欧州海上安全レポート

No.25-12「特集 2025 年欧州動向と今後」
No.25-12 記事

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No.25-12 「特集記事 2025年欧州動向の振り返りと今後の展望」

目次

1 .  はじめに

2 . 海上安全
・ EMSAは海上安全・汚染対応に加え脱炭素化/デジタル化支援も任務に
・ PSC・旗国管理・事故調査など、既存のEU法実施支援を継続
・ MSR通報情報に保険証書等を追加、無保険船・影の船隊リスクへの対応を強化
・ 今後、2026年は新規より運用定着が中心、影の船隊の安全リスクが継続課題

3 . 海洋安全保障
・ 軍事機動性パッケージで、装備・物資・要員の移動を推進
・ レジリエンス強化として、SAF/SMFの生産拡大(分散型の可能性も)に言及
・ IRINI/ASPIDES延長、任務がインフラ防護や密輸・影の船隊情報共有まで拡大
・ 今後、規則案の審議が進み、Frontex強化や港湾の安全保障論点が焦点

4 . 海洋環境
・ 欧州気候法改正で、2040年にGHG純排出90%削減(一部国際クレジット充当可)
・ IMOのNZF採択延期により、ETS/FuelEUとの整合・今後の立て付けが論点化
・ TTE理事会等で海運へのETS拡大の影響や「ストップ・ザ・クロック」的議論も浮上
・ 今後、EU ETS見直しほかOcean Act/MSFD見直しも進展する可能性

5 . 技術・デジタル・サイバー
・ 目立つ海事立法は少ない一方、GNSS妨害・偽装がEUの重要課題として浮上
・ TTE理事会で共同対応を提起し、航空中心の議論が海事分野にも拡大
・ 委員会は関係機関と連携し、交通モード別の行動計画を検討
・ 今後、サイバーレジリエンス強化が続き、関連法見直しの波及があり得る

6 . まとめ

 

 

記事本文 

 

 1.はじめに 

 

本報告書は、2025年のEUにおける海上安全、海上保安、気候・環境、ならびにデジタル技術・サイバーセキュリティ分野について、主要な規制・政策動向をまとめたものです。個別の施策も紹介しながら、政策全体の流れがどの方向に向かっているのかが分かるよう整理します。

2025年は、選挙後の新たな欧州委員会体制が本格的に動き出した最初の年でした。この年のEU立法では、規制の簡素化、競争力の強化、安全保障が特に重視されました。その背景として、2024年の欧州議会選挙や加盟国の国内選挙で右派勢力が伸長したことが挙げられます。保守・右派政党は、環境・気候問題よりも、産業・経済・安全保障を優先する傾向があります。

こうした方向転換には、ロシアのウクライナ侵攻や米中間の経済競争といった国際情勢の変化も影響しています。2024年に公表された3つの報告書も、同様の問題意識を示しました。イタリアの元首相で欧州中央銀行(ECB)元総裁のマリオ・ドラギ氏の報告書 [1-1] と、同じくイタリアの元首相でジャック・ドロール研究所所長のエンリコ・レッタ氏の報告書 [1-2] は、EUが米国や中国と比べて経済的な競争力の維持に課題を抱えている点を指摘しています。また、フィンランドのサウリ・ニーニスト元大統領が欧州委員会の特別顧問として取りまとめた報告書 [1-3] は、地政学的緊張が高まる中で、サイバー攻撃や偽情報など複合的な脅威への備えを強化する必要性を訴えています。

本報告書は、次の構成で記述します。

第1章の海上安全分野では、前委員会の任期中に整備された、より包括的な規制が発効する見込みである点を取り上げます。

第2章の海上安全保障分野では、安全保障を重視する方針の下で、軍事移動能力に関する立法提案が示されたことを整理します。

第3章の環境分野では、海洋環境保護委員会(MEPC)の決定を受けたEUの対応を扱います。

第4章のデジタル・サイバー分野では、航行妨害(ジャミング)や位置偽装(スプーフィング)への対応を主な論点とします。最終章では、これらの動向を踏まえ、2026年以降の展望を示します。

 

 

  1. 海上安全 

 

2.1 EMSAの新任務

 

2025年、EUの海事安全規制で大きな動きがありました。EMSA(欧州海事安全庁)の任務を定める規則が改正され、規則(EU)2025/2434として2025年12月29日にEU官報 [2-1] に掲載されました(2026年1月18日発効)。

この改正は、現行の制度枠組みや海事分野を取り巻く環境変化を踏まえ、EMSAの任務と権限を整理し直すものです。これによりEMSAは、従来の海上安全・環境保護・海上保安(maritime security)に加え、脱炭素化とデジタル化の面でも、欧州委員会や加盟国を支える役割が強まります。

改正規則 [2-2] は、EMSAの目的として、①事故を最大限減らすための高い水準の統一的で効果的な海上安全の確保、②海上保安、③船舶からの温室効果ガス排出削減など持続可能な海事セクターの実現、④船舶による汚染の防止・対応、⑤石油・ガス施設による海洋汚染への対応、を掲げています。

EMSAは引き続き、寄港国管理、旗国管理、海難事故調査、旅客船の安全、認定機関、船舶用機器など、関連するEU法の実施を支援します。加えて、FuelEU Maritimeの実施や、EU排出量取引制度(EU ETS)の海運分野への拡大についても、委員会・加盟国への支援が位置付けられています。

また今回の規則は、海事安全を取り巻く環境の変化に対応できるよう、EMSAが一定の手続きを踏みつつ新興の分野に取り組む余地も残しています。さらに、EU域内の海事安全などの進捗を把握するため、EMSAは3年ごとに欧州委員会へ報告します。EMSAでは「European Maritime Safety Report(EMSAFE)」として公表しています。

なお、この規則改正は、欧州委員会が2023年に提出した海事安全立法パッケージ(5本)の最後の要素に当たります [2-3] 。パッケージのうち、改正寄港国管理指令(指令(EU)2024/3099)と改正旗国管理指令(指令(EU)2024/3100)は、2024年12月16日付でEU官報 [2-4] に掲載されました。

「25-11-1. EMSA、安全に関する包括的報告書を公表」参照

 

2.2 船舶交通監視情報システム指令の改正

 

EMSAが関与するEU法の一つに、船舶交通監視情報システム指令(指令2002/59/EC) [2-5] があります。これに関連し、欧州委員会は委任指令(EU)2025/811 [2-6] を2025年2月19日に採択し、2025年4月28日にEU官報 [2-7] に掲載しました。

この改正は、加盟国が指定するMandatory Ship Reporting(MSR)海域に入域する船舶が通報する情報(附属書I)に、船上に携行する保険証書等に関する項目を追加するものです。背景には、ロシアの「影の艦隊(シャドー・フリート)」に象徴される、無保険船やサブスタンダード船がもたらすリスクへの懸念があります。

具体的には、MSRで通報する情報として、船主の海事請求に関する保険(指令2009/20/EC)に加え、油濁損害(CLC 1992)、バンカー油(Bunkers 2001)、沈没船除去(Nairobi WRC 2007)などに関する責任保険・証明書が明記されました。

このようにEMSAは、改正規則の下で、脱炭素化・デジタル化の推進から海上監視の強化まで、EU海事安全の幅広い課題に関与していくことになります。

 

 

  1. 海洋安全保障 

 

3.1 欧州委員会、軍事機動性に関する規則案を提案

 

欧州委員会と上級代表は2025年11月、軍事移動能力(Military Mobility)に関するパッケージを公表しました。内容は、共同コミュニケーション [3-1] と、軍事目的の装備・物資・要員の移動を円滑にするための規則案 [3-2] が中心です。

このパッケージは、欧州域内で軍事目的の輸送を進めやすくする一方で、民間輸送への影響をできるだけ抑えることを狙いとしています。欧州委員会は、2027年末までにEU全域で軍の移動を進めやすい環境を整え、「Military Schengen」の実現に向けて前進する方針を示しています [3-3]

また、レジリエンス強化の一環として、エネルギー安全保障の観点から、持続可能な航空燃料(SAF)や持続可能な海事燃料(SMF)の生産拡大(可能であれば分散型の生産能力も含む)を後押しする考えも盛り込まれています。

今後、この規則案は通常立法手続に沿って、欧州議会と理事会で審議され、修正・採決を経て成立・発効する見込みです。

「25-09-2.EU 防衛強化に伴う欧州港湾・海運業界への影響」参照

 

3.2 海上安全保障任務「イリニ」及び「アスピデス」の延長

 

海底インフラへの脅威や、制裁回避に用いられる「影の艦隊(シャドー・フリート)」の活動など、欧州の海上安全保障をめぐる課題は広がっています。こうした状況を背景に、EUの主要な海上任務2件について、延長と任務内容の更新が決まりました。

まず、EUNAVFOR MED IRINI [3-4] は2年間延長され、2027年3月31日まで継続します。理事会決定では、武器禁輸違反や石油の違法輸出といった従来の対象に加え、重要海上インフラの保護や、緊急時の対応計画づくりに役立つ情報の収集も担うことが明確化されました [3-5]。さらに、能力構築・訓練については、リビア沿岸警備隊・海軍だけでなく、海上の法執行や捜索救助を担う関係機関にも対象を広げる方向が示されています。

次に、EUNAVFOR ASPIDES [3-6] は2026年2月28日まで延長されました [3-7]。同作戦は2024年2月に開始された防御的な海上任務で、紅海周辺での攻撃から船舶を守り、海上状況認識を高めることを目的としています。あわせて、船舶保護に必要な情報に加え、武器密輸や「影の艦隊(シャドー・フリート)」に関する情報も収集し、加盟国、欧州委員会、UNODC、INTERPOL、EUROPOL、IMOと共有することが任務として位置付けられています。

「25-09-4.紅海のルート保護を目指す EU の取り組み」参照

これら2つの動きは、EUが海上安全保障の対象を、従来の海賊対策や危機対応に限らず、重要インフラ防護や制裁回避対策まで含めて広げつつあることを示しています。

 

 

  1. 海洋環境 

 

4.1 EU、2040年の気候目標を採択

 

12月、EU理事会と欧州議会は、欧州委員会の提案に基づき、欧州気候法(European Climate Law)の改正について暫定合意 [4-1] し、温室効果ガス(GHG)排出削減目標を設定しました。改正気候法は海上輸送に直接言及していないものの、欧州経済全体の排出削減の道筋を定めるものであり、海事分野にとっても無関係ではありません。

改正気候法には、1990年比で2040年までにGHGの純排出量を90%削減するという中間目標が盛り込まれています。このうち最大5%ポイント分は、EU域外で実施された排出削減プロジェクトから得られる国際的な気候クレジット(パリ協定第6条に基づくもの)で賄うことが可能です(暫定合意では、原則として2036年以降の活用が想定されています)。したがって、EU域内での実質的な削減は少なくとも85%に相当します。

備考:パリ協定は、世界の気温上昇を産業革命前比で2°C未満に抑え、1.5°Cに抑える努力を追求することを定めており、「今世紀後半に排出と除去のバランスを達成する」ことを求めています。パリ協定自体に「2050年にネットゼロ」といった明示的な数値目標はありませんが、気温上昇を1.5°C以下に抑えるには2050年頃までにネットゼロが必要だという科学的知見が広く参照されています。これを踏まえ、EUは2050年までの気候中立(実質排出ゼロ)を、欧州気候法(2021年採択)の法的拘束力のある最終目標として定めました。また国際海運については、IMOが2023年に採択した改訂GHG戦略において、2050年またはその頃までのネットゼロ達成を目標に掲げています。今回の改正は、EUの中間目標として2040年目標を位置づけたものです。

備考:欧州委員会の当初提案(2025年7月2日提出)では、国際クレジットの上限は3%と整理されていました。しかし交渉の過程で加盟国の意見が割れ、最終的に暫定合意では5%ポイントに引き上げられました。

道路輸送と建築物を対象とする新たな排出量取引制度(ETS2)は、当初2027年に開始予定でしたが、エネルギー価格などへの配慮も踏まえ、暫定合意では2028年開始(1年延期)とされました。

また、合意内容の説明では、概ね2年ごとの見直し(レビュー)により、経済状況や技術進歩に応じて調整できる仕組みが強化されたとされています。

こうした柔軟性の導入により、欧州委員会が2024年2月の気候政策通信 [4-2] で示した「2040年目標に向けた道筋」と比べると、実行面での厳しさが弱まった、との見方もあります。

備考:欧州委員会は2024年2月の気候政策通信において、2040年までに90%削減を達成するための道筋を示しました。今回の暫定合意で盛り込まれた柔軟性(国際クレジットの活用やETS2開始時期の調整など)は、当初の構想からの後退だと評価する見方もあります。

 

4.2 MEPC結果への反応

 

海事分野の気候政策では、IMOでネットゼロ枠組み(NZF:Net-Zero Framework)が採択に至らなかったことを受け、欧州委員会の反応が注目されます。

備考:NZFは、2023年のIMO GHG戦略の目標達成に向け、国際海運の排出削減を進めるための規制パッケージとして議論されてきました。IMOによれば、NZFは2025年4月(MEPC83)で承認されましたが、2025年10月の臨時会合では合意に至らず、審議は2026年に持ち越されました。

MEPCに先立つ段階で、欧州委員会(DG MOVE)の立場は明確でした。2025年10月12日付の声明では、「EUはNZFを重要な節目と捉え、来週のIMOでの採択を求める」としています。さらに同声明では、「採択後、欧州委員会は関連するEU規則を見直す」との趣旨も述べています。

一方、延期決定後に欧州委員会は公式プレスリリースを発表しませんでしたが、採択延期がEU独自の地域規制(EU ETSおよびFuelEU Maritime)に与える影響について説明を求められ、EU側が「国際合意が成立するまでは地域規制の撤回や緩和は行わない」との立場を繰り返した、という整理は広く流通しています。

これと並行する動きとして、12月4日のEU運輸相会合(TTE理事会) [4-4] では、海運部門へのEU ETS拡大の影響を問題視する論点が取り上げられました。少なくとも議題上、「海運サービスへのEU ETSの一律拡大による悪影響」が論点として示されています [4-5]。さらに報道では、イタリアが国際合意が成立するまで海運部門のEU ETS適用を一時的に止めるよう求め、ギリシャやマルタがこれを支持したとされています [4-6] 。いわゆる「ストップ・ザ・クロック」的な発想です。

今後数カ月の焦点は、NZFに同意しない加盟国との間で共通基盤を探り、橋渡しを図りつつ、2026年までに国際的な解決策をまとめることにあります。IMOは、NZFの採択に向けた審議を1年延期し、2026年に再開するとしています [4-3]

「25-09-3.IMO 規制の不確実性に対する EU の戦略」参照

 

 

  1. 技術・デジタル・サイバー分野

 

技術、デジタル及びサイバー分野では、海事活動に直接関係する目立った立法動向は報告されていません。ただし、具体的な立法措置には至っていないものの、全球航法衛星システム(GNSS)の妨害・偽装(ジャミング/スプーフィング)問題は、EUの政策課題として極めて重要視されていました。

 

閣僚レベルで議論された妨害・偽装

 

2025年6月5日、ルクセンブルクで開催されたEU運輸・電気通信・エネルギー理事会(運輸)では、EU運輸大臣が本問題への対応を求める行動要請「GNSS妨害・偽装への共同対応を求める行動要請」 [5-1] を取り上げました。本要請はリトアニアが主導し、チェコ、エストニア、フィンランド、イタリア、ラトビア、ルーマニア、スペインが支持しました。加盟国は、GNSS妨害が運輸分野に深刻な影響を及ぼし得る脅威として拡大していることを踏まえ、EUレベルでの協調的な対応を進めようとしています。なお、当初は航空分野に重点が置かれていましたが、その後、海事分野にも対象が広がりました。

運輸相会合では、多くの加盟国がこの行動要請を歓迎し、GNSS妨害は緊急の対応を要する重大課題だと強調しました。運輸担当委員のアポストロス・ツィツィコスタス氏も出席し、加盟国がEUの行動計画の策定を提案したことに全面的な支持を表明しました。さらに同委員は、行動計画には交通モード(航空、海運、道路)ごとの具体的措置を盛り込むべきだと述べ、欧州委員会としても、欧州航空安全機関(EASA)、EUROCONTROL、加盟国、業界関係者と連携し、行動計画の策定にすでに関与していると説明しました。

同年12月のEU運輸・電気通信・エネルギー理事会(電気通信) [5-3] でも、この議題は再び取り上げられました。加えて欧州議会でも、ポルトガル選出で中道左派S&Dグループ所属のセルジオ・ゴンサルヴェス議員による書面質問 [5-4] が示すとおり、本問題への関心が高まっています。

「25-11-3. EU におけるジャミング/スプーフィング対策」参照

 

 

6.まとめ

 

2025年の動向を踏まえると、海上安全分野では2026年は関連する新規施策が比較的少ない見込みです。欧州委員会は、改正(新)EMSA規則の実施に加え、2024年に採択された改正港湾国管理(PSC)指令および改正旗国要件指令の運用定着に注力すると見込まれます。影の船隊(シャドーフリート)がもたらす潜在的な安全リスクも、引き続き議題となるでしょう [6-1]

安全保障の分野は、引き続き優先課題となる見込みです。欧州委員会の軍事機動性に関する提案は引き続き議論され、共同立法機関(欧州議会・理事会)は合意形成を目指すことになります [6-2]。さらに欧州委員会は、Frontex(欧州国境・沿岸警備庁)の強化に向けた立法提案を打ち出す見込みです。あわせて、欧州委員会はEU港湾戦略を2026年前半に提示する見通しです。法的拘束力はないとみられますが、港湾が薬物関連犯罪にさらされるリスクなど、港湾の安全保障上の論点が盛り込まれる可能性があります [6-3]

海洋環境分野では、関連する動きが数多く見込まれます。欧州委員会は、海運等を含むEU ETSの見直し(改正)を提案する見込みです。この見直しは、IMOレベルで議論されるネットゼロ枠組み(国際的措置)との整合とも密接に関係します。そのためEUは、IMOでの議論を踏まえつつ、自らの立場を改めて整理し、明確にする必要があります。また、一部では、国際的な枠組みが整うまで海運分野のETSを一時停止・調整すべきだという声(いわゆる「ストップ・ザ・クロック」)もあります。より技術的なレベルでは、欧州委員会は報告実務の簡素化を重視しており、ETSとFuelEUに関する報告・手続についても、一元化や合理化が進む可能性があります。ほかの分野で進む簡素化の流れが、海事分野のEU気候政策にも波及することが予想されます [6-4]

デジタル・サイバー技術分野では、妨害(ジャミング)や偽装(スプーフィング)を含むサイバーレジリエンスが引き続き重要課題となる見込みです。加えて欧州委員会は、サイバーセキュリティ法(Cybersecurity Act)の見直しにより、ENISAの位置付けやEUサイバーセキュリティ認証の枠組みを含む制度の再整理を進めるとみられます [6-5]。これは海事分野に直接の影響を与えるものではないとしても、横断的なサイバーセキュリティ規定が盛り込まれる可能性は高いでしょう。さらに、2026年1月20日にデジタルネットワーク法(Digital Networks Act)が公表される予定とされ、周波数調和、5G機器、供給業者、ネットワークコスト配分などを扱うと見込まれます。あわせて、海底ケーブルインフラのセキュリティやレジリエンスに関する規定が含まれる可能性もあります [6-6]

最後に、横断的な性質を持つイニシアチブにも注目が必要です。欧州委員会は2月に「海事産業戦略」を発表する予定で、計画上は「EUの海事製造部門および関連バリューチェーンの競争力、持続可能性、レジリエンスを強化する」ことを目的としています [6-7]

 

(日本海難防止協会ロンドン事務所長 立石良介)

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