2017/10/24 LROニュース(5)
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2017.10.24 UP
2017/10/24 LROニュース(5)
- 1】マースク関係者が改めてスクラバーの使用を否定
- 1】NYで開催された「船舶燃料:変革期を迎えている業界」と題したパネルディスカッションで「マースク油貿易」の幹部は、以下の理由を挙げて、マースクはIMOの0.5%硫黄分の規制に対応する対策としてスクラバーを採用しないし反対であると改めて言明した。第一に、マースクの船舶が採用している2ストロークの大型ディーゼルエンジンに関して、スクラバーの実用性がいまだ立証されていない。つまり現在のスクラバーのシステムは開ループのシステム(結果を測定してシステムの有用性を確認しないシステム)だが、いずれ閉ループシステムを採用し、様々な情報を考慮に入れて性能を検証することが要求されることが明らかで、現在のシステムは短期的なつなぎの解決策にしかならない。第ニに、スクラバー搭載船舶に引き続き重油の搭載・使用を認めれば、PSCの監督ができない港湾外の海域で、スクラバーを使用せずに従来とおり重油を使用する悪質な船社が出るかもしれないが、こうした悪質な船社を取り締まる新たな規制とその厳格な運用が確保されない限り、高額な低硫黄バンカーを使用するまじめな船社と競争条件の不平等が発生する。仮に取り締まれたとしても、罰金額をはじめに規制を順守するコストよりはらかに低いので、船社が意図的に規制強化を無視することすら考えられる。 原文 Oct. 16, 2017, World Maritime News (Dafnis)
- 2】Nautilus Internationalが英国政府に「近代の奴隷労働」の解消を要請
- 2】国家犯罪対策庁(National Crime Agency; NCA)は13000人の労働者が「近代の奴隷として」搾取されているという報告書を発表したが、これを受けて船員労組のNautilus International (NI)は英国政府に対し、英国領海内の外国籍船において、最低または無報酬で劣悪な環境で働く外国人船員の問題に取り組むよう要請した。2015年に英国で「近代奴隷法」が制定されて以来、同法に違反して人身売買等に関与した犯罪者には14年以上の禁固刑が科せられることとなり、奴隷状態に置かれている船員を保護するために、入国管理局とNCAには疑わしい船舶に乗船・臨検する権限が与えられたものの、NIの調査では依然として、南アジア・東南アジアの船員を主体として奴隷のような劣悪な環境で搾取されている船員が存在する。NIは英国船や英国人船員との競争条件の均衡化の観点から、英国領海内の外国籍船を含む全ての船舶とそこで働く外国人船員に対して、英国最低賃金法等の関係労働法制の適切な適用を求めている。 原文 Oct. 13, 2017, NI (長谷部)
- 3】メキシコ湾の原油流出事故がDeepwater Horizon以来最大の規模になる可能性
- 3】米国安全環境執行局(Bureau of Safety and Environmental Enforcement: BSEE)は10月11日に、ルイジアナ州ベニス市の南東沖合40マイルの海中施設で発生した油流出事故の規模は、施設を運用するLLOG開発会社による事故発生直後の見積もりによれば、7950バレルから9350バレルとなり、2010年に発生したDeepwater Horizon事故以降、最大の油流出事故となる恐れがあると発表した。油の流出は海底の設備の破損が原因で、破損部分からの流出を防ぐための防護壁を破損部分の両側に設けたものの、破損部分自体の修復は終了していない。オフショアエネルギー・鉱物の開発を監督するBSEEは10月16日、5人の専門家からなる事故原因を調査する委員会を立ち上げた。 原文 Oct. 16, 2017, Bloomberg (Dafnis)
- 4】EMSAがPlaces of Refuge に関する第3回机上訓練を開催
- 4】9月28日から29日にかけて、欧州海上保安庁(EMSA)は欧州委員会とノルウェー政府と協力して、ノルウェーのホーテン市で、支援が必要な船舶の避難場所(Places of Refuge: PR)に関する第3回目の机上訓練を開催した。訓練には15のEU・EEA諸国、サルベージ業界、船級協会、海事保険会社、港湾管理者、欧州委員会、EMSA等の関係者が参加し、今回の訓練では「PR運用ガイドライン」や有害物質による汚染に対処するEMSAの機器の有用性を試験し、実際に当該船舶が指定場所に避難した後に発生する保険や保障の問題について検討が行われた。第1回目の訓練はロッテルダムで2013年に、第2回目の訓練はマルタで2015年にそれぞれ開催されている。 原文 Oct. 16, 2017, EMSA (長谷部)
- 5】高硫黄分のバンカーの輸送禁止の可否がIMOのPPR5で検討
- 5】(論説)2020年から、スクラバーを装置している船舶と、給油港で低硫黄バンカーが入手できなかった場合を除き、全ての船舶は硫黄含有分0.50%以上のバンカーの使用が禁止される。しかし、MARPOL第VI附属書は、高硫黄分バンカー(HSFO)の使用は禁止しても、輸送自体は禁止していない。IMO加盟国は原則として自国の領海内のみにおいてHSFO使用禁止の取締権限を有し、領海外でHSFOがバンカーとして使用されているという証拠を握ったとしても、旗国に対し証拠を提示して、当該船舶の規制遵守を要請することしか現状ではできない。2018年2月に開催されるIMOの第5回汚染防止・対応小委員会(PPR5)では「硫黄分0.5%規制の世界的に統一した実施を促進する措置」について議論される予定だが、今年のPPR4で既に簡単に議論された「HSFOの輸送自体を禁止」する提案について更なる議論が行われる予定であり、輸送自体の禁止が実現すれば、沿岸国の取り締まり権限の強化を通じて、HSFO使用禁止規制の実効性の担保が図られることとなる。 原文 Oct. 16, 2017, IBIA (長谷部)