2020/12/10LROニュース(7)

NEWS


※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

トップページ > LROニュース > 2020/12/10LROニュース(7)

記事アーカイブ

  • 2020.12.10 UP
    2020/12/10LROニュース(7)
    • 【1】 英国Crown Estate: 2030年までの炭素中立を宣言
      • 【1】英国の王室財産を管理し、年間29億ポンド(約4000億円)の収益を上げるCrown Estate (CE)は12月4日、2030年までに炭素中立を達成し、その後はClimate Positiveを目標とすることを発表し、またイングランド・ウェールズ・北アイルランドの海域の管理者として、国家としての2050年までの炭素中立を支援するために、海洋の生物多様性と海洋環境の保護を図ったうえで、再生可能エネルギーである洋上風力発電の能力を2030年までに40GWにまで拡充することと、浮体式洋上風力発電などの新技術開発を支援すると発表した。具体的にはCEが直接管理する資産における燃料の燃焼・車の運転等から排出される直接的なCO₂の排出(Scope 1)のみならず、当該資産において使用される電力が発電される際に排出される間接的なCO₂の排出(Scope 2)や、CEが購入する物資の生産/輸送・公務出張などCEが関与する全ての活動に伴って排出される間接的なCO₂の排出(Scope 3)も含めて、2030年までの炭素中立達成を目標とする。
      • 原文 December 4, 2020, The Crown Estate(長谷部正道)
    • 【2】 デンマークが新たな海洋石油・ガス開発を中止
      • 【2】デンマークは、1972年から北海における石油ガス事業を開始し、欧州で最も裕福な国のひとつとなり、2019年には、55の海上掘削リグから日量約10万バレルの石油/ガスを生産しているが、過去10年間は、洋上風力発電などのクリーンエネルギーの開発にも力を注いできた。2017年には、仏が海外領土を含む国内での石油・ガスの開発と生産を2040年までに停止することを世界で初めて宣言し、翌年にはNZも石油ガス開発の新規許可を停止した。12月3日、EU内で最大の石油産出国であるデンマークも、新規石油/ガス開発の即時停止と、既存の石油/ガス生産活動を2050年までに段階的に停止することを発表した。石油・ガスの生産に長期的な期限を設ける同国の決断によって、北海で日量170万バレルの石油を生産し、COP26の議長国である英国に対し、石油/ガス開発の新規許可の停止に向けた国内外の圧力が高まることが予想される。
      • 原文 December 4, 2020, The Guardian(植木エミリ)
    • 【3】 大型ばら積み船では依然スクラバー装備の方が有利
      • 【3】IMOの2020規制が導入される前には、規制適合の低硫黄燃料油と重油燃料の価格差は概ねトン当たり$200/mtと予想され、実際に2020年当初には価格差が$300/mtになったこともあったが、その後、重油価格の低落や、パンデミックに伴う経済不況で、価格差が$50/mtまで落ち込んだことがあり、Ship & Bunkerの統計によれば、年初からこれまでの平均価格差は93.65/mtとなっており、スクラバー投資へ誘因が当初の期待を大きく下回っている。しかし、BIMCOが12月3日に発表した調査によれば、2020年に新たに就航したばら積み船の47%にはスクラバーが装備され、中でもケープサイズなどの大型船96隻に限ってみれば、スクラバーを装備せずに規制適合油を燃料油として使用している船舶はわずか13隻に過ぎず、燃料を多く消費するケープサイズに限って見れば、スクラバー装備船の方がスクラバー非装備船に比べて、スポット市場では高値で用船され、2020年に入ってから現在までの用船料の平均で見れば、非スクラバー装備船に比較して、一日当たり$2818(約29.3万円)多い用船料を稼いでいる。
      • 原文 December 7, 2020, Ship & Bunker(長谷部正道)
    • 【4】 EU気候変動対策進捗報告書:2019年におけるCO₂の排出量は1.5%減少
      • 【4】欧州委員会が11月30日、EUの2019年におけるCO₂排出削減の進捗状況について網羅した標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①2019年におけるEU排出権取引制度(ETS)の対象分野からのCO₂排出量は1.52億トンと、対前年比9.1%減で大幅に減少した。②発電分野は、こうした大幅な減少を牽引し、主に石炭火力発電を再生可能エネルギー/天然ガス発電へ置き換えたことによって、CO₂排出量は対前年比で15%減少した。③製鉄などの産業分野からのCO₂排出量は対前年比2%の減少となった。④航空については、ETSの対象となるのは欧州経済領域内の航空活動のみだが、CO₂の排出量は引き続き対前年比1%の微増となった。⑤ETSの対象となっていない、交通・建築・農業・廃棄物の分野におけるCO₂排出量は、前年と比べて大幅な変化は見られなかった。⑥以上全体で見ると、2019年は、EU27か国のGDPが1.5%成長したにもかかわらず、CO₂排出量は対前年比で3.7%減少しており、現在のところ、1990年代実績比で24%削減されている。
      • 原文 November 30, 2020, 欧州委員会(植木エミリ)
    • 【5】 交通と環境:「2050年までにどうやって欧州の交通を脱炭素化するか?」報告書
      • 【5】標記報告書の概要は以下のとおり。①欧州の自家用車・バン・小型トラックが使用する燃料のそれぞれ1割を再生可能電力から生産される「E燃料」である水素とEディーゼルに置き換えた場合、これらの自家用車等の燃料を全部バッテリーにした場合と比べて、2050年には41%も多くの再生可能エネルギーによる電力が必要。②大型トラックの燃料についても、半分を水素、半分をEディーゼルに置き換えた場合、全部をバッテリーにした場合と比べて、2050年には151%も多くの再生可能エネルギーによる電力が必要。③こうしたわずかな割合の車両の代替燃料としてバッテリーではなく、E燃料を使うことにより、936TWhの追加電力が必要となり、この追加電力を洋上風力発電で賄うとすると、デンマークの国土全体に匹敵する海域が必要となるほど、大きな負担となる。④船舶も航空機もバッテリーを燃料とした場合は、短距離しか運航出来ず、船舶は代替燃料としてアンモニアや水素に、航空機はEケロシンに依存せざるを得ず、2050年までに合計1275TWh分の再生可能電力が必要となる。⑤従って、再生可能エネルギーによる電力を多く必要とするような水素などのE燃料は、バッテリーを使用出来る車両にではなく、バッテリーを基本的に使用できない航空機や船舶の脱炭素化燃料として優先配分すべきである。
      • 原文 December 7, 2020, Transport & Environment(長谷部正道)
    • 【6】 EU: 環境にやさしい交通を目指して持続可能なバッテリーを促進
      • 【6】EUは欧州Green Dealの重要な一部として、経済の電化を進め、具体的にはディーゼル/ガソリン車の段階的な廃止や他の経済部門における化石燃料の使用をクリーンなエネルギーに置き換えるために、バッテリーの利用が不可欠である。しかし、バッテリーの製造に必要な原料の採掘によって、世界各地で、河川・土壌と天然資源の汚染・減少を招いているうえ、バッテリー製造に伴うCO₂の排出量も多く、この弊害を最小限とするために、バッテリーを持続可能なものとしてバッテリー原材料の利用の効率化を図る必要がある。欧州委員会は、12月9日、交通分野からのCO₂を2050年までに90%削減するために「持続可能でスマートな移動戦略」を発表したが、持続可能なバッテリーの開発はこの戦略の一部で、電気自動車・鉄道・エネルギーの貯蔵・スマートフォン・家電に使用されるバッテリーを持続可能なものとするための新たな規則が含まれる。欧州投資銀行は既に10億ユーロ(約1260億円)以上を持続可能なバッテリーの開発のために投資することを既に発表している。
      • 原文 December 9, 2020, European Environmental Bureau(長谷部正道)
    • 【7】 感染者数の増加に伴いロンドンの警戒レベル引上げのおそれ
      • 【7】現在イングランドでは、3段階の警戒レベルを設定して各レベルに応じた対策を地域ごとに実施しており、ロンドンは2番目に高い警戒レベル(Tier2)に分類されている。しかし、12月3日までの1週間のデータによると、ロンドンの3分の2以上の地域でコロナウィルスの新規感染者数が増加傾向にあり、このうち多くの地域で1日当たりの新規感染者数の割合が人口10万人当たり200人を超えている。政府は12月16日に各地域の警戒レベルを見直す予定であり、ロンドン市長などは、ロンドンがより厳しい規制が適用されるTier3に分類されないためにも、市民の一人ひとりが社会的距離の確保、自主隔離の実施、マスクの着用、良い衛生習慣などを励行する必要があるとして協力を呼びかけている。

        ※12/8の英国の感染者数:12,282人(日本1,518人の8.1倍、緊急事態解除基準47人の261倍)
        ※12/8の英国の死者数:616人(日本47人の13倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 December 9, 2020, Evening Standard (若林健一)
  • 資料閲覧 その他