2020/06/09LROニュース(7)

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  • 2020.06.09 UP
    2020/06/09LROニュース(7)
    • 【1】Drewry: 船舶職員数の不足が拡大し、船員コストが上昇する見通し。
      • 【1】海事調査・コンサルタントのDrewryは、6月3日「船員費の検討と予測」報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①船舶職員の数は、全世界で供給量が需要量を2%下回っている状況だが、コロナ経済不況により、運航を休・停止している船舶があるために、問題は顕在化していない。②2019年における船舶職員の需給はほぼ均衡していたが、今後の経済復興に伴い、船舶が完全に再稼働しだすと、船舶職員の供給不足問題が発生する見込み。③将来的には、船腹量拡大のペースは鈍るものの、船員の休暇期間が延びて実働時間が減るといった労働慣行の見直しが予測されることもあり、船舶職員の求人は増加する一方で、船舶職員の供給は近年減ってきており、求人が急に増えたからと言って供給が増えることは期待できず、船舶職員数の不足は今後拡大することが予測される。④コロナ経済不況の中で、船主がコスト削減の必要性に迫られる一方で、船舶職員の供給不足は、船員費上昇圧力となり、2020年中は船員費の上昇は抑えられるものの、今後数年内に船員費は上昇に転じると見込まれる。⑤船員という職業の魅力が低下傾向にあった中で、今回のパンデミックで船員の窮状が広く報道されたおかげで、船員という職業のイメージは益々悪化している。
      • 原文 June 3, 2020, Drewry(長谷部正道)
    • 【2】再生可能エネルギーの価格競争力と炭素国境課税の必要性
      • 【2】(論説)欧州委員会は5月27日、2050年までの炭素中立を促進するべく、現時点で7,500億ユーロ(約93兆円)、将来的には2兆ユーロ(約248兆円)規模となる気候変動対策を中心に据えた欧州復興計画を発表した。米国でも、民主党の大統領候補であるバイデン氏は、彼の支持基盤である若者・左派・民主党の伝統的な支持層を束ねる政策として、気候変動対策を主軸にしたNew Dealを実施することを検討している。この環境政策は、票集めのためだけでなく、再生可能エネルギーの発電コストが伝統的な化石燃料に比べて低くなってきており、今後の発電量が増えれば規模の経済により一層のコスト削減が可能になるという経済的理由にも基づいている。また国際労働機関(ILO)によると、コロナ経済危機により世界中で16億人が失業する恐れがあるが、風力タービン・太陽光発電施設の建設等には多くの労働力が必要であり、再生可能エネルギーへの投資は新たな雇用の創出という面でも重要である。一方で、世界のGHGの1/3を排出している中国は現在も石炭火力発電を拡大しており、また11月の米大統領選でトランプ大統領が再選し、米国が環境政策を更に後退させるなら、中国だけが気候問題に積極的に対処するのは不公平だと思っている。EUは復興計画の財源として炭素税の導入を検討中で、化石燃料を使用して生産された中国などの商品を輸入する際の炭素国境課税についても検討している。バイデン氏が勝利した場合でも、米国はEUと同様な炭素国境課税を導入する可能性が高いが、再生可能エネルギーの発電コストの低下は化石燃料をますます弱体化させるので、このような炭素国境課税を導入して他国のエネルギー政策に干渉せずとも、安いエネルギーで競争力のある製品が生産できるのであれば、経済原理だけで欧米以外の国々も再生可能エネルギーへの投資を自発的に進められるのではないか。
      • 原文 May 31, 2020, BBC(植木エミリ)
    • 【3】DCSA: コンテナの接続性確保のためのIoT標準を発表
      • 【3】中立の非営利団体であるデジタルコンテナ海運協会(DCSA)は、9つの海運会社がメンバーとなって、コンテナ海運に関する技術基準のデジタル化を進めているが、6月2日、海事コンテナ用のIoT 接続性標準(DCSA IoT standard for Gateway Connectivity Interfaces)を発表した。この標準はスマートコンテナが送受信するラジオ波を船舶の運航会社・船主・港湾/ターミナル管理者・内陸物流事業者が共有するためのインターフェイスの標準で、この標準を活用すれば、海運会社や物流事業者は、コンテナが輸送される全ての過程において、コンテナの所在地や状況に関する情報を顧客に常時提供することに一歩近づくことができる。今回発表された標準は船上・陸上・イベント会場・携帯端末のgatewayで使用することができる。DCSAは冷凍冷蔵コンテナと一般のコンテナの接続の条件に関する標準とコンテナの近距離無線通信自動認識(RFID)登録に関する標準も今後発表する予定。
      • 原文 June 2, 2020, DCSA(長谷部正道)
    • 【4】シンガポールで新たな規則に従い船員全員の交代が実現
      • 【4】6月6日、シンガポール港の新たな船員交代の規則に従って、同港で船舶の外国人船員全員の交代が実現した。同港でばら積み船から19人のインド人船員が下船後、チャーター機でスリランカのコロンボ経由で、インドに帰国し、同じチャーター機で交代要員として4人のインド人と14人のスリランカ人船員が、同日、同船舶に乗務した。同船舶を管理しているSynergy Groupはこれまでも他の船社と協力して、合同でチャーター機を手配するなどの活動を行い、シンガポール船員交代WGのメンバーでもある。船員の交代はシンガポール海事港湾庁の支援のもとに、Wilhelmsen Ships Agencyが全体のアレンジを行った。
      • 原文 June 8, 2020, Splash 247(長谷部正道)
    • 【5】米国内のコロナ関連規制に違反した場合の海運会社のリスク
      • 【5】米国内のコロナ関連規則に違反した船舶は拘束・民事罰・刑事罰を受ける可能性があるところ遵守すべき規則は以下のとおり。①USCGは米国に寄港し、米国内の港湾間を運航する船舶に対し、報告義務・予防措置の実施を求めている。(USCG MSIB 02-20: Change 4)②船舶と港湾施設の安全性に悪影響を与える可能性がある病人が船上に存在することは、33 CFR 160.216に定める危険な状況に該当するので、直ちにUSCGに通報しなくてはいけない。(USCG MSIB 6-20)③コロナウィルスの症状がある者は、米国疾病予防管理センター(CDC)への報告に加えて、直近のUSCGの支署または港長にも届け出なくてはならない。⑤米国の港湾に寄港する船舶は、寄港する前の15日間に船内で、旅客または乗組員に病人・死亡者が出た場合は報告しなくてはいけない。(42 CFR §71.21)⑥イラン・中国・欧州のシェンゲン協定加盟国・英国・アイルランドから到着する者、同14日間に上記諸国に寄港しあるいは上記諸国の船員を乗船させ、実際に船員に病人がいる場合は、入国の制限を受ける。(大統領令)
      • 原文 May 29, 2020, Skurd(長谷部正道)
    • 【6】米大統領が大西洋の国立海洋モニュメントの漁業禁止を解除
      • 【6】米オバマ前大統領は、クジラを保護し過剰な漁獲を制限するため、New England沖の約13,000㎢にNortheast Canyons and Seamounts国立海洋モニュメント(MNM)を設置し、同海域内での漁業を禁止していた。当初より漁業団体はこれに反発して提訴し、地裁・高裁でも敗れていたが、トランプ大統領は就任後直ちに、商務省に過去10年間に設置または変更された海洋保護区の見直しを指示し、当時の内務長官が漁業者からの聴聞を実施してMNMでの漁業再開を勧告したのを受けて、トランプ大統領は6月5日、大統領宣言(proclamation)を出し同海域の漁業禁止措置を解除した。しかし、MNM設置から米国でコロナウィルスが蔓延するまでの期間、New Englandにおける漁獲量と収益が減少したというデータはなく、MNMの設置が水産業を圧迫しているという証拠はなかった。一方で、MNMで一斉に漁業が再開されることにより、同海域に生息する絶滅危惧種のタイセイヨウセミクジラを含む多くの海洋哺乳類の混獲の危険性が増すほか、何千年にもわたって育まれた深海サンゴ礁や海綿の時制息が漁網等によって損傷する可能性がある。米国は世界最大の海域を管理する国家であり、EEZの面積は連邦政府が管理する土地と海洋面積全体の55%を占めている。世界全体の海洋で保護区が設定されている海域の割合は、わずか2.3%に過ぎない。
      • 原文 June 5, 2020, The Washington Post(植木エミリ)
    • 【7】混乱と批判のなか入国者に対する検疫隔離措置が始動
      • 【7】6月8日、英国への入国者を対象とした検疫隔離措置が始動した。しかし、入国管理を行う職員からは、適用除外となる入国者の区分が42種に及ぶなど規則が複雑であることや、確認事項について説明した書類が3日前の金曜日に届くなど現場で対応に当たる職員に十分な準備期間が与えられていないことへの批判の声や、入国者が申告した住所を確認する手段がなく、虚偽の氏名を申告するなど明白な違反でなければ認知できないなど制度上の欠点を指摘する声も聞かれる。また、出張のためドイツへ出国する人からは、ドイツなど英国より感染率が低い国も対象に含まれる点について納得できないとの声も聞かれた。国内航空会社は法的措置も念頭に政府に対し制度の見直しを求めており、旅行業界も海外旅行の再開に向けたロードマップの提示や制度の一律な適用を避けることを政府に求めている。
        ※6/7の英国の感染者数:1,326人(日本46人の29倍、緊急事態解除基準47人の28倍)
        ※6/7の英国の死者数:77人(日本2人の39倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 June 8, 2020, BBC(若林健一)
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