2020/06/12LROニュース(7)

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  • 2020.06.12 UP
    2020/06/12LROニュース(7)
    • 【1】ホワイトハウスがUSCGに2029年までの砕氷船運用開始を指示
      • 【1】6月9日トランプ政権は、北極及び南極地域における米国の国益を保護し、同盟国等とともに北極地域において安全保障上の強い影響力を保つために、2029年までに砕氷船による船隊を組織して運用を開始する必要があるとし、関係省庁に対して砕氷船隊の取得に関する計画を策定して実行していくこと等を指示したが、その概要は以下のとおり。①国土安全保障省は、適した砕氷船体を組織して北極及び南極地域に持続的に展開できる能力を確保するために、国務省、国防総省、商務省及び行政管理予算局と連携して必要な事項の検討を進める。②検討を進めるに当たり国土安全保障省及び行政管理予算局は、沿岸警備隊(USCG)が進めるOffshore Patrol Cutter acquisition programにマイナスの影響を及ぼさないことを保障する。③USCGは海軍及びエネルギー省と連携し、少なくとも3隻の大型砕氷船から成る船隊の運用について作戦上及び予算上の利点や欠点等について60日以内に調査を終え大統領まで報告する。④国務省は国土安全保障省と連携して、空白期間を埋める戦略として協力国から砕氷船をリースする実行可能な選択肢を特定し、また、将来の砕氷船の取得に備えて砕氷船の建造について十分な能力と専門知識を有する協力国を特定する。⑤国防総省は、国務省や国土安全保障省と連携し、USCGに対して技術的支援の提供を継続する。
      • 原文 June 9, 2020, White House(若林健一)
    • 【2】2035年までに米国の発電源の9割を非炭素化することが可能
      • 【2】カリフォルニア大学バークレー校ゴールドマン公共政策大学院が表記研究を発表したところその概要は以下のとおり。①再生可能エネルギーによる発電コストの急落により、米国の発電源の9割を2035年までに炭素中立化することは技術的にも経済的にも可能であり、風力・太陽光・電池だけで7割、水力と原子力で2割の電力を供給することが可能で、残りの1割は天然ガス発電に依拠する。②発電と変電を合わせた電力の卸売りコストは、現在のコストに比べて1割減少する。③環境面では、2035年までに電力生産によるGHG排出量を88%、NOxとSOxの排出量をそれぞれ96%、99%削減でき、これによって1.2兆ドル(約130兆円)の健康・環境コストを削減し、約5万8千万人の早期死亡を防止することができる。④目標達成には、毎年70GW分の新たな風力・太陽光発電施設を建設し、2035年までに1100GW分の再生可能エネルギー発電施設を増設する必要があるが、可能である。⑤再生可能エネルギー発電施設の建設・運営・保守管理に新たに必要となる人員は、化石燃料発電所の閉鎖によって失職する人数より多いため、毎年50万人以上の新規雇用を創出する。⑥発電分野でこの目標が達成できれば、米国全体のGHG排出量を2010年実績比で27%削減することに貢献できる。
      • 原文 June, 2020, ゴールドマン公共政策大学院(植木エミリ)
    • 【3】印・豪がインド太平洋における連携強化のために2つの軍事協定を締結
      • 【3】中国が実効支配を強める南シナ海を含めインド太平洋における緊張が高まる中、印及び豪の両国は6月4日、防衛協力を強化する第一歩として、相互後方支援協定(Mutual Logistics Support Arrangement)及び防衛科学技術実施協定(the Defence Science and Technology Implementing Arrangement)の2つの軍事協定を締結した。これにより両国は、より高度な合同訓練の実施や補給のために互いの軍事基地を利用することが可能となる。両首脳によるテレビ会談後に両国は、航行や飛行の自由、海洋の平和で協力的な利用の自由を支援するために、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の構想を共有していくとする声明を発表した。印は米国との防衛協力も強化しており、米海軍及び日本の海上自衛隊との共同訓練「マラバール」を実施しているが、先月には豪もこれに参加したい意向を示している。
      • 原文 June 4, 2020, CNN(若林健一)
    • 【4】マースク:自社保有の300隻のコンテナ船の気象・海象情報を自主的に提供
      • 【4】自主観測船(Voluntary Observing Ship:VOS)事業は、商船が運航中に観測した気象・海象情報を各国の気象観測当局等に自主的に提供し、気象当局がより正確な気候・台風の予測をすることを支援するもので、科学者達は船舶から提供された情報を基に海洋大気モデルを作成して、気候変動の仕組みを解明するのに役立てている。通常、VOSでは船上の観測機器から得られた情報を乗組員が様々な気象機関に手作業で送っていたが、こうした作業は予算的にも乗組員の負担という意味でも重かったため、現在3000隻以上自主的に参加している船舶は近年減少傾向にある。マースクの船舶は既にVOSに参加してきたが、同社は2020年末までに保有する300隻のコンテナ船全てをVOSに参加させると発表した。このうち50隻には、大気圧・気温・湿度を計測し、気象観測当局に1時間に1回自動的に情報を送信する最新の欧州共通自動気象ステーション(European Common Automatic Weather Station : EUCAWS)が搭載される。この結果、隻数ベースではVOSに参加する船社の中では同社が最大となる。正確な気象・海象情報の把握に基づき、より最適な航路を選択できれば、船舶の運航や乗組員の安全性の向上を図るだけでなく、目的港への定時到着率を高めて、顧客のサプライチェーンの信頼性の向上にもつながる。
      • 原文 June 10, 2020, Maersk(植木エミリ)
    • 【5】英国が現在検討中のCarbon Pricing制度について
      • 【5】6月1日、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は、2019年5月に実施されたパブコメの内容と現段階での政府としての考え方を公表した。Carbon Pricing (CP)の実施方法としては、①EUの排出権取引制度(EU ETS)にこのまま参加し続ける。②(EU ETSと排出権の互換性がある、または完全に独立した)英国の排出権取引制度(UK ETS)の創設。③炭素排出税の導入の3つの選択肢があるとし、政府としてはEU ETSと互換性のあるUK ETSの創設が望ましいと考えており、スイスもこの方式を採用しているが、この案で行けるかは現在進行中のBrexit全体交渉の帰趨による。もしこの互換性のあるUK ETSの創設が困難な場合は、政府としては独立したUK ETSの創設が次善の選択肢で、炭素排出税の導入は最後の手段としたいとしている。UK ETSはその適用範囲・無料の排出権枠・排出権供給調整方法(SAM)・排出権価格高騰抑制方法(CCM)・航空分野の取り扱いなど、多くの点でEU ETSと同じ内容となる。一方、英国全体の排出権の枠は、現在のEU ETSのフェーズ4で英国に認められている量の5%減で、2021年には約1億5600万トンとなる見込みだが、2020年12月には、独立委員会である気候変動委員会(CCC)が、2050年までに炭素中立を達成するための新たな第6次炭素予算を提案する見込みで、これを受けて政府は遅くとも2024年1月までに、2050年までに炭素中立を達成するために必要なUK ETSの上限値を決定する見込み。
      • 原文 June 8, 2020, Latham & Watkins(長谷部正道)
    • 【6】独が再生可能エネルギーを主体とした国家水素戦略を閣議決定
      • 【6】6月10日、独政府は予定より数か月遅れて、国家水素戦略を閣議決定し、再生可能エネルギーから生産された水素(Green Hydrogen: GH) のみが長期的に持続可能性があり、天然ガスを原料とし、炭素回収貯留(CCS)技術を併用して、GHGの排出を抑えながら水素を生産する方法は、GHが安定的に生産できるまでの移行的な手段にすぎないと位置付けた。独政府は、今世紀半ばまでに気候中立化を実現するとともに、水素生産・利用技術開発でも世界を主導しようとしている。世界中で多くの国が水素のエネルギーとしての利用を検討しており、水の電気分解技術が、GHを生産するための重要技術として注目され、独の製鉄事業者は、ギガワット規模の大規模な電気分解装置の生産能力の拡充を図っている。但し、自動車や暖房については、水素以外のより効率的な代替エネルギーである電力を直接活用すべきであるという意見もある。また、化学工業協会は、水素の利用に賛成しつつ、水素の原料としての天然ガスやCCSの利用を排除すべきでないとしている。
      • 原文 June 10, 2020, Clean Energy Wire(長谷部正道)
    • 【7】政府の検査追跡システム、感染者の3分の1と連絡がとれず
      • 【7】5月28日に英国政府は、検査結果により判明した感染者及び同人との接触により感染の危険がある人を追跡し自主隔離を要請する「検査追跡システム」を開始したが、6月3日までの1週間で判明した感染者8,117人のうち連絡が取れた感染者は5,407人にとどまり、登録された連絡先が間違っている、職員からの連絡に全く応じない等の理由で感染者の約3分の1に連絡が取れなかったことを明らかにした。また、連絡が取れた感染者5,407人から判明した感染の危険がある人の数は31,794人であったが、このうち15%に当たる4,089にも連絡が取れず、連絡が取れた人の中には自主隔離の要請に同意しない人もいた。検査追跡システムはロックダウンを緩和する上で、政府の感染拡大防止策の中心的な役割を担うとされている。

        ※6/10の英国の感染者数:1,003人(日本45人の22倍、緊急事態解除基準47人の21倍)
        ※6/10の英国の死者数:245人(日本3人の82倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 June 11, 2020, Evening Standard(若林健一)
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