2019/02/01LROニュース(6)

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  • 2019.02.04 UP
    2019/02/01LROニュース(6)
    • 【1】硫黄含有分2020年規制:化学タンカーの対応状況と見込み
      • 【1】小型の化学タンカーにおけるスクラバーの設置において、物理的に設置が出来ない問題や、設置するにしても一隻につき150~200万ドルのコストがかかることが障害になっている。Drewry社の統計によれば、全世界で本年1月1日現在、スクラバーを搭載している化学タンカーは21隻で、搭載をこれから予定しているタンカーも76隻しかないことから、化学タンカーの98%は、2020年の規制実施の時点で、割高な規制適合燃料油を使用しなくてはいけない状況である。約18隻がLNGも燃料として使用できるように改造され、12隻(製造中の4隻も含む)がメタノールを燃料とすることができるが、残りの大多数のタンカーは割高な低硫黄分の燃料油を使用することとなり、こうした燃料の追加コスト分を船主が用船者に転嫁できるか今のところ定かではない。現在の市況を見れば、完全な転嫁は不可能で結局船主の収益を圧迫することとなる見込みである。
      • 原文 Jan 22 2019 Drewry (澤井由紀)
    • 【2】BIMCO: ギニア湾の海賊対策に国際的な取り組みを要請
      • 【2】2018年のIMBのレポートによれば西アフリカで海賊被害が急増しているが、この流れを止めるには、国際的な海軍力による支援と、各国海軍と沿岸国法執行機関との協力が必要である。西アフリカ諸国に対する能力向上支援や、現地海軍も訓練を重ねてはいるものの、いずれも長期的視点に立ったものであり、即効性はない。また、ギニア湾で補給船や漁船などの小型船が活動していることをもって、この地域の海賊対策が困難かつ複雑で、無関係の巻き添えを生じるリスクが高いとする傾向があるが、これは誇張されたものであり、純粋に軍事あるいは法執行の観点からいえばさほど複雑ではなく、既に他の海域で成功例がある。問題を悪化させている原因は政治的観点にあり、沿岸国の政治家と国際社会が海賊対策を支持する意思を持てば、問題は比較的容易に解決に向かうのである。BIMCOは国際社会がギニア湾に海軍を派遣し、海賊の取締りにおいて沿岸国と緊密に協力することを求めるものである。
      • 原文 Jan. 22, 2019, BIMCO(武智敬司)
    • 【3】バレンツ海の温暖化が進み大西洋型の気候に変化
      • 【3】北極海は海面の表面に氷が解けた真水の冷たい層があり、その下に大西洋から流入した塩分濃度が高くて暖かい海水の層を閉じ込めており、バレンツ海北部は、1万2千年前に氷河期が終わって以来ずっとこうした北極海型の海水の2重構造を維持してきた。しかし、北極海の北方からバレンツ海に流れ込む真水の多い海氷の量が減少し、表面の冷たい真水の層を維持することが困難となり、下層にあった暖かく塩分濃度の高い大西洋の海水がバレンツ海の表面まで上昇することが可能となって、表面の海水温度を押し上げるとともに、海水表面温度の上昇は下層の温かい大西洋の海水が表面に上昇することをさらに加速させるという海水温度上昇の悪循環が発生している。したがって、現在は北極海の一部であるバレンツ海が今後10年以内に大西洋化し、北極海の限界がバレンツ海より東に位置するカラ海とラプテフ海まで後退することが予想される。バレンツ海表面の冷水層が一度破壊されれば、バレンツ海に流れ込む海氷の数が急増しない限り、元の状態に戻るのは困難であり、地球全体の気候のパターンやジェット気流などにも影響を与えることが予想される。
      • 原文 Jan. 24, 2019, BBC(長谷部正道)
    • 【4】ロッテルダム港:低炭素・無炭素燃料油の使用促進のためにインセンティブを付与
      • 【4】ロッテルダム港湾当局は、2018年4月に開催された「エネルギー転換サミット」で提唱された500万ユーロを財源とする「気候変動対策に配慮した海運活動に対するインセンティブ制度(Incentive Scheme Climate-Friendly Shipping)」について、ロッテルダム港内で供給される低炭素または非炭素系燃料を活用する物流事業の促進のため、荷主・海運会社・燃料製造供給事業者・エンジン製造事業者・関連サービス事業者を対象として、1月21日からインセンティブ受給申請の受付を開始した。このインセンティブ制度は2022年末まで継続して実施される予定。海運部門からの地球温暖化ガスの排出削減のために、ロッテルダム港はハンブルク港・バルセロナ港・アントワープ港・ロサンゼルス港・ロングビーチ港・バンクーバー港とともに、2018年9月に「世界港湾気候変動対策行動計画(World Ports Climate Action Program)」に合意したが、今回のインセンティブ制度は上記行動計画の目的と整合性をもって設計された。
      • 原文 Jan. 21, 2019, ロッテルダム港(長谷部正道)
    • 【5】2019年も大気中の二酸化炭素濃度が大幅に上昇する見込み
      • 【5】森林によって大気中の二酸化炭素が吸収されるが、今年のように太平洋の熱帯地帯の気温が高いときには、森林・植物の成長が遅いため吸収される二酸化炭素の量も減少する。このため、科学者たちは2019年においては2018年にも増して大気中の二酸化炭素濃度が増加すると予測している。ハワイのマウナ・ロア気象観測所では、1958年以来継続して大気の化学的組成を計測しているが、化石燃料の使用や森林の減少の影響で、1958年から現在まで大気中の二酸化炭素濃度は30%増加している。2019年度の大気中の二酸化炭素の濃度は411ppmと史上最高に達するものと予想されるが、気温自体は、他の多くの自然現象によっても左右されるので、2019年に地球全体の気温が過去最高になるとは限らないが、パリ協定の温暖化抑制目標の達成が一段と難しくなるのは確かである。
      • 原文 Jan. 25, 2019, BBC(長谷部正道)
    • 【6】世界銀行:海運分野におけるGHG削減策の経済的影響
      • 【6】1月9日、世界銀行が海運分野におけるGHG削減策の経済的影響を分析して発表したところその結論の概要は以下のとおり。①海運分野のGHG削減対策として、排出する二酸化炭素1トン当たり10ドルから50ドルの価格を燃料の価格に上乗せした場合、海上運送コストを0.4%から16%引き上げることが予想される。②しかしこのような海上運送コストの上昇は輸入製品価格でみれば1%以内の価格上昇しかもたらさない。③また海上輸送コストの上昇による全輸送手段中の海上輸送のシェアの減少は全世界平均でわずか0.16%にとどまる。④さらに、すべての輸送手段について世界的に炭素課税を適用した場合、他の輸送手段から海上輸送へのモーダルシフトが起こることが予想される。⑤排出する二酸化炭素1トン当たり10ドルから90ドルの炭素課税制度を導入した場合に、GDPに与える影響はマイナス0.002%からマイナス1%の範囲にとどまる。報告書の本文は以下のリンクを参照。
      • 原文 Jan. 9, 2019, 世界銀行(長谷部正道)
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