2019/06/04LROニュース(6)
NEWS
※LROニュースの内容については、有料メールニュースなど営利目的での転載はご遠慮頂くとともに、2次使用の際はLROニュースからの転載である旨を明示していただきますよう、お願いいたします。
記事アーカイブ
2019.06.05 UP
2019/06/04LROニュース(6)
- 【1】世界のコンテナ船の16%に既にスクラバーが搭載
- 【1】船舶統計のAlphaliner社によれば、2020年硫黄含有分規制開始7か月前の2019年5月末時点で、全世界のコンテナ船5272隻中(発注済420隻含む)、その16%に当たる844隻(うち改装590隻、新造181隻、既存船73隻)にスクラバーが搭載され、総積載量でいえば全体の35.7%にあたる809万TEU分のコンテナ船に搭載されていることがわかった。コンテナ海運アナリストによれば、スクラバー搭載を促進している要素として、規制適合燃料油がどれだけ割高になるかわからないことに加え、スクラバー搭載のためのコストが昨年と比較して1基あたり500万ドル~800万ドルから300万ドル~500万ドルに下がったことが挙げられる。当初スクラバー搭載に否定的な見解を示す船社もあったが、程度の差はあれ、現在、世界トップ12のコンテナ船社全てがスクラバー搭載を進めている。一方、スクラバーや規制適合燃料油を使用する代わりにLNGを燃料として運航しているコンテナ船は現在38隻のみで、総船舶数の1%、積載量ベースで2%のみである。
- 【1】船舶統計のAlphaliner社によれば、2020年硫黄含有分規制開始7か月前の2019年5月末時点で、全世界のコンテナ船5272隻中(発注済420隻含む)、その16%に当たる844隻(うち改装590隻、新造181隻、既存船73隻)にスクラバーが搭載され、総積載量でいえば全体の35.7%にあたる809万TEU分のコンテナ船に搭載されていることがわかった。コンテナ海運アナリストによれば、スクラバー搭載を促進している要素として、規制適合燃料油がどれだけ割高になるかわからないことに加え、スクラバー搭載のためのコストが昨年と比較して1基あたり500万ドル~800万ドルから300万ドル~500万ドルに下がったことが挙げられる。当初スクラバー搭載に否定的な見解を示す船社もあったが、程度の差はあれ、現在、世界トップ12のコンテナ船社全てがスクラバー搭載を進めている。一方、スクラバーや規制適合燃料油を使用する代わりにLNGを燃料として運航しているコンテナ船は現在38隻のみで、総船舶数の1%、積載量ベースで2%のみである。
- 【2】マレーシア・フィリピンがリサイクル不能なプラスチックごみを強制返送
- 【2】2018年に中国が従来外国から受け入れてきたプラスチックごみの受け入れを停止したのを受けて、マレーシア等の開発途上国が先進国からのプラスチックごみ輸出の新たな標的となっている。比政府は2013年から2014年の間に不法にカナダから同国に輸入されたごみが入ったコンテナをカナダに送り返すと既に発表しているが、5月28日、マレーシア政府の環境大臣も米・英・加・豪等から、マレーシア国内の不法ごみ処理施設向けにリサイクルできない形で輸出されたプラスチックごみ約3300トンを輸出国に送り返すと発表した。同大臣はクアラルンプル港郊外で、実際にごみが詰まったコンテナをマスコミに公開して、2週間以内に10個のコンテナを送還すると述べた。英国からのケーブル、豪からの汚染されたミルク容器、バングラデシュからのCD、米・加・日・サウジからの家庭ごみ、いったん仏等から中国に輸入されたごみが行き場を失ってマレーシアに再輸出されたごみなどがマスコミに公開された。
- 【2】2018年に中国が従来外国から受け入れてきたプラスチックごみの受け入れを停止したのを受けて、マレーシア等の開発途上国が先進国からのプラスチックごみ輸出の新たな標的となっている。比政府は2013年から2014年の間に不法にカナダから同国に輸入されたごみが入ったコンテナをカナダに送り返すと既に発表しているが、5月28日、マレーシア政府の環境大臣も米・英・加・豪等から、マレーシア国内の不法ごみ処理施設向けにリサイクルできない形で輸出されたプラスチックごみ約3300トンを輸出国に送り返すと発表した。同大臣はクアラルンプル港郊外で、実際にごみが詰まったコンテナをマスコミに公開して、2週間以内に10個のコンテナを送還すると述べた。英国からのケーブル、豪からの汚染されたミルク容器、バングラデシュからのCD、米・加・日・サウジからの家庭ごみ、いったん仏等から中国に輸入されたごみが行き場を失ってマレーシアに再輸出されたごみなどがマスコミに公開された。
- 【3】燃料油供給事業者の免許制度について
- 【3】国際海運会議所(International Chamber of Shipping)、ボルチック国際海運協議会(Baltic and International Marine Council)、国際独立タンカー船主協会(International Association of Independent Tanker Owners)等の事業者団体は共同でIMO第74回海洋環境保護委員会(MEPC 74)において船舶燃料供給事業者に対する強制的な免許制度の導入を検討することを提案したが、強制的に免許制度を導入することによるメリットを超える行政的な負担が重いことから、強制的な免許制度の導入については合意されず、代わりに自主的に免許制度を導入するためのガイダンスを検討することが合意された。具体的には同提案に添付された燃料油供給事業者の免許のモデル案を「加盟国・沿岸国のためのベストプラティスに関するガイダンス(Guidance on best practice for member States/ coastal States)」の附属書とするか否かについて大気汚染作業部会(Air Pollution Working Group)で検討されることが合意されたが、作業部会は時間切れで検討のできなかったため、本問題の検討は2020年2月の第7回汚染防止・対応委員会(PPR 7)または同3月の末から4月初めに開催されるMEPC 75に持ち越されることになった。
- 【3】国際海運会議所(International Chamber of Shipping)、ボルチック国際海運協議会(Baltic and International Marine Council)、国際独立タンカー船主協会(International Association of Independent Tanker Owners)等の事業者団体は共同でIMO第74回海洋環境保護委員会(MEPC 74)において船舶燃料供給事業者に対する強制的な免許制度の導入を検討することを提案したが、強制的に免許制度を導入することによるメリットを超える行政的な負担が重いことから、強制的な免許制度の導入については合意されず、代わりに自主的に免許制度を導入するためのガイダンスを検討することが合意された。具体的には同提案に添付された燃料油供給事業者の免許のモデル案を「加盟国・沿岸国のためのベストプラティスに関するガイダンス(Guidance on best practice for member States/ coastal States)」の附属書とするか否かについて大気汚染作業部会(Air Pollution Working Group)で検討されることが合意されたが、作業部会は時間切れで検討のできなかったため、本問題の検討は2020年2月の第7回汚染防止・対応委員会(PPR 7)または同3月の末から4月初めに開催されるMEPC 75に持ち越されることになった。
- 【4】USCG: 商船に対するサイバー攻撃に関する海事安全情報を発出
- 【4】米国沿岸警備隊(USCG)は5月24日付で、フィッシングメールやマルウェアソフトによる、商船に対するサイバー攻撃に対する注意喚起を行う告示を発出した。攻撃者は「port@pscgov.org」のような、あたかもPSC当局のアドレスにみえるメールアドレスを使う手口で、到着通知(Notice of Arrival :NOA)に含まれる機密情報を抜き取ろうとする。また、船上のコンピュータシステムに害を与える悪意のあるソフトウェアについてもUSCGは報告を受けている。疑わしい活動やセキュリティ侵害はUSCGの対応センター(NRC)に通報するか、船舶の運航に対する直接的な影響や海洋汚染の結果を生じなかったような事案についてはNRCの代わりにNCCICに通報する必要がある。USCGは海事関係者に対し、メールの送信先が正当なものか送信前に確認するよう強く求めるとともに、不安な場合は確実な方法でPSC当局に直接確認するよう求めている。また、船舶所有者や船舶運航者に対し、自船におけるサイバー攻撃に対する防御策を継続的に評価するよう求めている。
- 【4】米国沿岸警備隊(USCG)は5月24日付で、フィッシングメールやマルウェアソフトによる、商船に対するサイバー攻撃に対する注意喚起を行う告示を発出した。攻撃者は「port@pscgov.org」のような、あたかもPSC当局のアドレスにみえるメールアドレスを使う手口で、到着通知(Notice of Arrival :NOA)に含まれる機密情報を抜き取ろうとする。また、船上のコンピュータシステムに害を与える悪意のあるソフトウェアについてもUSCGは報告を受けている。疑わしい活動やセキュリティ侵害はUSCGの対応センター(NRC)に通報するか、船舶の運航に対する直接的な影響や海洋汚染の結果を生じなかったような事案についてはNRCの代わりにNCCICに通報する必要がある。USCGは海事関係者に対し、メールの送信先が正当なものか送信前に確認するよう強く求めるとともに、不安な場合は確実な方法でPSC当局に直接確認するよう求めている。また、船舶所有者や船舶運航者に対し、自船におけるサイバー攻撃に対する防御策を継続的に評価するよう求めている。
- 【5】米大統領のヘリ護衛艦訪問について中国が持つ懸念
- 【5】トランプ米大統領は日本訪問中、安倍総理大臣とともに海上自衛隊のヘリ搭載護衛艦で航空母艦への改修が計画されている「かが」を視察した。米大統領が海上自衛隊の艦船に乗船するのは初めてのことである。この視察について中国の専門家は、同盟国により多くの軍事的責任の分担を求め、同盟国が国防予算を増額することをトランプ大統領が求め、これに応じて安倍首相が日本の軍事力強化を推進していることを改めて示したものと説明している。また別の中国人専門家は、「かが」は日本の憲法上の制約から保有できないとされてきた航空母艦に改修される予定であり、トランプ大統領の「かが」視察は、日本が過去の歴史を反省せず、あるいは軍備の再強化がアジアで懸念を高めている事実をトランプ大統領が無視することを意味するとしている。米国は日本の同盟国である一方、長距離攻撃能力を持つ兵器の保有を認めないなどこれまで日本の軍事力整備に制限をかけてきたが、今回の視察で日本は軍備拡張に対する米国の暗黙の了解を得たことになり、アジアでの緊張を高め、大国間の対立を刺激し軍拡競争につながる可能性がある。
- 【5】トランプ米大統領は日本訪問中、安倍総理大臣とともに海上自衛隊のヘリ搭載護衛艦で航空母艦への改修が計画されている「かが」を視察した。米大統領が海上自衛隊の艦船に乗船するのは初めてのことである。この視察について中国の専門家は、同盟国により多くの軍事的責任の分担を求め、同盟国が国防予算を増額することをトランプ大統領が求め、これに応じて安倍首相が日本の軍事力強化を推進していることを改めて示したものと説明している。また別の中国人専門家は、「かが」は日本の憲法上の制約から保有できないとされてきた航空母艦に改修される予定であり、トランプ大統領の「かが」視察は、日本が過去の歴史を反省せず、あるいは軍備の再強化がアジアで懸念を高めている事実をトランプ大統領が無視することを意味するとしている。米国は日本の同盟国である一方、長距離攻撃能力を持つ兵器の保有を認めないなどこれまで日本の軍事力整備に制限をかけてきたが、今回の視察で日本は軍備拡張に対する米国の暗黙の了解を得たことになり、アジアでの緊張を高め、大国間の対立を刺激し軍拡競争につながる可能性がある。
- 【6】世界の海賊をめぐる現状分析
- 【6】2010年~2017年に東アフリカ諸国はソマリア海賊対策に240億ドルを費やしており、アフリカの角はいまだ海賊多発地帯であるとともに、西アフリカのギニア湾は拉致や誘拐が爆発的に発生している。アフリカの漁業者は中国やロシア、欧州の先進的な漁船に圧倒されており、ある東アフリカの漁師に言わせれば、漁業者や若者が海賊を働くのは密漁と極度の貧困が原因であるというが、米中の貿易摩擦の影響や、イエメン紛争、先行き不透明な情勢など途上国の問題は多岐にわたる。それでも、他の地域での過去の経験を参考にすれば、状況を抑制することは可能である。例えば、東南アジアでは馬、尼、比の当局による合同パトロールが効果を発揮するとともに、APEC国である豪、星、日がこれに協力したことは実用的なテンプレートであるが万能ではない。ICC国際海事局によれば昨年の海賊件数は増加しており、また国連安保理のレポートでも、ソマリアとモザンビークで海賊とテロリストの活動が増加していると指摘され、モザンビークのNacala港では実際に武装強盗未遂事案が発生している。モザンビークは数年前に沿岸警戒システムを導入しているが全く活用されておらず、また取締当局の勢力を削減するという残念な決定を行っている。今年に入り、1994年以降初めて、乗っ取り事件の報告がないなど、幸いにも第1四半期は海賊が減少し、ソマリア沖は相対的に平穏であるが、このような状況は永遠には続かない。5月初旬にはナイジェリア沖でタンカーの乗っ取り事件が発生するなど、いまだ世界の海は乱れている。
- 【6】2010年~2017年に東アフリカ諸国はソマリア海賊対策に240億ドルを費やしており、アフリカの角はいまだ海賊多発地帯であるとともに、西アフリカのギニア湾は拉致や誘拐が爆発的に発生している。アフリカの漁業者は中国やロシア、欧州の先進的な漁船に圧倒されており、ある東アフリカの漁師に言わせれば、漁業者や若者が海賊を働くのは密漁と極度の貧困が原因であるというが、米中の貿易摩擦の影響や、イエメン紛争、先行き不透明な情勢など途上国の問題は多岐にわたる。それでも、他の地域での過去の経験を参考にすれば、状況を抑制することは可能である。例えば、東南アジアでは馬、尼、比の当局による合同パトロールが効果を発揮するとともに、APEC国である豪、星、日がこれに協力したことは実用的なテンプレートであるが万能ではない。ICC国際海事局によれば昨年の海賊件数は増加しており、また国連安保理のレポートでも、ソマリアとモザンビークで海賊とテロリストの活動が増加していると指摘され、モザンビークのNacala港では実際に武装強盗未遂事案が発生している。モザンビークは数年前に沿岸警戒システムを導入しているが全く活用されておらず、また取締当局の勢力を削減するという残念な決定を行っている。今年に入り、1994年以降初めて、乗っ取り事件の報告がないなど、幸いにも第1四半期は海賊が減少し、ソマリア沖は相対的に平穏であるが、このような状況は永遠には続かない。5月初旬にはナイジェリア沖でタンカーの乗っ取り事件が発生するなど、いまだ世界の海は乱れている。