欧州海上安全レポート
2025年11月28日、ドイツ連邦海事・水路庁(BSH: Bundesamt für Seeschifffahrt und Hydrographie)は、MASS(自律・遠隔操作船)をめぐる法的枠組みづくりに向けて、「Runder Tisch – Autonome Schifffahrt(円卓会議)」を開始し、初回を12月12日に行うと案内しました[2-1]。円卓会議は、国家MASS調整ラウンド(nationale MASS-Koordinierungsrunde)の関係機関とも連携し、産業界・研究機関などのニーズを把握して、国内の制度整備に生かす狙いです。
円卓会議で念頭に置かれている国際的な枠組みとしては、IMOが検討中のMASSコード(SOLASを基礎とする枠組み)[2-2]や、EUのMASS試験・実証に関する運用ガイドライン[2-3]、北海沿岸国によるMASS MoU[2-4]などがあります。なお、ドイツのMASS MoUへの参加は2025年7月4日です。
国内法整備が必要とされる背景としては、主に次の点が挙げられます。第一に、ドイツでの申請は全長24メートルまでの小型船が中心で、国際枠組み(SOLASベース)だけではカバーしにくい領域があることです。第二に、IMOの義務化MASSコードは2032年の発効が見込まれており、それまでの期間を含めて国内での運用を支える仕組みが必要なことです。第三に、現状は申請を個別に審査しており、研究・開発や事業者にとっての予見可能性(法的安定性)が十分とは言いにくいことです。
こうした制度整備が求められる背景には、ドイツ国内でMASS関連の取り組みが進んでいることもあります。例えば、洋上風力発電所での遠隔操作作業艇の運用や、遠隔操作・自律航行に関する試験が挙げられます。また、過去に実施した「Galileo Nautic」プロジェクト[2-5]では、従来の手動船(例:DENEB)の改修により、通常の交通環境下で自動接岸を実現した事例が紹介されています。
BSHのヘルゲ・ヘーゲヴァルト長官は、国内外の「パズルのピース」を結集し、関係者をつなぎ、力を束ねることで、ドイツの海事産業を持続的に強化したい旨を述べています[2-6]。
(日本海難防止協会ロンドン事務所長 立石良介)
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