2020/10/07LROニュース(7)

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  • 2020.10.07 UP
    2020/10/07LROニュース(7)
    • 【1】 「緑の水素」が電解槽のコストダウンで10年以内に最安のエネルギーに
      • 【1】中国の電解槽事業者は、風力や太陽光などの再生可能エネルギーから製造される「緑の水素(Green Hydrogen : GH)」を製造するための電解槽は、2018年に豪政府が見積もった価格の8割以上安く製造できると発表した。この結果、今後10年以内にGHの生産規模が拡大し、価格も1kgあたり2豪ドル(約152円)以下となって、ガスや石炭から作られる水素を抜いて最も安い「変革的な」エネルギーになると、豪政府は最近発表した低排気技術に関する報告書で分析している。国際再生エネルギー機関(IRENA)も、2019年に発表した報告書の中で、電解槽の価格は2040年までにコストダウンされることが予想されていた最も安い価格と同一になっており、現在でも既に生産することが可能だと中国の生産者が発表しているとしている。豪政府は水素の生産・輸出によって、2050年までに8千人分以上の雇用と、年間110億豪ドル(約8360億円)以上GDPを増加させる効果があると見込んでおり、独・日などの経済大国が、パリ協定の目標達成のため、化石燃料に代わって豪からGHを輸入することを検討している。
      • 原文 October 2, 2020, The Guardian(植木エミリ)
    • 【2】 2030年までにCO₂排出量の55%削減のためには早期に石炭離脱が必要
      • 【2】欧州委員会は1990年実績比の2030年までのCO₂削減率を40%から55%に引き上げることを提案しているが、この目標を達成するためには、同年までに脱石炭も達成する必要がある。発電所からの排気はEU排出権取引制度(ETS)の対象となるが、欧州委員会はETSの大幅な強化を図り、排出権の価格も上昇するので、CO₂排気量が多い石炭発電の競争力はなくなる一方で、再生可能エネルギーがEUの発電に占めるシェアは現在の32%から65%まで上昇し、石炭のシェアは2030年までに2%まで縮小する。しかし、独・ポーランド・チェコ・ブルガリア・ルーマニアなど依然として石炭火力発電に依存している国々の現在の国内エネルギー計画では、2030年の時点でも多くの石炭火力発電所が残存することが見込まれる。例えば、独は法律で2038年までに石炭火力発電所を全廃するとしているが、ポーランド・ブルガリア・ルーマニアは未だ石炭火力発電所廃止の検討すら開始していない。しかし、政府の計画とは別に、排出権価格の上昇と再生エネルギー発電の価格の下落により、独国内では5年前に操業開始した最新鋭の石炭火力発電所を含む多くの石炭火力発電所の価格競争力は失われ、収益が出せない状況となっている。
      • 原文 October 5, 2020, Energypost.eu(長谷部正道)
    • 【3】 過去30年間で北極圏の温暖化によって約4割のツンドラの緑化が進行
      • 【3】北アリゾナ大学の研究者達がNature Communications誌に発表した研究によると、NASAの人工衛星Landsatのデータを利用して、1986年から2016年までのアラスカ・カナダ・シベリアの北極圏全体の5万か所以上の地点を分析したところ、北極圏のツンドラ地帯の約38%で、夏の期間に緑化が進んでいることが明らかになった。また同期間中、北極圏の夏季の大気温や土壌の温度および湿度が上昇していることも分かった。北極圏のツンドラは地球上で最も寒く、同時に最も温暖化が進行している生物群系でもあり、北極圏の緑化は、地球規模の気候変動の指標である。ツンドラ地帯の植生が変わると、同地域の植物を食べて生きる野生生物だけでなく、同地域に住み、食べ物を当該地域の生態系に依存している先住民の生活にも影響が出る。夏季に緑化が進めば、植物に吸収される大気中のCO₂の量が増加する一方で、温暖化によって永久凍土の解凍が進み、永久凍土から多くのGHGが放出される。
      • 原文 September 22, 2020, NASA(植木エミリ)
    • 【4】 Navigate Response:わかしお事故後の情報処理に改善の余地
      • 【4】海事分野における事故等問題発生時のメディア対応・情報発信・管理の専門コンサルタントであるNavigate Response社が、わかしお号の事故後のメディア対応が適切であれば、船主や用船者に対する社会的イメージダウンを抑制できたと指摘しているところその概要は以下のとおり。① 船主と用船者が自社のHP上に情報の公開を始めたのは、座礁をしてから2週間後の船体から油が流出し始めてからであったが、この2週間に地元の民衆の船主等に対する悪印象と怒りが形成されたので、情報公開をもっと早くから開始するべきであった。②事故処理にあたって、事故調査当局と警察などの当局の間で、発表する情報の整合性が図られなかったため、情報の信頼性が損なわれた。米国では大規模な事故が発生すると、共同情報センターを立ち上げて、報道官(Public Information Officer)が一括してマスコミ対応を取っているが、こうした事例を参考にすべき。③プレスリリースは実際に現地で影響を受けた人々への共感が伝わることが肝要で、船主の謝罪声明は、モーリシャスや世界の人々向けでなく、日本の関係者を意識してなされたものであった。また船主の記者会見からはマスコミ各社が引用できるような明確なメッセージが無かったので、批判者や地元のボランティアのメッセージの方が優先的にメディアに取り上げられることとなった。
      • 原文 September, 2020, Navigate Response(長谷部正道)
    • 【5】 ノルウェーで燃料電池の試作機を製造中
      • 【5】ノルウェーの海運会社のOdfjell・燃料電池開発企業のPrototech・海事技術開発企業のバルチラ・エネルギー会社のLundin Energy Norway等が中心となって、異なる種類の燃料を使用出来る燃料電池の試作機を製造中で、完成後まず持続可能エネルギーカタパルトセンターで試験が行われた後に、化学タンカーに実際に搭載されるが、この事業の概要が10月1日に、同センターを訪問した同国首相に説明された。試作機は再生可能エネルギーから製造されたアンモニアやLNGをその時々の燃料の供給可能性に応じて使用することができ、LNGを使用した場合でも、従来の燃料に比べてCO₂の排気量を40%から45%削減することができる。エネルギー変換効率が高まるので、燃料消費量とコストが大幅に削減でき、また船舶は同量の燃料でより大幅に長い距離を航海することが可能となる。試作機には排出されたCO₂を回収する装置も設置するが、アンモニアを燃料として使用出来れば、CO₂排出量を100%削減することが可能となる。
      • 原文 October 2, 2020, Prototech(長谷部正道)
    • 【6】 北海洋上風力発電ハブ事業に欧州委員会が1400万ユーロを助成
      • 【6】北海洋上風力発電ハブ(NSWPH)事業は、今後20-30年かけて、北海における洋上風力発電施設において発電された電力を、ハブアンドスポークシステムを構築して、いくつかの洋上ハブに集約し、ハブにある変電施設で直流電流に変電したうえで、北海沿岸国に送電する大規模事業。欧州委員会は欧州全体のインフラを結節するためのConnecting Europe Facility計画のもとで、基幹的なエネルギーインフラの整備に約1億ユーロ(約124億円)を投資する予定で、European Green Dealの実現のために、投資額の84%は電力・次世代送電網(Smart Grid)の整備に充てられる予定だが、このたびそのうち1400万ユーロ (約17億円)がNSWPH事業に対して助成されることが決定された。
      • 原文 October 5, 2020, Offshore Wind Biz(長谷部正道)
    • 【7】 感染第2波の到来により再び多くの手術がキャンセルとなる可能性
      • 【7】英国ではコロナウィルスの感染拡大が発生した今年春以降、コロナウィルスの感染者の入院に備え病床を確保するために急を要さない手術が延期され、現在も多くの患者が手術を受ける順番を待っている。今年7月に国民保健サービス(NHS)は、9月までに一日で実施する手術などの件数を前年度の8割まで回復させ、さらに10月までに9割まで回復させると述べた。しかし、王立外科医師会に所属する医師らによると、この目標を達成することは困難な状況にある。今年7月に実施された手術の件数は14万件以上にまで回復したが、これも前年度比で半分以下のレベルであり、同医師会が実施した調査によると、パンデミック前と同等の患者数を治療できると答えた医療機関は14%、手術の件数が前年度比の5~8割までに回復した医療機関もわずか48%となっている。感染第2波の到来で感染者が急増するなか再び多くの手術が延期される可能性があり、医師からは国家的な危機であると懸念する声が上がっている。

        ※10/5の英国の感染者数:12,594人(日本402人の31倍、緊急事態解除基準47人の268倍)
        ※10/5の英国の死者数:19人(日本2人の9.5倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 October 6, 2020, BBC (若林健一)
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