欧州海上安全レポート
目次
1.オランダ水域においてUSV初運用
2.リビア沿岸警備隊支援への批判
3.欧州イノベーション航空モビリティハブを公開
4.EU-インド海洋安保を実務連携へ
25-07-01. オランダ水域においてUSV初運用
⚪︎ポイント
オランダ指定試験区域外での無人運航が初めて合法化・実施
3m級測量USV「V3000」が完全自律で水路測量を実施
Demconと港湾当局が連携し、安全監督・交通統合の下で有人船が伴走
示唆 → 港湾実務に適合する規制設計と運用プロトコルが整えば、小型USVは測量・点検の省人化を即戦力化できます。
⚪︎概要
オランダでは2025年10月8日、内陸水路警察規則(BPR)の改正を背景に、USVが初
めて一般水域で合法的に運航されました。ロッテルダム港で実施された本件は、3m級の
自律型測量船「V3000」により、完全自律での水深・海底マッピングを行うものです。港
湾当局の監督と有人船の伴走のもとで安全確保と交通統合を図り、実務適用に向けた技
術・法制度の実現可能性を示しました。
25-07-02. リビア沿岸警備隊支援への批判
⚪︎ポイント
欧州のNGO42団体が欧州委・イタリアに公開書簡で支援停止を要請
民間救助船への発砲を受けMoU等の枠組みが違法行為を助長と主張
NGOはEU主導の公的SAR体制と安全な合法ルート整備を提案
示唆 → 第三国沿岸警備当局への装備・訓練支援は、人権・国際法遵守の実効性担保とエスカレーション時の停止条件の明確化が不可欠です。
⚪︎概要
複数の欧州NGOは、発砲事案を踏まえてEUとイタリアの対リビア支援が国際法・人権
上の問題を惹起していると指摘し、協力枠組みの見直しと停止を求めました。EU側は人
命救助を目的とする支援と説明していますが、NGOはEU主導の捜索救助ミッション整備
や安全な移動経路の構築を提案しています。本件は、越境的な移民管理支援のガバナン
スと説明責任の在り方を問うものです。
25-07-03. 欧州イノベーション航空モビリティハブを公開
⚪︎ポイント
ドローン・eVTOLの統合情報基盤「IAMハブ」第5版が公開
新機能:ドローン規則ナビゲーター、自治体向けガイド、eSORA(SORA自動化)。
国境横断運航の簡素化や中小事業者のリスク評価負担を軽減
示唆 → 港湾・沿岸監視やSARでドローン運用を拡張する際、eSORAと共通基準により機関間連携と承認取得の効率化が期待できます。
⚪︎概要
EASA はIAM ハブの第5版を公開し、運用者が規制を把握して運用区分・要件を判断で
きるナビゲーター、自治体向けの導入ガイド、SORA評価を自動化するeSORAなどを提供
します。複数国にまたがる運航の調整機能も備え、欧州のドローン活用の本格展開を後
押しします。海事分野でも監視や汚染モニタリング、捜索救助の高度化に資することが
見込まれます。
25-07-04. EU-インド海洋安保を実務連携へ
⚪︎ポイント
新戦略でMDA強化や重要インフラ保護など運用重視の協力を提示
西インド洋でのEU海軍と印海軍の取り決め、他地域での共同活動も視野
能力構築(CRIMARIO/IORIS活用)やC-UAS共同演習で相互運用性を強化
示唆 → 具体的な枠組み化が進めば、情報共有基盤と共同訓練を軸に官民・産学の参画機会が拡大し、海上治安とシーレーン防護の実効性が高まります。
⚪︎概要
EU とインドは、新たな戦略的アジェンダにより、海洋領域認識(MDA)、共同海上活動、重要インフラ保護などで実務的協力を強化する方針です。CRIMARIOやIORISなど既存の情報共有枠組みに加え、能力構築プログラムの構想やC-UAS 共同演習が進み、相互運用性の向上が図られています。今後は2026年初頭の首脳会議での包括的文書採択が注目されます。