2020/08/28LROニュース(8)

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  • 2020.08.28 UP
    2020/08/28LROニュース(8)
    • 【1】英国政府(BEIS): 洋上風力で発電された電力の送電ネットワークの再検討
      • 【1】英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)とガス・電力市場局(Ofgem)は、8月24日、共同で洋上風力発電により発電された電力を陸上に送電するインフラの改善について意見募集を開始したところその概要は以下のとおり。①英国では現在、洋上風力発電で発電された10GW分の電力が陸上に送電されているが、2019年に英国政府は2030年までに大幅に洋上風力発電能力を拡充する目標を立て、気候変動委員会は2050年までに英国全土で炭素中立を達成するためには、同年までに洋上風力発電量を75GWまで拡充する必要があるとしている。②Ofgemは2020年2月に「非炭素化行動計画」を発表して、今後18か月間に、洋上風力で発電された電力のより調整され効率的な陸上への送電システムを検討すると表明した。③BEISは7月15日に、洋上風力により発電された電力の送電の最適化を目指して「洋上風力発電電力の送電ネットワークの再検討」をOfgemや英国送電システム運営者(NGESO)などの関係者と共に開始した。④現状では、洋上風力によって発電された電力の陸上への送電は、個別のポイントからポイントへの送電や放射線上の送電システムとなっているが、今後洋上風力発電施設が増加するのに対応して、より効率的な共同送電システムを建設するための障害は何かを特定し、どうしたら障害を克服できるか検討する。
      • 原文 August 24, 2020, 英国政府(長谷部正道)
    • 【2】EU NAVFOR:ソマリア沖の化学タンカーの乗っ取り事件は誤報
      • 【2】ソマリア周辺海域の海賊に対処する「アタランタ作戦」を展開する欧州連合海軍部隊(EU NAVFOR )は8月21日、前日に伝えられたソマリア沖のパナマ籍ケミカルタンカー乗っ取り事件については誤報であることを確認した。8月18日、EU NAVFORは、同タンカーが明確な理由もなく進路を変更したことを確認したことから直ちに航空機を派遣して同タンカーと通信を行い、技術的な問題が生じたことが理由であり乗組員は安全であると判断した。8月20日の報道を受けEU NAVFORは所属艦を派遣し、連合海上部隊(CMF)に参加している日本の航空機の支援を受けつつ調査・確認に当たったところ、進路の変更は荒天により船体に損傷が発生したことが理由であることを確認した。また、ソマリアの港湾当局から、同タンカーには既に警察職員が調査のために乗船しており乗っ取られてはいないとの報告も受けている。
      • 原文 August 21, 2020, EU NAVFOR(若林健一)
    • 【3】公海上の過剰漁獲から海洋の生物多様性を守る現実的な方法
      • 【3】(論説)7月後半以来、ガラパス諸島周辺の公海上で300隻を超える漁船(ほとんどが中国船)がとどまり漁を続けている。この海域にこの時期に中国漁船が集まるのは4年連続で、公海上の操業なので違法とは言えないが、魚類は公海とガラパゴスの海洋保護区の間を自由に回遊するので、ガラパゴス島に至近の公海上で大規模な漁業が継続されれば、海洋保護区に住むジンベイザメやシュモクザメなどの絶滅危惧の回遊性の海洋生物に深刻な脅威を及ぼす。2017年には海洋保護区内で違法漁業をしていた中国漁船が拿捕され、船内から絶滅危惧種も含めて多くのサメが発見された。国連海洋法は、海洋をいくつかのゾーンに分けて規律しているので、そうしたゾーンを越えて移動する自然の生態系を保護しきれていない。過剰漁獲は海洋における生物多様性の喪失の大きな一因となっているが、現時点では、公海の面積のわずか1%しか保護区となっておらず、公海上に海洋保護区を設定するための法的枠組みの整備が急務であり、2018年からBBNJの交渉が続いているが、公海上の漁業の問題がBBNJ交渉に含まれるか依然として不明確であり、さらにパンデミックの影響でBBNJの最終交渉も延期されたため、ガラパゴスのような例は、既存の地域的な連携と海洋管理のシステムを単純に強化するほうが現実的な解決策かもしれない。
      • 原文 August 26, 2020, The Conversation(長谷部正道)
    • 【4】比が船員交代の拠点となるための解決すべき様々な課題
      • 【4】比は世界最大の船員供給国で、今月に入ってから多くの船舶が船員交代を実施するために比に寄港しており、8月24日、比の運輸大臣は、ルソン島内の多くの港湾を開放し、比を国際的な船員交代のハブにしたいと表明したが、船員手配事業者は、解決すべき課題も多いとして以下の課題を例示している。①船員交代を実施するためには3日前までに当局に申請しなければならないが、船舶の到着時刻が変更した場合は、新たな申請を行い、さらに3日間許可を得るまで待たなくてはならない。②船員交代の際に、船舶は入港と出港時に税関の確認を受けなくてはいけないので、船員の交代は港湾域内で実施しなくてはならず、これに伴い約8千ドル(約85万円)の追加経費が掛かる。③比はいくつかの主要航路のそばに位置しているので、船員交代のためにマニラ周辺の港湾に寄港するのは大きな負担とは言えないが、燃料油・船員の生活物資・交換用品等の価格はシンガポールや香港の方が安いので、船員交代だけのためにわざわざ寄港することとなる。④中央政府の意向にもかかわらず、地方政府は域外への船員の移動に21日間の検疫期間を要求するところがあり、こうした地方からマニラ周辺に船員交代に必要な船員を十分にプールしておくことは容易ではない。
      • 原文 August 27, 2020, Splash 247(長谷部正道)
    • 【5】北極海の大西洋化が海氷の融解を促進
      • 【5】北極海の海氷面積は、1980年代と比較して半分に、面積だけでなく海氷の厚さが薄くなったので、体積ベースでみると3/4が失われている。北極圏は地球の他の地域と比較して3倍の速度で温暖化しており、早ければ2035年にも海氷が全くない夏が実現する見込み。海氷の喪失の原因は、気温の上昇だけではなく、潮流や波の力が強くなって海氷を砕き、さらに北極海の深部の温かい海水の層が北極海の表面に上昇して、海氷の融解を促進している。北極海の深層部の海水は大西洋から流れこんできた暖かな海水だが、これまでは暖かい海水と海氷の間に、ユーラシア大陸の河川から流れ込む冷たい真水の層があって、暖かな深層部の海水が直接海氷に触れることが無かった。しかし、北極海の表面の海氷面積が少なくなると、海氷に比べて太陽光の反射率が低く、太陽の熱を吸収しやすい海面から太陽熱が取り込まれ、海水の表面温度が上昇して、河川から流れ込んだ冷たい真水の層が拡散し、結果として深層部の温かい海水の層が今までは海面下150m程度にあったのが80m程度まで上昇し、海氷の融解を促進する結果となっている。暖かな大西洋の海水が北上し北極海の表面に出現する北極海の「大西洋化」はバレンツ海やノルウェー北部海域で顕著となってきている。
      • 原文 August 25, 2020, Science(長谷部正道)
    • 【6】中国「気候変動青書」:中国の気温と海面は世界平均に比べて早く上昇
      • 【6】中国気象局の国家気象センターは「気候変動青書」を発表し、1951年から2019年にかけて、中国国内においては、世界平均の気温の上昇ペースより早い、10年毎に平均0.24℃気温が上昇したと発表した。海面の上昇については1980年から2019年にかけて平均して年間3.4mm上昇し、世界の平均海面上昇速度(1993-2010)である年間3.2mmより速いペースで海面が上昇した。昨年は対前年比24mmも海面が上昇し、1993年から2011年の間の平均の海面の高さと比較すると72mmも上昇した。内陸部の水面の高さも2015年以来、上昇しており、例えば中国最大の塩湖である青海湖の水面は、2019年には15年前と比較して3.1m上昇した。さらに中国国内の氷河や凍結地域においても昨年は例年以上に氷の融解が進み、最も気候変動の影響を受けているウルムチ第1氷河は、観測の始まった1960年代以来最も速い速度で氷河の融解が進んだ。2019年には、洪水や台風などの天然災害により、中国国内で900人以上の人が死亡/行方不明になり、1900万ヘクタール以上の穀物が被害を受けた。
      • 原文 August 27, 2020, The Straits Times(長谷部正道)
    • 【7】IMO:情報の整合化に関する第2回専門家会合(EGDH 2)
      • 【7】表記会合がvirtualで10月5日から9日まで開催されることが8月25日発表された。最終的なvirtual会合が9日に終了した後、16日までEGDHの最終報告書の再検討/承認のため文書でのコメントを受け付ける。会合は通訳なしの英語のみで実施される。(Circular Letter No/ 4205/Rev.1)
      • 原文
    • 【8】NHS検査・追跡システムに問題が山積
      • 【8】英国の国民保健サービス(NHS)が運用するコロナウィルス感染者の検査・追跡システムに新たな問題が生じている。8月19日までの1週間で検査・追跡システムに登録された感染者約3千人のうち2千人が、感染が判明してから既に数日あるいは数週間が経過しており、本来自主隔離を求めるために早急に行われる感染者本人やその濃厚接触者への連絡に遅れが生じた。また、同じ週に家庭用検査キットを使用して実施された検査のうち検査結果が判明せずに失敗した割合が15%(1万8千件以上)に及び、前の週の4%から大きく増加した。同システムは濃厚接触者のうち8割以上に連絡を取ることを目標としているが、この目標についても9週間連続で達成できていない。

        ※8/26の英国の感染者数:1,048人(日本717人の1.4倍、緊急事態解除基準47人の22倍)
        ※8/26の英国の死者数:16人(日本13人の1.2倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 August 27, 2020, The Guardian (若林健一)
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