2020/08/18LROニュース(7)

NEWS


※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

トップページ > LROニュース > 2020/08/18LROニュース(7)

記事アーカイブ

  • 2020.08.18 UP
    2020/08/18LROニュース(7)
    • 【1】 米軍がイランからベネズエラに燃料輸送中のタンカー4隻を拿捕
      • 【1】8月14日米司法省は、米国が国際テロ組織に指定しているイラン革命防衛隊の指示によりベネズエラへ燃料油を輸送していたタンカー4隻を拿捕し、輸送していた燃料油約112万バレル(数百万ドル相当)を押収したと発表した。拿捕に関する令状は地方裁判所から発布され、イランから輸送された石油の押収量としては過去最多の規模となった。押収された燃料油は現在米国が保管しており、これの処分により生じる資金はテロ支援国家に関連するものとしてその全額または一部が米国内のテロ被害者の支援に充てられる。押収された燃料油を取戻すためと思われるが、拿捕が執行された直後にはイラン海軍が本件とは無関係の船舶に乗船したことが確認されており、米中央軍がその際の映像を公開している。
      • 原文 August 14, 2020, 米司法省(若林健一)
    • 【2】 トランプ政権がオバマ時代の油田から漏出するメタンガス排出規制を撤廃
      • 【2】オバマ政権下では、Clean Air Actの一環として、既存・新規の石油ガス田から漏出するメタンの量を規制しており、特に中小の事業者が保有する古い石油ガス田の一部は、規制強化によって操業中止に追い込まれるとして石油ガス業界が反対していたが、米環境保護庁(EPA)は8月13日、石油ガス業界保護のため上記規制を撤廃する最終法案を発表した。天然ガスの主成分であるメタンは有用なエネルギー源であるが、石油ガス田やパイプラインから漏出すると、CO₂の84倍温暖化効果の高い強力なGHGである。米国のメタン排出規制緩和の動きは、メタンガス排出に対する規制を強化する方針の欧州委員会の反発を招き、米国産石油ガスの輸入にあたっては、適切なメタン漏出対策が取られたうえで生産・輸送されたものか否か欧州委員会が精査するので、結果として米国の生産・輸出事業者には競争上かえって不利な状況になる可能性がある。EPAの法案は、メタンガスに関する規制だけでなく、ガスの輸送・貯蔵施設から漏出する、スモッグの原因となる揮発性有機化合物の排出規制も併せて撤廃され、これにより、現存する100万近い油田からメタンおよび揮発性有機化合物という二つの汚染物質の排出を規制する法的な制限を無力化することになる。
      • 原文 August 13, 2020, Financial Post(植木エミリ)
    • 【3】 中国政府:南シナ海の自国空軍/海軍に対し米軍への先制攻撃を禁止
      • 【3】先月、米国は2つの空母打撃群を南シナ海に派遣して訓練や夜間偵察作戦を実施し、これに対して中国も海軍による訓練や台湾及び南シナ海での飛行作戦を実施するなど、米軍及び中国軍の双方は南シナ海における活動を活発化させており、制御不能な段階に至ってしまう事態が発生する危険性が高まっている。米国との緊張を緩和し、米国に緊張を高めるような機会を与えたくない中国は、自国の空軍や海軍に対して自制的な行動を求め、また、様々な方法で米国と連絡を取り自国の空軍や海軍に対して決して先制攻撃をしないように指示していることを米国側に伝えたとみられている。また、中国外務省も好戦的な態度をわずかに緩め事態を収拾させるため対話を求める姿勢を見せている。2001年には、中国の海南島付近の南シナ海上空において米軍の偵察機と中国軍の戦闘機が衝突する事件も発生しており、今同じ事態が生じれば結果はより深刻なものになる。米中両国はすでに不測の事態を避けるための取決めや行動規範を策定しているが、両国の関係が悪化している現状を踏まえた見直しが求められる。
      • 原文 August 11, 2020, South China Morning Post(若林健一)
    • 【4】 EU ETSの海運への拡大適用に海運業界が強く反発
      • 【4】欧州委員会は、欧州を世界で最初の炭素中立大陸にするため、7500億ユーロ(約95兆円)の欧州コロナ復興基金および今後7年間の中期予算の約3割を気候変動対策に充てることを計画しているが、復興基金の財源の一つとしてEUの排出権取引制度(EU ETS)の対象を海運にも拡大することを提案しており、国際航空への拡大適用と合わせて年間100億ユーロ(約1.3兆円)の収入増を見込んでいる。この提案に対し海運業界は、欧州委員会の提案は世界的に統一した基準で気候変動対策を行おうとする努力を損ない、EU域外諸国との間に招き新たな貿易戦争の火種となりかねないとして強く反発している。米国船主協会は、全ての非EU諸国の政府にEU ETSの拡大適用に反対し、海運に関する気候変動対策についてはIMOの優位性を尊重するよう求めるとしている。欧州委員会は2012年にも、国際航空輸送全体にEU ETSを拡大適用しようとして米・中政府の強い反発にあい、結局EU域内を中心とした航空輸送にのみEU ETSが適用されることとなったいきさつがある。
      • 原文 August 17, 2020, CNN(植木エミリ)
    • 【5】 グリーンランドの氷床が回復不能なところまで融解
      • 【5】オハイオ州立大学等の研究者達が、北極圏の234の氷河について、2018年までの34年間の状況を分析したところ、毎年夏季に融解して失われる氷の量を回復するのに十分な年間降雪量は得られておらず、グリーンランドの氷床は最早取り返しの付かないレベルまで融解してしまった可能性があることが8月13日学術誌に発表された表記論文により明らかになった。氷河の融解によって、世界の海面は今後年間1mmずつ上昇し、仮にグリーンランドの氷が全て融解した場合、全世界平均で海面は6m上昇し、世界中の多くの沿岸都市が水没する。研究によると、北極圏の氷床は100年に1回しか体積が増加せず、いったん氷床の減少が始まると、その回復は容易でない。米国立雪氷センターの研究者は、地球温暖化対策を進めたとしても、グリーンランド氷床の回復を図ることは困難であり、氷床の融解の速度をいかに穏やかにし、海面上昇に対応できる時間を稼いで、海面上昇による人々の生活への影響を最小限に抑えるかが課題となると語っている。
      • 原文 August 14, 2020, Reuters(植木エミリ)
    • 【6】 ナイジェリア法廷が新たな反海賊法の下で初めての有罪判決
      • 【6】国際商業会議所の国際海事局(IMB)によると、世界の海上で発生する誘拐事件の9割がナイジェリアで発生しており、海上輸送業界からはナイジェリアに対して適切な対応をとるよう強く要請してきた。ナイジェリアのポート・ハーコートの裁判所は8月11日、赤道ギニアの沖合で今年3月にタンカーを乗っ取り乗組員に対する身代金目的20万ドルを奪った容疑で起訴された9人の海賊のうち、容疑を認めている3人に対して、それぞれ罰金1,000万ナイラ(2万6千3百ドル)を課す判決を下した。今回の判決は、海賊の訴追をより容易にする目的で昨年成立した新たな反海賊法に基づき下された初の有罪判決となる。ギニア湾で発生する海賊事件の多くはナイジェリアのデルタ地帯を基地とする海賊により行われているものの、以前はナイジェリアの法律で裁くことは困難であった。ギニア湾で発生した誘拐事件は昨年の上半期では27件であったが今年は49件に上っている。
      • 原文 August 12, 2020, Reuters(若林健一)
    • 【7】 入国者に検査を実施することで自主隔離期間を削減すべきか?
      • 【7】英国政府は、スペインに加え8月15日からフランス、オランダ、モナコ、マルタなどからの入国者に対して無条件で2週間の自主隔離を義務付けることを急きょ発表し、帰国を急ぐ旅行者で交通機関が大混乱する事態となったが、感染者数が増加しているクロアチア、トルコ、ギリシャなどからの入国者に対しても今後同様の措置が取られる可能性がある。この政府の対応について、入国者に対して感染の有無を確認する検査を実施することで自主隔離期間を1週間程度に削減できると指摘する声が多くの科学者から上がっている。政府の科学顧問グループが先週公表した資料でも、検査及び1週間程度の自主隔離を実施することで感染した無症状の入国者の約85%について感染拡大を防ぐことが可能とされ、同様の措置で感染した無症状の入国者の94%について感染拡大を防ぐことが可能とする研究結果も存在する。一方で、欧州各国で感染者が増加傾向にある現状で自主隔離期間を削減することは危険であると指摘する声もある。

        ※8/16の英国の感染者数:1,040人(日本1,238人の0.8倍、緊急事態解除基準47人の22倍)
        ※8/16の英国の死者数:5人(日本3人の1.7倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 August 17, 2020, The Guardian(若林健一)
  • 資料閲覧 その他