2020/08/13LROニュース(7)

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  • 2020.08.13 UP
    2020/08/13LROニュース(7)
    • 【1】北極圏の温暖化がこれまでの研究予測より早く進展
      • 【1】コペンハーゲン大学等の研究者がNature Climate Change誌に発表した研究によると、北極圏の気温上昇は、過去40年間で10年に1℃、バレンツ海やスヴァールバル諸島周辺では1.5℃のペースで上昇しており、従来の予測をはるかに上回る速度で進行していたことが分かった。既存の研究では、海面付近の気温の上昇速度は低く見積もられていたことから、結果的に海氷の面積の融解も予測されていたより速く進んでいたことになる。研究者たちが現在の北極における気候変動と、グリーンランドの氷河期である12万年前から1.1万年前までの気候変動を比較したところ、北極圏で現在観測されているような気候変動は最終氷期にしか観測されておらず、その間グリーンランド氷床付近の気温は40年から100年の間に10℃~12℃複数回上昇していたことが分かった。現在使用されている北極の気候変動モデルは、過去40年間の急激な気温上昇をモデルの中に組み入れていないが、こうした最近の急激な気温上昇を反映してより正確な気候変動予測モデルを作成すれば、パリ協定の目指す気温上昇範囲内に、気温上昇を抑え込むために必要なGHG排出削減量もより正確に割り出すことが可能となる。
      • 原文 August 10, 2020, Phys.org(植木エミリ)
    • 【2】 どうして多くの外航船がモーリシャス近海を通航するのか?
      • 【2】ばら積み船の「わかしお」は、ブラジルに向けた航海の11日目にモーリシャスで座礁したが、多くの外航船が広いインド洋でなぜわざわざモーリシャスの近海を航行するのだろうか?第1の理由は、単純に地理的なもので、モーリシャスや
        近隣のレユニオン島は、中・日・韓などのアジア諸国と西アフリカ諸国・ラ米諸国・欧州・北米諸国を結ぶためのマラッカ海峡と喜望峰を短絡するルート上にあるためである。第2の理由は、16世紀の時代と同様に、緊急時のことを配慮して、船舶は出来るだけ陸に近い航路を取りがちで、また船員が高価な衛星回線を使わなくても家族と連絡が取れるように、インターネットの電波が届く陸域に近い航路を運航する傾向がある。
      • 原文 August 11, 2020, AJOT(長谷部正道)
    • 【3】 USCG: 自動/自律運航船について広く意見募集
      • 【3】8月11日、USCGは意見募集(Request for Information: RFI)を発出して、自動/自律運航船と関連技術が米国船籍船や米国に寄港する外国籍船に与える影響に関する16の質問について意見を募集するとともに、併せて、今後の自律運航船の開発に向けて障害になる既存の規制等についても意見を募集する。RFIにおいては、海難事故の原因の75%は人為的なミスに起因するとし、2019年に保険会社のAllianz社の調査を引用して人為的なミスによって16億ドル(約1700億円)の経済的損失が発生しているとし、高度自動化/自律運航船の導入によって、海上交通の安全性の向上が期待できるとしている。一方で、自動化/自律運航船の導入のためには、航法・通信・機器の運用・貨物の管理・緊急時対応・保守管理などの課題について検討する必要があるとしている。今回のRFIはホワイトハウスと運輸省の共同の政策である「自動運転車両(AVs)4.0の分野における米国のリーダーシップの確保」を補足するものであり、USCGはこうした自動化技術について今後関係省庁との調整を行うとしている。RFI本文は以下のリンク参照。
      • 原文 August 11, 2020, USCG(長谷部正道)
    • 【4】 2050年までに3GtのCO₂を20か所の石油ガス田に貯留する必要性
      • 【4】8月6日、英国石油ガス規制機関(OGA)は、既存の石油ガス生産施設の活用によって、2050年までに削減することが必要なCO₂排出量の3割を削減できるとする報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①石油ガス掘削プラットフォームの電化は、石油ガス生産から発生するCO₂の削減と、事業の社会的存続のために不可欠。プラットフォームの電化によって、2030年までに年間2-3MtのCO₂の削減が可能となる。②石油ガス生産業界の既存の能力・インフラ・サプライチェーンは、エネルギー統合に重要な役割を果たし、浮体式洋上風力発電を含む洋上再生可能エネルギー施設の拡張を支援することが可能。③生産を終了した石油ガス田とインフラの再利用によって、炭素回収貯留(CCS)を加速化することが可能で、陸上の炭素中立ハブと接続することにより、設備投資額の2-3割を節約することが可能。④炭素中立目標を達成するためには、2050年までに合計で
        3GtのCO₂を貯留できる約20か所のCCS施設の建設が必要。⑤天然ガスを原料とし、CCS技術を活用してBlue Hydrogenを生産すれば、英国内の天然ガス供給の約3割を脱炭素化し、上記20か所のCCS施設に保管される約半分のCO₂を供給することができる。
      • 原文 August 6, 2020, OGA(長谷部正道)
    • 【5】 モーリシャス油濁事故:船体に残されていた燃料油の大部分を抜き取り
      • 【5】モーリシャス首相は8月12日、7月25日にモーリシャス沖で座礁し、約4千トンの燃料油を積載していたMOLのばら積み船から、船内に残っていた3千トン以上の燃料油をポンプで汲み上げたことを発表した。汲み出された燃料油はヘリコプターで陸上に移送されるか、同船の船主である長鋪汽船が保有する他の船舶に移送されている。同国の旧宗主国である仏政府は、近隣のレユニオン島から軍用機で油濁防除装置を輸送し、日本政府も仏の活動を支援するため6人の専門家チームを派遣している。モーリシャスの沿岸警備隊や、複数の警察部隊も現場である島南東部へ集結しており、現地警察によると、船体の亀裂は拡大を続けており、いつ二つに折損してもおかしくない状況で、仏海軍と協力して船体の周りに油集ブームを張る計画を進めている。
      • 原文 August 12, 2020, BBC(植木エミリ)
    • 【6】 ReCAAP ISC: 7月月間報告書
      • 【6】アジア海賊対策地域協力協定情報共有センター(ReCAAP ISC)が発表した7月の月間海賊報告書によれば、7月に同センターに報告された海賊事件は南シナ海で発生した未遂事件1件であった。武装強盗事件は既遂事件5件の報告があり、このうち1件は重要度3(賊は武装するも、乗組員の負傷なし)、4件は重要度4(賊は武装せず、乗組員の負傷なし)であった。今年1月から7月までに報告された海賊・武装強盗事件は計58件を数え、前年同期の37件から50%以上増加し2016年以降最多となっている。シンガポール海峡での違法乗船事件は7月に3件報告されており、今年に入り計19件発生しており、このうち15件が東航レーン内で発生している。7月は船員の誘拐事件の発生は報告されていないが、アブサヤフのメンバーがサバ州東方沖を通過する船舶を標的として船員の誘拐事件を計画しているとの情報もあり、身代金目的での船員の誘拐事件は依然として深刻な懸案事項となっている。
      • 原文 August 12, 2020, ReCAAP ISC(若林健一)
    • 【7】 学校再開までにウィルスの検査・追跡システムの改善が必須
      • 【7】 英国政府は9月からすべての学校を再開させる方針であるが、これにより実行再生産数(R)の値が0.5上昇すると言われている。ブレア政権で政府の首席科学顧問も務めた専門家は、現状は学校を安全に再開できる状況には程遠いとした上で、政府がウィルスの検査・追跡システムの改善を図らないまま学校を再開すれば、再び全国的な感染拡大を招き大規模なロックダウンを発令する事態を招くことになると警鐘を鳴らしている。同システムは感染者やその接触者に連絡をとり自己隔離を求めるものだが、同氏は、政府が運営を専門知識がない一般企業に任せており、自己隔離が実施されているかを確認する作業は一切行われていないと指摘している。

        ※8/11の英国の感染者数:1,148人(日本842人の1.3倍、緊急事態解除基準47人の24倍)
        ※8/10の英国の死者数:102人(日本5人の20倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 August 11, 2020, Evening Standard(若林健一)
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