2018/9/28 LROニュース(7)

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  • 2018.10.01 UP
    2018/9/28 LROニュース(7)
    • 【1】 スタンダードP&Iクラブ:拡大する汚染された燃料油問題に対処する方法
      • 米ヒューストンに端を発し世界的に拡大した汚染された燃料油の問題は、当該汚染された燃料油の粘性が高いので、主機関や補助機関の燃料パイプ等が詰まることによる機関故障事例が既に世界で150件以上が報告され、最も重大な事例としては機関故障に伴う座礁事故が1件発生している。スタンダードP&Iクラブは8月22日、会員に向けて本問題の対応策を提示したところ、その概要は以下のとおり。①当該燃料油の主要汚染物質はフェノールとスチレンであり、ISO8217に基づく標準的な燃油検査ではこれらの物質の検出は不可能で、ガスクロマトグラフィー質量分析(GCMS)が必要であるが、この検査は高価であるうえに、結果が出るまでに最大4~5週間かかる。一方で、燃料油品質に対する申し立て可能期間は通常2~4週間のため、各会員は申し立て期限に間に合うよう迅速に対応し、仮に申立期間経過後に問題を把握した場合でも、善後策についてクラブと相談するべき。②汚染された燃料油の補給を未然に防ぐには、エンジンや清浄機メーカーに品質の制約を確認する、信頼のおける供給会社を利用する、供給会社のこれまでの燃料分析の記録を確認する、補油後迅速にサンプルを分析機関に提出する、補油時に燃料が混合しないようにする、分析結果を入手する前に新しい燃料を使用しない等の対策を強く勧める。③粗悪燃料油であることが判明した場合は、当該燃料油を化学処理する、船上に代替燃料があることを確認する、汚染を拡大させないためタンクやパイプラインの洗浄を十分に行う等の対応が必要である。
      • 原文 Aug. 22, 2018, スタンダードP&Iクラブ(野口美由紀)
    • 【2】 欧州排出権取引制度:炭素価格急騰で石炭からガス火力発電に転換が進む見込み
      • 8月21日、英シンクタンクCarbon Trackerが欧州排出権取引制度(EU-ETS)における炭素市場の動向を発表したところ、その概要は以下のとおり。①8月時点の炭素排出枠(EUA)価格は、2017年5月と比べて310%上昇、2018年4月と比べても33%上昇と軒並み上昇し続けている。②これは2019年1月から「市場安定化リザーブ(Market Stability Reserve: MSR)」が導入されるためであり、本政策の下では2023年までの5年間、毎年余剰排出枠の24%が削減される上、2014年から2016年までの余剰分9億トンも削減されるため、それに市場が反応しているためである。③EUAの削減で、今後1トン当たりのEUA価格は現在の17.3ユーロから2018年末には25ユーロに、2020~2021年には40ユーロまで上昇すると予想され、この試算に基づけば5年間で4億トンのCO2排出を削減できる。④しかし、これを達成するには、電力部門は石炭からガス火力発電に転換することが不可欠である。
      • 原文 Aug. 21, 2018, Carbon Tracker(野口美由紀)
    • 【3】 GMDSSにおけるインマルサットの貢献
      • 2018年5月に行われたIMO海上安全委員会において、イリジウムが2020年にサービス開始を予定している低軌道衛星がGMDSS海上移動衛星サービスに加えられることが合意されたほか、中国の北斗衛星測位システムについて第3のGMDSS海上移動衛星サービスとしての評価を行うことが合意された。今日に至るまで、インマルサットはGMDSSサービスプロバイダとして改良を行い、2007年に導入されたFB回線サービスは2017年に利用端末数が5万を超えている。また、インマルサット社のネットワークオペレーションセンターはすべての遭難信号を受信し、MRCCの応答状況を監視することで確実に海難救助が行われるよう、GMDSSサービスプロバイダとしてIMOが要求する義務的な役割を超えて貢献している。船舶とMRCCをインマルサット回線を通じて世界的に繋ぐ既存のサービスは、GMDSS近代化の一環として開発されたRescueNetとSafetyNetⅡメッセージサービスに代替される。今後、インマルサットはGMDSSサービスプロバイダとして唯一の存在ではなくなるが、各サービスプロバイダ間の互換性や、複数のサービスプロバイダとMRCCとの複合的な関係の管理に向けた道筋は今のところ用意されていない。(訳者注:本記事の原典はインマルサット社の上席副社長による点に留意が必要。)
      • 原文 Aug. 23, 2018, SAFETY4SEA (武智敬司)
    • 【4】 米国海洋大気庁によるサンゴ礁の観察
      • 米国海洋大気庁(NOAA)の「サンゴ礁観察(Coral Reef Watch: CRW)」事業は、衛星からの情報を集めて分析し、海水温の急激な上昇が世界中のサンゴ礁にどのような影響を与えるか観察してきた。過去のこうした観察記録を分析することにより、将来の海水温の上昇によってサンゴ礁にどのような影響を与えるか生態学者がより正確に予測できるようになり、事前に対策を講じることが期待されている。化石燃料の燃焼による気候の温暖化は徐々に海水温を上昇させるが、2014年から2017年にかけて発生したエルニーニョ現象による急激な海水温の上昇は世界のサンゴ礁に共棲しサンゴ礁に栄養を補給する藻類を死滅させた結果、サンゴ礁は栄養不足で大規模な白化現象が生じた。海水温がすぐに通常のレベルに戻ればサンゴ礁は生き返ることができるが、海水温の上昇が長い期間にわたって継続したため、膨大なサンゴが死滅し、サンゴ礁が白化した。
      • 原文 Aug. 20, 2018, Oceans Deeply(長谷部正道)
    • 【5】 ハンブルク港でコンテナ船向けLNG発電装置の活用試験を実施中
      • 現在、ハンブルク港ではコンテナ船向けの可動式LNG発電機の活用試験が行われている。開発された装置は1.5メガワットと大容量の発電が可能だが、大きさは40フィートコンテナ2つ分とコンパクトなため、港湾に設置されているガントリークレーンで吊り上げ可能で、船舶が接岸するとすぐに船尾に取り付けられる。同装置を用いることで、コンテナ船は停泊期間中、補助ディーゼルエンジンに頼らずとも船上作業で必要な電力を全て賄うことができ、燃料もLNGのため硫黄酸化物や窒素酸化物などの汚染物質の排出を大幅に抑えられる。本プロジェクトの実施においては、独連邦交通デジタルインフラ省(BMVI)も支援を行っており、これまで2万TEUの巨大コンテナ船を用いた試作機の試験もすべて順調に行われてきた。今後、国際的な活用を目指し、欧州や中国の様々な港湾とも普及に向けた協議が行われている。
      • 原文 Aug. 24, 2018, The Maritime Executive(野口美由紀)
    • 【6】 ロシアの浮体式原子力発電所について
      • (論説)ロシア北西のコラ湾はロシアの原子力潜水艦と砕氷船の基地となっているが、その中心地のムルマンスクに、原子力潜水艦用の2つの原子炉を搭載する世界で初めての浮体式原子力発電所であるAkademik Lomonsovが係留されている。ロシア以外でも、中国の2つの国営企業がすでに同様の浮体式原子力発電所を建設中なほか、米国の科学者たちも浮体式原子力発電施設の建設を計画している。こうした浮体式原子力発電施設の推進者たちは、浮体式原子力発電所の発電コストは他の手段に比べてより安く、環境への影響も少なく、安全であると主張している。ロシアの国営原子力企業のロスアトムは長年にわたり原子力発電に関する技術を中国・インドなどの途上国に売ってきたが、浮体式原子力発電所の建設は陸上に原子力発電所を建設するのに比べてはるかに短い時間で可能であり、立地を選ばず、電力不足に迅速に対応することができる。
      • 原文 Aug. 26, 2018, The New York Times(長谷部正道)
    • 【7】 イランがペルシャ湾を支配と宣言
      • 米国による制裁への対抗措置として、イランは軍事行動により湾岸諸国の石油輸出を封鎖する可能性を示唆した。米国は原油の輸出ルートを保護するため、ペルシャ湾への艦隊派遣を継続する見込みである。イラン革命防衛隊のタンシリ大将は、イランがペルシャ湾とその入り口であるホルムズ海峡を完全に支配したとし、米国や非湾岸諸国はペルシャ湾に存在する必要はないと述べた。またイランの最高指導者ハメネイ師は先月、イランがホルムズ海峡を封鎖して湾岸諸国の石油輸出を停止させる考えを支持することを明らかにしている。
      • 原文 Aug. 27, 2018, gCaptain (武智敬司)
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