欧州海上安全レポート

No.25-09「月刊レポート(2025年11月号)」
25-09 記事

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目次

 1. EUとフィリピンの海洋安全保障協力
 2. EU防衛強化に伴う欧州港湾・海運業界への影響
 3. 国際規制動向におけるEUの戦略
 4. 紅海のルート保護を目指すEUの取り組み

 

25-09-1.EU とフィリピンの海洋安全保障協力

《ポイント》

・EU・フィリピンはUNCLOSに基づく海洋秩序の維持で一致。
・Shadow Fleet対策やIORISによる海上保安協力を強化。
・Shadow Fleet監視強化と情報共有体制の拡大を注視すべき。

《概要》

EUとフィリピンは、第3回海上協力小委員会で南シナ海における航行の自由や沿岸国の主権的権利の尊重を確認し、海上保安分野での協力を強化する方針を示しました。特に、Shadow Fleetへの対処や重要海洋インフラ保護について、IORISプラットフォームを活用した情報共有を進めています。また、両者はEU–フィリピン安全保障・防衛対話を通じ、今後も協力を深化させる予定です。

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25-09-2.EU防衛強化に伴う欧州港湾・海運業界への影響

《ポイント》

・EUは軍事移動能力の法制化を進め、港湾を含む輸送インフラの軍事対応力を強化。
・軍民デュアルユース化や燃料需要の戦略化により、民間海運への影響が拡大。
・EU港湾の軍事優先化と低炭素燃料市場の逼迫リスクを注視すべき。

《概要》

EUは「軍事移動能力パッケージ2025」により、軍事輸送を迅速化するための統一ルールとインフラ整備を法的枠組みとして導入しようとしています。主要港湾や輸送回廊では軍民デュアルユース化が進み、港湾運用や燃料供給の面で民間事業者への影響が生じる可能性があります。また、防衛目的での燃料需要が戦略的に位置付けられることで、低炭素燃料をめぐる民間との競合が強まる恐れがあります。事業者は規則策定の動向を継続的に把握し対応する必要があります。

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25-09-3.国際規制動向におけるEUの戦略

《ポイント》

・IMO規制が不確実な中でEUは独自の燃料転換戦略を加速。
・持続可能燃料の域内生産拡大と巨額投資がEUの最優先課題。
・EUの燃料戦略が市場価格・調達に与える影響を注視すべき。

《概要》

IMOのネットゼロ枠組み採択が延期され、国際規制が不透明となる中、EUは域内で持続可能燃料の供給を強化するため「持続可能な輸送投資計画(STIP)」を採択しました。STIPは、e燃料を含む低炭素燃料の生産拡大と、航空・海運分野に必要な巨額の投資を明確化しています。また、EUは複数の技術・燃料を組み合わせた海運部門の脱炭素化を促し、加盟国にETS収益の投入を求めています。これによりEU域内燃料市場の変化が国際海運にも影響を及ぼす可能性があります。

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25-09-4.紅海のルート保護を目指すEUの取り組み

《ポイント》

・EUは紅海での商船保護を目的にアスピデス作戦を継続強化。
・フーシ派攻撃とシャドーフリート対策がEU海軍の主要任務に。
・航路安定化の進展と多国籍作戦の調整状況を注視すべき。

《概要》

EUのオペレーション・アスピデスは、紅海からインド洋における航行の自由を確保し、フーシ派の攻撃から商船を防護するために実施されています。開始から1年間で多数の商船を護衛しつつ、防御行動も実施していますが、艦艇不足が課題となっています。また、作戦はロシアのシャドーフリート監視にも役割を拡大しており、他国主導作戦との連携が重要なテーマとなっています。こうした取り組みにより、国際海上輸送の安定化が期待されています。

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