2020/05/21LROニュース(7)
NEWS
※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。
記事アーカイブ
2020.05.21 UP
2020/05/21LROニュース(7)
- 【1】ITF/JNGが船員雇用契約の延長期限を6月15日までに設定
- 【1】海運雇用者側を代表する団体交渉グループ(JNG)と215の船員労組を代表する国際運輸労連(ITF)は、コロナウィルスから船員を守り、パンデミックによる旅行制限や航空便の欠航という状況に鑑み、これまで2回にわたり船員の労働契約の延長について合意してきた。この結果、多くの人数の船員が本来の労働契約期間終了後も船上で働き続ける一方で、交代要員の船員たちは待機を余儀なくされた。5月に入ってから、JNGとITFは協議を行い、現在の船員交代ができない現在の状況は、船員の健康と福祉に深刻な影響を与え、船員や国際物流チェーンの安全性を危険にさらすことから、IMOのCircular Letter (No.4204. Add.14)に従い各国政府が船員の円滑な交代のための準備を行うための期間として30日間(6月15日まで)の移行期間を認め、それ以上は船員の労働契約期間の延長を行わないことについて、5月14日合意した。 原文 May 14, 2020, 国際運輸労連(長谷部正道)
- 【2】欧州内の人口密集地域の堤防の嵩上げが海面上昇対策として経済的に有効
- 【2】産業革命以来、世界の海水面は既に13~20cm上昇しており、地球温暖化によって海面の上昇速度は1990年代以降加速している。現在、欧州では2億人以上が海岸から50km以内に居住しており、沿岸部へ移住する傾向も継続しているが、海面は今世紀中に約1m上昇すると予想されており、海岸線に何ら補強がされない場合、海岸線の後退や大規模な洪水をもたらすことが予測される。こうした災害に対処するための方法としては、堤防の建設などの防護策、洪水に強い建物の建設などの洪水との共存策、建物の移転などの交代策などが考えられる。これらの対策のうち、堤防の建設などのインフラによる防護策が、海面上昇に対する効果を最も検証しやすいというメリットがあり、欧州委員会の共同研究センターの研究者等が堤防の嵩上げについて費用対効果分析を行ったところ、欧州域内で人口密度の高い高収益の24%から32%の海岸部の堤防を経済的に嵩上げすることで、海面上昇による経済的な損害額全体の83%を回避できることが判明した。 原文 May 5, 2020, Nature(植木エミリ)
- 【3】DCSA: 電子船荷証券の導入で年間40億ドルの節約が可能
- 【3】デジタルコンテナ海運協会(DCSA)が、船荷証券(BL)を電子船荷証券(eBL)に変更した場合の経済的なメリットを調査するため、OECDの経済予測に従い、2030年までに世界経済が年間平均2.4%成長し、電子船荷証券への転換率が5割に達した場合、旧来の船荷証券の取り扱いコストの2/3を節約し、年間約40億ドル(約4320億円)の経費が節減できると発表した。IATAは2010年に電子航空貨物運送状(e-AWB)を導入したが、現在までのe-AWBへの転換率が68%に達していることから、すぐに標準eBLを海運の世界にも導入すれば、2030年までに5割のBLを電子化するのは夢ではない。eBL導入の動きは90年代後半からあったが、様々な困難により未だ標準eBLができていないが、DCSAの会長でMSCのデジタル化・技術担当CDOは、コロナウィルスの影響で、紙のBLを運ぶ航空便が遅れて、貨物の受け取りができないなどの混乱が生じている今こそ、eBL導入の好機であるとコメントしている。 原文 May 19, 2020, DCSA(長谷部正道)
- 【4】米海軍太平洋潜水艦隊が中国に対抗するため異例の緊急対応作戦を西太平洋で実施
- 【4】米海軍太平洋艦隊は、中国の南シナ海における拡大政策に対抗すべく米国防総省が実施する「自由で開かれたインド・太平洋戦略」を支援するため、前方展開しているすべての潜水艦が同時に緊急対応作戦を西太平洋において実施したことを明らかにした。グアム基地、サンディエゴ基地、ハワイ基地などから少なくとも7隻の潜水艦などが参加し、米太平洋艦隊潜水艦部隊司令官は、本作戦は国際法の下に米国の国益と航行の自由を守るという意志を示すものであると語った。米海軍は、コロナウィルス感染の影響により空母がグアム基地で待機状態にあるなか、その力を誇示し、また、コロナウィルスの影響による戦力低下は生じていないことを示すべく、最近西太平洋に艦隊を展開させており、ミサイル巡洋艦や駆逐艦が南シナ海や台湾海峡で「航行の自由作戦」を実施している。米国は、世界がコロナウィルスとの闘いに傾注するなか、中国が南シナ海での実効支配を強め、他の沿岸国に嫌がらせを行っているとして、中国を非難している。 原文 May 18, 2020, Star Advertiser(若林健一)
- 【5】ノルウェー船主協会:2050年までに炭素中立達成を表明
- 【5】国連気候変動政府間パネル(UN IPCC)の報告書によると、パリ協定に定める地球の気温上昇を1.5℃以下に抑える目標を達成するためには、2030年までに世界のGHG排出量を半減し、2050年までに排出量ゼロを達成しなければならない。海運業界は、世界のGHG総排出量の内2.2%を占めており、ノルウェー船主協会は2050年までの炭素中立達成に向けて4つの目標を採択した。その内容は、①2030年までに単位輸送量あたりのGHG排出量を2008年実績比で半減する。②2030年以降、新造船についてはゼロエミッション技術を採用した船舶しか建造しない。③2050年までに、ノルウェー船社における炭素中立を実現する。④2050年からは、炭素中立でないタイプの燃料の使用禁止を目指す。ノルウェー船主協会は、海運業界や世界が必要とする革新的な技術の開発を率先して行うことは大きなビジネスチャンスだと考えており、地球温暖化の緩和に貢献し、きれいな大気と健康的な海洋を提供することによって、新しく環境に優しい雇用も創出できると考えている。 原文 May 19, 2020, ノルウェー船主協会(植木エミリ)
- 【6】ARX週間海賊報告書(5月9日から15日)
- 【6】ARX MOULDINGSは5月9日から15日までの週間海賊報告書を発表したがその概要は以下のとおり。①5月11日、米国連邦海事局は警報を発表し、メキシコ湾南部において2018年1月以降少なくとも20隻の漁船及び35の石油施設や補給船が海賊や武装強盗の標的とされ、武器が使用され、乗組員に負傷者や人質とされる者が出るなどしており、このうち少なくとも5件が今年4月に発生しているとして注意を呼び掛けている。②5月11日、ガーナのタコラディ港に着岸していた貨物船に賊が侵入し救命艇を盗んだ。③5月10日、ハイチのラフィトー港に着岸中の貨物船に賊が侵入し後部係留索を盗んだ。④5月10日、モザンビークのナカラ錨地で荷役作業中のタンカーに賊が侵入した。⑤5月9日、シンガポールの東約13海里のシンガポール海峡を航行中の貨物船に刃物で武装した5人の賊が侵入し、遭遇した乗組員を負傷させたうえ同人の携帯電話及び空気呼吸器2式を奪って逃走した。⑥5月9日、赤道ギニアのルバ錨地に錨泊中の調査船に武装した賊が侵入し乗組員3名を誘拐、同国マラボ沖でも貨物船に武装した賊が侵入し乗組員2名を誘拐して逃走した。⑦5月9日、カメルーンのリンベ西方約40海里の海上を航行中のタンカーが複数の賊が乗った高速艇に接近・追跡されたが、巡視艇が現場に到着したことから賊は追跡をあきらめ逃走した。 原文 May18, 2020, ARX(若林健一)
- 【7】コロナウィルス収束後も病院の完全な再開には長期間を要する見込み
- 【7】コロナウィルス感染者を受け入れ、ケンブリッジ大学の研究にも協力している大規模病院の院長は、コロナウィルス感染者の一日当たりの入院患者数は10名から2名まで減少したものの、現在も70人以上が入院しこのうち15名が重篤な状態にあり、これまで2千件の手術を中止して今も9千人の患者が治療を待っていると述べた。同氏は、他の緊急治療のために先週4つの手術室を再開し、電話などを使用して遠隔での外来患者への対応も始めるとしているが、コロナウィルスが完全に消えたわけではなく、いまだ多くの課題も存在しており、通常の医療体制に戻す過程は慎重に進める必要があるとして、およそ18カ月は要するだろうと語っている。
※5/19の英国の感染者数:2,412人(日本30人の80倍、緊急事態解除基準47人の51倍)
※5/19の英国の死者数:545人(日本11人の50倍)
日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。 原文 May 20, 2020, BBC(若林健一)
- 【7】コロナウィルス感染者を受け入れ、ケンブリッジ大学の研究にも協力している大規模病院の院長は、コロナウィルス感染者の一日当たりの入院患者数は10名から2名まで減少したものの、現在も70人以上が入院しこのうち15名が重篤な状態にあり、これまで2千件の手術を中止して今も9千人の患者が治療を待っていると述べた。同氏は、他の緊急治療のために先週4つの手術室を再開し、電話などを使用して遠隔での外来患者への対応も始めるとしているが、コロナウィルスが完全に消えたわけではなく、いまだ多くの課題も存在しており、通常の医療体制に戻す過程は慎重に進める必要があるとして、およそ18カ月は要するだろうと語っている。