2020/07/17LROニュース(7)

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  • 2020.07.17 UP
    2020/07/17LROニュース(7)
    • 【1】 南シナ海:ASEAN諸国は当面米中対決に距離を置く
      • 【1】中国の南シナ海における権益主張を退けた2016年の仲裁裁判所の判決を支持する立場を米国が明確にした一方で、ASEAN諸国は当面米中の対立に距離を置く立場をとると見られる。比大統領報道官は7月14日、対立を深める米中が互いに比に対して味方に付くように迫るだろうが比は国益を優先して対応すると述べ、また、2016年の仲裁裁判所の判決を支持する立場を示しつつ、これが中国との関係のすべてではなく、互いの立場を理解したうえでASEANの場や南シナ海行動規範(Code of Conduct)などのメカニズムを通して問題を解決し、関係を前進させる必要があるとも語った。マレーシア、ベトナム、インドネシアなどの専門家からは、今回の米国の声明は近年南シナ海で米国が実践してきたことを正式に言葉にしたに過ぎず、中国の支配が優勢な南シナ海の状況に変化をもたらすことまでは期待できないとの見解や、米中両国は国連海洋法条約に従って問題を解決すべきであるとの意見も聞かれる。さらに、今回の中国に対する米国の強い姿勢は、支持率低迷にあえぐトランプ政権が対中路線を強めることで支持率を回復させ、対中貿易交渉を有利に運ぶ狙いがあるためで、決して長続きはしないとの見解を示す専門家もいる。
      • 原文 July 14, 2020, The Straits Times(若林健一)
    • 【2】 ReCAAP ISC週間報告書(7月7日―13日)
      • 【2】アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)に、7月7日から13日まで通報された事件は、重要度4(賊は武装せず、乗組員の負傷なし)の武装強盗事件が1件であった。7月12日午前2時15分ころ、インドネシアのビンタン島から北西約6.6海里のシンガポール海峡の東航レーンをベトナムに向け航行中の貨物船で、機関室内の倉庫にいる3人の賊が目撃されたが警報が作動したことから賊は逃走した。乗組員総員を船橋に召集して無事を確認するとともに船内の調査を実施したところ、主機の予備品数点が盗まれていることが判明した。
      • 原文 July 14, 2020, ReCAAP(若林健一)
    • 【3】 EMSA: 遠隔操縦機を使用してSOx排気規制海域の船舶排気を監視
      • 【3】デンマーク政府は2018年から毎年、欧州海事安全庁(EMSA)が運用する遠隔操縦飛行機システム(RPAS)サービスを利用し、硫黄酸化物排出規制海域(SECA)を航行する船舶の排気を監視している。RPASは、沿岸警備に関わる国家の海事監視活動を支援する為に開発され、海洋汚染物質や大気汚染物質の監視の他にも、違法漁業・麻薬の密輸・不法移民の摘発や国境監視、捜索救難活動に利用されている。RPASは、ノルウェーのNordic Unmanned AS社等が実際に運航する垂直離発着回転翼機(VTOL)を使用し、航続時間6時間以上で夜間飛行もでき、機体に搭載した集臭システムで船舶からの排気を採集・分析して、燃焼された燃料に含まれるSOxを検知する。収集されたデータは、画像、動画、飛行経路、測定値と共にリアルタイムでRPAS情報センターに転送される。情報センターは検査官が参照できるEUのデータベース(THETIS-EU)に直結しており、規制値以上のSOxを排気している船舶が発見された場合、次の寄港地に連絡して立ち入り検査を実施することが可能となる。
      • 原文 July 15, 2020, EMSA(植木エミリ)
    • 【4】 メタンの排出量を抑制するための排出源対策が重要
      • 【4】(論説)Global Carbon Project(GCP)は7月14日、2017年のメタンの排出量が最高値を記録し、今後も増加する可能性があるとの学術研究を発表した。CO₂の86倍もの温暖化効果をもたらす強力なGHGであるメタンは、排出量の半分以上が人為的な要因により排出され、今世紀に入ってからの総排出量は9%上がっている。CO₂排出量は近年中にピークアウトすることが予測されており、ロックダウンに伴う活動制限によっても大きく減少したが、農業や化石燃料の使用が主な原因であるメタンの排出量には大きな影響は出ず、このままのペースで排出が続くと、地球の気温は2℃以上上昇し、数千万人の命を脅かす熱波や沿岸部の洪水などの危険性がある。特に牛や羊といった家畜のゲップ等から放出されるメタンは、化石燃料の生産・輸送・使用に伴う排出に並ぶ主要な発生源であり、科学者達は、ガス井やパイプライン等の石炭・ガスインフラからの流出を防ぐと共に、特に畜牛と稲作を中心とした農業の見直しが必要と警告している。湿地帯や泥火山から発生する天然のメタンの放出量は、今世紀に入ってからは落ち着いているが、北極圏の温暖化は他の地域の2倍の速度で進行しており、永久凍土の解凍に伴うメタン放出による更なる温暖化の進行が懸念されている。
      • 原文 July 14, 2020, The New York Times(植木エミリ)
    • 【5】American Club: 船員交代時の乗船前の検査・検疫の関する推奨ガイダンス
      • 【5】世界保健機関(WHO)と国際海事健康協会(IMHA)は、乗船前の船員の検査と検疫に関するCOVID-19ガイダンスを発表し、さらにWHOは船主が船員の健康管理会社と連携して使用することができるPCR検査キットの世界的に承認され勧奨される製造事業者のリストを更新した。船主はさらに「コロナに感染している可能性が疑われる者に対する検査方法」に関するWHOの暫定ガイドラインに従って、契約している船員の健康管理会社が検査を実施しているか確認を行う必要がある。WHOは検査方法については、鼻やのどから検体を採取して行う検査の方が唾液検査より信頼性が高いと推奨している。IMHAは船舶に健康な交代要員を送り届けるためのベストプラクティスをまとめた「船舶に健康な交代要員を確保する方法:検疫と検査に関するリスクの緩和」と題する暫定ガイダンスも発表している。
      • 原文 July 15, 2020, American Club(長谷部正道)
    • 【6】Climate TRACE: AIや衛星を活用してGHGの排出をリアルタイムで監視
      • 【6】現在の科学では地球の大気中にどれだけのGHGがあるかについては解明されているが、発電所・工場・大型船舶などのGHGを実際に排出している個別の排出源を特定する技術は存在しない。7月15日、ゴア元米国副大統領を中心とする9つの機関は、人工知能(AI)・衛星画像加工技術・機械学習・リーモートセンシング技術を活用して、GHGの排出源をリアルタイムで特定するためのClimate TRACE(Tracking Real-time Atmospheric Carbon Emissions)事業を立ち上げたと発表した。現状では多くの場合正確なGHG排出量の測定・報告方法が確立されておらず、これまでは排出者自身が計測し文書で政府等に報告された情報を手作業で集計していたため、古くて不完全なGHG排出量の統計しか発表されてこなかった。改善された人工知能のアルゴリズムや低コストの衛星開発など、本事業の実現に必要な要素技術は、近年多くの企業によって大きく進歩しているが、現状では異なる組織がばらばらに技術を保有している状況にある。Climate TRACEの開発チームは既に基礎的なworking prototypeを作成しているが、いろいろな機関と連携して、様々な要素技術を統合・改良して、2021年夏には最初のモデルを公表する予定である。
      • 原文 July 15, 2020, Carbon Tracker(長谷部正道)
    • 【7】ロンドンの労働者の3分の1が年末まで在宅勤務を継続する意向
      • 【7】英国のコンサルティング会社が国内のオフィスで働く労働者1,000人を対象に実施した調査 によると、英国全体では既に通勤を再開した労働者の割合は約21%に留まり、その割合は9月までに58%に、年末までに72%まで増加すると見込まれている 。一方で、他の地域と比べて長い通勤時間を要するロンドンでは、年末までに通勤を再開する労働者の割合は68%に留まるとされ、他の地域に比べて低い結果となった。8割の労働者が職場での感染防止に不安を感じることを主な理由に挙げている。

        ※7/15の英国の感染者数:538人(日本332人の1.6倍、緊急事態解除基準47人の11倍)
        ※7/15の英国の死者数:85人(日本2人の42倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 July 16, 2020, Evening Standard(若林健一)
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