2018/7/25 LROニュース(6)

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  • 2018.07.26 UP
    2018/7/25 LROニュース(6)
    • 【1】 海洋保護区内の砂浜の多くが侵食
      • デルフト大学等の研究者たちが、一般に公開されている光学衛星の1984年から2016年までの衛星写真を解析したところ、世界の氷結していない海岸の31%が砂浜であり、砂浜全体の24%が年間50cm以上の速度で浸食された一方で、28%の砂浜で砂浜の面積が拡大していることが分かったが、海洋保護区内の砂浜に限定すると、大多数の砂浜で浸食が進行していることが判明したため、原因の究明が更なる課題となる。
      • 原文 Apr. 27, 2018, Nature(長谷部正道)
    • 【2】 船舶の排気ガス規制によりクジラとの衝突事故が減少
      • 2009年から施行されたカリフォルニア州のCalifornia Clean Air (CCA)法は、船舶による大気汚染から州民を守るため、カリフォルニア州内の海域を運航する船舶によりきれいで高価な燃料油を使用し、特定の海域では排気規制を適用したが、この結果、船舶は燃費を節約するために減速したため予期せぬ効果として、船舶との衝突によって死亡する鯨の数が減ることになった。サンタバーバラ海峡はロサンゼルス港とロングビーチ港に出入港する船舶の航路であるとともに、ザトウクジラと絶滅危惧種のシロナガスクジラのえさ場として有名だが、研究者による調査では、同海峡を運航する船舶の平均速度は法施行前である2008年は19.7ノットであったが、2015年には13.4ノットに減速し、この結果同期間中に船舶に衝突して死亡したクジラの頭数が2割減少したことが確認された。また船舶との衝突が原因でカリフォルニア州の浜に打ち上げられた鯨の4年間の平均頭数は、2008年から2011年の平均は7.75頭だったのが、2012年から2015年お平均は2.75頭と約1/3に激減していることが分かった。
      • 原文 Apr. 30, 2018, Oceans Deeply(長谷部正道)
    • 【3】 気候変動の損失と被害に対する経済支援方法の課題が改めて鮮明に
      • 5月の気候変動ボン会議では、昨年のCOP23で協議がまとまらなかった気候変動の「損失と被害」に対する途上国の経済支援について、専門家による対話「Suva Expert Dialogue」が開催されたが、参加した先進国はドイツ一国のみだったとし、途上国支援に対する先進国の消極的な姿勢が浮き彫りになった。パリ協定では、2020年以降毎年1000億米ドルを先進国が途上国に対して支援することで合意しているものの、想定される被害額は2020年までに500億米ドル、2030年には3000億米ドルになるとの推計もあり、現在の合意では不十分と見られている。これに対して、先進国は保険制度を提案しているが、NGOなどからは資金不足のリスクを歴史的な排出国である富裕国から責任の小さい貧困国に移転するだけとの批判が出ている。今回の対話の結果は、気候変動の損失と被害に対処するための国際組織「ワルシャワ国際メカニズム」の執行委員会による9月の会合でさらに検討されることになっている。
      • 原文 May. 4, 2018, Climate Home News(野口美由紀)
    • 【4】 米国が北極海でロシアとの冷戦を避ける方法
      • (論説)北極海におけるロシアとの対立を避けるために米国がとるべき対策として、前NATO海軍司令官、米海軍提督が語ったところ概要以下のとおり。①官僚的だが、メンバー国の外相と軍トップが参加する北極評議会を活用して、ロシアと米国を含むその他の北極評議会加盟国の対話が進むように米国も支援すること。②国防総省が北極海における監視力と作戦能力を向上させるために、議会は少なくても6隻程度の新鋭砕氷船の建造予算を認めるとともに、官民連携(PPP)を活用して、北極圏において、空港・港湾・オフショアプラットフォームなど必要なインフラの整備を進めること。③北極海の温暖化に伴う環境関係の調査・油濁事故対応・捜索救援などロシアや中国と協力できる分野で科学外交を行うこと。④北極海における地政学的な競争・資源開発・環境問題・新たな重要な航路の出現などの動きに対してもっと関心を持つこと。
      • 原文 May 4, 2018, Bloomberg(長谷部正道)
    • 【5】 韓国による北朝鮮造船所に対する技術支援の課題
      • 2007年に、韓国と北朝鮮は両国の和解の一環として、共同経済発展事業に取り組むことに合意し、平壌までの鉄道や高速道路の建設に加えて、安辺と南浦に共同で造船所を建設することで合意していたが、その後北朝鮮が核開発を進めたため、この共同事業は棚上げされていたが、2018年4月に両国間の関係が再び和解の方向に進み始めたために、韓国産業通商資源部と統一部の南北朝鮮経済協力チームは、南北共同で北朝鮮に造船所を建設することについて検討を再開したが、以下のような課題があって現状では実現が容易でない。①韓国国内の造船能力の余剰②中国の造船業との厳しい競争③北朝鮮の造船所で建造された船舶は海外に輸出されるにせよ、北朝鮮国内で使用されるにしても現在の国連による経済制裁の対象となること。④南浦の造船所は、商船・浚渫船・船尾式トロール船の建造に加えて、北朝鮮海軍の造船所でもあり、最近では潜水艦発射型大陸間弾道弾(SLBMs)の発射実験にも使用されており、技術協力を行った民謡技術が軍事に転用される恐れが高いこと。
      • 原文 May 4, 2018, The Maritime Executives(長谷部正道)
    • 【6】 海氷の減る北極海で海洋性哺乳類に対する船舶運航の影響を減らす対策
      • ヴィクトリア大学の研究者等が標記につき、学術誌に発表した研究の概要は以下のとおり。①世界の1000を越す海洋保護区における船舶の運航を管理する方法の中から、研究者達は14の方法を選択して、海氷の減少しつつある北極海においてどの管理方法が適切か検討を行った。②この結果、自主的な運航禁止海域を設ける方法と自主的に船舶の速度を減速する海域を設ける方法が適切と判断された。③自主的な航行速度の減速はクジラ等と衝突する危険性を減らすとともに、船舶の運航によって発生する水中騒音も減少させる。④研究では、実証試験を北極海北西航路の入り口であるカナダの北極海西部のボーフォート海東部で行ったが、運航速度制限の必要性は大型で早く運航できる船舶に限られ、地域住民が利用する小型のボートには制限を適用する必要がないことが判明した。
      • 原文 May 3, 2018, ヴィクトリア大学(長谷部正道)
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