で報告したとおりであり、過失の程度(A〜D)によって量刑が大きく変動し、出発点は2〜12年の範囲、最終的な範囲は1〜18年が基準とされている(無期懲役の可能性も制度上は存在することが明示されている)[32]。
(6)具体例
船舶の衝突事故について、重過失致死罪が成立することは稀なようであるが、次の事案が存在する。
【事案】2025年3月10日に、英国沖北海で発生した航行中のコンテナ船Solong号(ポルトガル船籍)と、錨泊中のタンカー Stena Immaculate号(アメリカ船籍)との衝突事故について、コンテナ船Solong号の乗員Mark Pernia が死亡した事案である[33]。被告人は、Solong号船長のMotin(ロシア国籍)である。
【構成要件に該当する事実】検察官は、有罪判決を得るために以下の要素を主張・立証する必要があったとされている。
①被告が Mark Pernia に対して注意義務を負っていたこと。
②衝突を防ぐために何も行わなかったことで、その義務に違反したこと。
衝突を止める機会は十分にあったが、彼はそれをしなかった。
③義務違反の時点で、死亡の重大かつ明白な危険が存在していたこと。
④義務違反が死亡を引き起こした、または重大に寄与したこと。
検察は、これが Pernia の死の原因であると明確に主張した。
⑤過失が「真に、例外的に悪質」であること。
明瞭な視界、作動していたレーダー警報、複数の警告にもかかわらず、Motinは進路変更・減速・警報発令のいずれも行わなかった。
また、検察官は、Motin が船の航行を単独で担当していたこと、レーダーや追跡データを無視し、Stena Immaculate号 を回避せず、停止せず、乗組員や相手船に警告を発しなかったことを示した。
陪審には、Solong号 が錨泊中の Stena Immaculate号 に向けて 30分以上 直進していたこと、衝突12分前には肉眼でも確認可能だったことが示された。行動しなかった理由として合理的な説明は存在しなかった。ブラックボックスのデータは、衝突前に進路変更も速度調整も行われていなかったことを示した。装置は正常に作動しており、Motin の「舵故障」主張は完全に根拠がなかった。さらに、Motin はブリッジの見張り警報装置(BNWAS)を無効化 しており、通常の安全手順に反して単独で当直に就いていた[34]。
また、量刑に関しては、裁判所から、Sentencing Remarksが出されている[35]。そこでは、ガイドライン[36]が、責任性(culpability)を4つのカテゴリーに分類(非常に高い、高い、中程度、低い責任性)されていること、その判断に際して、2025年3月10日の被告人の当直中に、実際に何が起きていたのかが問題となり、①被告人が適切な見張りを怠り、目前に迫る大惨事に、衝突直前まで気づかなかったのか、それとも、②基本的な見張り義務にはある程度注意を払っていたが、安全に航行する能力を欠き、さらに Solong号 の乗組員や Stena Immaculate号 の乗員の生命を顧みず、16ノットの全速前進のままタンカーに突っ込む前にいかなる警報も発しなかったのか、そして、この点については、被告人は衝突の危険を認識することに重大に失敗し、そのため衝突を回避するための行動を一切取らなかった、と判断している。そして、この事件は 「非常に高い死亡リスクを明白に無視した」というレベルにはわずかに届かないものの、その差は大きくはないとしている。結論として、この犯罪は、ガイドライン上「中程度の責任性」に分類するとした(ただし、減軽要素を考慮する前で、この事件は中程度の責任性カテゴリーの“上限”に位置する、とされている)。
そして、減軽事情[37]を踏まえて、懲役6年、未決勾留日数として11か月が算入され、刑期の4分の3が終了した時点で仮釈放が可能であることが示された。
(7)MSA1995第58条違反の罪とGNMの区別について
第58条違反に罪は、人の死亡のみならず負傷を含むものである。他方で、GNMは、死亡のみに限定される。
行為については、いずれも作為不作為を含むものである。第58条違反の罪については、職務の懈怠が対象とされ、GNMは、被害者に対する注意義務を負っていることが要求されることから実質的には重なるものと思われる。
他方で、GNMは、注意義務への違反は、重大かつ明白な死亡の危険を生じさせることが合理的に予見可能であったことが求められる。さらには、注意義務違反は、重大(すなわち犯罪的)であるほど悪質でなければならないとされている。
GNMは、人身に対する犯罪という側面であるのに対し、第58条違反の罪は死傷結果が不要とされている他の行為類型と列挙して規定されていることから、規則違反ないしは危険を生じさせたことへの処罰という側面があると考えられる。
4 Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007の罪
前回の報告書で記載したとおり、Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007[38]は、企業の過失致死を処罰する新しい立法である。
(1)主体
刑罰が科される主体は、(a) 法人、(b) 附表1に掲げる省庁その他の機関、(c) 警察、(d) 使用者であるパートナーシップ、労働組合または使用者団体とされている(同法1条2項)。
そして、行為を行う主体は、上記組織の上級管理者(senior management)となる(同条3項)。
上級管理者(senior management)とは、組織の活動全体またはその重要部分について、(i) 管理または運営方法に関する意思決定に重要な役割を果たす者、または、(ii) 実際にその活動全体または重要部分を管理または運営している者をいう(同条4項(c))。これには、直接の管理系統(ライン管理)に属する者、だけでなく、戦略的役割や規制遵守(コンプライアンス)に関わる役割を担う者も含まれるとされている[39]。
(2)行為及び結果
結果については、組織の活動の管理または運営の方法が人の死亡を引き起こす必要がある(同条1項)。
行為は、次の通り整理できる。
組織の活動の管理または運営の方法が、当該組織が被害者に対して負っていた関連する注意義務の重大な違反に該当する場合である必要がある(同条1項)。
関連する注意義務(relevant duty of care)の具体的に内容は、同法第2条および第3条から第7条において合わせて定められている(同条4項(a))。
組織による注意義務違反が重大(gross)であるとは、その違反行為が、当該状況において組織に合理的に期待される水準から著しく逸脱している場合をいう(同項(b))
(3)主観面
主観面の要件は問われていないように思われる。あくまで、上級管理者に関連する注意義務の違反が重大であったか否かを検討しているように思われる。
(4)刑罰
企業過失致死罪を犯した組織は、起訴手続(indictment)により有罪となった場合、罰金刑に処される(同条6項)。罰金刑に上限はなく、無制限である。
5 小括
以上に整理してきたとおり、英国では、船舶衝突事故に起因する刑事責任が生じ得る場面が多い。主体も、Regulation 1996違反の罪では、船舶所有者も含まれ、法人にまで処罰範囲が拡大されている。また、罰金刑も英国では制限がかかっていない場合が少なくなく、高額化している(加えて、刑事訴訟に関する費用も高額であり、付加刑として追加している)。重過失致死罪(GNM)は、その範囲から傷害が除かれており、その意味では成立範囲が狭い。加えて、重大性などの要件が狭い範囲に限定されており、我が国の業務上過失傷害罪よりも成立範囲は狭くなっているように思われる。もっとも、いったん同罪が成立する場合には、法定刑の上限は無期の拘禁刑となっており、重いものとなっている。
第3 英国における自動運航船と刑事責任
1 自動運航船の運航に際して生じ得る事象
従来、操船は、ブリッジにおいて行われていた。
しかし、自動運航船の運航により、操船は、Remote Control Center(以下、「ROC」という)が行ったり、あるいは、船舶自らが自律的に行うこととなる。
これらに付随して、本船においては、ブリッジは一時的に無人になるか、もしくはブリッジ後方において他の作業に従事し、又は休憩等を行なうことができるようになる。
他方で、生じ得る問題としては、①通信の遅延による操船への影響、②主電源等の喪失による操船不能、③システムのシャットダウンによる操船不能、④遠隔操船についての未習熟、⑤フォールバックへの不対応、⑥システムの欠陥などがあり得る。これらの問題は、遠隔操船又は自動運航がない時代には想定されていなかった問題である。
以下では、紙片の都合上、①、④、⑥の事情が発生し、人が死傷した場合の刑事責任の有無をROCのオペレーターを中心に英国法に基づき検討を行う。
2 ①通信の遅延による操船への影響の結果人が死傷した場合
(1)通信の遅延が何らかの違法となるか
ROCと本船との通信の遅延そのものは、直ちに何らかの違法を導くものではない。しかしながら、通信の遅延であっても、それが操船影響し、運転不自由船(COLREGs Rule3 (f))に該当するにもかかわらず、運転不自由船としての法定灯火を表示していない場合には、COLREGs Rule 27への違反が問題となり得る。
(2)Rule 27 (a)違反の場合に成立しうる犯罪
ア、Regulation 1996違反の罪
英国では、前記第2、1で検討したように、COLREGs違反は、Regulaiton6への違反を構成しうる。本船が遠隔操船により、ROCからの指揮監督のもと操船されているような場合、本船を指揮監督しているROCの職員は、同条の“the master and any person for the time being responsible for the conduct of the vessel”のいずれかに該当しうるものと思われる。なぜなら、Regulation 1996の根拠法であるMSA1995第313条1項において、船長(master)とは、船長または船舶の指揮または管理を行うすべての者(パイロットを除く)を含み、漁船に関してはスキッパーを意味する、と定義づけられており、ROCのオペレーターもmasterに該当する可能性があるからである。もっとも、合理的予防措置(reasonable precaution)の抗弁(Regulation 1996第6条第2項)の主張は認められるため、通信遅延について十分な担保が行われており、それをもってしてもなお、通信遅延が生じたような場合には、犯罪は成立しないこととなる。他方で、通信遅延の可能性が予見できたにも関わらず、十分な対策を取らなかった場合には、同抗弁が成立しない可能性がある。
イ、MSA1995第58条違反の罪
MAS1995第58条違反を検討するに際して、ROC のオペレーターが同条1項の英国籍船の船長またはその船に雇用されている船員に該当するか否かが問題となる。この点については、上記(ア)で検討したとおり、船長の概念は、同法313条で定義づけられており、ROCのオペレーターを含みうる概念である。さらに、船員の定義からも、含まれる可能性があるように思われる。
そして、法定灯火の表示は、操船を指揮監督しているROCのオペレーターの義務であることから、灯火の表示がない場合には、職務上の義務違反(同条4項)を構成する。
ウ、GNMの罪
本罪の成立には、前記第2、3で検討したように、注意義務違反が、重大かつ明白な死亡の危険を生じさせることが合理的に予見可能であったことが求められる。
また、注意義務違反は、重大(すなわち犯罪的)であるほど悪質でなければならない。具体的には、①被告人の立場にある合理的に慎重な人物であれば、被告人の行為または不作為から「重大かつ明白な死亡の危険」が生じることを予見したであろうという事情が存在したこと、及び②注意義務違反が、すべての状況において、被告人の資格・経験・責任を持つ者に期待される基準から著しく逸脱し、非難に値し、犯罪に当たるほどであったことの要件を満たす必要がある。
したがって、単に通信が遅延する可能性があったという程度ではこれらの要件を満たさないものと思われる。なお、GNMの罪は、死亡の結果が発生した場合にのみ成立し得るため、人に生じた結果が傷害の場合は、不可罰である。
エ、Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007の罪
本罪の成立には、ROCのオペレーターあるいは通信の健全性ないし冗長性を担保する立場にある者が、上級管理者に該当し、組織の活動の管理または運営の方法が、当該組織が被害者に対して負っていた関連する注意義務の重大な違反に該当する場合には、本罪は成立しうる可能性がある。もっとも、上級管理者とは、組織の活動全体またはその重要部分について、(i) 管理または運営方法に関する意思決定に重要な役割を果たす者、または、(ii) 実際にその活動全体または重要部分を管理または運営している者をいう(同条4項(c))ため、単にその場において、ROCのオペレーターが操船を指揮監督しているというだけでは不十分である。
3 ④遠隔操船についての未習熟
(1)遠隔操船の未習熟が何らかの犯罪となるか
英国では、ROCのオペレーターは、適切な資格と訓練を受けていることが求められる(The Workboat Code Edition 3、Annex 2 Remotely Operated Unmanned Vessels、Section 7.2.5)。その詳細は、MGN703[40]の7. Annex A – Training in remote operationsに記載されている。
他方で、習熟といった言葉は、同7の12.1 Coordinate Remote Operator familiarisationとして登場する。
未習熟そのものは直ちに犯罪を構成しないものと思われるが、未習熟がCOLREGsの不履行につながる場合には、Regulation 1996第6条違反の罪を構成することとなり得る。また、MSA1995第58条についても、職務上求められる義務の不履行と評価される場合には、死傷の結果が生じた場合には、同条違反が成立する余地はあると思われる。他方で、Corporative Manslaughter and Corporative Homicide Act 2007の罪は、組織による注意義務違反が重大(gross)であるとは、その違反行為が、当該状況において組織に合理的に期待される水準から著しく逸脱している場合をいうとされていることから、MGNにおいて要求されているトレーニングを実施していれば同条違反にはなりづらいのではないかと思われる。また、GNMは、注意義務違反は、重大(すなわち犯罪的)であるほど悪質である必要があり、①被告人の立場にある合理的に慎重な人物であれば、被告人の行為または不作為から「重大かつ明白な死亡の危険」が生じることを予見したであろうという事情が存在したこと、及び②注意義務違反が、すべての状況において、被告人の資格・経験・責任を持つ者に期待される基準から著しく逸脱し、非難に値し、犯罪に当たるほどであったことの要件を満たす必要があるとされている。ROCのオペレーターにどこまでの水準が求められるかが問題となるが、COLREGsについては通常の船員と同様の避航操船が求められるのであれば、成立することは稀であると思われるが本罪が成立する場合が一切ないとは言えないのではないかと思われる。
4 ⑥システムの欠陥
ソフトウェアの開発者は、直接、船舶の操船を指揮したり管理したりする者ではないため、Regulation 1996第6条1項の“any person for the time being responsible for the conduct of the vessel”には該当しない可能性が高い。また、MSA1995第58条1項の「英国籍船に雇用されているすべての船員」には該当しないため、同条の成立は難しいように思われる。さらに、GNMの成立についても、プログラム設計の時点において、①ソフトウェア開発者の立場にある合理的に慎重な人物であれば、自らの行為または不作為から「重大かつ明白な死亡の危険」が生じることを予見したであろうという事情が存在したこと、及び②注意義務違反が、すべての状況において、ソフトウェア開発者の資格・経験・責任を持つ者に期待される基準から著しく逸脱し、非難に値し、犯罪に当たるほどであったことが求められるが、ソフトウェア開発者としては、COLREGsやその他関係法規を遵守するようにソフトウェアを設計するであろうから、通常、GNMは成立しないものとなると思われる。もっとも、特定のシチュエーションにおいて、衝突のおそれや、他船の緊急の避航措置により避航が行われたこと、実際事故が自動運航により発生したことなどが報告されていたにも関わらず、ソフトウェアの修正などを行わなかったような場合には、その時点をとらえて、GNMの成立は認められるケースはあり得るように思われる。
第4 我が国との比較について
以上のとおり、今回の報告においては、前回よりもさらに個別、具体的な法的根拠、及び事実を踏まえた報告を行うことができた。
1 手続面について
我が国の公訴提起は、検察官が独占していることと比較すると、英国では、むしろ独占は全くされておらず、私人による起訴が広く認められていることが我が国との大きな違いであろう(起訴が広く一般人にも認められるべきか、それとも、一定の機関に独占されるべきか否かは、その国の文化・歴史的経緯などもあり、一律にどちらが優れているとは決めがたいものである[41])。
起訴猶予についても、一定の範囲の事件については、不起訴とされる道が残されており、刑罰を科すことなく、一般予防の効果を期待するという点は日本と同様である。
また、起訴を行う場合には、Regulation 1996やMSA1995違反の罪については、MCAが自ら訴追を行うものとされている点は、日本の検察官起訴独占主義との大きな違いである。日英、いずれの制度が優れているか否かについては、即断できないものと思われる。もっとも、英国では、捜査を行った機関がそのまま訴追を行い、訴訟が終わるまで担当することから、自らが法執行権を持つ範囲の法律についてMCAが関与できるのは、専門性を発揮しやすい土壌があるといえよう。他方で、訴追(判断)における一般的なルールを適切に履行するため、その点を補完するという必要性から、MCAの内部に前回の報告書で指摘したRCITが存在するものと思われる。この点からみると、日本においても、起訴不起訴の判断を行う場合には、刑法の過失について一定の理解のベースがある航法解釈の専門家に対し、積極的に意見を求めることも有用であるかもしれない。
なお、本報告書で触れることはしなかったが、MAIBの報告のうち、客観的な部分は、刑事訴訟に流用が可能であるが、過失の評価に重なる部分は、流用ができないこととされているようである。
他方で、GNMによる起訴は、Crown Prosecution Service(以下、「CPS」という)が行うこととされており、この点はわが国の制度と同様である。
2 実体的側面
実体法の分野においては、英国では、COLREGs違反の罪について、船舶所有者に対する処罰を可能としている点は、重要である。我が国では、ともすると個人の過失責任に目が行きがちであるが、そもそも、個人といえども、会社ないし船舶の運航組織の一員としてしか、操船しておらず、安全に運航できるか否かの比較的多くの側面は、会社によるトレーニングや組織的対応による部分が大きいものと思われる。そういった問題を個人(船員)の客観的行為義務からの逸脱という意味での不注意に帰責するのは、好ましい態度ではないのかもしれない。
我が国において、(業務上)過失往来危険罪(刑法129条)は、法人に対しては不可罰である。我が国においても、法人処罰は、船舶安全法などにおいて、いくつか定めはあるが、いずれの罰金額も低額に抑えられており、また、衝突事故発生やその予防とは直接関係しないものである(船舶安全法施行規則第69条などにも規定はあるが、あくまで代位責任に則ったものと思われる)。
英国においては、前回の報告書でも指摘したように、ヘラルド・オブ・フリーエンタープライズ号事件を契機に法人過失致死罪が20数年かけて立法化された。その後の事故において適用された事例はすぐには見つかっていないが、他の分野では実際に同法が適用された事例は存在する。上級管理者の要件のハードルは高いものの、罰金の高額化と相まって、一定の犯罪の一般予防的効果(本稿との関係でいえば、衝突事故予防)は生じているのではないかと思われる。
我が国においても、罰金による一般予防の実質化、すなわち、予防的効果を生じる程度の罰金刑の引き上げはあってしかるべきものと思われる。
3 自動運航船について
我が国の場合、ROCのオペレーターの刑事責任については、衝突事故発生の場合、業務上過失往来危険罪は、過失の概念がいわゆる開かれた構成要件であることから、予見義務・結果回避義務が具体的に認められれば、犯罪の成否について特に制約はない。むしろ、ROCのオペレーターは、その操船をブリッジで行うか、それとも、ROCで行うか否かの違いにとどまるということになれば、課される義務について、大きな違いはないであろう。英国においても、Regulation 1996は、主体を限定しているものの、masterにROCのオペレーターを含むという解釈が可能なようである。また、MSA1995第58条違反の罪についても、雇用されている範囲に含む解釈が可能とのことである。
英国においては、ソフトウェアの不具合による開発者の責任追及は、通常難しいそうに思われる。この点は、日本でも同様で、ソフトウェア開発者の責任追及には、衝突事故発生の具体的な予見が必要とされることから、過失が認められるには一定のハードルがある。他方で、ソフトウェアの「不具合」により、事故が発生した後は、不具合の改善が求められることになろう(もっとも、そのような不具合の原因の特定やその修繕には一定の難しさが生じるものと思われ、ソフトウェア開発者としては、プログラムの不具合の改善を前提としたシステム設計が求められる)。
以上
[1] 以下、特に断りのない限り、イングランド及びウェールズをいう。
[2] 「個人が私人訴追を提起する権利は、しばしば「当局の不作為に対する防波堤」としての、重要で歴史的な憲法上の権利として擁護されてきた」とも表現されている(10頁、”House of Commons Justice Committee Private prosecutions: safeguards, Ninth Report of Session 2019–21”, https://committees.parliament.uk/publications/2823/documents/27637/default/
[3] 英国における私人訴追の現状については、“2 The state of private prosecutions”, https://publications.parliament.uk/pa/cm5801/cmselect/cmjust/497/49705.htm#footnote-131
[4] 前掲注2
[5] 日本では、刑事訴訟法247条により、「公訴は、検察官がこれを行う。」とされ、すべての起訴を検察官が行う。
[6] https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1995/21/contents
[7] https://www.gov.uk/government/organisations/maritime-and-coastguard-agency
[8] https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1995/21/section/256
[9] 前回の報告書ではこれらの点が明らかではなかったが、今回の調査により明らかとなったものである。
[10] https://www.gov.uk/government/publications/mca-enforcement-policy-statement/mca-enforcement-policy-statement
[11] わが国においては、起訴便宜主義(刑事訴訟法248条、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。」)が採用されている。このため、起訴不起訴について検察官が広い裁量を有する。実際、検察庁での終局処分のうち、56.1%が起訴猶予となっている(https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/71/nfm/n71_2_2_2_4_0.html)。
[12] 前掲注10
[13] もっとも、簡易警告については、MSA1995上の権限であるのか否か今回の調査では明らかにならなかった。なお、簡易警告については、“Simple Cautions for Adult Offenders”(https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5afeacfc40f0b6561ce44093/cautions-guidance-2015.pdf)が存在し、起訴権限を有する機関が簡易警告を出すことができると述べられている。
[14] https://www.cps.gov.uk/publication/code-crown-prosecutors#section4
[15] 前掲注10
[16] 前掲注10
[17] https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2020/17/contents
[18] https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2020/17/schedule/16
[19] https://www.iclr.co.uk/knowledge/glossary/mens-rea-and-actus-reus/
[20] 同前
[21] Sweet v Parsley [1970] AC 132において、上訴院(House of Lords)特段の理由がない限り、mens rea はすべての犯罪の本質的構成要件であり、議会が絶対責任犯罪(absolute offence)を意図したと認められない限り、裁判所はそのように解釈すべきではない、と判示した。
[22] 日本法では、厳格責任は、主として民事責任の分野でもちられるものである。
[23] https://assets.publishing.service.gov.uk/media/5a7edde4ed915d74e6226f66/mca_prosecutions_2011.pdf
[24] 本件では、会社の安全管理システムに問題があったものと認定されたものと思われる。このことは会社の方の罰金が高額となっていることにも表れている。
[25] 原文では、“does any act”とされおり、4項との違いを明確化するため作為と訳出した。
[26] 原文では、“omits to do anything required”とされており、4項との違いを明確化するため不作為と訳出した。
[27] 同項(b)は、「当該船長または船員が、その行為または不作為の時点で酒類または薬物の影響下にあった」場合には、故意または懈怠は不要とされている。
[28] https://www.cps.gov.uk/prosecution-guidance/gross-negligence-manslaughter
[29] 同前
[30] 主観面として、一応ここに分類したものの、GNMにおいては、mens rea が要件として求められていないことから、重大な過失は、客観的な行為義務違反に近いものと思われる。
[31] 前掲注29
[32] https://sentencingcouncil.org.uk/guidelines/gross-negligence-manslaughter
[33] https://www.cps.gov.uk/cps/news/north-sea-boat-crash-captain-convicted-over-exceptionally-bad-negligence-leading-death
[34] 以上につき、同前・https://www.cps.gov.uk/cps/news/north-sea-boat-crash-captain-convicted-over-exceptionally-bad-negligence-leading-death
[35] https://www.judiciary.uk/wp-content/uploads/2026/02/Motin-Feb-2026-Sentencing-Remarks.pdf
[36] 前記(5)で言及したガイドラインである。
[37] 減軽事情として、一方で、①審理のために裁判官宛に書いた手紙の中で、一定の真摯な反省が示されていること、②その手紙の中で、被告人が今後は海に戻らないことを確認していること、③被告人がロシア国籍であり、この国に滞在する理由は刑に服するためだけであることから、拘禁生活は通常よりも孤立したものになる可能性があることなどが考慮されている。③の外国人であることが減軽の事情とされていることはわが国の量刑事情と比較してもとても興味深いものである。
[38] https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2007/19/contents
[39] https://publications.parliament.uk/pa/ld200607/ldbills/019/en/07019x–.htm
[40] https://www.gov.uk/government/publications/mgn-703-information-concerning-the-training-and-competence-of-remote-operators-working-with-remotely-operated-unmanned-vessels-rouvs-certified-und/mgn-703-information-concerning-the-training-and-competence-of-remote-operators-working-with-remotely-operated-unmanned-vessels-rouvs-certified-und#annex-a–training-in-remote-operations
[41] もっとも、日本と異なり、検察審査会を経ずして起訴を提起できる機会が私人に残されていることは、起訴の恣意性、不公平を解消するうえでは有用な制度設計の1つであろう。
(author詳細)
三好登志行(弁護士、海事補佐人)きょうどう法律事務所(佐藤健宗法律事務所) | |
〇略歴 1999年 東京商船大学商船システム工学過程航海学コース入学(2001年中途退学) 2008年 神戸大学法科大学院卒業 2010年 弁護士登録。 2016年 海事補佐人登録 2025年 神戸大学大学院海事科学研究科博士後期課程 修了 〇主な取扱分野 船舶衝突事故(海難審判、刑事事件、民事事件) 〇これまでの主な論文 「海上衝突予防法5条の『見張り義務』の法的意義について:自動運航船を見据えて」三好登志行、藤本昌志、海事法研究会誌2019年5月号・2頁 ・「海上衝突予防法39条の「船員の常務」の法的解釈について―海難審判裁決取消請求判決から見た検討―」三好登志行、藤本昌志、海事交通研究第68, 87-98, 2019 “Study of Principles in COLREGs and Interpretations and Amendments COLREGs for Maritime Autonomous Surface Ships (MASS)”,Toshiyuki MIYOSHI, Shoji FUJIMOTO, Matthew ROOKS, Transaction of Navigation, 2021, vol 6,no1,pp11-18. DOI: https://doi.org/10.18949/jintransnavi.6.1_11 “Rules required for operating maritime autonomous surface ships from the viewpoint of seafarers”, Toshiyuki Miyoshi, Shoji Fujimoto, Matthew Rooks, Tsukasa Konishi and Rika Suzuki, The journal of navigation, pp. 1 – 16. DOI: https://doi.org/10.1017/S0373463321000928 Published online by Cambridge University Press: 10 February 2022 ・「船舶の自動運航(MASS)と刑事責任-専門性、新技術に対する観点から-」三好登志行、藤本昌志、海事法研究会誌2025年206号・2頁 〇これまでの主な研究会委員等 海上保安庁「自動運航船の運航にかかる勉強会」(2018年、2019年) 海上保安庁「自動運航船に対するCOLREG適用の在り方に関する検討委員会」 | |
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