2018/8/7 LROニュース(7)

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  • 2018.08.08 UP
    2018/8/7 LROニュース(7)
    • 【1】 プラスチック汚染:使い捨て品だけでなくマイクロプラスチックの規制も必要
      • EUはストローや食器など使い捨てプラスチック製品の製造・販売を禁ずる法案を検討中だが、先進国では大きなプラスチック片よりも目に見えないマイクロプラスチック(MP)の方が大きな汚染源と言われており、ミネラルウォーターの90%以上からMPが見つかったとする研究結果がある他、まだ十分な解明は進んでいないが、プラスチックに含まれる有害物質が海洋生態系や人体にも悪影響を及ぼすリスクが指摘されている。すでに米国やスウェーデン、英国などではMPの使用が禁止されており、EUでも欧州委員会から要請を受けた欧州化学機関が、規制の必要性について現在評価を行い、近々報告書を発表予定であるが、EUの「化学物質の登録・評価・認可および制限に関する規則(REACH規則)」に従えば、潜在的なリスクを重視し予防原則に基づいた規制を講じるべきである。
      • 原文 May. 17, 2018, META(野口美由紀)
    • 【2】 船舶のGHG対策:ゼロエミッションに向けてはバイオ燃料が最適
      • 国際海運では2050年までに少なくともGHG半減を目標に掲げているところだが、船舶や海運業界の主要企業が加盟している「持続可能な船舶イニシアチブ(The Sustainable Shipping Initiative:SSI)」が、ゼロエミッション船舶の可能性について報告書を発表したところ、その概要は以下の通り。①バイオ燃料、電気、水素燃料電池の3種類について比較したところ、既存のディーゼル装置でも対応でき、追加コストを最小限に抑えられるバイオ燃料が経済的に最も実現可能な選択肢と言える。②しかし、食料と競合しないなど持続可能でかつ十分な量を供給できるかは課題である。また、供給量の制限がある場合、燃料コストが上昇する可能性があり、他の選択肢の方が優位になる可能性もある。③コスト面で課題はあるが、技術発展や政策次第では水素燃料電池も有効な選択肢となり得る。
      • 原文 May. 16, 2018, SSI(野口美由紀)
    • 【3】 2024年までに北極海航路の輸送量を8倍にすることを命じる露大統領令
      • プーチン大統領は4回目の大統領就任式が終わった直後に、北極海北航路を利用する海上貨物の輸送量を現在の約1000万トンから8倍の8000万トンに増加するように命じる大統領令を発出した。露天然資源省は、2030年までに輸送量が7200万トンまで拡大すると予測しており、大統領令の目標は事務方予測より高い目標となっている。北極海北航路の活用はソ連時代からの国家目標で、ソ連時代には航路沿いに必要なインフラの整備がすすめられ、1987年には輸送量が658万トンにまで達していたが、ソ連崩壊によって1998年には年間輸送量が146万トンまで激減していた。プーチン大統領は北極海を支配するため、2016年には国連に北極点を含む広大なロシアの北極海大陸棚を申請している。北極海の温暖化が進み、2017年の夏には砕氷能力を持たないLNG輸送船が砕氷船の伴走なしで初めて北極海北航路の単独通過航行に成功したが、露は引き続き最新鋭の2隻の砕氷船の建造を進めている。
      • 原文 May 16, 2018, Bellona(長谷部正道)
    • 【4】 機関投資家等が北極海野生生物国家保護区の開発に反対
      • アラスカの北極海野生生物国家保護区(ANWR)は1900万エーカーの世界最大の野生動物保護区で、シロクマ・シロフクロウ・トナカイ等多くの野生生物の生息地になっている一方で、同区の中の沿岸平野部やプルドー湾には多くの石油・天然ガスが埋蔵されていると考えられている。このため2018年4月に、トランプ政権は ANWRにおける石油・天然ガスを認めるための行政手続きを開始した。これに対し、2.5兆米ドル規模の機関投資家有志と当該地域の先住民族であるグウィッチンは石油・ガス企業とこれらの企業に融資する銀行に書簡を送り、ANWRにおける資源開発に参加しないことを要請したところ、その要旨は以下のとおり。①気候変動に対応するために、世界的に原油の需要が減少する見込みの中で、リスクの高い本事業に参加・投資することはビジネス的に見ても無責任な判断。②にもかかわらず、ANWRの事業に参加することは非倫理的で企業の社会的名声を損なうリスクが高い。③資源開発のために道路・パイプライン・砂利採掘施設・滑走路などのインフラを整備すれば、野生生物の生息地を分断し、油濁事故などにより甚大な環境被害を与える可能性がある。
      • 原文 May 14, 2018, The Guardian(長谷部正道)
    • 【5】 デンマーク船主協会が報告様式命令に関する欧州委員会の改正案を評価
      • 2018年初めからデンマークを含む13のEU加盟国は、欧州委員会に対して、既存の報告様式命令を大胆に見直すように要請していたが、5月17日に欧州委員会によって提示された改正案は、加盟国・港湾当局間の報告様式・報告手続の整合性の欠如や、船舶から提出された情報が当局間で共有・再利用されていないという同船主協会が指摘してきた現状の問題点に適切に対応しており評価できる。欧州委員会の改正案が理事会や欧州議会に承認されれば、船舶の報告義務に伴う事務負担を最小化し、海運のモード間の相対的な競争力を強化し、陸上のトラック輸送からのモーダルシフトを促し、2030年までに34億トンキロ分のモーダルシフトを達成し、その結果180万トンの二酸化炭素の削減が達成されることが期待される。
      • 原文 May 18, 2018, デンマーク船主協会(長谷部正道)
    • 【6】 IMO事務局内に部門横断的な海上自律運航船(MASS)タスクフォースを設置
      • IMO海上安全委員会(MSC)では、自律運航船のための規則改正の範囲を確定する作業(Regulatory Scoping Exercise: RSE)が、船員・安全・保安・港湾との関係・水先・事故対応・海洋環境保護など幅広い分野で進められているが、RSEを適切に支援するためにIMO事務局内に部門横断的なMASSタスクフォースを設立するとIMO事務局長が発表した。同事務局長は新技術を取り入れ、海運の効率性を改善することは重要だが、一方で船員の問題や安全運航の担保に留意する必要があると述べた。自律運航船は2020年からノルウェー国内で運航開始が予定されている完全な自律運航船であるYara Birkelandの様に、当面は各加盟国の内航輸送の手段として開発される見込み。
      • 原文 May 18, 2018, Seatrade Maritime News(長谷部正道)
    • 【7】 ヤマルLNGの中継基地がカムチャッカ半島の旧ソ海軍潜水艦基地に建設
      • ノヴァテクの副社長は、ヤマルLNG事業の極東向けLNG積替え基地をカムチャッカ半島のベチェヴィンカにある放棄された旧ソ連邦時代の海軍潜水艦基地に建設すると明言した。ヤマルLNG事業のため、ノヴァテクと提携先の海運企業は伴走砕氷船なしに北極海北航路を運航できる砕氷能力を持った最新型のLNG輸送船を建造しているが、アジア諸国向けのLNGはこの中継基地で通常のLNG輸送船に積み替えることにより、最新の砕氷輸送船の効率的な運用を図る。ベチェヴィンカの潜水艦基地は1960年代に建設され、1971年には112潜水艦艦隊の12隻の潜水艦の基地として使用されていたが、1996年に基地が廃止され、潜水艦艦隊は他の基地に移転していた。
      • 原文 May 18, 2018, The Barents Observer(長谷部正道)
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