2020/06/03LROニュース(8)

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  • 2020.06.03 UP
    2020/06/03LROニュース(8)
    • 【1】 BPA: 港湾の陸上電源の整備にはGreen Maritime Fundの活用が必要
      • 【1】 5月29日、英国港湾協会(BPA)が船舶に対する陸上電源供給のための課題とその解決策に関する報告書を公表したところその概要は以下のとおり。①cold ironingとも呼ばれる、船舶への陸上電源供給施設の整備には3つの課題がある。②(i)岸壁における電力供給設備へ対する投資のみならず、船舶への陸上電力供給施設を1か所作るだけで、港湾にこれまで供給されていた電力の倍以上の電力が必要となり、送電網の能力向上も要することから多額の投資が必要となる。(ii)岸壁で通常船舶が補助機関を使用する際に使用する船舶用燃料に比べ、電気のコストの方が高く、価格競争力がない。(iii)世界の約96000隻の船舶のうち、陸上電源を使用できる船舶は1500隻(うちコンテナ船が809隻)のみで、現在新規発注されている船舶の中でも、陸上電源に対応できる設備は全体のわずか1.5%のみ。③以上の課題を解決するための提案として、(i)Green Maritime Fundを活用して、陸上電源を含むGHG削減事業を支援する。(ii)免税措置を受けている船舶燃料と価格面で競争するために、陸上電源から供給される電力を免税する。(iii)陸上電力需要を増やすために、炭素を排出しない岸壁の基準を定めるなど、炭素削減のための目標を設定する。
      • 原文 May 29, 2020, 英国港湾協会(植木エミリ)
    • 【2】 ISA: コロナの影響でmining codeの検討が宙に浮く
      • 【2】 深海底の鉱物資源開発を管理する国連機関、国際海底機構(International Seabed Authority:ISA)は、深海のコバルトやニッケルなどの鉱物の採掘が可能になる新しいMining Code(MC)を採択する期限を2020年中と定め、7月の年次総会では大きな進展が期待されていたが、パンデミックの影響を受け総会は10月に延期となった。総会の延期によって、加盟国・資源開発会社・環境団体は今後MCの特に環境保護に関する規則の最終化をどのように進めていくか議論を行うことになるが、環境保護団体は、十分な議論をしないままMCの早期承認を進める口実としてパンデミックが利用されることを懸念している。ISAは既に30以上の資源開発企業と採掘契約を締結しており、3つの採掘契約を持つカナダのDeepGreen社は、2023年から実際に採掘作業を開始できることを投資家に示すために、国連海洋法の「2年ルール」を援用する可能性があるとされている。2年ルールは、採掘企業のスポンサー国は、当該企業が採掘計画開始の承認申請をする意思があることをISAに通告すれば、ISAはその後2年の内にその採掘に関するMCを最終化しなくてはならないというもので、それができない場合は、ISAは当該企業に対して暫定的な採掘許可を与えなければならない。DeepGreen社が契約を持つ鉱区は、ナウル・キリバツ・トンガの3か国がスポンサー国となっており、2年ルールを発動するためには、このうちいずれかの国がISAに対して上記通告を行う必要がある。
      • 原文 May 7, 2020, China Dialogue Ocean(植木エミリ)
    • 【3】 船員交代のための印・比発着チャーター便の運航が始まる
      • 【3】 2週間前に、海運労使はこれ以上の船員の労働契約の延長をしないことに合意し、各国政府に6月16日までに船員交代を実現できるように要請したが、インド政府がチャーター便に対する規制を緩和し、スリランカ政府が、船舶に新たに乗務するためにコロンボ港にやって来るインド人船員に対して5日間の滞在許可を、コロンボ港で乗務を終えチャーター便で帰国するインド人船員に対し7日間の滞在許可を与えることに合意し、またカタール政府は、ドーハ空港で乗り継ぐ船員に対して22時間の滞在許可を与えたため、インド人船員の交代が同国とコロンボ・ドーハ間を運航するチャーター便を利用して5月31日から始まった。また世界でも最も長くかつ厳しいロックダウンが続いていた比のマニラから欧州最大のロッテルダム港を結ぶチャーター便の試験運航も複数の海運会社や旅行代理店が協力して始まった。シンガポール海事港湾庁もシンガポール港における船員交代の制限を大幅に緩和しており、船員交代実現への動きが始まっている。
      • 原文 June 1, 2020, Splash 247(長谷部正道)
    • 【4】 MPA: コロナ後の抵抗力と競争力のある共同事業の提案を募集
      • 【4】 シンガポール海事港湾庁(MPA)と同国海運協会(SSA)は、コロナ後の課題と事業機会に対応し、海事産業の抵抗力と競争力を強化するための、共同・連携事業の提案募集を開始した。事業の例としては①船員に対する遠隔医療診断②通船事業のデジタル化・自動化の推進③遠隔船舶検査・監査に使用される機器やソフトウェアの基準作りが挙げられているが、提案者はこの例に拘束される必要はない。募集の中から、影響力のある事業(impactful projects)の経費の50%を、認定事業(qualified projects)の経費の70%を、海事変革技術(MINT)基金から支援する。募集は7月10日に締め切り、9月1日から事業をはじめ、実際の試行事業を2021年第一四半期から開始することを前提としている。
      • 原文 May 25, 2020, シンガポール海事港湾庁(長谷部正道)
    • 【5】 2018年におけるEU域内のGHG排出量がエネルギー分野を中心に減少
      • 【5】 欧州環境庁(EEA)は5月29日、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局に、2018年における英国を含むEU全体(以下同様)のGHG排出量について公式情報を提出したところその概要は以下のとおり。①2018年にEU域内で排出されたCO₂の量は43億9200万トンで、対前年比2.1%減少し、1990年実績比では23.2%削減した。②国民一人あたりのCO₂排出量も、1990年の12.2トンから20.7%減の8.9トンとなった。③2018年に削減されたCO₂排出量のうち、2/3は暖房・発電分野におけるCO₂排出削減によるもので、特に石炭火力発電の減少と再生可能エネルギーによる発電量の増加によって5千万トンのCO₂排出が削減された。④経済活動における炭素排出密度は、1ユーロあたりのCO₂排出量が1990年は582gだったのが、2018年には277gと半減した。⑤CO₂排出量はほとんど全ての分野で減少したが、特にエネルギー供給、工業、家庭部門で減少した。輸送部門では、自動車のエネルギー効率の向上にも関わらず、需要の増加によって排出量は増加した。⑥この結果、全世界のCO₂排出量に占めるEUのシェアは、1990年の15%から2018年には8%に減少した。
      • 原文 May 29, 2020, 欧州環境庁(植木エミリ)
    • 【6】 IMO DCS: 5月31日から適合証書を船舶に設置する義務が発効
      • 【6】 MARPOL Annex VIの規則22Aに従い、船舶は2019年1月1日より、燃料の消費量に関する情報を収集し、2019年の実績を認証機関への報告する期限の2020年3月31日が過ぎ、認証機関から発行される適合証書(SoC)を船舶に設置する期限である2020年5月31日も到来した。従って、法定の定期検査の際には、SEEMP part IIに定める確認書(CoC)とともに、適正な証書を船上に設置していることの確認を受けることとなる。この二つの証書の設置義務は新たな要件なので、今後実施されるPSCにおいては必ず重点的に確認されることに留意する必要がある。
      • 原文 May 19, 2020, DNV GL(長谷部正道)
    • 【7】 IMO: 旗国が法定証書の有効期限の延長を3か月以上認める場合の指針
      • 【7】 6月2日、IMOは「旗国が法定証書の有効期限の3か月以上の延長を認めるにあたっての技術的・実行上の指針(guiding principles)」をCircular Letter No 4204/ Add.19で公表した。
      • 原文 June 2, 2020, IMO(長谷部正道)
    • 【8】 政府のロックダウン緩和策、感染警報システムに一致せず
      • 【8】 ジョンソン首相は5月10日に6月1日以降のロックダウンの緩和策を発表した際に、感染の危険レベルを5段階で評価する警報システムを導入するとともに現状をレベル4(感染率が高い又は上昇している)にあると評価した。同警報システムではレベル3に移行した後に段階的に規制を緩和することになっているが、ジョンソン首相はロックダウンの一部緩和を翌週に控えた5月27日に、レベル4からレベル3に移行しつつあると説明したものの、その後レベル3に下がったとの発表を行わないまま、一部緩和に踏み切った。政府は警報レベルが規制緩和に必要となる主要な条件ではないと説明しているが、レベル3に移行したい政府と引き下げに反対する主席医務官など専門家との間で意見が分かれたとの情報もあり、政府の緊急時科学諮問グループ(SAGE)のメンバーからも規制緩和は時期尚早であるとの声が上がっている。
        ※6/1の英国の感染者数:1,570人(日本37人の42倍、緊急事態解除基準47人の33倍)
        ※6/1の英国の死者数:111人(日本1人の111倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 Jun 2, 2020, BBC(若林健一)
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