欧州海上安全レポート
26-02-4. 北海における洋上風力発電拡大計画を発表
欧州および英国の複数メディアは、2026年1月26日にハンブルクで開催された第3回北海サミットの結果を報じています[4-1]。
サミットでは、北海サミットの参加9か国(ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、英国)の代表者に加え、産業界、送電事業者等が、北海地域における洋上風力発電と送電網の展開を加速させるための共同文書(いわゆる投資パクト等)を取りまとめました。なお、アイスランドはオブザーバーとして参加し、NATOも今回初めて関与しました[4-2]。
この構想の特徴は、各国が個別に風力発電所を建設し送電するだけでなく、北海全体を一つの発電・送電エリアとして捉え、送電インフラを国境を越えて共用・統合する点にあります。具体的には、洋上風力発電所の送電接続と国際間の電力連系線(インターコネクター)を一体化した「ハイブリッド型(複数国接続)プロジェクト」や、ある国の領海内で発電した電力を別の国にも送電する越境協力プロジェクトが想定されています。また、越境的な「ハブ」型の先行例として、ドイツ・デンマーク間のボーンホルム・エネルギーアイランド(3GW)が挙げられます(同案件はバルト海側の計画です)。
今回の合意では、2031年から2040年にかけて、北海地域での導入を含め、洋上風力の年15GW規模の導入を可能にする安定的な入札・導入パイプラインの確保を目指す方向性が示されました(大型タービン〔12~15MW級〕で換算すると、年15GWは概ね1,000~1,250基に相当します)。 さらに、2050年までに(北海地域で)洋上風力発電容量300GWという従来目標についても、政治的コミットメントを改めて確認しています。この「投資パクト」や2050年までの300GW目標の継続は、過去の政治宣言と約束、特に2022年エスビャール宣言および2023年オステンド宣言を基盤としています[4-3]。
9か国はまた、「必要かつ適切な場合」に、国内および二国間の差額契約や同等の価格保証メカニズムを通じたプロジェクト支援を検討する旨を示しました。これには、欧州の電力購入契約市場の強化も含まれます。加えて、閣僚文書等では、洋上エネルギーインフラの強靭性・安全性やサイバーセキュリティにも言及しています[4-4]。
ハンブルク・サミットは、北海に関係する欧州諸国が、洋上風力の共同導入を「安全で持続可能かつ手頃な価格のエネルギー」への重要な貢献と位置付けていることを示しています。一方で、野心的な目標の実現には課題も大きく、とりわけ、大量の洋上風力で生み出される電力を実際に届けるための送電インフラ(海底ケーブル、変電設備、陸上送電網の増強など)の整備が追いついていないことが問題になっています。こうした課題認識を踏まえ、EUでは2025年12月10日に「European Grids Package」を提示しており、系統整備・許認可の加速などを後押しする枠組みを示しています[4-5]。
(日本海難防止協会ロンドン事務所長 立石良介)
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