2020/07/07LROニュース(8)

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  • 2020.07.07 UP
    2020/07/07LROニュース(8)
    • 【1】 ICS: 機関室手順ガイドを作成・公表
      • 【1】国際海運会議所(ICS)は、既に「船橋手順ガイド」を作成して好評を得ているが、7月2日新たに「機関室手順ガイド(ERPG)」を作成し公表した。EPRGは海洋環境を守りながら、機関室を安全に運用・管理するための権威ある包括的なガイダンスとして作成された。ERPGは全ての種類の船舶の機関長や機関士のため、また海運会社や船員訓練機関にも活用してもらえる。機関室のような込み入った空間では、わずかなミスが莫大な損害や人命の損失といった深刻な結果を招くこともあり、EPRGの簡明なガイダンスに従って、こうした損害を予防することが効果的であるとICSでEPRGを作成した責任者は語っている。EPRGには機関室において定期的に行う作業の手順ばかりではなく、機関部の船員にとって役に立つチェックリストも含まれており、IMOによって合意された基準や勧告に従い、安全で環境基準に沿った機関室の運用・管理をするための明確なガイダンスを定めている。
      • 原文 July 2, 2020, ICS(長谷部正道)
    • 【2】 EU: 革新的な環境技術に変革基金から10億ユーロを投資
      • 【2】EUの変革基金(Innovation Fund: IF)はEUの企業や公共的な組織が次世代の低炭素化技術に投資するための資金的なインセンティブを与え、世界の技術的なリーダーとなるための創業者利得をEUの企業に与えるために創設され、基金の運用は欧州委員会の変革・ネットワーク担当の執行機関であるINEAが実施し、EU排出権取引制度(ETS)による4億5千万排出権(allowance)の取引収入と、NER300計画の残余資金を財源としている。同基金は、2020年から2030年の間に、100億ユーロ(約1兆2100億円)を①エネルギー多消費型産業における低炭素化技術②炭素回収・使用(CCU)技術③炭素回収・貯留(CCS)施設の建設と運用④革新的な再生可能エネルギー発電技術⑤エネルギー貯蔵(蓄電)技術に投資を行う予定だが、第1回目として、10億ユーロ(約1210億円)分について、低炭素化技術のうち、有望で商業化一歩手前の大規模な事業について、商業化のリスクを減らし、大規模な試験事業を行うために、10億ユーロ(約1210億円)の支援を行うと7月3日発表した。今後の段取りとしては、事業提案は10月29日まで受け付けられ、2021年第1四半期中に、有望事業として評価された提案については、事業計画の具体化の支援を受けて、最終提案を作成し、2021年第4四半期までに支援の対象となる事業が決定される見込み。
      • 原文 July 3, 2020, 欧州委員会(長谷部正道)
    • 【3】 ジプチ港で最初の船員交代が実施される
      • 【3】パンデミックの影響で未だ約40万人の船員が船上と陸上で船員交代ができずに待機し、国際条約で定められた最長継続船上勤務期間の11か月を超える乗務を強いられている中で、世界でも最も海上交通量の多い要衝のひとつであるバブ・エル・マンデブ海峡に面し、年間約2500隻以上の船舶が寄港する重要なトランジットハブ港であるジプチ港で、最初の船員交代が実施され、1年間以上商船に乗務していた19名の船員が交代できた。ジプチ港港湾管理者は、隣接するソマリアとイエメンが内戦で混乱する中で、同海峡を通航する船舶で船員の交代の必要がある船舶は安全で保安上の問題もないジプチ港で船員交代することを今後とも歓迎すると表明した。
      • 原文 July 3, 2020, Reuters(長谷部正道)
    • 【4】 米国の電力事業:石炭からLNGをパスして再生可能エネルギーへ
      • 【4】6月末、既存の石炭火力発電所を廃止して、新たに天然ガスを燃料とする発電所を建設する代わりに再生可能エネルギー発電所を建設するという、米国の電力事業者の決定としては象徴的な方針が異なる電力事業者から発表された。アリゾナ州のTucson Electric Power (TEP)は、自社が所有する全ての石炭火力発電所(発電力ベースで793MW)を2031年までに閉鎖し、代替として2,457MW分の風力・太陽光発電施設の建設を発表した。このうち457MWは2021年に建設され、再生可能エネルギー発電の安定供給能力を補うため、1,400MW分の蓄電施設も併せて建設される。これまで、石炭火力発電から低炭素資源による発電に移行する際は、代替として天然ガス火力発電所を建設するのが無難な選択であったが、気候変動問題への関心の高まりや、風力・太陽光・蓄電施設の継続的なコスト低下と発電効率の向上により、選択肢が広がった。同社の場合、石炭火力発電から直接再生可能発電に転換することにより、2035年までに同社の発電から排出されるCO₂を8割削減することを目指している。
      • 原文 July 1, 2020, IEEFA(植木エミリ)
    • 【5】 ロシアの13港湾で「港湾投資料金」の徴取を2020年から開始
      • 【5】港湾施設の改善や海事インフラ改善・開発包括計画に含まれる施設の建設のために、2019年5月に、港湾を使用する船舶から「港湾投資料金(investment charge)」を徴収することができるとする命令(decree)が成立していたが、7月3日、露連邦海事・河川交通庁(Rosmorrechflot)は今年から13港湾において導入されるとTASS通信に語った。対象の港湾と料金の額は不明だが、命令の対象となる67の港湾から、本当に設備投資が必要な13の港湾について多額ではない料金を徴収するだけだと語った。
      • 原文 July 3, 2020, TASS(長谷部正道)
    • 【6】 シェルがBPについて220億ドルの資産を減損処理
      • 【6】6月15日、BPが最大175億ドル(約1兆8700億円)の資産の減損処理を発表したのに続き、ロイヤルダッチシェルは6月30日、原油価格の暴落を受けて最大220億ドル(約2兆3500万円)の石油・天然ガス関連資産を減損処理することを発表した。両社は今回の決定は、コロナウィルスの影響によるものばかりでなく、世界的な気候変動に対する取り組みに対応するものであるとしている。エクソンモービルのように、自社の持つ石油ガス資源は陳腐化していないと主張する石油・ガス開発事業者もあるが、GHG排出削減に向けた世界的なエネルギー転換の流れの中で、大手投資家や環境団体は、事業者が現在所有している石油・ガス資源の開発が事実上行われない可能性や、経済的な価値の大部分を失うリスクをより明確に開示するよう圧力を強化している。シェルは2019年末の時点で、既に長期的な収益見通しを引き下げていたが、今回の発表で今後数年間は石油需要が更に縮小するとのより悲観的な見通しを示している。今回の減損処理で最も打撃を受けたのはLNGに対する投資で、同社は今後の世界的なエネルギー需要の中でLNGの役割は拡大しうると見ているものの、今回の資産見直しでLNG投資資産の価値は同社の当初見積もりを大きく下回る90億ドル(約9700億円)以下に減額された。BPとシェルはともに、両社の事業からの直接的なGHGの排出を今世紀半ばまでにはゼロまたは炭素中立にすると表明している。
      • 原文 July 2, 2020, Inside Climate News(植木エミリ)
    • 【7】 IMO:治療が必要な船員の速やかな下船・治療の許可を促す勧告を発表
      • 【7】7月1日、IMOは港湾・沿岸国に対して、陸上の医療施設における治療が必要な船員が発生した時には、速やかな下船許可と医療施設への搬送をアレンジすること等を求める新たな勧告(Circular letter No 4204/ Ad.23, Annex)を発表した。
      • 原文 July 1, 2020, IMO(長谷部正道)
    • 【8】 ロックダウン緩和による気の緩みに対しWHOが警告
      • 【8】英国のイングランドでは7月4日にロックダウンの一部緩和により、レストラン、パブなどが営業を再開したが、ロンドン市内の繁華街Soho地区の一角では数千人規模の人々が集まり通りを埋め尽くし、社会的距離の確保やマスク着用といった対策を講じないまま飲酒や踊りに興じる事態も発生した。これを踏まえ、世界保健機関(WHO)のデビット・ナバロ特別代表は、もし人々が社会的距離の確保を無視する状況が続けば今後数週間以内に大規模な感染拡大を招くことになると警告した。また同氏は、若者は感染しても重症化しないかもしれないが、無意識のうちに感染を広め他人を死に至らしめる可能性があるとして、緩和に伴い今まで以上に注意を払う必要があると指摘した。イングランド中部の都市レスターでは既に地域的なロックダウンが発令され、同様に地域的な感染拡大が懸念される都市もあり、また、ロンドンの一部地域でも新規感染者数が増加していることを示すデータもある。

        ※7/5の英国の感染者数:516人(日本274人の2倍、緊急事態解除基準47人の11倍)
        ※7/5の英国の死者数:22人(日本0人)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 July 6, 2020, Evening Standard(若林健一)
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