2020/07/09LROニュース(7)

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  • 2020.07.09 UP
    2020/07/09LROニュース(7)
    • 【1】 UMAS報告書:代替燃料から排出されるCO₂の算定方法
      • 【1】環境防衛基金(Environmental Defense Fund)とUniversity Maritime Advisory Service(UMAS)は7月6日、国際航空業界で採用されているような、持続可能な代替燃料の環境的な影響を正確に把握する手法を海運においても導入すべきとする報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①海運業界におけるGHGの削減には、燃料が環境に与える影響を真に反映した規則の導入が必要であり、国際民間航空機関(ICAO)が既に導入している方法を参考にして、代替燃料の製造・輸送・燃焼といったライフサイクル全体から直接・間接的に排出されるメタンを含む全てのGHG排出量を正確に計算するための規則をIMOも作成すべきである。②ICAOが採択している「国際民間航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム(CORSIA)」では、それぞれのバイオ燃料によるGHG排出量をきちんと算出する方法が定められており、この方法に従うと、燃焼時にGHGを排出しないものであっても、ライフサイクル全体で評価するとGHG排出量が石油燃料を上回るものなどもあり、全てのバイオ燃料のGHG排出量がゼロという訳ではない。
      • 原文 July 6, 2020, UMAS(植木エミリ)
    • 【2】 米国海軍と中国海軍が南シナ海で同時演習
      • 【2】7月4日、米海軍の空母ロナルド・レーガン率いる空母打撃群と空母ニミッツ率いる空母打撃群がフィリピン海から南シナ海に進出し、2014年以降初めて空母2隻による合同演習を実施した。空母ニミッツはこれに先立ちフィリピン海において、空母セオドア・ルーズベルト率いる空母打撃群とも合同演習を実施している。これに対して中国海軍も南シナ海の西沙諸島周辺において同時期に演習を実施した。米国防総省は中国の動きに対し、米国の自由で開かれたインド太平洋構想や、2002年に中国とASEANで合意した南シナ海行動宣言が求める軍事訓練の抑制に反するものであると批判した。一方で中国政府は、西沙諸島は自国の領土であると改めて主張したうえで、今回の演習は中国の主権の行使であり非難されるものではないと述べた。また、中国とASEAN諸国双方の努力により南シナ海の情勢は安定し健全な発展を遂げているが、米国は大規模な軍事演習を実施することにより、各国間の関係に楔を打ち、軍備増強を図ることで地域の平和や安定を損なわせようとしていることは明らかであると批判した。7月6日時点で米国の空母打撃群の周辺で中国の艦船が活動しているとの報告もある。
      • 原文 July 6, 2020, USNI News(若林健一)
    • 【3】 海運会社トップから見た海運脱炭素化の課題

      • 【3】ShellとDeloitteは、世界の80の海運会社の経営者等に海運の脱炭素化へ向けた課題についてインタビュー調査を実施し、7月7日報告書を公表したところ、明確となった今後2-3年間で実行すべき主要な課題は以下のとおり。①顧客需要の拡大:低炭素・ゼロ炭素海運を求める用船主・荷主の規模が拡大し、長期用船契約を締結、或いは船舶の環境性能が選択の基準(green procurement criteria)となること。②競争条件の均衡化:地域的に環境規制が異なることによって、船社間の競争条件が損なわれないよう、IMOが2023年までに短期的なCO₂排出規制を決定するにあたっては、EU・中国・米国等の地域的な規制と整合性をとること。③横断的な共同研究開発:海運業界・エネルギー業界等での連携を通じて、商業的に採算がとれる新たな代替燃料を生産・供給するインフラを整備するため、より多くの資本と経験を共有すること。④試験事業の拡大:研究開発の効率性を向上させるために、荷主・用船者・運航者・船主・港湾管理者等が連携し、特定の船種や航路において大規模な試験事業を実施すること。モデル事業としては、コンテナ船の様に定期的に短距離かつ頻繁な運航をする事業が望ましい。⑤業界全体の協調した取り組み:Getting to Zero CoalitionやClean Cargo Working Groupといった既存のゼロ炭素化イニシアチブの目的を統合し、それぞれの活動間の協力・調整を強化すること。
      • 原文 July 7, 2020, Shell(植木エミリ)
    • 【4】 Seafarers UK: 交代できずに自殺した船員の正確な統計がないことが問題
      • 【4】Seafarers UKによって支援されている海事福祉慈善団体は、船員にとって有用な情報源を提供し、牧師等による助言・個別相談などを通じて、商船に乗務する船員のメンタルヘルスの向上に継続的に努めている。しかし、コロナ蔓延対策として船員の交代が妨げられているため、多くの船員が当初の労働契約の期限を超えて乗務を強いられ、寄港地における上陸も拒否され、必要な医療行為を受けることもできず、牧師や慈善団体の職員の訪船活動も厳しく制限され、家族や友人と無料で連絡を取る機会も制限されている。この結果、運航休止中のクルーズ船の乗組員を含む船員の自殺が増加しているが、自殺した船員の数について信頼できる統計を誰も作成していないことは問題である。この原因は船員が自殺死しても、船主がP&I保険から保険金を受け取れないために、事故による死亡として処理されることがあるのも一因と考えられる。船員の自殺死の正確な規模が分からない限り、有効な対策を講じることは困難であり、全ての船員の自殺件数を正確に把握・記録し、Seafarers UKのような船員福祉の向上に働く組織と情報を共有するためには、どのような手段が必要か国際労働機関は海事労働条約に基づき直ちに検討する必要がある。
      • 原文 July 3, 2020, Seafarers UK(長谷部正道)
    • 【5】 サウジアラビアで世界最大のグリーン水素製造計画
      • 【5】米国の工業ガス製造大手のAir Products & Chemicals(APC社)は7月7日、サウジアラビアに風力と太陽光による4GWの再生可能電力を利用して、50億ドル(約5350億円)規模となる世界最大の水素生産工場を建設することを発表した。新事業は、サウジアラビアのACAW Power社と、エジプト・ヨルダンとの国境地帯に建設される新都市Neomとの共同事業となり、生産工場が稼働すれば、水素を燃料とするバス2万台に供給可能な量となる650トンの持続可能な水素(Green Hydrogen: GH)毎日生産することが可能である。生産された水素はアンモニアとして世界各国に輸出され、輸入先で再度水素に変換されて使用される。アンモニアの製造は2025年から開始される予定。サウジ政府は新都市Neomを再生可能エネルギーとGHの世界的な重要拠点とする予定で、国境沿いの特別経済特区に建設される生産工場には、世界中から100万人の人材を就労させることを目標としている。現在、GHは天然ガスから製造されるBlue Hydrogen(BH)に比べると価格競争力は劣るが、安い電力の供給と電解槽の運転効率を高めるための十分な長期・安定購入者がいれば、商業的な採算をとることも可能とAPC社は考えている。
      • 原文 July 7, 2020, Green Tech Media(植木エミリ)
    • 【6】 欧州議会環境委員会:海運をEU排出権取引制度に取り込むことで合意
      • 【6】海運は現段階ではEU排出権取引制度(ETS)の対象となっていないが、7月7日、欧州議会環境委員会は海運をEU ETSの対象とすることで合意した。9月に最終的に欧州議会の本会議で承認されたうえで、欧州委員会と欧州理事会と3者で最終的な実施条件を詰めて、2021年からETSの対象となる見込み。同委員会は、海運事業者に対して、対2018年実績比で、CO₂排出量を2030年までに最低4割削減することを義務付けることについても合意した。同委員会はさらに船舶のエネルギー効率の向上のため、ETSからの収益を財源として、2023年から2030年の間「海洋基金」を創設することも提案している。
      • 原文 July 7, 2020, Reuters(長谷部正道)
    • 【7】 英国議会が第2波に備え感染防止用保護具の調達計画の策定を政府に要請
      • 【7】コロナウィルスの感染が拡大して以降、医療・福祉関係者は感染防止用保護具が不足する中でゴム手袋やごみ袋を使って間に合わせの保護具を作成するなどして感染者の対応に当たったが、これまでに300人以上が犠牲になっている。7月8日、英国議会の決算委員会は、コロナウィルス感染拡大の第2波に備え、医療・福祉関係者が使用するマスクやガウン等の感染防止用保護具の調達と配給に関する詳細な計画を2ヶ月以内に準備することを政府に対して要請した。同委員会は、政府は2016年に大規模な感染症を想定した訓練を実施し、医薬品や医療器具を確保する計画が不十分であるとの指摘も受けていたにもかかわらず、今回準備に失敗したと指摘している。

        ※7/7の英国の感染者数:581人(日本175人の3倍、緊急事態解除基準47人の12倍)
        ※7/7の英国の死者数:155人(日本1人の155倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 July 8, 2020, The Guardian(若林健一)
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