2020/08/24LROニュース(7)

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  • 2020.08.24 UP
    2020/08/24LROニュース(7)
    • 【1】ソマリア沖でケミカルタンカーが乗っ取られる
      • 【1】8月16日夕刻、イエメン領ソコトラ島から南西約180海里のソマリア沖の海域において、アラブ首長国連邦からソマリアのモガディシュに向け航行していたパナマ籍ケミカルタンカーが、武装した6人の海賊による襲撃を受け乗っ取られたとの報告があった。本件が事実であれば、ソマリア沖において乗っ取り事件が発生したのは2017年以来となる。同タンカーは6ノットで航行していたが、一度1ノットまで減速して再び増速するとともに突然進路を北に変更し11ノットまで増速して航行を続けていること等から、本件はタンカーに何等かの不具合が発生したことに乗じて単発的に行われた犯行であるとみられる。現在、同タンカーはソマリアの東端部の沖合に位置している。本件が示すとおり現在もソマリア沖での海賊による脅威は存在しているが、2011年のピーク時に比べれば大きく減少している。
      • 原文 August 20, 2020, Dryad Global(若林健一)
    • 【2】海運業界団体が共同でIMO2020規制適合燃料油使用実態調査を実施
      • 【2】BIMCO/ICS/INTERCARGO/INTERTANKOは共同で、2020年1月1日以来海運業界がIMO2020規制適合油の使用に関して得られた経験を概括するため、規制適合油の品質の問題に焦点を当てて調査を実施し、その結果を8月19日発表した。調査では、規制適合油による問題として、スラッジの量の増加、燃料パイプ/燃料油加熱器/油水分離器の詰まり、燃料フィルター/燃料ポンプの目詰まり/停止、燃料噴射/燃料油の点火不良の問題に重点をおいて実施された。その他にも不完全燃焼やワックスの発生、シリンダー内部の過剰な損耗などの最終的に機関や電力の停止に繋がるおそれのある重要な問題にも重点を置いた。燃料残渣や灰の量の増加、燃料へのアルミニウム/シリコンなどの不純物の混入、流動点・発火点・粘度・酸価などが指定された品質基準から逸脱しているケースが全世界的に報告された。運航上の問題としては、燃料油を規制適合油に切り替えると、スラッジの量やワックスの発生が増えることが挙げられた。給油後のサンプル調査の結果、指定された品質基準から最も頻繁に逸脱が見られたのは硫黄分の含有率で、MARPOL条約annex VIの違反となりかねないものだった。
      • 原文 August 19, 2020, BIMCO(植木エミリ)
    • 【3】Inter Manager: IMOSGにシンガポールにおける船員交代の制限について苦言
      • 【3】Inter Managerは、8月19日、IMO事務局長に公開書簡を送付して、シンガポール港における船員交代に関する制限措置の是正を求めたところその概要は以下のとおり。①コロナウィルスの感染者数が全世界的に再び増加に転じる中、アジアのいくつかの主要港において船員交代に関する制限措置も再び強化されている。②中でもシンガポールの海事港湾庁(MPA)はシンガポール籍船と、交代する船員の補充をしない船員の下船許可のみの申請について、優先的に船員交代を認めるとしている。③MPAのような制約をもし全ての国が採用するようになれば、船員の交代は船舶の旗国のみでしか実施出来ないことになる。④さらに、船員の交代ではなく、船員の下船のみ認めるということは、船舶の安全運航を担保するための船員の配乗基準の違反につながる。⑤MPAが上記船員交代の規制の強化を発表して以来、同港では非シンガポール籍船における船員交代は、下船のみの場合も含めて実施されていない。⑥IMO事務局長は、シンガポールにおける船員交代の実現のために、世界の海運業界に対しさらなる支援をするべきである。
      • 原文 August 19, 2020, Inter Manager(長谷部正道)
    • 【4】UNCTAD: SIDSのような途上国にとって国際海事法の批准は重要
      • 【4】モーリシャス沖で発生した油濁事故について、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、8月14日にHP上で発表した当該事故の責任や補償等を解説する記事の中で、大規模な災害発生時における効果的な国際法の必要性を強調した。国際法の枠組は、国際航路に近接し、海洋環境とその生物多様性に観光業・漁業・水産養殖業などが依存する、モーリシャスのような多くの小島嶼開発途上国(SIDS)にとって非常に重要である。海とその使用に関する国際条約は複数あるものの、全ての国が加盟しているわけでなく、まだ発効していないものもあり、また今回のように、事故を起こした船舶により適用される条約が異なる場合もある。具体的には、「わかしお」はばら積み船のため、タンカー以外の船舶による燃料油流出によって生じた損害を補償するバンカー条約が適用されるが、タンカーによる油濁事故に関するIOPC関連条約に比較すると、補償限度額は約1/4の6517万ドル(約69億円)となる。国連の持続可能な開発目標14は、海の生物を守ることを目標としており、油濁事故などの環境災害を管理するための全ての必要な事前予防措置を講じることによって、可能な限り環境汚染を最少化することも目標に含まれる。
      • 原文 August 21, 2020, 国連(植木エミリ)
    • 【5】コロナによる繋船期間の拡大が船体付着物に関する問題を深刻化
      • 【5】パンデミックに伴う貿易量の減少等によって船舶が繋船される期間が長くなると、船体付着物の増加が懸念され、用船契約上特段の規定がない場合、船主には船体を清掃する義務がある。船体付着物が増加すると、ドライドックをし、生物付着防止塗料の塗り直しなどの保守管理コストが増加するだけでなく、付着物により機関の負担が増して燃料効率が悪くなり、運航速度が遅くなる。こうした問題により船舶が用船契約に定められた運航性能を発揮できなくなると、船主は用船者から船舶の運航性能が不十分であることを理由に損害賠償を求められる恐れがある。こうした船主と用船者間の係争を減らすため、用船契約にBIMOCOの船体付着物条項を取り込み、船体清掃の義務をどちらが負うのか明確化し、船体付着物に伴う経済的な損失に関するリスクを船主から用船者に移転することも可能となる。用船者との民事上の責任問題のほかに、船主は船体付着物に関する諸外国の規制にも留意する必要があり、例えばNZでは2018年5月以降、同国の港湾に寄港する船舶は同国の「船舶危機管理基準(Craft Risk Management Standard)」に従って事前に船底の清掃を行ってから入港することが義務付けられている。この義務に違反すると、船底の清掃のためにNZ領海から離れることを要求され、近隣に清掃を行う施設が無ければ、遠く離れた施設まで航海して船底清掃を行う必要があり貨物輸送行程に大きな遅延を発生させる危険がある。
      • 原文 August 20, 2020, Standard Club(植木エミリ)
    • 【6】わかしおの船首部に注水して沈没させる作業を開始
      • 【6】8月20日、2隻のタグボートがわかしおの船首部を水深3180mのモーリシャスの沿岸から15km離れた公海上に曳航して、全ての油圧作動油などを船体から除去した後、同日16:00から海水を注入して沈没させる作業を開始したと同国の国家危機委員会が発表した。沈没させる海域は専門家や環境団体と広く協議した結果決定されたと当局は説明しているが、Greenpeaceは、船首部分を沈没させれば、大量の有毒な重金属によって海洋生態系を危険にさらし、沈没海域ばかりでなく、仏領レユニオン島周辺の海域など、広範な海域を環境汚染するとして、船首部分を沈没廃棄するのに強く反対している。
      • 原文 August 20, 2020, Barron’s(長谷部正道)
    • 【7】英国政府:入国者に対する隔離措置の対象国を新たに追加
      • 【7】英国政府は、コロナウィルスの新規感染者数が増加しているクロアチア、オーストリア及びトリニダード・トバゴからの入国者に対して、8月22日午前4時から2週間の隔離措置を義務付ける方針を20日に発表した。スコットランドではこれに加えスイスからの入国者に対しても隔離措置が義務付けられる。現在、クロアチアには約1万7千人の英国人旅行者が滞在しており、帰国を急ぐ旅行者で交通機関は混雑することが予想されるが、政府は既にスペイン、フランス、ベルギー、オランダなどからの入国者に対して同様の措置をとっており、これらの国を経由する航空機などは利用できない状況にある。

        ※8/20の英国の感染者数:1,182人(日本1,085人の1.1倍、緊急事態解除基準47人の25倍)
        ※8/20の英国の死者数:6人(日本16人の0.4倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 August 21, 2020, BBC(若林健一)
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