2018/5/1 LROニュース(5)

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  • 2018.05.02 UP
    2018/5/1 LROニュース(5)
    • 【1】 チリとペルーが生鮮食料品の輸出に悪影響として船舶の速度制限に反対
      • チリとペルー両国政府は、パリ協定に従って、船舶からのGHGの削減に緊急に取り組むことに賛成しているが、両国はアボガド・さくらんぼ・ブルーベリーなどの生鮮食品を海上輸送を利用して海外に輸出しているので、船舶からのGHGの排出を削減するために、すぐできる対策として提案されている船舶の運航速度の制限に関して、両国の生鮮食料品の輸出に大きな影響を与えるとして反対意見を表明している。具体的な例として、例えばチリのバルバライソ港から中国の上海港まで、さくらんぼを輸出するのに、さくらんぼを積載した船が20ノットの速度で運航できれば、33日間で市場に届けられるが、運航速度が15ノット以下に制限された場合、44日間もかかり、生鮮食品の品質が低下して、輸出貿易に大きな影響を与えると主張している。ブラッセルに本拠地を置く環境NGOの「交通と環境(Transport & Environment)」は、船舶から排出されるGHG削減のための抜本的な対策が合意されるまでの今後5年間にすぐできる暫定削減措置として、減速運航を提案しているが、2018年から2030年までの間、船舶が減速運航を行えば、排出されるGHGの1/3を削減できるとしている。
      • 原文 Mar. 19, 2018, Climate Change News(長谷部正道)
    • 【2】 国際海底機構で欧州諸国等が環境問題の重視を主張
      • 国際海底機構(International Seabed Authority: ISA)は1994年に設立され、2001年以降、27の採鉱企業に合計130万㎢の海底について15年間の探査権限を与えているが、現在、公海上の海底で採鉱企業が実際にどのように採鉱作業を行うか規定する「採鉱規範(Mining Code: MC)」を起草中であり、2017年8月に示された第一次草案では、環境問題は置き去りにされ、数年後にも商業採鉱が開始されることを前提に、2019年までにMCについて合意形成することに重点が置かれていた。しかし、海底の商業的な採鉱を、採鉱がもたらす環境的な影響が判明するまで禁止する決議が欧州議会で拘束力はないものの圧倒的多数で合意されたため、ISAの3月会合では、独仏を中心とした欧州諸国と中南米・アフリカ諸国と豪が、MCの策定にあたっては環境問題を優先的に考慮すべきと主張した。さらに、科学的なデータが不足して採鉱作業が環境に与える影響の可能性が把握できない場合は、海底生物が生息する海底における採鉱を禁止し、また、海底に環境保護区を設定するための地域環境管理計画の策定を強く主張した。これに対し、採鉱契約を既に獲得している日中韓は環境問題と経済的な利益の均衡を図るべきであるとして対峙した。
      • 原文 Mar. 22, 2018, Oceans Deeply(長谷部正道)
    • 【3】 北欧州の硫黄排出規制海域において大部分の船舶が規制を遵守
      • デンマーク周辺の「硫黄酸化物排出規制海域(Sulphur Emission Control Area :SECA)」では、深刻な大気汚染でを受け、船舶の燃料油中の最大硫黄含有量が2015年に1.0%から0.1%に強化されており、その規制遵守状況を調査した結果が3月21日に公表された。調査はスウェーデンのチャルマース工科大学がデンマーク環境保護庁(DEPA)と協力し、2015年から17年にかけて英仏海峡やバルト海中央部での航空機観測やデンマーク周辺の橋上での光学・物理的な技術を駆使したモニタリングにより行った。その主な結果は以下のとおり。①87~98%の船舶は基準を遵守していた。②普段ほとんどSECAを通行しない船舶は、基準を超える割合が高かった。③海運会社にとって低硫黄燃料油の使用は大きなコスト負担となるため、通常、船舶は低硫黄燃料油と安価な高硫黄燃料油の両方を持ち合わせ、それらを切り替えながら航行しているが、切り替えのタイミングがギリギリのためか、SECA境界付近では、比較的高い割合で基準に違反した船舶が見つかった。④中でもSECA内入域時より船内検査のリスクが下がる出域時に大量の硫黄成分を排出している船舶が多かった。
      • 原文 March. 21, 2018, CHALMERS(野口美由紀)
    • 【4】 コンテナに積載される貨物の誤った情報がコンテナ火災の主因
      • 最近コンテナ船の火災事故が続いているが、多くの場合火災の原因は、コンテナに積載された貨物の不正申告が原因となっているが、不正申告を減らすことはなかなか容易ではない。国際荷役調整協会(International Cargo Handling Association: ICHCA)によれば、2016年に全世界で1億8000万個のコンテナが輸送されたが、そのうち約540万個のコンテナで危険物が輸送されていたと推測しているが、全ての危険物が申告されていないことや、危険物ではない貨物として申告されていることが多いのが問題である。Gard Clubによれば、具体例として、次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)を塩化カルシウムや消毒剤・漂白剤として不正申告された結果コンテナ火災が発生している。さらし粉はとても危険で、自然分解しやすく、分解の過程で熱を発生する。不適切な梱包により分解が加速し、発熱した熱を逃す装置がないと、発熱自体がさらに分解を促進し、最終的に爆発に至ることがあるので、船社はさらし粉をドライコンテナで輸送することは危険と見なして、輸送の引き受けをしないので、荷主が意図して不正申告をしているケースがあるものと考えられる。
      • 原文 Mar. 22, 2018, Safety4Sea(長谷部正道)
    • 【5】 海上警察機関間の円滑な情報交換促進プロジェクトがベルギーで始動
      • 海上の治安維持を促進する重要要素の一つが、異なる海上警察機関間の迅速かつ信頼性の高い情報交換であるが、それぞれの機関の異なる情報システムをリンクさせることは容易ではない。この点について欧州委員会が加盟国に対し行っている支援の一つであるMAiDENプロジェクトがこのほどベルギーで始動し、今後2年間にわたって同国の海難救助調整センターや海上防衛部隊、税関、水上警察といった、異なる海上警察機関間での先進的かつ安全な情報交換チャンネルの設立を図っていくこととなる。これにより、各機関の状況認識が向上することにより、より効果的な警戒監視や迅速な海難救助が実現し、北海を利用する全ての人に裨益することが期待される。
      • 原文 Mar. 22, 2018 欧州委員会 (武智敬司)
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