2020/09/28LROニュース(7)

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  • 2020.09.28 UP
    2020/09/28LROニュース(7)
    • 【1】USCG: 太平洋におけるIUU漁業の取り締まり強化のための新戦略を発表
      • 【1】違法・無報告・無規制漁業(Illegal, Unreported, and Unregulated fishing:IUU漁業)による水揚げは世界の漁獲量の約20%を占め、毎年数十億ドル規模の経済的損失を適法な漁業活動に対して与えていると見られ、特に収入源を漁業活動に依存している多くの国にとって大きな問題となっている。また、中国は遠洋漁業に従事する漁船を世界で最も多く有し、IUU漁業に関与する漁船の数も最も多いと考えられており、資金援助を受けた一部の中国漁船は、南シナ海における中国の国家戦略を支援するために準軍事組織として活動する場合もある。米国沿岸警備隊(USCG)は9月17日、太平洋におけるIUU漁業の取締り強化のための新戦略を発表したが、その主な内容は以下のとおり。①違法操業のパターン分析やIUU漁業の背後にいる黒幕を突き止めるために米国の諜報活動能力を活用する。②取締りのためにUSCGの巡視船を展開させるとともに略奪的で無責任な国家による行動に対抗する。③漁業活動を二国間協定の内容に追加し、旗国や沿岸国との関係強化を図る。④IUU漁業による漁獲物が市場に流通することを防ぐために港での保安プログラムを改善する。
      • 原文 September 18, 2020, The Maritime Executive(若林健一)
    • 【2】EU: CO₂削減目標の引き上げと再生可能エネルギーの開発促進の必要性
      • 【2】欧州委員会の委員長は9月16日、EUの2030年までのCO₂削減目標を40%から「少なくとも55%」に引き上げることを確認したが、9月17日には、6725億ユーロ(約83.4兆円)のコロナ復興対策(EU Green Dealを含む)の詳細も明らかにされ、資金の37%はclean energy目的に適合することが条件とされた。これに伴い、全発電量に占める再生可能発電の比率も32%から2030年までには65%に引き上げる必要があり、全エネルギー需要で見ても再生可能エネルギーの比率を38%から40%に引き上げる必要がある。これに伴い、2030年までに3500億ユーロ(約43兆円)の新規エネルギー投資が必要となる見込み。欧州委員会は、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するためには、洋上風力発電能力を450GW迄拡充する必要があるとしており、業界団体のWindEuropeも2050年までの炭素中立目標を達成するためには、2030年までに毎年7GWづつ、2030年以降は毎年18GWづつ洋上風力発電能力を拡大する必要があるとしているが、2019年に増強された洋上発電能力は3.6GWに過ぎないことを考慮すると非常に高い目標であることがわかる。
      • 原文 September 17, 2020, Green Tech Media (長谷部正道)
    • 【3】米海軍の拡充計画に対して中国海軍も近代化を断行
      • 【3】9月16日米国防長官は、海洋進出を強化する中国に対抗するために、米海軍の艦船、潜水艦および航空機の無人化や自律運航などを含む拡充計画を公表し、艦船の数も現有する293隻から355隻以上に増やすことを目指すと述べた。米海軍は同計画により2045年までに数百億ドル規模の追加予算を必要とするとみられるが、既に米国は中国を最大の脅威と位置づけており、同計画により中国海軍に対する米海軍の優位性を保ち続ける狙いがある。米国は、中国が2035年までに軍の近代化を完了し2049年までに世界一の軍事力を保持する狙いがあると見ており、2020年度予算において防衛費を4%増加して7千5百億ドルとし、誘導ミサイルを搭載した新型のフリゲート艦の建造に充てるため米海軍に7億9千5百万ドルの予算を認めている。専門家からは、米国防長官の発言により軍の近代化を進める中国が影響を受けることはなく、むしろその近代化に拍車をかけるだけであり、米中両軍による不測の事態を招く危険性を高めることになると懸念する声も上がっている。
      • 原文 September 18, 2020, South China Morning Post(若林健一)
    • 【4】トランプ政権により米国の2019年のCO₂排出量の1/3相当量の排出が追加
      • 【4】トランプ大統領は在任期間中、環境規制の解体を率先して行ってきており、こうした反環境政策のいくつかは法廷闘争中だが、オバマ政権時代の代表的な環境政策であるClean Power Planをはじめ、自家用車の燃費効率基準・冷凍庫やエアコンから排出される強力なGHGを抑制する取り組みなどの無効化に成功している。8月にも、トランプ政権は石油・ガス生産施設からのメタン漏出を防ぐための規制を緩和したばかりである。Rhodium Groupはこれまで米国内のGHG排出規制の廃止・緩和の影響を個々に調査してきたが、今般トランプ政権時代に実施された環境規制緩和の総合的な影響を検証した結果、緩和前の規制がそのまま維持された場合と比べて、2035年までに、2019年に米国全土で排出されたCO₂排出量の約1/3に相当する1.8GT分のCO₂が余分に大気中に放出されることが分かった。
      • 原文 September 17, 2020, Rhodium Group(植木エミリ)
    • 【5】地震による海中の音波の伝達速度により海水温の上昇を把握
      • 【5】GHGにより地球に蓄積される熱量の9割は海洋に吸収されるため、海水温の上昇に関する正確な情報を得ることは地球温暖化の研究者にとってとても重要である。自律的に海水温を測定するAlgos floatを世界各地の海洋に約4000個展開することにより、多くの情報を得ることが可能になっているが、水深2000m以上の深海底では、この方法で海水温を測定することが困難であった。そこで、海水温が高いほど音波の海水中の伝播速度が加速する性質を利用して、1970年代から人工的に海中で音波を発生させ、その伝播速度を測定することが試みられるようになったが、海洋哺乳類に与える影響への懸念やコスト面の問題から一時期中断されていた。これに代わって、海底地震が起きた際に自然に発生する音波を利用する方法が提案されており、科学者が2004年から2016年にかけてインド洋で発生した4千回を超える微弱海底地震によって派生した音波の伝播速度を分析し、特に震源と大きさが同じような地震によって発生した音波の伝播速度を比較することによって、当該地震が発生した期間における海水温度の上昇を推測することに成功した。その結果、インド洋では従来予測されていたよりはるかに速いペースで海水温が上昇していることが確認された。
      • 原文 September 17, 2020, BBC(植木エミリ)
    • 【6】インド政府がジプチ行動指針にオブザーバーとして参加
      • 【6】8月26日、ジブチ行動指針に関するハイレベル会合が行われ、インドが同指針にオブザーバーとして正式に参加することが決定した。同指針は、紅海、アデン湾およびアフリカ東岸に接する国などインド洋地域の18カ国により2009年1月に構成された枠組みで、インド洋西部、アデン湾および紅海における海賊・武装強盗事件を抑止することを目的としており、日本、ノルウェー、英国および米国がオブザーバーとして参加している。インド政府は、同指針にオブザーバーとして参加することで、他の加盟国と協力してインド洋地域における海上保安の強化のために尽力するとしている。
      • 原文 September 16, 2020. インド政府(若林健一)
    • 【7】英国政府がロンドンを感染拡大の「要注意エリア」に追加
      • 【7】ロンドンでは9月25日に確認された直近の一日当たりの新規感染者数が620人となり、この1週間のうちに倍以上に急増し、英国政府はロンドンを感染拡大の「要注意リスト」に追加した。直ちに地域的なロックダウンが発令されるものではないが、ロンドン市長は、救急サービスへの通報件数、入院患者数や集中治療室で治療を受ける患者の数が急増しており、ロンドンの状況は今転換点を迎えていると述べ、感染防止対策の徹底など市民に対して協力を呼びかけた。また、国内の検査体制の不足により、感染拡大が顕著な他の都市に検査能力が割かれており、ロンドンではこの2週間で検査実施件数が43%減少していると述べ、このことが今回の決定に影響を与えているとして検査体制の拡充を求めた。

        ※9/24の英国の感染者数:6,634人(日本220人の30倍、緊急事態解除基準47人の141倍)
        ※9/24の英国の死者数:40人(日本8人の5.0倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 September 25, 2020, Evening Standard (若林健一)
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