欧州海上安全レポート
欧州国境沿岸警備庁(Frontex)は、2025年の不法越境に関する最新統計を公表しました。2025年のEU域外国境における不法越境の検知件数は約17万8,000件で、前年比26%減少し、2021年以降で最低水準となりました。Frontexは、EU周辺地域で大きな地政学的エスカレーションがなければ、この減少傾向は2026年も続く可能性があるとしています [4-1]。
2026年は欧州の国境管理にとって重要な転換点となります。6月には欧州移民・難民協定(EU Pact on Migration and Asylum)が完全適用となり、国境での迅速な審査手続きなどが順次本格化します [4-2]。また、2025年10月12日に段階的運用を開始した出入国管理システム(EES)は、2026年4月10日までに全面稼働する予定です [4-3]。これにより、合法入国者の滞在期間を自動追跡し、オーバーステイの把握に資する仕組みが整備されます。さらに、欧州渡航情報認証システム(ETIAS)は2026年最終四半期に運用開始が予定されています [4-4]。
海上国境に関しては、2025年も中央地中海ルートがEUへの主要な移民経路であり続けました。Frontexによれば、検知件数は2024年と概ね同水準でした。東地中海ルートでは検知件数が全体的に減少し、減少傾向が続きました。西アフリカルートでは、モーリタニア、モロッコ、セネガルからの出発が急減した影響で、検知件数が約3分の2減少するなど、最も急激な落ち込みが見られました。Frontexはまた、「英仏海峡経由で英国への出国を試みた事例(英国到達者および出国阻止者を含む)は、2024年とほぼ同水準で推移した」と報告しています [4-5]。
不法越境の検知件数は減少したものの、海上ルートの危険性は依然として高い状況です。犯罪組織は過密状態で航行不適格な船による渡航を強いており、Frontexが引用するInternational Organization for Migration推計によれば、2025年に地中海で少なくとも1,878人が死亡し、前年は2,573人でした。Frontexは、自機関の航空機・船舶による危険船舶の検知とリアルタイムの情報共有を通じて、各国当局の状況把握と捜索救助体制を支援していると述べました。
(日本海難防止協会ロンドン事務所長 立石良介)
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