2020/07/08LROニュース(7)
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2020.07.08 UP
2020/07/08LROニュース(7)
- 【1】 仏を中心とした企業連合がエネルギー転換のための9事業を開始
- 【1】2019年に開催された仏海運経済会議の際に結成されたCMA CGM/Cluster Maritime Français (仏海事クラスター)などの仏の事業者にバルチラを加えた11社の企業連合は、作業部会を設けて、エネルギー転換のための具体的な事業選定を進めていたが以下の9事業を特定し発表した。①持続可能エネルギーから生産される水素燃料の運輸部門における供給体制の開発。②様々な運輸分野に対応できるバイオ燃料の開発。③運輸部門におけるバイオガスと合成ガスの利用拡大。④サプライチェーン全体における化石燃料からグリーンエネルギーへの転換。⑤2021年末までに排気ゼロ自動車試験事業の開始。⑥最も環境負荷が低いdoor-to-doorの物流経路を選択できるデジタル物流経路計画システムの開発。⑦トンキロ当たりのエネルギー効率の向上を図るための運用管理システムの最適化。⑧より環境にやさしい複合物流プラットフォームの創設。⑨運輸・物流分野におけるエネルギー転換事業の効果を評価するための方法の統一。
- 【1】2019年に開催された仏海運経済会議の際に結成されたCMA CGM/Cluster Maritime Français (仏海事クラスター)などの仏の事業者にバルチラを加えた11社の企業連合は、作業部会を設けて、エネルギー転換のための具体的な事業選定を進めていたが以下の9事業を特定し発表した。①持続可能エネルギーから生産される水素燃料の運輸部門における供給体制の開発。②様々な運輸分野に対応できるバイオ燃料の開発。③運輸部門におけるバイオガスと合成ガスの利用拡大。④サプライチェーン全体における化石燃料からグリーンエネルギーへの転換。⑤2021年末までに排気ゼロ自動車試験事業の開始。⑥最も環境負荷が低いdoor-to-doorの物流経路を選択できるデジタル物流経路計画システムの開発。⑦トンキロ当たりのエネルギー効率の向上を図るための運用管理システムの最適化。⑧より環境にやさしい複合物流プラットフォームの創設。⑨運輸・物流分野におけるエネルギー転換事業の効果を評価するための方法の統一。
- 【2】 ESPO: EU Taxonomyに対して強い懸念を表明
- 【2】EUは2050年までの炭素中立を目指して、投融資の判断基準として同目的に適合するかの適格性を判断する基準となるEU Taxonomyを導入する予定だが、欧州港湾協会(ESPO)は7月2日声明を発表し、EU Taxonomyに対して懸念を表明したところその概要は以下のとおり。①運輸・エネルギー・デジタルの分野においては、既にTrans-European NetworksやConnecting Europe Facilityといった既存の制度に従って、投資の優先順位などが決まっており、こうした既存の枠組に屋上屋を重ねる形でEU Taxonomyという新たな基準を設けるべきでないし、既に決定されているインフラ事業の投資適格性基準に優先する形でEU Taxonomyが適用されることに反対する。②新たな投資適格性の定義や基準を導入することは、現在実際に投資計画を進めている港湾関係者等に対して、計画策定の複雑性を高め混乱をもたらす。③既存の投資要件・基準が存在しない分野においては、投資家が持続可能な投資を行うのを支援・促進するための新たな技術的な選定基準を導入することは認めるが、その際にも持続可能な経済活動や投資を定義するにあたっては、どういう技術を選択するかについて中立(technology neutral)であること(つまり化石燃料たるLNG関連インフラへの投資を排除しないこと)を要求する。④また気候中立性という目的を達成するにあたり、短期的・中期的な経過措置を認め、転換への支援も実施すべきである。⑤港湾に関するTaxonomyの技術的な基準を作成するにあたっては、全ての関係者と連携・協議しながら完全な透明性を持った形で進められ、EUの既存の分野別の規制や加盟国の優先事項などを十分考慮して、包括的・論的整合性をもって進められるべきである。
- 【2】EUは2050年までの炭素中立を目指して、投融資の判断基準として同目的に適合するかの適格性を判断する基準となるEU Taxonomyを導入する予定だが、欧州港湾協会(ESPO)は7月2日声明を発表し、EU Taxonomyに対して懸念を表明したところその概要は以下のとおり。①運輸・エネルギー・デジタルの分野においては、既にTrans-European NetworksやConnecting Europe Facilityといった既存の制度に従って、投資の優先順位などが決まっており、こうした既存の枠組に屋上屋を重ねる形でEU Taxonomyという新たな基準を設けるべきでないし、既に決定されているインフラ事業の投資適格性基準に優先する形でEU Taxonomyが適用されることに反対する。②新たな投資適格性の定義や基準を導入することは、現在実際に投資計画を進めている港湾関係者等に対して、計画策定の複雑性を高め混乱をもたらす。③既存の投資要件・基準が存在しない分野においては、投資家が持続可能な投資を行うのを支援・促進するための新たな技術的な選定基準を導入することは認めるが、その際にも持続可能な経済活動や投資を定義するにあたっては、どういう技術を選択するかについて中立(technology neutral)であること(つまり化石燃料たるLNG関連インフラへの投資を排除しないこと)を要求する。④また気候中立性という目的を達成するにあたり、短期的・中期的な経過措置を認め、転換への支援も実施すべきである。⑤港湾に関するTaxonomyの技術的な基準を作成するにあたっては、全ての関係者と連携・協議しながら完全な透明性を持った形で進められ、EUの既存の分野別の規制や加盟国の優先事項などを十分考慮して、包括的・論的整合性をもって進められるべきである。
- 【3】香港で船員交代を実施したMSCのコンテナ船でクラスターが発生
- 【3】6月26日に香港から寧波港に到着したMSCのコンテナ船の乗組員24名のうち、11名がコロナウィルス陽性であることが確認された。この11名のうち9名は香港で香港船主協会が6月に新たに導入した船員交代の手続きに従い乗船した船員で、香港においては検疫措置が取られていなかった。これらの船員はインドネシア・ギリシャ・クロアチアから6月21日から23日にかけて香港に到着し、乗船までは市内のホテルに宿泊していたが、24日に乗船・出港している。寧波入港時に中国の検疫官が陽性の患者を発見した時点では、全ての船員は無症状だった。同船と乗組員は寧波港で監視下に置かれており、香港健康保護センター(CHP)は中国当局とともに情報収集を継続している。
- 【3】6月26日に香港から寧波港に到着したMSCのコンテナ船の乗組員24名のうち、11名がコロナウィルス陽性であることが確認された。この11名のうち9名は香港で香港船主協会が6月に新たに導入した船員交代の手続きに従い乗船した船員で、香港においては検疫措置が取られていなかった。これらの船員はインドネシア・ギリシャ・クロアチアから6月21日から23日にかけて香港に到着し、乗船までは市内のホテルに宿泊していたが、24日に乗船・出港している。寧波入港時に中国の検疫官が陽性の患者を発見した時点では、全ての船員は無症状だった。同船と乗組員は寧波港で監視下に置かれており、香港健康保護センター(CHP)は中国当局とともに情報収集を継続している。
- 【4】自律運航船技術開発に有効なシミュレーター技術
- 【4】英国ソレント大学の海事科学工学院の研究者達が参加して、140万ポンド(約1億9千万円)をかけて、実施されているMAXMAS事業では、2年間をかけて、自律運航船が衝突を回避するために海上交通法規を守るためのプログラムを開発しているが、第一段階ではシミュレーターを用いて、いくつかの海上交通に関するシナリオを再現し、交通法規に従って衝突を回避するためのアルゴリズムを試験したうえで、第2段階として、自律機雷掃海艇を使用して海上試験を行うこととしている。EUでは10の船員訓練シミュレーションセンターが連携する欧州海事シミュレーターネットワーク(EMSN)が、4300万ユーロ(約52億円)の事業費をかけて、自律運航船の運航に欠かせない港湾・船舶・船舶代理店等の関係者間の情報交換システムの開発を行っており、システム開発に必要な情報を収集するために300隻の実際の船舶に情報を集め転送するための機器を搭載して情報を収集し、船舶の運航と寄港のタイミングを最適化し、燃料コストと排気の最小化を進めるためのシステムを開発しているが、300隻の船舶から集められる情報は限られているので、EMSNを活用すれば、シミュレーター上で様々な状況を再現して必要な情報をより多く迅速に集めることができる。
- 【4】英国ソレント大学の海事科学工学院の研究者達が参加して、140万ポンド(約1億9千万円)をかけて、実施されているMAXMAS事業では、2年間をかけて、自律運航船が衝突を回避するために海上交通法規を守るためのプログラムを開発しているが、第一段階ではシミュレーターを用いて、いくつかの海上交通に関するシナリオを再現し、交通法規に従って衝突を回避するためのアルゴリズムを試験したうえで、第2段階として、自律機雷掃海艇を使用して海上試験を行うこととしている。EUでは10の船員訓練シミュレーションセンターが連携する欧州海事シミュレーターネットワーク(EMSN)が、4300万ユーロ(約52億円)の事業費をかけて、自律運航船の運航に欠かせない港湾・船舶・船舶代理店等の関係者間の情報交換システムの開発を行っており、システム開発に必要な情報を収集するために300隻の実際の船舶に情報を集め転送するための機器を搭載して情報を収集し、船舶の運航と寄港のタイミングを最適化し、燃料コストと排気の最小化を進めるためのシステムを開発しているが、300隻の船舶から集められる情報は限られているので、EMSNを活用すれば、シミュレーター上で様々な状況を再現して必要な情報をより多く迅速に集めることができる。
- 【5】MPA: 海事脱炭素化のための国際助言パネルを設置
- 【5】シンガポール海事基金(SMF)は7月1日、シンガポール海事港湾庁(MPA)の支援を受け、海事関係業界の脱炭素化の実施を支援する戦略を立てる「海事脱炭素化のための国際助言パネル(IPA)」を設置したことを発表した。IAPでは、海事脱炭素化を実現するための段取りや、燃料転換を加速させるための政策について審議し、Maritime Singaporeが実施すべき施策について提言を行う。海事脱炭素化には分野横断的な議論が必要なため、IAPのメンバーには、海運企業や港湾管理者ばかりでなく、学識経験者・船級協会・海事保険/金融事業者・エネルギー会社・機関製造事業者・造船事業者・船主協会・政府関係者の代表が参加し、専門知識を活用して総合的な戦略を策定する。第一回会合は同日オンライン会議にて開催され、政府からは運輸・保健担当上級大臣が出席した。
- 【5】シンガポール海事基金(SMF)は7月1日、シンガポール海事港湾庁(MPA)の支援を受け、海事関係業界の脱炭素化の実施を支援する戦略を立てる「海事脱炭素化のための国際助言パネル(IPA)」を設置したことを発表した。IAPでは、海事脱炭素化を実現するための段取りや、燃料転換を加速させるための政策について審議し、Maritime Singaporeが実施すべき施策について提言を行う。海事脱炭素化には分野横断的な議論が必要なため、IAPのメンバーには、海運企業や港湾管理者ばかりでなく、学識経験者・船級協会・海事保険/金融事業者・エネルギー会社・機関製造事業者・造船事業者・船主協会・政府関係者の代表が参加し、専門知識を活用して総合的な戦略を策定する。第一回会合は同日オンライン会議にて開催され、政府からは運輸・保健担当上級大臣が出席した。
- 【6】より良い/より環境に配慮した/より迅速な復興の実現
- 【6】6月25日、英国気候変動委員会(CCC)は議会に対し、昨年の気候変動対策の進捗状況を分析し、今後の取るべき対策を勧告する年次報告書を提出した。今年の年次報告書は例年のものとは大きく異なり、コロナ経済危機からの環境に配慮した復興(green recovery)に重点を置き、初めて各省ごとに事実上の「炭素中立行動計画」ともいえる勧告を行った。CCCは政府に対して以下の分野について直ちに優先的な投資を行うように求めている。①建築物のエネルギー効率の改善(既存建造物の改修や新たな建造物建設の基準の設定)②植林の増加・泥炭地の回復・都市公園の増設など自然環境の回復。③暖房・交通部門の電化の促進と再生可能エネルギーによる発電のさらなる推進。④徒歩・自動車による通勤や在宅勤務を促進するためのインフラと技術の整備。⑤ごみ回収規則を見直して循環型経済の実現。ジョンソン首相は、6月30日の演説の中で、より良い/より環境に配慮した/より迅速な回復を目指すと宣言したが、国民は首相が有言実行で、環境に配慮した/抵抗力のある復興計画をいかに迅速に開始できるかに着目している。
- 【6】6月25日、英国気候変動委員会(CCC)は議会に対し、昨年の気候変動対策の進捗状況を分析し、今後の取るべき対策を勧告する年次報告書を提出した。今年の年次報告書は例年のものとは大きく異なり、コロナ経済危機からの環境に配慮した復興(green recovery)に重点を置き、初めて各省ごとに事実上の「炭素中立行動計画」ともいえる勧告を行った。CCCは政府に対して以下の分野について直ちに優先的な投資を行うように求めている。①建築物のエネルギー効率の改善(既存建造物の改修や新たな建造物建設の基準の設定)②植林の増加・泥炭地の回復・都市公園の増設など自然環境の回復。③暖房・交通部門の電化の促進と再生可能エネルギーによる発電のさらなる推進。④徒歩・自動車による通勤や在宅勤務を促進するためのインフラと技術の整備。⑤ごみ回収規則を見直して循環型経済の実現。ジョンソン首相は、6月30日の演説の中で、より良い/より環境に配慮した/より迅速な回復を目指すと宣言したが、国民は首相が有言実行で、環境に配慮した/抵抗力のある復興計画をいかに迅速に開始できるかに着目している。
- 【7】英国統計局:検査結果で陽性となった感染者の約8割に自覚症状なし
- 【7】英国統計局が公表したデータによると、コロナウィルスの検査結果で陽性となった感染者のうち検査実施時において自覚症状があった感染者は約22%にとどまり、約8割の感染者に自覚症状がなかったことが分かった。これは自覚症状がない感染者が無意識のうちに感染を拡大させているリスクが高いことを示している。また、同データは、医療や福祉関係の仕事に従事している人、自宅以外で仕事をしている人、世帯人数が多い家庭で生活する人などがより感染する可能性が高いことも示している。
※7/6の英国の感染者数:352人(日本207人の2倍、緊急事態解除基準47人の5倍)
※7/6の英国の死者数:16人(日本0人)
日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。 原文 July 7, 2020, BBC(若林健一)
- 【7】英国統計局が公表したデータによると、コロナウィルスの検査結果で陽性となった感染者のうち検査実施時において自覚症状があった感染者は約22%にとどまり、約8割の感染者に自覚症状がなかったことが分かった。これは自覚症状がない感染者が無意識のうちに感染を拡大させているリスクが高いことを示している。また、同データは、医療や福祉関係の仕事に従事している人、自宅以外で仕事をしている人、世帯人数が多い家庭で生活する人などがより感染する可能性が高いことも示している。