2020/09/29LROニュース(7)

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  • 2020.09.29 UP
    2020/09/29LROニュース(7)
    • 【1】 EUのCO₂削減目標の引き上げにより排出権価格が今後10年間で倍増
      • 【1】9月17日、欧州委員会は、加盟国が2030年までにCO₂の排出量を、1990年実績比で「少なくとも55%」どのようにしたら削減できるかについて分析を公表したが、今後欧州議会と理事会との調整が必要となるものの、削減目標引き上げを実現するために、欧州委員会はEU排出権取引制度の強化を目指しており、年間インフレ率を2%として加味した場合、2030年の排出権取引価格は59ユーロ(約7300円)と、17日現在の29ユーロと比べてほぼ倍増する見通しである。ポーランドを筆頭に、コロナ不況中に排出権取引価格を引き上げるのには慎重な国がある一方で、欧州委員会は排出権から得られた収入は復興財源に充てることもできるとしている。欧州委員会は、現在、各産業に認められている排出可能枠を当初予定より早く削減するとともに、海運や建物の冷暖房など現在排出権取引制度の対象となっていない分野を制度の対象とすることも検討している。
      • 原文 September 18, 2020, Euractiv(長谷部正道)
    • 【2】 米FMC: 反競争的なアライアンスの運航停止も視野に活動を監視
      • 【2】米連邦海事委員会(FMC)は定期的に国際貿易・コンテナ海運業界・アライアンスの状況について、最新の状況を聴取しているが、9月16日に開催した非公式会合では、コロナ復興という非常事態における市場の動向・個々の海運会社と3つの世界的なアライアンスの動向について集中討議を行った。具体的には、スポット運賃価格の動向・長期的なサービスコントラクト・コンテナ等の器具の利用率・欠航の状況・海運会社の収益状況・サービスに関する個々の海運会社とアライアンスの戦略・定期便の欠航/スケジュールの変更等についてFMCに届けるべき情報などについて討議を行った。FMCは運賃や運送サービスの水準へのあらゆる影響を監視し、海運法(Shipping Act)の第6条(g)項に定める競争条件に違反する可能性がある海運会社の行為があれば、直ちに当該海運会社を指導し、必要があれば連邦地裁に提訴し、競争規則に反するアライアンスの運航を禁止する命令の発出を求めることもありうると表明した。
      • 原文 September 16, 2020, FMC(長谷部正道)
    • 【3】 永久凍土の融解に伴って排出される水銀で河川の魚類汚染の恐れ
      • 【3】北半球の永久凍土は、地球の他の地域の土壌・海洋・大気に含まれる水銀の約2倍の量の水銀を保持しているが、米国立雪氷センターの研究者たちが9月16日Nature Communications誌に発表した論文によると、現在のCO₂の排出率が今後も継続した場合、温暖化によって融解した永久凍土から染み出した水銀がユーコン川に流れ込み、2050年までに同川の魚類に含まれる水銀濃度が連邦安全基準を上回ることが明らかになった。このまま温暖化が進行した場合、今世紀末までに河川水中の水銀濃度は現在の2倍になると予測されているが、気温上昇をパリ協定で合意された範囲内に抑制できた場合、水銀濃度の上昇率は14%に留まり、魚類の汚染レベルも連邦安全基準以下に保たれる。アラスカ・カナダの先住民は、約3200kmの長さをもつユーコン川での漁業に経済面・食料面・文化面で依存しているが、永久凍土の融解によって同川に流れ込む水銀は最終的には北極海を汚染し、ガス状の水銀は大気を汚染する。そのため、ユーコン川の魚類は「炭鉱のカナリア」の役割を果たし、地球全体の水銀汚染の指標となりうる。
      • 原文 September 17, 2020, Reuters(植木エミリ)
    • 【4】 IEEFA: 合理性のない豪政府による国産天然ガス生産支援
      • 【4】(論説)エネルギー経済・財政分析研究所(IEEFA)が、豪政府による国産天然ガス生産支援を合理性がないとして批判しているところその概要は以下のとおり。①豪政府は、雇用の創出や安価なガスの供給、エネルギー安全保障のために、同国Hunter Valleyでの新たな製造施設の支援を決定したが、安定性と信頼性を欠いており、経済的な合理性のない国産天然ガスに税金を投じても、恩恵を受けるのは天然ガス産業だけである。②世界全体で天然ガス価格は不安定であり、収益性の出ない水準で低迷しているが、豪では一握りの企業が価格を掌握し、国際的な平均価格を上回る値段に固定しているため、豪国民は天然ガスに余分なコストを支払っている。③豪政府は、国産天然ガス事業に投資することを望んでいるが、同国内のガス産業は2020年上半期だけで250億豪ドル(約1.9兆円)の資産を減損処理しており、新規投資の余裕はない。④豪政府は、民間が投資しないのであれば、電力価格を引き下げるために、政府の資金で、電力需要が高まったときにだけ発電する天然ガス発電所を建設すると表明しているが、発電のための天然ガス使用量は2014年以降58%減少しており、政府の補助なしでの天然ガス発電は経済的に成り立たない。
      • 原文 September 16, 2020, IEEFA(植木エミリ)
    • 【5】 北極海の海氷は大西洋の暖かな海水により底から融解
      • 【5】9月に入ると北極海の海氷の面積が最小となるが、過去15年間最小海氷面積は基本的に減少傾向にあり、衛星による観測が始まって以降42年間で、最小となったのは、2012年で、2019年は2番目に面積の少ない年であったが、今年も海氷の融解が進み、既に2019年の最小面積を下回っている。このような最小海氷面積の減少は大気温の上昇によってばかりでなく、海水温の上昇によってもたらされている。アラスカ・フェアバンクス大学等の研究者が発表した研究成果によれば、東部北極海においては、大気温の上昇より、海水温の上昇の方が海氷の減少により大きく貢献していることが判明した。夏季においては、大気温の上昇が海氷を融解させる主たる原因だが、寒くて暗い冬季においては、大気温はほとんど海氷に影響を及ぼさない一方で、海水温による影響は一年間を通じて海氷の融解に影響を与えている。こうした海水温の上昇による影響は過去10年間で約2倍となり、1年間で海氷の厚さに換算して1m分の海氷を融解していることが分かった。(北極点の周辺の海氷でも厚さは2-3mなので、1mも融解させるというのは大きな影響であることがわかる。)
      • 原文 September 18, 2020, The Conversation(長谷部正道)
    • 【6】 南シナ海における米・中によるフィリッピン争奪戦
      • 【6】南シナ海問題など様々な分野において優位性を競う米中両国が、フィリピンを自国の味方に付けるべく互いに攻勢を強めている。米国は8月に比に人工呼吸器100台を提供したが、9月18日、比農業省は米国による資金援助を受けた動物の疫病に関する研究施設を開設したことを発表し、同じ週に在比米国大使はコロナウィルス対策として衛生用品や手洗い所をマニラ市長に寄贈したと発表した。一方で中国はこれに先立ち、中国国防部長が今月比を訪れ比大統領や比国防大臣と会談し、2004年の防衛協力に関する覚書の更新や南シナ海を巡る問題に対して双方が努力することで同意した。さらに、比軍に2千万米ドル相当の非戦闘装備を供与することも約束している。比は、米国にとって国外最大の米海軍基地の受入れ国というだけでなく南シナ海問題に直接関係する唯一の軍事協定締約国であり戦力投射を容易にするうえで重要である。一方で中国にとって比は南シナ海を巡る争いにおいて他国からの圧力を弱めるために重要な役割を果たす。比大統領は中国に友好的で米国には厳しい外交姿勢をとっているが、他の政府高官や既成勢力は南シナ海問題を考慮して米国との関係を断ち切ることは避けたい考えで、米比両軍は昨年300回近く合同訓練を実施するなど、安全保障に関する両国の協力関係は未だ強固であると専門家は分析している。
      • 原文 September 21, 2020, South China Morning Post(若林健一)
    • 【7】 英国政府がイングランドを対象にさらに厳しい制限の導入を検討中
      • 【7】英国内で急速な広がりを見せるコロナウィルスの感染拡大の第二波を抑えこむために、英国政府は異なる世帯間による交流に対するさらなる規制など、より厳しい制限をイングランドにおいて導入することを検討している。タイムズ紙は、政府がイングランド北部の大部分やロンドンにおいて他人との交流を全面的に制限するための準備を進めており、すべてのパブやレストランが2週間にわたり閉店を命じられる可能性があると報じている。英保健省閣外大臣はこの点について明言を避けつつも、現状を注視しつつとり得る対策を常に検討していると語り、今英国は重大な局面に差し掛かっておりコロナウィルスの感染拡大を抑え込むために必要な対策を講じていくと述べた。

        ※9/27の英国の感染者数:5,693人(日本644人の8.8倍、緊急事態解除基準47人の121倍)
        ※9/27の英国の死者数:17人(日本5人の3.4倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 September 28, 2020, Reuters (若林健一)
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