欧州海上安全レポート
2025年9月10日、ASEAN-EU戦略的パートナーシップ(2023–2027)の実施の一環として、地域および世界の海洋安全保障に関する緊急課題について話し合う専門家会議がハノイで開催されました。会議には、政府機関に所属する海軍や海上保安機関の担当者を含む約50名が参加しました。
本会議は、ベトナム国防省の国防国際関係研究所(IDIR)と駐ベトナムEU代表部が共同で主催し、海底ケーブルの保護、より安全な海上通信路の確保、国連海洋法条約(UNCLOS)への支援強化など、具体的な安全保障課題に焦点が当てられました。
このイベントは、EU、ドイツ、フランスが共同で資金を拠出するESIWA+プロジェクト ※1(Enhancing Security Cooperation in and with Asia and the Indo-Pacific)によって支援されています。
※1 ESIWA+は、EUの通常予算に加え、ドイツ連邦外務省およびフランス欧州・外務省の外交予算からの追加支援を受けています。これは両国がアジア太平洋地域での安全保障協力を外交政策の優先課題と見なし、EU予算を補完する形で直接関与していることを意味します。加えて、プロジェクトの実施は、ドイツ国際協力公社(GIZ)とExpertise Franceが共同で担当しており、資金・実施ともに重層的な構造となっています。
駐ベトナムEU大使Julien Guerrier氏は、信頼できる海洋安全保障パートナーとしてのEUの立場を強調し、重要インフラのレジリエンス強化、情報共有体制の構築、インシデント対応に向けた共同戦略策定の重要性に言及しました。特に、2025年2月に採択された「海底ケーブル安全保障に関するEU行動計画」を基盤とした取り組みの必要性を強調しました。
また、駐ベトナム・フランス大使Olivier Brochet氏およびドイツ代理大使Simon Kreye氏は、インド太平洋地域における海洋秩序維持の重要性と、ベトナムの戦略的パートナーとしての役割に言及。
ドイツは2024年にタスクグループを派遣し、フランスは2025年に空母シャルル・ド・ゴールの展開を予定しています。
戦略的意義
このイベントは、EUとベトナム間の安全保障協力深化を象徴する取り組みであり、ESIWA+の枠組みを通じてさらなる実務的協力への道を開いています。こうした会議は、ASEAN-EU戦略的パートナーシップ(2023–2027)※2 における行動計画の一部であり、海洋安全保障、法執行、接続性といった重点分野に沿った具体的実践の場となっています。
※2 ASEAN-EU戦略的パートナーシップは、ASEANとEUが1977年に対話関係を開始して以来、約45年にわたる協力の成果として発展してきました。現行の2023–2027年枠組みは、南シナ海問題、中国の影響力拡大への対応、EUのインド太平洋戦略(2021年)の具体化など、変化する地政学的環境を背景に策定されました。
この枠組みでは、年次サミット、閣僚会合、専門家レベルでの会議など多層的な協力体制が設けられ、今回の会議もその一環です。特に海洋分野では、国際法に基づく海洋秩序の維持と地域の安定への貢献が重視されています。
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