2020/01/27LROニュース(6)

NEWS


※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。

トップページ > LROニュース > 2020/01/27LROニュース(6)

記事アーカイブ

  • 2020.01.28 UP
    2020/01/27LROニュース(6)
    • 【1】 北極海の温暖化の原因の半分はフロンガス
      • 【1】 有機的ハロゲン化合物は大気中のオゾンを破壊し、南極上部のオゾン層に穴をあけることで知られているが、ハロゲン化合物の気候変動への影響についてはこれまであまり研究されてこなかった。コロンビア大学の研究チームによる調査は、1955年から2005年にかけてオゾン破壊物質(ODS)の直接放射熱がもたらした北極海の海温上昇と海氷消失への影響を明らかにした。ハロゲン化された有機化合物は他の化合物よりも大気中の熱を多く取り込み、例えばdichlorodifluoromethane (CFC-12)はCO2の約11000倍もの地球温暖化効果をもっており、大気中に占める割合が他の温室効果ガスと比べいかに少なかったとしても看過することはできない。20世紀後半の地球温暖化の3分の1はハロゲン化合物が取り込んだ熱によるものであり、北極海に至っては温暖化と海氷消失の要因の半分を占めることが明らかとなった。
      • 原文 January 20, 2020, Chemistry World(植木エミリ)
    • 【2】 米下院証言:外航船舶の非炭素化のためには膨大な研究開発が必要
      • 【2】 1月14日、米下院の沿岸警備隊・海運小委員会で、世界海運協議会(WSC)のCEOが2050年以降の外航船舶の非炭素化の見通しについて証言したところその概要は以下のとおり。①電池や水素を用いた炭素を排出しない船舶運航技術は短距離のフェリー向けにすでに開発段階にあるが、大型外航船の動力として必要な馬力には程遠い状況。②短距離フェリーで電池による動力が成功したとしても、外航船用に電池の容量を単純に大きくすればよいというものではない。マースクの北米の環境問題の責任者も以下のとおり証言した。①マースクは現在、コンテナ船1隻に40フィートコンテナの大きさのバッテリーを搭載して試験を行っているが、コンテナ船の動力を提供するためでなく、船内の照明・電動ポンプ・冷凍コンテナの電源として使用している。②同社は2050年までに同社の全船舶の炭素中立化を宣言しており、既存の船舶を改修して、農業・製紙・木材加工の副産物から生産されるエタノールや調理油を原料とした炭素中立のバイオ燃料を利用する試験を実施している。
      • 原文 January 14, 2020, Freight Waves(長谷部正道)
    • 【3】 2050年までに船舶から排出されるGHGを半減するために1兆ドル必要
      • 【3】 世界海事フォーラム・Friends of Ocean Action・世界経済フォーラムが共同で設立し、海事・エネルギー・インフラ・金融分野の90を超す企業で構成されるGetting to Zero Coalitionがロンドン大学UCLのUMAS(University Maritime Advisory Service)とエネルギー転換委員会(Energy Transitions Committee)に委嘱して、IMOで合意された2050年までに船舶からのGHG排出量を対2008年比で半減するためにかかる費用に関する調査を実施したところその概要は以下のとおり。①GHG半減に必要なコストは、2030年から2050年までの間に1-1.4兆ドル、あるいは20年間にわたり年間500-700億ドルの投資が必要となる。②2050年までに船舶からの排気の炭素中立化を図るためには、追加投資としてさらに、年間4千億ドル、総投資額として1.4-1.9兆ドルと、2018年において全世界でエネルギー開発のために投資された1.85兆ドルに匹敵する規模の投資が必要となる。③投資の内訳をみると、低炭素の燃料油を製造・貯蔵・給油するための陸上のインフラ整備に87%かかり、船舶の機関や燃料タンクへの投資及び船舶のエネルギー効率の向上のための投資は13%程度となる。
      • 原文 January 21, 2020, World Maritime News(長谷部正道)
    • 【4】 東京・パリMoU: 3月からの規制不適合油の輸送禁止について注意喚起
      • 【4】 1月20日、東京とパリのMoUは、3月から実施されるIMO 2020規制不適合油の輸送禁止について、船主等に対する注意を促す共同プレスリリースを発表したところその概要は以下のとおり。①1月1日から実施されたIMO 2020規制については、2019年に入ってから両MoUの加盟当局は、規制について周知活動を行い、船員等の認知度は上がっている。②しかし、3月1日から実施されるスクラバーを搭載しない船舶による規制不適合油の輸送禁止についてはまだ周知が十分でないので本共同プレスリリースを行った。③MEPC73においては、規制の遵守が行われることを前提に、PSC当局に対して「現実的で妥当な」取締りを求めないことが合意された。④したがって、両MoUは3月1日からスクラバー不搭載船による規制不適合油の輸送について、例外を認めず取り締まることとなる。⑤規制適合油の供給が受けられなかった場合は、旗国と次の寄港地のPSC当局に規制適合油調達不能報告書(FONAR)を提出しなければならない。
      • 原文 January 20, 2020, パリMoU(長谷部正道)
    • 【5】 IMO 自律海上船に関する規制面での検討範囲確定作業について
      • 【5】 第101回海上安全委員会が開催されて以降、本件については中間作業部会(IWG)で審議が行われている。実施規範(Code of Practice: COP)については、IWGにおける検討はSTCW条約に関する船員の訓練の問題に焦点が当てられている。海事工学・科学技術研究院(IMarEST)のメンバーが自主的に作った海上自律船(MASS)特別利益グループが訓練に必要な枠組みについて支援していく予定。IWGはSTCW条約は船員が乗船している船舶にのみ適用され、必要な技能の変遷を踏まえてSTCW条約が改正されるべきとしているので、MASSを遠隔操縦する操船者にはSTCW条約が全く適用されないことになる可能性もある。遠隔操船者の定義はまだできていないが、もし遠隔操船者を船員とみなすなら、SOLAS条約の改正も必要となる。MASSに関する「船長」の定義は今後とも重要な論点となる。その他の論点については以下のリンクを参照。
      • 原文 January 20, 2020, HFW(長谷部正道)
    • 【6】 ダボス会議:気候変動問題が中心的な話題に
      • 【6】 豪で壊滅的な山火事が発生する前から、気候変動問題は、今回で50回目の記念を迎えるダボス会議で最優先の課題に位置付けられていたが、豪の山火事は海面上昇・洪水・異常な規模の台風と相まって、気候変動問題の解決策を示そうとダボス会議に集まった世界の政治家・産業界のリーダー・金融機関のトップ等に気候変動問題に緊急に対応するためのさらなる圧力を加えることになった。しかし、気候変動問題に関する認識が高まってきているとはいえ、産業界の取り組み状況はまだまだで、ダボス会議の主催者が12月に発表した報告書によれば、調査対象となった7000の企業のうち、その1/4しか具体的なGHG削減目標を立てていないし、実際に毎年GHGを削減しているのはわずかに8社だけだった。
      • 原文 January 20, 2020, NY Times(長谷部正道)
  • 資料閲覧 その他