2020/10/02LROニュース(7)

NEWS


※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

トップページ > LROニュース > 2020/10/02LROニュース(7)

記事アーカイブ

  • 2020.10.02 UP
    2020/10/02LROニュース(7)
    • 【1】 ICS: 2020年 Annual Reviewを発表
      • 国際海運会議所(ICS)は10月1日にAnnual Reviewを発表したところその概要は以下のとおり。①2020年に海運界が直面した第1の課題は、パンデミックにより、船員の移動制限と検疫が強化され、船員の交代が困難となって、40万人の船員が交代できずに船上で勤務を継続することを余儀なくされている。②さらに、船舶から排出されるCO₂の削減については、海運界は海運の脱炭素技術開発を進めるため50億ドル(約5280億円)の研究開発基金を設立することをIMOの場で提案している。③この他の、ICSの主たる活動としては、西アフリカで頻発する海賊事件や地中海で継続する難民問題への対応、硫黄排出規制に関するIMO2020規制の円滑な実施の支援、船員の訓練基準に関するSTCW条約の根本的な見直しに対する要請活動が挙げられる。報告書本文は以下のリンクを参照。
      • 原文 October 1, 2020, ICS(長谷部正道)
    • 【2】 パンデミックが自律運航船(MASS)開発に与えた影響
      • (論説)法律事務所のHFWが標記について分析を行っているところその概要は以下のとおり。①パンデミックの影響で、自律運航船(MASS)に関する技術開発が促進され、MASSの実用化に関する関心が高まった。②一方で、パンデミックによる経済的な打撃で、自律運航船第1号になる予定であったYara Birkeland開発事業は中止され、他の事業も軒並み停止状態にある。③自動化技術の開発によって、既に安全性の向上や航路の最適化などが実現されているが、これに加えて、中期的には船員費が運航コストに占める割合の高い、内航海運で自動化技術の導入により、船員数の削減が進むことが期待される。④自律運航船開発の障害としては、国際的な統一基準の欠如の他に、船舶がAIによって管理されればされるほど、サイバー攻撃に対する脆弱性が増すのではないかという懸念がある。⑤EUは既にHorizon 2020計画から2010万ユーロ(約25億円)を投資して、AIを活用した自律航海システム・知的機械システム・自律問題発見解決システムなどの自律運航船に必要なシステムを搭載した2隻の自律/遠隔操縦試験船の建造を決めている。
      • 原文 September 28, 2020, HFW(長谷部正道)
    • 【3】 生物多様性を2030年までに増加に転じるための首脳宣言
      • 9月28日、国連生物多様性サミットに出席した首脳が標記宣言を採択し、合意された緊急対策の概要は以下のとおり。①コロナ危機からの復興戦略と投資および国内外の開発と協力の両方を追求する上で、生物多様性・気候・環境問題を中心に据える。②持続可能な開発目標を達成するために、生物多様性条約第15回締約国会合において、野心的で革新的な2020年以降の地球生物多様性枠組みを採択する。③生物多様性の喪失・陸/真水/海洋の劣化・森林破壊・砂漠化・環境汚染・気候変動といった問題に対し、旧来の縦割り的な考え方ではなく、相互に関連する問題として、統合的・整合性のある方法で対処し、対策の妥当性と効果的な検証機能を確保する努力を強化する。④パリ協定の気温上昇抑制目標に従い、また今世紀半ばまでに炭素中立を達成することを目指して、国別CO₂削減目標を引き上げ、経済と生態系の気候変動に対する抵抗力を強化する。⑤環境の劣化/生物多様性の喪失/気候変動対策に悪影響を与え、安全保障/法の支配/人権/公衆衛生/社会経済的発展を損なう恐れのある、野生生物や木材の売買といった環境犯罪を終結させる。
      • 原文 September 27, 2020, Leaders’ Pledge for Nature(植木エミリ)
    • 【4】 仏:EMSAのドローンを利用して船舶からの排気を監視
      • 仏海洋省は、欧州海事安全庁(EMSA)が保有するドローンを利用して、世界で最も船舶の航行が盛んなパドカレー海峡を航行する船舶からの排気の監視を9月23日から3か月間試験的に実施する。ドローン機は、補給基地兼飛行で得られた情報に基づく対処方針を調整する地域探索救難運用センターがあるグリ=ネ岬を拠点とし、当該海峡の分離通航帯上空を飛行して船舶の排気を収集分析するが、この領域は北海硫黄排出管理海域(SECA)内にあり、当該海域を航行する船舶が利用する燃料は硫黄分0.1%を超えてはならない。ドローンが収集した硫黄分濃度・画像などの情報は即時送信され、EMSAのRPASデータセンターに記録される。RPASデータセンターは、欧州各国の船舶検査当局が共同で使用するTHETIS-EUに繋がっており、ドローンによって検知された排気が規制に違反していることが判明した場合、当該船舶は次の寄港地で立ち入り検査が自動的に設定される仕組みとなっており、EU各国の取締り当局間での調整が促進されている。
      • 原文 September 23, 2020, EMSA(植木エミリ)
    • 【5】 北極海:米国と西側同盟国は北極圏の高緯度地域の情報収集能力に課題
      • ロシアや中国が北極海における存在感を高めるなか、米国はこの数カ月間で最新鋭の攻撃型原子力潜水艦、スペインのロタを基地とするイージス艦、B2戦略爆撃機などを北極海に展開させ、英国、カナダ、フランス、デンマークなどと合同で巡回や訓練を実施した。北極海の資源や航路の覇権を握るべくロシアや中国はさらに監視能力の強化を進めるものと考えられているが、一方で専門家や政府関係者は、北緯72度以北などの高緯度地域では西側諸国は十分な監視能力や情報収集能力を有しておらず、引き続き状況把握能力の強化図る必要があると指摘している。米国宇宙開発庁も極域のカバー範囲を拡張しようと計画しているが、中緯度地域で得られるようなリアルタイムの衛星画像を北極圏や南極圏で得るためには、静止衛星ではなく莫大な予算を投資して十数基の極軌道衛星を使用できる環境を整える必要があると専門家は指摘している。
      • 原文 September 21, 2020, Defense News(若林健一)
    • 【6】 米海軍がフィリッピン海で大規模な航空演習を実施
      • 米海軍の空母ロナルド・レーガン率いる空母打撃群とその艦載機が、9月29日にフィリピン海において大規模な航空演習を実施した。同空母打撃群は同月25日にもフィリピン海において、自由で開かれたインド太平洋を支持するために強襲揚陸艦アメリカや海兵隊の遠征部隊を含む遠征打撃群などと合同で大規模な演習「Valiant Shield」に参加している。米軍はこれらの大規模演習の実施により、海上での自由を守るとともに中国からの圧力に苦しむ同盟国を支援する決意を中国に対して示した。中国は最近になって台湾の防空圏内で戦闘機を約40回飛行させるなどしており、東アジアにおける緊張は高まっている。南シナ海において人工島を造りその大半を自国の海域であると主張する中国に対して、米国は航行の自由作戦を実施するなどして対抗しており、米国務省報道官は9月27日、中国は南シナ海において無謀で挑発的な軍事拠点化を進めていると非難した。これに対し中国外務省報道官はその翌日に、米国による行動が南シナ海の平和と安定に対する最大の脅威になっていると述べ反論している。
      • 原文 September 30, 2020, Navy Times(若林健一)
    • 【7】 来週にもロンドンを対象とする規制強化策を検討か
      • 【7】政府はコロナウィルスの感染拡大を抑制するため、感染者が増加している首都ロンドンを対象に異なる世帯間の交流をさらに制限する措置の検討を来週にも開始すると見られている。ロンドンでは主に東部で感染者の増加が顕著であるが、住民が仕事や社会生活で他の地域と行き来することを踏まえ、新たな規制はロンドン全域を対象とすることが予想される。ロンドンの一週間当たりの新規感染者数は既に3,000人を超えているが、検査数が不足していることから実際の感染者はさらに多いと考えられる。リバプールなど感染者数の増加が顕著なイングランド北部の複数の都市では、10月3日から室内で異なる世帯の人と会うことが禁止され、通勤や通学以外の不要不急な移動が制限されるなど規制が強化される。

        ※9/30の英国の感染者数:7,108人(日本531人の13倍、緊急事態解除基準47人の151倍)
        ※9/30の英国の死者数:71人(日本7人の10倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 September 30, 2020, Evening Standard (若林健一)
  • 資料閲覧 その他