2020/06/29LROニュース(7)

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  • 2020.06.29 UP
    2020/06/29LROニュース(7)
    • 【1】欧州委員会: 海洋戦略枠組指令の実施状況に関する報告書を発表
      • 【1】EUは2018年6月、欧州の海洋環境を守るため、海洋戦略枠組指令(MSFD)を採択した。MSFDは、海洋における人間の活動が海洋生物多様性や海洋生物の生息域に与える影響などを把握することを目的とし、MFSDを通して得られた知見を基に、「使い捨てプラスチック指令」が作成された。欧州委員会は2017年、海洋の「良好な環境状況(Good Environmental Statements: GES)に関する委員会決定」を採択し、生物多様性、漁業、富栄養化、汚染物質、ごみ、海中騒音などをGESの指標として定め、加盟国は清潔、健康で生産的な海洋環境の実現を目指して、国ごとにGESを達成・維持するための戦略を設定している。6月25日、欧州委員会はMFSD第20条に従い、MSFDの最初の実施報告書を発表し、過剰漁獲・海洋プラスチックごみ・富栄養化・海中騒音の問題等についてさらに取り組みを強化する必要があると指摘した。欧州環境庁は、この報告書と合わせてMarine Message II報告書を同日発表した。EU加盟国は、MFSDに従い、2020年までに地域海域ごとでGESを達成することが求められているにも関わらず達成されていないことも指摘されている。欧州委員会は今後、欧州の海洋保護における成果と課題を更に分析し、2023年半ばまでにMFSDの見直しと改正作業を実施する。
      • 原文 June 25, 2020, 欧州委員会(植木エミリ)
    • 【2】シベリアの熱波が山火事・永久凍土の解凍を促進
      • 【2】6月20日、シベリアのベルホヤンスクで北極圏としては史上最高気温となる38℃が記録されたが、こうした極端な気温の上昇によって、ロシア北部の針葉樹林帯やツンドラ地域で山火事が異常な広がりを見せており、通常は表面を水に覆われた泥炭地にも引火した。北極圏では、気候変動の影響によって温暖化が他の地域の2倍速く進行しており、5月に始まったシベリアの熱波もその影響である。通常、北極圏の山火事シーズンは7月から8月だが、2020年は5月に山火事が発生したことからも、科学者たちは、気温の上昇が山火事のシーズンを長期化させていると推測しており、頻度を増す山火事によって、泥炭地や森林に貯蔵されたCO₂が放出され、地球温暖化が更に促進されることを懸念している。実際に、北極圏の山火事によるGHG排出量は過去2年間で飛躍的に増えており、2019年と2020年の6月の2か月間だけで、2003年から2018年の6月に排出されたGHGの総量を超えるGHGが排出された。泥炭地が地球の表面積に占める割合はわずか3%だが、泥炭地は地球全体の森林が吸収可能なCO₂の約2倍CO₂を貯め込んでおり、更に、永久凍土の上を覆っている泥炭地や森林が火災によって剥がれ落ちることによって永久凍土の解凍が進み、山火事によって放出されるよりはるかに多くのCO₂とメタンが永久凍土から大気中に放出されることが懸念されている。
      • 原文 June 24, 2020, Reuters(植木エミリ)
    • 【3】世界各地で港湾におけるコロナ感染のケースが相次ぐ
      • 【3】多くの国が自国の船員等に対して移動制限の緩和を開始しているが、船員の感染事例が世界各地で報告される中、港湾管理当局は感染予防対策の手を緩めることができないでいる。例えば、カタールを出港してアントワープ港に向かっていたマルタ籍製品タンカーでは全乗組員26名中、15名がウィルス陽性と判定され、検疫隔離されている。またNY港に入港したマースクのコンテナ船の乗組員の1名が、緊急入院してウィルス陽性と判断されたため、同社は残りの乗組員も上陸させて検疫隔離したうえで、タンカーを消毒して新しいクルーを乗船させると発表した。また釜山港では、露の2隻の貨物船に乗船していた22人の乗組員が陽性と判定されただけでなく、これらの乗組員と接触した何百人もの港湾荷役作業員等が陽性と判定された。
      • 原文 June 25, 2020, The Maritime Executive(長谷部正道)
    • 【4】BIMCO: パンデミック禍における船員交代に関する条項を発表
      • 【4】船員の移動規制は徐々に解除されつつあるが、依然として多くの国において船員交代に関する制約が存在する。今回BIMCOが発表したパンデミック禍における船員交代に関し、用船者によって指定された港湾では船員の交代ができない場合など、厳しく限定された条件のもとに、用船契約上定められている船員交代に関する船主の義務の柔軟化を図るとともに、特別な状況下で実施する船員交代に必要なコストは通常より高額となることもあることから、船員交代のコストを本来負担する船主だけではなく、用船者も負担することができるようにすることを、新条項は目的としている。
      • 原文 June 25, 2020, BIMCO(長谷部正道)
    • 【5】加政府:大企業への融資の条件として気候変動対策の開示を要求
      • 【5】加連邦政府は5月11日、「大規模雇用者緊急融資機能(LEEFF)」制度の導入を発表し、①加国内で大規模な事業を展開し、②年間約3億カナダドル(約235億円)以上の売上があり、③6千万カナダドル(約47億円)以上の融資が必要な大企業を対象に、加開発投資会社(CDEV)がつなぎ融資を実施する。融資の条件の一つとして、融資を受けた企業は、金融安定審議会のタスクフォースが作成した「気候変動に係る財務状況の開示(TCFD)」に関する勧告に従い、「気候変動対策に関する財務状況公開報告書」を毎年作成する必要があり、当該企業が企業統治・戦略・政策・慣行を通じて、いかに気候変動に関するリスクと機会を管理するか、また加連邦政府が公約している2050年までの炭素中立実現にどのように貢献するかを報告する義務がある。
      • 原文 June 10, 2020, Baker McKenzie(植木エミリ)
    • 【6】CCC: CO₂削減状況報告書の中でIMOのCO₂削減目標のupdateを要求
      • 【6】6月25日、英国の独立行政委員会である気候変動委員会(CCC)は議会に対して「CO₂削減状況に関する2020年年次報告書」を提出したところ、報告書の中の運輸省に対する勧告中、海運に関する部分の概要は以下のとおり。(カッコ内は実施時期)①CO₂排出権の配分に関する第6次炭素予算作成時に、国際航空と海運を英国の気候変動対策目標に正式に組み込むこと(2021年上半期)。②海運分野における国際的なCO₂削減政策について、IMOと協力して作業を進め、2050年までに海運からのCO₂排出量を半減するというIMOの目標をupdateすること(2020-22年)。③英国の海運業界のために、ゼロ炭素燃料であるアンモニアと水素の供給網を整備するためのインセンティブをClean Maritime Planの中で位置づけること(2020-21年)。④国際航空と海運に関するCO₂排出以外の影響を監視し、英国の気候変動目標にそって、どのように取り組んでいくか検討すること(2021年)。
      • 原文 June 25, 2020, 英国気候変動委員会(長谷部正道)
    • 【7】英国政府が欧州諸国等との「Air bridge」を導入する意向を表明
      • 【7】英国政府は、英国とコロナウィルスの感染リスクが低い国とを往来する人に対する隔離措置を緩和する所謂「Air bridge」を検討していることを明らかにした。対象国には第一弾としてフランス、スペイン、イタリア、ドイツ及びギリシャが含まれ、第二弾としてデンマーク、オランダ、フィンランド、ノルウェーなどが含まれると見られる。早ければ7月4日にも第一弾が発動されるとみられ、これらの国からの入国者に対しては、現在入国後に義務付けている2週間の隔離措置の適用が免除されることになる。これに対し、世界保健機関(WHO)は、現状はコロナウィルスを抑え込こめるか否かの瀬戸際にあり、少しでも気を抜けば再び大規模な感染拡大を招き、医療サービスが危機的状況に陥ることになると警告している。

        ※6/25の英国の感染者数:1,118人(日本96人の12倍、緊急事態解除基準47人の24倍)
        ※6/25の英国の死者数:149人(日本5人の30倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 June 26, 2020, The Guardian(若林健一)
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