2020/12/14LROニュース(7)

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  • 2020.12.14 UP
    2020/12/14LROニュース(7)
    • 【1】 バイデン新政権:電力の脱炭素化を15年以内に実現
      • 【1】バイデン次期大統領はもともと、2050年までに段階的に脱炭素化を図る計画を立てていたが、今年の夏に気候変動対策の柱として、2035年までに発電分野の脱炭素化を実現するという野心的な目標を据えた。15年間で全電力を脱炭素化するという目標は、州のレベルでも他国でも前例がなく、今までで最も野心的な目標は、ニューヨーク州・オーストリア・スウェーデンが20年間で電力の脱炭素化を目指すというものだった。しかしカリフォルニア大学ゴールドマン公共政策大学院の研究によると、15年以内に電力の脱炭素化は可能であり、経済的に見ても、太陽光や風力発電の価格は下落しつつあり、全電力の90%を脱炭素化した場合、電力の卸売価格は10%下落すると予測している。但し目標達成には様々な課題があり、最大の課題は、共和党が多数を占めるであろう上院の議会の承認を得ることであるが、そのためには1月のジョージア州における上院決選投票を民主党が制する必要がある。また天候に左右される太陽光/風力発電の安定性をいかに確保するかも重要であり、さらに目標の達成には、太陽光/風力発電施設を今日の3倍のペースで整備しなくてはならないが、大規模な再生可能エネルギー計画は行政手続きにより滞る可能性があり、特に近隣住民が風力タービンや太陽光パネルの設置に反対した場合、現実的でない可能性がある。
      • 原文 December 10, 2020, Yahoo Finance(植木エミリ)
    • 【2】 2020年中に北極海北航路を利用した船舶数がこれまでの最大に
      • 【2】ノルウェーのNord大学ビジネススクールのCentre for High North Logisticsの調査によれば、2020年の船舶の運航が可能な期間中、航路上に海氷が少なかったため、年初からこれまでに北極海北航路(Northern Sea Route: NSR)を通過航行した船舶数は既に62隻に達し、2019年1年間の37隻を大きく上回っている。通過航行以外も含めたNSRを利用した船舶の隻数も2020年はこれまで331隻と2019年の277隻を大きく上回っている。IMOのMEPCでは、北極海における重油燃料の使用を禁止するためのMARPOL条約の改正案を採択したが、環境団体は適用除外や適用免除によって多くの船舶が依然として重油燃料を引き続き使用できると批判している。船舶の交通量の増加によって、油濁事故が発生する危険性が増えるが、NSRには事故発生時に油濁被害に対応するためのインフラも整備されておらず、既存の基地から対応するには遠すぎると指摘されている。
      • 原文 December 9, 2020, Reuters(長谷部正道)
    • 【3】 ILO: 船員交代問題の解決に向けて決議を採択
      • 【3】12月8日、ILO総会が標記決議(GB.340/Resolution Rev.2)を採択し、加盟国等に対し要請を行ったところ、その概要は以下のとおり。①船員交代の実施の障害を特定し、安全な船員交代と船員の出身国への帰還のための期限を定めた計画を立て実施すること。②船員を「基幹的な労働者」と認定し、船員交代に伴う船員の乗下船、船員の上陸を認めること。③緊急な医療行為が必要な場合には、船員に陸上の医療機関の受診を認め、船員の国籍にかかわらず、緊急医療行為を施し、必要に応じて出身国への緊急送還を認めること。④船員が通常取得されることが義務付けられている査証等必要書類の免除・適用除外等暫定的な措置を検討すること。⑤2006年の船員労働条約の加盟国は、同条約の完全な実施を担保すること。⑥関係企業は「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に従い、パンデミックによる船員に対する影響を、各企業がどのように特定/防止/緩和/考慮しているかについてDue Diligenceを実施すること。
      • 原文 December 8, 2020, ILO(長谷部正道)
    • 【4】 ECSA: 欧州委員会の「持続可能でスマートな移動戦略」を支持
      • 【4】海運は既に最もCO₂削減に貢献している輸送モードであり、2050年までに炭素中立を目指すというEUの目標実現のために重要な役割を果たすものである。特に、トラック輸送を内航海運に代替するモーダルシフトは、EUの炭素中立目標実現に不可欠であり、EUのtaxonomyにおいて、多種多様な欧州における海運活動が、気候変動対策に貢献するものとして適切に分類され、欧州の海運業界が脱炭素化やデジタル化への転換に必要な投資を行うことができるよう、EUから支援を受け、金融機関から持続可能な融資を受けられるようにすることが、欧州船主協会(ECSA)にとって最優先事項となる。欧州の海運業界は海運の脱炭素化を支持するが、EU内の地域的な取り組みでなく、IMOにおける世界的に共通な取り組みの方が望ましいと考えており、最近発表したECSAとICSによる欧州排出権取引制度(EU ETS)を国際海運に拡大適用した場合の影響調査では、多くの問題点が指摘されており、EU ETSを海運に拡大適用し、或いはエネルギー税制指令の改正には反対である。欧州が世界的な海運の脱炭素化にどのように貢献できるかについて、ECSAは欧州委員会と引き続き建設的な協議を続けたい。
      • 原文 December 11, 2020, ECSA(長谷部正道)
    • 【5】 Norwegian High North Whitepaper: NATO/米国との連携が不可欠
      • 【5】11月27日ノルウェー政府はNorwegian High North Whitepaperを公表した。国防大学で教授を務める陸軍中佐は、同報告書が安全保障政策に関して引き続き他国との協力を重視している点に対し、ノルウェー独自の防衛力強化の重要性を訴えている。一方で、議会の外交防衛政策常設員会のメンバーを務める議員は、ノルウェーにとって最も緊密な同盟国で、自らも北極海の権益を有する北極圏国である米国は、ノルウェーが北極海における安全保障上の課題に対処するために必要不可欠な存在であると述べた。また同氏は、露が北極海における再軍備を進め、周辺国に対する政治的な目標を達成するために武力の行使も辞さない構えを見せているとしたうえで、ノルウェー独自の防衛力の強化も重要であるとしつつ、北極海を巡るすべての課題に対処するためには、特に米国や英国など北極海に戦略的利益を有する他のNATO加盟国との協力が不可欠であり、ノルウェーの国家安全保障は米国などの同盟国との緊密な協力があってのみ維持されると述べている。
      • 原文 December 9, 2020, High North News(若林健一)
    • 【6】 Climate Change Performance Index (CCPI) 2021が発表
      • 【6】GermanwatchとNewClimate Instituteは、Climate Action Networkとともに、GHG排出量(40%)・再生可能エネルギー発電量(20%)・エネルギー使用量(20%)・気候変動政策(20%)の4つの基準を基に、世界のGHG排出量の9割を占める57ヵ国とEUを対象に評価して、2005年から毎年ランキングを公表しているが、12月7日、最新のランキングを発表したところその概要は以下のとおり。(但し、GHG排出量については、パンデミック以前の数字で、パンデミックの影響は反映されていない。)①EUは欧州Green Dealを発表したおかげで順位を昨年の22位から16位に上げ、気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃以内に抑制するという目標に従って、2030年までのCO₂削減目標を引き上げることができれば、環境に配慮したコロナ復興(Green Recovery)の良いお手本となりうる。②G20については、英国(5位)・インド(10位)が高く評価された一方で、米国(61位)・サウジアラビア(60位)・カナダ(58位)と大多数の国が厳しく評価されている。③GHG排出量については、調査対象となったどの国もパリ協定の目標を達成するのに必要なレベルに達しておらず、全体としてGHG排出量は微増している一方で、半数以上の32ヵ国でGHG排出量が減少している。④再生可能エネルギーについては、38ヵ国において再生可能エネルギー比率が10%を超え、12ヵ国では20%を超えている。
      • 原文 December 7, 2020, Germanwatch(長谷部正道)
    • 【7】 英国政府:濃厚接触者などの自主隔離期間を14日間から10日間に短縮
      • 【7】英国政府は、コロナウィルスへの感染が確認された人との濃厚接触者や、感染リスクが高いとされる国からの入国者に対しては、14日間の自主隔離を実施することを義務付けている。しかし、これまでに蓄積されたデータから、感染者が他人にウィルスを移すリスクは発症時前後が最も高く、10日目までにはそのリスクは2%にまで低下することが分かっているとして、12月14日からこれらの自主隔離期間を10日間に短縮することを発表した。イングランドや北アイルランドの多くの地域では感染者数が減少傾向にあるが、英国統計局(ONS)が公表した12月5日までの1週間のデータによると、首都ロンドンやイングランド東部の感染者数が増加しており、英保健相はロンドンの感染率が高い地域などの中等学校(Secondary School)の生徒や保護者、教師を対象に集団検査を実施する方針を明らかにしている。

        ※12/10の英国の感染者数:20,964人(日本2,810人の7.5倍、緊急事態解除基準47人の446倍)
        ※12/10の英国の死者数:516人(日本45人の11倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 December 11, 2020, BBC (若林健一)
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