2018/1/17 LROニュース(12)

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  • 2018.01.17 UP
    2018/1/17 LROニュース(12)
    • 1】 パリ協定:GHG排出に関する情報の透明性の確保が今年の交渉課題に
      • 1】 パリ協定の実現のための2018年の課題は、GHG削減実績に関して各国から提出される報告書の「透明性」の確保である。具体的には①各国がGHG排出量を測定する際の統一した基準を作成し②各国が掲げたGHG削減目標に対してどの程度目標を達成できたか評価する方法を確立し③各国から国連に提出された報告書が正確であるか否か判断する基準について2018年中に議論し決定する必要がある。各国がこうした同一の基準でGHG削減に取り組むこと(common approach)が地球温暖化を2度以下とする目標に向けた進捗状況を判断するために非常に重要であるが、その一方で、パリ協定では、一定の国に対する柔軟性を認めているので、2018年の交渉においては、上記基準の明確化に加えて、先進国並みのGHGの観測体制を持たない途上国に対してどれだけ柔軟性を認めるかが課題となる。
      • 原文 Jan. 4, 2018, Reuters (Dafnis)
    • 2】 北極海における石油ガス開発許可差し止め訴訟でノルウェー政府が勝訴
      • 2】 2016年にノルウェー政府は、StatoilやChevron等の石油会社に、バレンツ海北部の北極海で、石油・ガスの開発権限を与えたが、これに対し、グリーンピースをはじめとする環境団体が、石油ガスの開発許可は憲法やパリ協定に反するとして、開発許可の取り消しを求める訴訟を提起していたが、1月4日、オスロ地方裁判所は、環境に損害を与える可能性は限定的であり、事故発生時の十分な対応策も出来ているとして、原告の訴えを却下し、原告に訴訟費用58万クローネの支払いを命じた。判決の中では、ノルウェー政府が地球温暖化対策として十分な環境面での配慮を怠っていたか否か、北極海の開発可能海域を拡大することが適当か否かというような、原告が提起していた論点については、司法上の判断になじまず政治的な意思決定プロセスに委ねるべきであると判示されている。
      • 原文 Jan.4, 2018, Bloomberg (長谷部)
    • 3】 パナマ海事局、北朝鮮関連船舶2隻の登録抹消に着手
      • 3】 パナマ海事局(AMP)は、北朝鮮への貿易に関与したとして米国がブラックリスト入りするよう求めた10隻のうち1隻であるOrient Shenyu(旧船名:Glory Hope 1)と、国連による制裁に違反して北朝鮮に油を供給したとして韓国当局に拿捕されているタンカーKotiの船籍登録抹消手続きに着手した。AMPは、北朝鮮関係の会社等によるパナマの船籍登録利用を防止するために必要な手段に協力すると述べている。
      • 原文 Jan. 05, 2018 Seatrade Maritime News (武智)
    • 4】 英MCAが「船員の安全な労働慣行に関するコード」2017年改正を発表
      • 4】 「船員の安全な労働慣行に関するコード(Code of Safe Working Practices for Merchant Seafarers)」は船員の船上勤務における健康と安全を守るための推奨事項に関するガイドラインで、船員の健康と安全に関する規制の枠組みを紹介し、安全管理に関するガイダンスや法令上の義務について明確にしている。1月3日、英国海事沿岸警備庁(MCA)は、2017年の改正点を踏まえたコードの改訂版を発表したところ改訂の概要は以下のとおり。①第3章(船上の生活)に、一定の条件のもとに船員がサングラスを購入し着用する際のガイダンスを追加②第3章に鋭利な廃棄物の取り扱いにあたり注意情報を追加③第21章(有害物質)に、ドライアイスの取り扱いを追加④港湾内で小型船へ安全に接近に接近する方法についてガイダンスを追加等。
      • 原文 Jan 3, 2018, MCA (長谷部)
    • 5】 英国港湾協会の2018年の優先課題
      • 5】 1月3日、英国港湾協会(BPA)が2018年に取り組む優先課題を発表したところその概要は以下のとおり。第一の優先課題は、2018年末にはほぼ決着するEU離脱交渉に関し、新たな通関措置や環境規制により、RoRo船が発着する港湾をはじめ英国の港湾の機能が損なわれないよう、引き続き強く政府に働きかけていく。第二の課題は、EU離脱により、港湾開発に関する様々なEUの規制から脱し、港湾機能拡大のための港湾周辺開発について、事業の遂行や周辺住民からの同意の取り付けに関し特例的な措置が認められるよう、未だこの点について政府から何の反応もないのは残念であるが、引き続き政府に対して働きかけていく。第三の課題として、政府は近年旅客輸送に関するインフラ整備にばかり重点投資しているが、近く交通省から発表される港湾の接続性に関する報告書に従い、港湾に接続する鉄道・道路インフラを拡充し物流産業の負担を軽減することを働きかけていく。
      • 原文 Jan. 3, 2018, BPA (長谷部)
    • 6】 急拡大するアラスカのクルーズ産業
      • 6】 アラスカクルーズに参入する新規船社が増える一方で、既存の船社も新型船を投入し、或いはクルーズ船の大型化を図っているので、アラスカのクルーズ産業は2018年・2019年ともに過去の実績を更新する勢いである。アラスカのクルーズ産業は従来堅調に成長してきたが、2007年にアラスカ州により大幅な課税強化が行われたため、2010年にはアラスカクルーズの輸送能力が14%も削減されたが、その後のアラスカ州との交渉で、乗客の人数に応じた課税が廃止されたため、その後需要が回復に転じ、2016年にアラスカ州を訪れた観光客の数は過去最大の186万人となったが、このうちクルーズ船の観光客が55%を占めている。2017年と2018年のクルーズ観光客の総数は100万人を超え、それぞれ109万人と117万人となることが予想されている。
      • 原文 Jan. 4, 2018, The Maritime Executive (長谷部)
    • 7】 洋上瀬取りによる制裁逃れの手口
      • 7】 油の洋上瀬取りは大型タンカーによる大口輸送から荷油を小型タンカーによる小口輸送にブレークダウンする手段として適法かつ一般的に行われているが、荷油の追跡を困難にする策略としても用いられ、海上模様が許せば、瀬取りは誰の目にも触れない沖合200マイル以遠で行われるため、関係船舶を隠ぺいすることは容易である。北朝鮮に油600トンを供給したとされるLighthouse WinmoreのAISを調査したところ、9月から10月にかけて台湾の髙雄と韓国の麗水の間を複数回航海していたが、10月15日に台湾の台中に向け麗水を出港後、10月25日に済州島南方に現れるまで、北朝鮮船に油を渡したとされる10日間に渡ってAISを切って姿をくらませている。洋上瀬取りは過去においても制裁逃れとして悪用されており、イランの油を積んだ船舶がAISを切って中東で洋上瀬取りを行った可能性もある。
      • 原文 Jan. 3, 2018 Bloomberg (武智)
    • 8】 台湾検察、北朝鮮制裁違反に関して水産会社幹部を捜査
      • 【8】 北朝鮮への制裁に違反したとして韓国に拿捕されているLighthouse Winmoreは、韓国当局によれば台湾に拠点を置くBillions Bunker Groupが用船し、10月11日に14,000トンの製品油を韓国の麗水で搭載し10月15日に台湾向け出港、航海途中の10月19日に北朝鮮タンカーへの600トンを含む4回の公海上での瀬取りを行ったとされているが、髙雄の検察当局は台湾の水産会社幹部を、公海上での燃料油販売と、輸出申告書に輸出先を香港と偽って記載した容疑で捜査している。現地報道によれば、高雄にあるこの幹部の水産会社の住所がBillions Bunker Groupと同一であるという。この幹部は5万ドルの保釈金を支払って保釈されているが、違法行為への関与を否定しており、最終仕向地を知らないまま、中国人ブローカーの手助けをしただけと主張している。同様に、Winmore号の中国の船舶管理会社幹部も制裁違反については何も知らず、Winmore号は台湾企業に用船されて運航していたと主張している。
      • 原文 Jan. 5, 2018 The Maritime Executive (武智)
    • 9】 COSCO海運がピレウス港の能力拡大事業に着手
      • 9】 COSCO海運は2016年に国際競争入札でピレウス港湾庁(PPA)の過半数のシェアを獲得したが、2月末に新たな浮きドックの”Piraeus III”が港に到着する前に、港の水深を20mに浚渫し、新たな電力と水道の供給網を作り、船舶を係船するために4つの係船ブイを整備するなどの港湾の能力拡張工事を開始した。到着する予定の新たな浮きドックは長さが240m、幅45mで8万トンまでの船舶に対応可能。新たな浮きドックを受け入れるため、ギリシャ海運省は第2桟橋に放置されていた2隻の廃船の撤去を行う。
      • 原文 Jan. 5, 2018, 新華社(長谷部)
    • 10】 IUMI: 海難調査に関する手法・当局の権限等について国際的なルールが必要
      • 10】 (論説)海難事故が発生した場合に、事故調査を担当する当該地域の当局が海難事故調査に通暁しておらず、海難事故調査遂行な知識に欠け、船主等の関係者と協力する姿勢も見せないため、調査に不必要な時間がかかり、海洋環境や事故船の乗組員や船体に悪影響を与えることが多い。特に地域の当局が正確に自己の権限の範囲を認識せず、本来法的権限のないことにまで権限を行使しようとする際に問題が生じる。この結果、海難調査に何年もかかり、事故船舶の撤去に時間がかり、船長が拘束・収監されるような事例が多い。このような問題を解決するためにIMOで海難事故調査手法を国際的に統一するコードが作成されれば、事故が発生した際に、誰が事故調査の権限を持ち、かつその権限の範囲を明確にすることができる。またこのコードにより国際的に統一された透明性・整合性の高い事故調査が行われることになり、当局と事故の全ての関係者の協力関係を構築しやすい。
      • 原文 Jan 5, 2018, Insurance Marine News (長谷部)
    • 11】 海賊対策を通じて外洋海軍化を図る中国海軍
      • 11】 2008年から海賊対策として中国海軍が行っているソマリア沖への艦隊派遣は、海軍の海外派兵能力の向上を熱望する中国政府にとって、伝統的に同海軍の活動限界とされてきた東アジアを超えて軍事力を投射するための緊急かつ長期的な戦略的意味合いをもつ。ジブチにある中国初の海外基地について、中国政府は単なる補給拠点と説明しているが、将来的にはアフリカ及び西アジアにおける商船護衛、平和維持、人道的活動の支援に活用されることとなろう。アデン湾とスエズ運河の間に位置するジブチは中国の海上シルクロード政策の主要セグメントである。また中国海軍は、海賊対策部隊に属する補給艦を、この海域を航行するその他の中国海軍艦艇に対する機動的補給拠点として活用している。また、将来の空母打撃群等の編成に向け、海賊対策部隊の派遣は重要な能力向上の機会であると同時に、マラッカ海峡を避けてマカッサル、スンダ、ロンボク海峡経由でインド洋の中国のシーレーンに大規模な艦隊を派遣する技術の向上に役立つのである。他方、大規模な海軍力の投射の実現には、海上戦力支援のための長距離航空戦力の向上、インド太平洋における海中調査網の構築、海外基地の拡充が必要であるが、中国はH-20長距離ステルス爆撃機の開発や深海探査における水中グライダーの活用、第2の海外基地としてパキスタンのグワダルに着目するなど、外洋海軍化を進めているのである。
      • 原文 Jan. 8, 2018 ASIA TIMES (武智)
    • 12】 海賊対策へのナイジェリアの取組み
      • 12】 海賊対策に取り組むNGOであるOcean Beyond Piracy (OBP)のレポートによれば、ソマリア周辺のハイリスクエリア以外でも西アフリカで同様に海賊事件が報告されており、これらは主にナイジェリアで発生している。ナイジェリア海事安全庁(NIMASA)によれば、ナイジェリアは過日同国の連邦執行評議会で承認された海上治安戦略と緊密に連携して巡視船を含む海上保安資器材の整備に取り組むとともに、NIMASAと海・空軍との協力を継続してナイジェリア領海内の海賊及び海上犯罪の極小化を図り、海賊対策法案の議会通過に傾注していく。
      • 原文 Jan. 5, 2018 SAFETY4SEA (武智)
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