2020/08/31LROニュース(7)

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  • 2020.08.31 UP
    2020/08/31LROニュース(7)
    • 【1】 独で石炭火力発電所閉鎖のための手続がいよいよ開始
      • 【1】独では2018年、産業界・政府関係者・市民団体等の代表から構成される委員会が組織され、国内の石炭鉱業と石炭火力発電所の閉鎖に向け、全ての当事者が受け入れ可能な方法を模索していたが、今年7月に石炭鉱山/火力発電所を2030年までに半分以上、2038年までに全廃する法案が連邦議会で可決された。同国は風力・太陽光などの再生可能エネルギー分野では長きに渡りリーダーシップを発揮してきた一方で、2019年末時点で依然として44GW分の石炭火力発電所を有し、一部地域の経済は未だに石炭に依存しており、閉鎖により大きな影響を受ける地域や発電事業者に対し、欧州委員会から本件に係る国家助成に関する承認を得た後、400億ユーロ(約5兆円)が補償金として支払われる。最初に、石炭化度が低く、燃焼の際に大量のCO₂を排出する褐炭を用いる石炭火力発電所から閉鎖し、同発電所を保有する2事業者に合計で43.5億ユーロ(約5500億円)が支払われる。また石炭鉱山や石炭火力発電所で現在働いており、閉鎖に伴い失職する労働者に対しては、2048年まで総額50億ユーロ(約6300億円)の失業補償が支払われる予定である。
      • 原文 August 27, 2020, Green Tech Media(植木エミリ)
    • 【2】 軍事的緊張が高まる中、米中が非難の応酬
      • 【2】米国は8月26日、南シナ海において中国が進める埋立工事や軍事拠点化に関与したとの理由で中国企業24社や個人に対して制裁を課す決定を下し、翌27日には米海軍の艦船が通常の任務として西沙諸島周辺を航行した。米国防長官は、中国共産党は今世紀中盤までに世界一の軍事力を有するために積極的に軍の近代化を進めており、これは疑いなく東シナ海や南シナ海など中国が自国の利益と見なす海域における中国軍の挑発的振る舞いに影響を与えるだろうと述べた。また、インド太平洋が対中国の主戦場であるとして、米国は一歩も譲らない考えを示した。これ対して中国国防部報道官は、このような発言は11月の大統領選挙を意識したもので米中両軍の関係を損なうだけでなく軍事的衝突も招きかねないとして、両軍兵士の命を危険に晒すものだと警告するとともに、中国は米国からの圧力や挑発を恐れずに断固として自らを防衛し、米国による問題行動を許さないと述べた。8月26日には中国が南シナ海に向け中距離弾道ミサイル4発を発射し、翌27日には米国防総省が実弾演習を含む最近の中国の軍事演習に対して懸念を表明するなど、両国の緊張関係は不測の事態を招きかねない程に高まっている。
      • 原文 August 27, 2020, Reuters(若林健一)
    • 【3】 The Getting to Zero Coalition: 現在実施中の試験/実証事業をまとめて公開
      • 【3】2050年に向けて海運の脱炭素化を実現するには、船舶から炭素を排出しない燃料(Zero Emission Fuel : ZEF)や技術を2030年までに商業的に実用可能にする必要があり、海事・エネルギー・インフラ・金融分野の90以上の企業によって構成されるThe Getting to Zero Coalitionが現在世界で進行中の事業を取りまとめたところその概要は以下のとおり。①現時点で、世界各国で66の試験/実証事業が進行中であり、地域別では欧州が最多の49件、次いでアジアが16件だった。②欧州では、各国政府が積極的に技術開発のための資金支援を行っており、民間事業者の創業リスクを軽減している。③進行中の事業内容は、炭素を排出しない船舶自体の技術開発とZEFの開発に分類され、再生可能エネルギーから製造される「緑の水素(Green Hydrogen : GH)」は、ZEFとしてのアンモニアやメタノール燃料の製造にも繋がることから、過半数の事業において重点が置かれている。④全ての事業のうち、47の事業については技術的な試験段階を終了して実証レベルに移行しており、既存の化石燃料と比べて、如何にコスト格差を縮小するかが課題となっている。
      • 原文 August 27, 2020, Global Maritime Forum(植木エミリ)
    • 【4】 世界の造船市況の回復にあと10年かかる可能性
      • 【4】(論説)IMOは海運からのCO₂削減に向けて野心的な目的を立てたが、具体的な政策や新たな規制/技術の方向付け無しでは、船舶が長期的な投資であることに鑑み、現状で船舶に投資するのは、新造船が新たな規制に合致しないというリスクを抱えることになる。またパンデミックの影響で、2020年のコンテナ貨物輸送量は減少し、2019年のレベルの輸送量に戻るには、2021年初頭まで待つ必要がある。海運会社が発注している船腹量を現在の船腹量で割った比率は、世界平均で約8%と過去20年間で最も低い水準に低迷している。さらに過去10年間の海運業の収益性は低く、設備投資に回す資金的な余裕が少なく、銀行は2008年以来海運関係の金融の縮小に動いており、新規投資のための資金手当が難しい状況にある。原油価格の暴落や、化石燃料への依存度の削減の傾向を踏まえ、洋上石油・ガス開発関係や石油タンカーへの投資もリスクが高い状況となっている。従って、造船業の低迷は少なくとも数年は続き、2007年から2010年の造船ブーム時に建造された船舶の更新期まで回復がずれ込む可能性がある。
      • 原文 August 27, 2020, gCaptain(長谷部正道)
    • 【5】 UN Climate Bureau: COP26に備えて来年に追加交渉の開催を検討
      • 【5】本年英国で開催される予定だったCOP26と独で開催される予定だった準備会合はパンデミックの影響で、ともに丸1年開催が延期となったが、各地域グループの代表によって構成されるUN Climate Bureauが8月25日開催され、来年の交渉の進め方について協議した。その中で、今年の交渉の遅れを取り戻し、COP26ではパリ協定のrulebookの中で、最後まで積み残された点について重点的に交渉できるように、本交渉と準備会合に加えて、もう1回交渉の場を追加するという提案がされたが、追加会議の開催費用の捻出が過大であることが分かった。国連気候変動会議の費用の大部分は国連気候変動枠組条約の加盟国の分担金で賄われているが、パンデミックの影響で加盟国による分担金の支払いは大幅に滞っており、7月の段階で、事務局は2020年の分担金の48%しか受け取っておらず、43ヵ国がいまだ分担金を支払っていない状況にある。
      • 原文 August 26, 2020, Climate Change News(長谷部正道)
    • 【6】 北極海の海氷の減少とともに増加する船舶交通量と環境への懸念
      • 【6】ノルウェーのNord大学の北極圏物流センターの研究者によれば、北極海北航路(NSR)の交通量は2016年から2019年の間に58%増加し、2019年にNSRを航行した船舶の航海数は2694回に達した。露・中・加で産出される鉄鉱石・石油・LNGなどの天然資源が主たる貨物となっている。パンデミック発生にもかかわらず、2020年上半期の交通量は、935隻と前年同期の855隻から約1割増加している。船舶通航量の増加によって、船舶から排出されるCO₂ばかりでなく黒煤が北極海の温暖化を促進している。LNG輸送船がNSRの船舶交通の中で最大の割合を占めるが、LNG輸送船だけで、2019年中に23.9万トンの燃料をNSRで燃焼しており、2017年の実績がわずか6000トンだったので、わずか2年間で40倍に急増している。2019年には。NSR以外を使用して北極海に立ち入った船舶数も1628隻となり、対2013年比で25%増加した。露大統領は2025年までにNSRを利用して輸送される貨物量を現在の輸送量の2倍以上の8千万トン以上に引き上げる目標を立てている。
      • 原文 August 28, 2020, Reuters(長谷部正道)
    • 【7】 医療機関での診療を待つ患者の数が昨年の40倍以上に急増
      • 【7】コロナウィルス感染拡大の影響により、イングランドの医療機関での診療を1年以上待っている患者の数が、昨年同時期の1,117人から40倍以上に急増し50,971となった。医療機関も改善に努めているものの、コロナウィルスの感染防止対策を遵守する必要があることなどから、医療機関の対応能力はコロナウィルス感染拡大以前と比較して50%程度にとどまっているという。診療を受けることが困難な状況から、ガンの診断を受け緊急処置が必要とされた患者の数も昨年と比較して5分の1に減少しており、コロナウィルス感染拡大がガン患者の生存率を低下させているとの懸念もある。

        ※8/27の英国の感染者数:1,522人(日本898人の1.6倍、緊急事態解除基準47人の32倍)
        ※8/27の英国の死者数:12人(日本17人の0.7倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 August 28, 2020, The Sun (若林健一)
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