2020/12/09LROニュース(7)

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  • 2020.12.09 UP
    2020/12/09LROニュース(7)
    • 【1】 米国:パリ協定を順守して気候変動対策を実施する経済的メリット
      • 【1】リッチモンド連邦準備銀行の調査によれば、気候変動対策についてBusiness-As-Usual (BAU)を選択して産業革命前と比較して地球の気温が3℃上昇した場合には、パリ協定の目的を遵守して気温上昇を2℃以内に抑制した場合と比較して、GDPの水準が減少するだけでなく、GDPの成長率自体が減少するので、全米で2050年までに2兆ドル(約208兆円)、2100年までに50兆ドル(約5200兆円)の追加的気候変動損害が発生することが予測される。一方で、パリ協定の目標達成手段としての、太陽光/風力の発電コストの低下は著しく、ライフタイムコストでみると、最新鋭の天然ガス火力発電所と比べて37%、最新鋭の石炭火力発電所と比較して66%もコストを削減することが可能であり、以上の経済的なメリットを累計すると、パリ協定に従った気候変動対策を取った場合、BAUを採用した場合と比べて、米国だけでも2050年までに、5兆から10兆ドル(約1040兆円)、2100年までに20兆ドル(約2080兆円)から50兆ドル(約5200兆円)の経済的メリットがあると予測される。
      • 原文 November 30, 2020, Yale Climate Connections(長谷部正道)
    • 【2】 WMO: State of the Global Climate 2020暫定報告書を発表
      • 【2】世界気象機関(WMO)による標記報告書の概要は以下のとおり。①二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素などのGHGの大気中の濃度は、2019-2020年にかけて継続的に上昇した。②ラニーニャ現象の発生にも関わらず、2020年は史上3番目に暑い年になる見込み。③海面上昇は継続しているが、グリーンランドと南極で氷床の融解が進んだことにより、上昇のペースが高まってきている。④GHGによる放射不均衡によって海洋に吸収される太陽熱が増加し、2019年の海洋の熱含有量は過去最大となった。⑤2020年は、世界の海洋の8割以上で少なくとも1回は熱波が発生し、強度の熱波が中程度の熱波より多く発生していた。⑥北極海の最小海氷面積は過去2番目に小さくなり、7月と10月には史上最少の海氷面積を記録した。⑦グリーンランド氷床の体積も継続して減少しており、2019年9月から2020年8月にかけて約152Gtの氷が失われた。⑧2020年はアジア・アフリカの大部分で豪雨と広域に及ぶ洪水が何度も観測された。⑨ 11月17日時点で、北大西洋では過去最大となる30のハリケーンが発生し、米国では過去最大の地滑りが発生した。⑩南米では干ばつが深刻な被害を及ぼし、農作物の被害額はブラジルだけで30億ドル(約3120億円)に達した。⑪異常気象により、太平洋地域や中米地域を中心に、多くの脆弱な人々が集団で移住を余儀なくされた。
      • 原文 December 2, 2020, WMO(植木エミリ)
    • 【3】 EU競争当局がイタリアの港湾管理者に対する免税措置の停止を命令
      • 【3】12月4日、欧州委員会は、1年間の調査を経て、イタリアの港湾管理者が経済的な活動から得た利益に対する法人税の免税措置を停止し、通常とおり課税対象とすることをイタリア政府に命じた。EUの競争当局は、港湾管理者に対する免税措置によって得られた財源が、マルチモーダル輸送の振興などの公共目的に使用されずに、港湾使用料金の減免等に使用されることによって、EU域内の港湾間の公正な競争を阻害していると認定した。しかし、当該法人税の免除措置はEU条約がイタリアに適用されるようになった1958年以前から存在するため、イタリア政府はこれまで支払われていない法人税を遡及的に徴収しなくても良い。欧州委員会は類似の命令をここ数年オランダ・ベルギー・フランス政府に対しても出している。
      • 原文 December 5, 2020, Reuters(長谷部正道)
    • 【4】 英国船主協会:「使い捨てプラスチック憲章」を採択
      • 【4】使い捨てプラスチックは海洋生物や地球全体への脅威であり、世界の海洋に1.8億トン以上のプラスチックが存在し、毎年100万羽の海鳥、10万頭の海洋性哺乳類が、海洋プラスチックごみを飲み込んだり、ごみに絡まったりして死亡しており、英国政府の報告書では、2025年までに海洋プラスチックごみの量は3倍に増加すると予想している。海洋プラスチックごみの80%は、陸上から川などを経て海に流れ込んだものだが、海運業界は過去数十年にわたり、MAROPL条約のAnnex Vに従い、プラスチックをはじめとするごみの海洋投棄を行わないことを通じて、積極的に海洋環境の保護に努めてきた。英国船主協会は、12月4日、29の参加企業とともに、新たに「使い捨てプラスチック憲章」を採択し、IMOの規制や英国政府の規制よりさらに厳しく、必要不可欠ではない使い捨てプラスチックの使用を2021年末までに中止することを宣言した。同協会はまた会員企業数社と共に「使い捨てプラスチックを削減するためのベストプラクティス」ガイダンスを作成して、使い捨てプラスチック製品をそれ以外の製品で代替するいくつかの代表的な取り組み事例を紹介している。
      • 原文 December 4, 2020, 英国船主協会(長谷部正道)
    • 【5】 ナイジェリア沖でケミカルタンカーが海賊に乗船される
      • 【5】12月6日午前3時ごろ、ナイジェリア沖のアグバミ油田から南東約50海里の海上を航行していたケミカルタンカーが海賊の襲撃を受け、同船に4名の賊が乗り移ったことから乗組員はシタデルに避難するよう指示がなされたとの報告があった。本件は今年に入りギニア湾のハイリスク海域(HRA)内で発生した69件目の事案である。また、今週HRA内で発生した事案は本件が6件目で、本件を含め過去36時間以内に3件の事案が発生している。過去5週間で事案の発生数は増加しており、11月11日にはギニア湾のHRAに対する危険度の評価は、毎日事案が発生する可能性が高いことを意味する「CRITICAL」に引上げられている。海上模様が平穏な時期であることから今後も襲撃事件の発生は続くと思われ、同海域を航行する船舶は最大限の警戒態勢を維持するとともに、ベストプラクティス集に従った予防策を励行することなどが求められる。
      • 原文 December 6, 2020, Dryad Global(若林健一)
    • 【6】 英・EU・米・中・日などの炭素中立宣言が実現すればパリ協定の目標実現も可能
      • 【6】各国の気候変動対策によって、実際に地球の気温上昇がどれほど抑制されるかを予測し発表している独立の研究組織であるClimate Action Trackerによると、中国政府が9月に発表した、2060年までに炭素中立を実現するという目標が達成されれば、中国単独のGHG排出削減量だけで、今世紀末までに地球全体の気温上昇が0.2-0.3℃抑制されることが分かった。これに加えて、米国で2050年までの炭素中立を目指す目標が正式に採択されれば、米国の分でも更に0.1℃抑制され、近年相次いで2050年までの炭素中立を宣言した南ア/日/韓/加をはじめとする、世界のCO₂の63%を排出する、現在検討中の国を含む127か国の炭素中立宣言が実現した場合、今世紀末までの気温上昇は2.1℃に抑制できる見込みとなった。しかし、現在各国政府が実際に実施している政策を続けた場合、今世紀末までに気温は2.7℃-3.1℃上昇する見込みであり、各国政府は炭素中立の実現に向け、2030年を目標年次とするより強力な自主的な国家排出削減目標(NDC)を採択すると共に、気温の上昇を1.5℃以下に抑制するために必要なCO₂排出削減量とNDCのギャップを埋める必要がある。しかし2015年以降、NDCの強化に向けた積極的な動きはほとんどなく、年末の提出期限が迫っているにも関わらず、CO₂を大量に排出する国で、大幅に強化されたNDCを既に提出した国はまだない。
      • 原文 December 1, 2020, Climate Action Tracker(植木エミリ)
    • 【7】 英国でコロナウィルスのワクチン接種が始まる
      • 【7】12月8日、英国では他国に先駆けてPfizer社とBioNTech社が共同開発したコロナウィルスのワクチンの接種が開始された。今後数週間で80万回分のワクチンが、さらに今月末までに400万回分のワクチンが国内の拠点となる病院に配布され、第一段階として80歳以上の高齢者、介護施設の入所者や職員、医療従事者などを対象に接種が行われる。しかし、ワクチン接種は3週間の間隔を空けて2回受ける必要があることから第一段階の接種を終えるのには数週間を要するとされ、また、既に発注済みの2千万人分のワクチンもその多くは年明け以降に接種が可能となる見込みである。英保健相は、今日この日を戦勝記念日になぞらえて「V day」と称し、人類共通の敵に対する反撃の開始であると述べつつも、いまだ道のりは長く、ロンドン、イングランド東部のエセックスやケントなどでは感染者数に増加の兆しも見られると述べ、国民に対して引き続き警戒するよう求めた。

        ※12/7の英国の感染者数:14,718人(日本2,016人の7.3倍、緊急事態解除基準47人の313倍)
        ※12/7の英国の死者数:189人(日本20人の9.5倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 December 8, 2020, BBC (若林健一)
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