欧州海上安全レポート
26-02-3. 当局が麻薬密輸対策作戦を実施
ベルギーを含む一部欧州メディアの報道によると、麻薬密輸への対応にたびたび直面しているポルトガル司法警察は、2026年1月下旬の「Operation Adamastor」において、大西洋のアゾレス諸島沖で半潜水艇を拿捕し、コカイン約9トンを押収しました[3-1]。この作戦には米国および英国当局も協力しており、米国側は麻薬取締局(DEA:Drug Enforcement Administration)と統合省庁間タスクフォース南方軍(JIATF-S:Joint Interagency Task Force South)、英国側は国家犯罪対策庁(NCA:National Crime Agency)が関与しました。協力は海上麻薬分析・作戦センター(MAOC-N:Maritime Analysis and Operations Centre – Narcotics)の枠組みで実施されたとされていますが、各機関の具体的役割(情報提供、追跡、現場支援等)の詳細は明らかにされていません。押収された麻薬は報道上、総額最大で約6億ユーロ規模に上る可能性があるとされ、同国史上最大のコカイン押収事例と報じられています。作戦は86時間以上に及んだとも伝えられ、積載されていた300包のうち265包が回収された一方、残る35包は悪天候下で半潜水艇とともに沈没しました。
当局によれば、この船体は形状上発見が困難な構造で、ラテンアメリカから来航したとされています。正確な出所は特定されていないものの、報道ではコロンビアとの関連が示唆されています。また、専門家の見方として、こうした潜水型・半潜水型の輸送手段はコロンビアで多用されてきた経緯があるとされています。乗組員4名のうち3名がコロンビア国籍、残る1名はベネズエラ国籍と報じられています[3-2]。
ドイツの報道機関は、欧州主要港湾における麻薬捜査の成果も伝えています。ハンブルク港では税関当局が、シンガポールから輸送されたコンテナをX線検査した結果、400キログラムのヘロインを発見し押収しました(発見は2025年12月5日、公表は捜査上の理由から2026年1月)[3-3]。その価値は約3,200万ユーロに上るとされています。オランダでも大規模な押収が報告されており、ロッテルダム港では約4.8トン(約5トン)のコカインが押収され、推定価値は約2億5,000万ユーロ規模と報じられています[3-4]。
これらの動向は、特に港湾において薬物密輸が深刻な問題になっていることを示しています。越境性の高い犯罪であることから、欧州レベルでの法執行機関間の協力強化が重要です。欧州委員会は、薬物密輸対策の一環として港湾とサプライチェーンの安全・強靱性を高める「EU港湾戦略」を打ち出す方針を示しており、今後の提言が注目されます[3-5]。また報道では、港湾戦略の草案が外部に出回っているともされ、第三国による港湾インフラへの関与・投資に対する管理強化などが論点として挙げられています。
(日本海難防止協会ロンドン事務所長 立石良介)
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