2020/06/25LROニュース(7)

NEWS


※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

トップページ > LROニュース > 2020/06/25LROニュース(7)

記事アーカイブ

  • 2020.06.25 UP
    2020/06/25LROニュース(7)
    • 【1】デンマークの電動フェリーの試験運航結果
      • 【1】EUのHorizon 2020研究事業から資金支援を受けて、2019年8月からバルチック海のデンマーク領の2つの島の間で40kmの周回ルートを、全長60mで4.3MWのバッテリー動力のカーフェリーが試験運航を継続してきた。1年間の運航実績として、エネルギー効率は85%で、ディーゼル油を燃料とする従来船と比べると、約2倍のエネルギー効率で、運航コストが従来船よりかなり安いことが証明された。この試験運航船の建造費は約1500万ユーロ(約18億円)と初期投資は在来船に比べて高いが、運航の条件にもよるが、5年から8年で初期投資を回収して、それ以降は安い運航費で済むので、フェリーの平均使用年数を30年とすると、十分に経済的に魅力のある投資となることが判明した。さらに、バッテリーの充電を再生可能エネルギーからした場合、年間2250トンのCO₂の排出量を削減することができる。デンマークは2030年までにCO₂の排出量を70%削減することを国家目標としており、風力発電施設専用の人口島の建設や、炭素税の導入を検討している。海運活動から排出されるCO₂排出量は、EU域内のCO₂排出量の3.7%を占めるため、排出権取引制度の対象に含めることを欧州委員会が提案しており、欧州議会では6月25日に環境委員会で規制改正に向けた報告書の採決が行われる予定である。
      • 原文 June 23, 2020, Euractiv(長谷部正道)
    • 【2】パンデミックの影響でスクラバー設置のキャンセル・延期が続く
      • 【2】コロナ経済不況による海上荷動きの減少によって、1基あたり平均200万ドル(約2.1億円)の投資が必要となるスクラバーの設置をキャンセルし、延期する船社が続いている。例えば、パンデミックの結果、自動車の輸出量が大幅に減ったため、自動車運搬船を多く運航するノルウェーのWilhemsen社は過去2か月間に、9隻の船のスクラバー設置工事をキャンセルし、他の8隻については、年末または2021年まで設置工事を延期すると発表した。さらに世界的な原油価格の下落が、低硫黄分の規制適合油と重油燃料油との価格差を縮小し、価格差はトン当たり年初の300ドルから最低40ドルまで縮小している結果、スクラバーに投資しても、投資回収期間が予定以上に長くなっていることも船主のスクラバーに対する投資意欲をそいでいる。Wilhemsen社の他にも、Scorpio Tankers, Frontline, International Seawaysなどの各社もスクラバー設置の延期を表明している。Frontline社は4隻のタンカーへの設置を延期したが、これによって2020年だけでも760万ドル(約8億円)の手元流動性の改善効果があると表明している。
      • 原文 June 12, 2020, Reuters(長谷部正道)
    • 【3】UNEP等が東南アジアでプラスチックごみに関する意識調査を実施
      • 【3】国連環境計画(UNEP)とアジア食料産業(FIA)は、海洋プラスチックごみ発生源の上位10か国に入るインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの消費者と食品・飲料事業者を対象にプラスチックごみに関する意識調査を実施し、結果を6月23日公表したがその概要は以下のとおり。①消費者の91%がプラスチックごみ問題を懸念していると回答したが、リサイクルされた製品を優先的に買うと回答した消費者は半数に満たなかった。②プラスチックごみのリサイクルを実施していた消費者はわずか54%だったが、残る38%の消費者も将来的にリサイクルを実施することに関心を示した。③事業者の82%がプラスチックごみ問題に大きな関心を寄せている一方で、実際に十分な対策が実施できていると回答した事業者は半数以下だった。④事業者の80%はプラスチック削減計画を持っており、そのうち74%は削減目標を明確に数値化、更に59%は具体的な達成期限を定めていた。⑤事業者同士で協力してプラスチック削減に取り組んでいた事業者は半数に満たなかった。⑥消費者・事業者共に、プラスチックごみに対して政府が取り組みを強化することを期待しており、具体的にはごみの分別義務化やごみ収集機能の強化、リサイクルのための整合性のある原料表示の義務付け、ごみのポイ捨てに対する罰金制度の導入などが挙げられる。
      • 原文 June 23, 2020, UNEP(植木エミリ)
    • 【4】米海軍と海自の艦船が南シナ海で共同訓練
      • 【4】米海軍は、沿海域戦闘艦ガブリエル・エフォーズが6月23日に南シナ海において海上自衛隊の練習艦「かしま」及び「しまゆき」と共同訓練を実施したことを発表した。米海軍は声明で今回の訓練について、共同作戦中の通信や調整の重要性を強調するものであり、双方の協力関係にとって非常に重要なものであると述べている。南シナ海では、マレーシア、フィリピン、中国、ベトナムなどが主権を主張し争っており、アジア海洋透明性イニシアチブ(the Asia Maritime Transparency Initiative)によると、2013年以降中国は南沙諸島や西沙諸島の27ヵ所において軍事拠点化を進めており、12海里以内を航行する他国の艦船に対して事前の許可を得る必要があると主張しているが、これに対し米国は航行の自由作戦を実施するなどして対抗している。近年、海上自衛隊の艦船も南シナ海における存在感を強めており、昨年9月に発表した防衛白書の中でも、日本は係争海域におけるプレゼンスを高めることにより積極的かつ自主的に自国の安全保障を強化すべきであるとしている。
      • 原文 June 24, 2020, Stars and Stripes(若林健一)
    • 【5】ReCAAP ISC: 週間海賊報告書(6月16日から22日報告分)
      • 【5】アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)に、6月16日から22日まで通報された事件は、アジアで発生した重要度4(賊は武装せず、乗組員の負傷なし)の武装強盗事件が1件、ギニア湾で発生した襲撃未遂事件が1件であったが、その概要は以下のとおり。①6月17日午前2時ごろ、インドネシアのMerak錨地に錨泊中のシンガポール籍タンカーで、巡回中の機関長がイナートガス発生装置の区画の水密扉の取っ手が壊されているのを発見し船内を確認したところ、機関室から発電機の予備品が数点なくなっていることが判明した。左舷側の固縛用ネットが破られており、賊が乗下船するために切ったものと思われる。②6月14日午後4時56分、ナイジェリア沿岸から沖合約250海里のギニア湾の公海上で漂泊していたシンガポール籍タンカーの当直士が、変針し、約14.5ノットまで増速して接近してくる小型船を発見した。小型船からの追跡を逃れるため、タンカーが回避動作をとり増速して小型船から十分な距離まで離れたことから被害を防ぐことができた。
      • 原文 June 23, 2020, ReCAAP(若林健一)
    • 【6】シベリアで北極圏史上最高気温(38℃)を記録
      • 【6】シベリア北部の町ベルホヤンスクでは6月20日、1885年の観測開始以来最高気温となる38℃が記録され、世界気象機関に正式に認証されれば、北極圏で記録された史上最高気温となる。EUのコペルニクス気候変動サービスの特別報告書によれば、5月のシベリアの平均気温は、1979年から2019年までの平均気温を約10℃上回っており、史上最も暑い5月となったが、こうした高気温の影響は既に北極圏の至る所で現れており、ロシア連邦森林庁が6月21日発表したところによると、ベルホヤンスクを擁するサハ共和国だけでも、現在31件の山火事が消失し、35万8472ヘクタールの森林が消失した。また5月末にノリリスクで約2万トンのディーゼル油が北極海流域の河川に流出した事故も、永久凍土の解凍によって、永久凍土の上に建設された燃料タンクが破損したことに起因すると推測されている。
      • 原文 June 22, 2020, Live Science(植木エミリ)
    • 【7】医療従事者や医学会が政府に対し第2波への準備の緊急性を警告
      • 【7】6月23日ジョンソン首相はロックダウンのさらなる緩和策を発表し、7月4日からイングランドにおいてパブ、レストラン、映画館などを再開させ、2mの社会的距離の確保が困難な場合は安全対策をとったうえで1mまで縮小することなどを発表した。一方で、医療従事者や医学会の代表者らは今回の発表を踏まえ、英国の医学誌British Medical Journalに掲載した公開書簡において、地域的な感染拡大が発生する可能性は高く、大規模な感染拡大の第2波が発生する危険もあり得るとして、残された課題も多いことから政府は緊急にこれまでの対応を評価して、これらの事態に備える必要があると訴えている。

        ※6/23の英国の感染者数:874人(日本43人の20倍、緊急事態解除基準47人の19倍)
        ※6/23の英国の死者数:171人(日本2人の86倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 June 24, 2020, BBC(若林健一)
  • 資料閲覧 その他