欧州海上安全レポート
26-15-1. 英国におけるMASS規制枠組みの体系化・可視化
6月19日、英海事沿岸警備庁(MCA)は、「Autonomy(MASS)– UK Maritime Innovation Hub」ページを更新し、海上自律船舶(MASS)及び遠隔運航船に関する規制枠組みを整理しました。本件は、新たな国内規制を一から創設したものではなく、既存のMGN(Marine Guidance Note:海事ガイダンスノート)702(M)、MGN 705(M)、MGN 664(M+F)等を、船舶の大きさや運航形態に応じて体系化・可視化した点に意義があります。なお、各MGNの末尾に付された記号は対象船種を示し、(M)は商船(Merchant)、(M+F)は商船及び漁船(Merchant + Fishing)を対象とすることを意味します。[1-1]
具体的には、2.5m未満のMASSについてはMGN 702に基づく一般免除、2.5m以上4.5m未満の遠隔運航無人船(ROUV)についてはMGN 705に基づく一般免除が示されています。これらは、小型・低リスクの船舶について、一定条件の下で通常の証書発給を要しない比例的な規制経路を認めるものです。一方、4.5m以上24m未満の船舶については、MGN 664に基づく革新的技術船舶としての個別評価、又はWorkboat Code Edition 3等に基づく認証経路が想定されます。さらに24m以上の船舶については、より本格的な法定証書、船級、国際条約上の要件との整合が求められることになります。[1-2]
こうした制度の整理には明確なニーズがありました。MASSや遠隔運航船は、測量、港湾監視、調査、警備等で実証・導入が進む一方、従来の船舶規制は船内に船長や乗組員がいる船舶を前提としています。このため、特に小型無人船や遠隔運航船については、どの規則、免除、認証手続が適用されるのかが事業者にとって分かりにくい状況が生じていました。
また、本更新はIMOにおける非強制MASSコードの採択・発効を強く意識した動きと考えられます。IMOでは2026年5月のMSC 111で非強制MASSコードが採択され、同年7月1日から適用される予定です。英国としては、同コードを踏まえつつ、国内でMASSの試験・導入・認証をどのように扱うかを整理する必要があります。したがって、本件は、IMOコード発効に伴う新制度の創設ではなく、既存制度を国内実務に接続し、事業者が適用経路を把握しやすくするための案内機能の強化と評価できます。小型船には簡素な入口を用意し、大型化・高リスク化するほど個別評価や正式認証を求める構造は、実証・導入の促進と安全確認の明確化を両立させるものといえます。[1-3]
(日本海難防止協会ロンドン事務所長 立石良介)
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