アセアン諸国におけるHNS緊急時計画策定支援のためのワークショップ開催
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2012年11月21~22日、日本海難防止協会はタイ運輸省海事局の協力のもと、日本財団の支援を受け、東南アジア8カ国の海上災害防止のための専門家15人をタイのバンコクに招き、海上災害が発生した場合の緊急時計画策定支援のためのワークショップを開催いたしました。
近年の工業化に伴い、アセアン地域におけるHNS(有害化学物質:爆発物、可燃物、毒物など)貨物の海上輸送量は増加していると考えられています。一方で、このような貨物を運んでいる船舶が事故を起こし、積荷であるHNSが海上に流出すると、付近の海洋環境の破壊、爆発・炎上などによる海上交通の障害、さらに有毒な煙や蒸気によって周辺で生活している人々の健康に大きな被害を与えます。
このような災害が発生した際に、国内の関係機関がどのように連携し、どの機関がどのような対応を行うのか、どうやって連絡体制を確立していくかということをあらかじめ明確に定めるのが、HNS緊急時計画(Contingency Plan)と呼ばれるものです。東南アジア地域では、シンガポールがすでにこれを定めていますが、それ以外の国では検討途中となっています。
東南アジア地域には、日本に向けて運ばれる工業原料としての化学薬品、燃料であるLNG、あるいは製品として輸出される薬品などが多く通航しており、万一これらの積み荷が流出した際に迅速に対応が取れる体制づくりを支援することは非常に意義深いものです。
そこで、日本海難防止協会は、各国のHNS緊急時計画策定を支援するためのワークショップを2010年にマニラ(フィリピン)、2011年にシンガポールで開催して参りました。この結果、フィリピン、マレーシア及びミャンマーの3か国で、緊急時計画の草案が完成しています。
3回目の開催となる本年は、緊急時計画の策定が急ピッチで進められているタイのバンコクで開催されました。ワークショップではタイ国内における実際の対応状況の紹介や、国際条約の解説、またすでに完成させた各国から、実際のHNS緊急時計画の紹介が行われました。今後計画を策定する際の参考として、またすでに草案を完成させた国にとっても今後の更新の際の具体的な考慮点として有意義に活用してもらえることと期待しています。
日本海難防止協会では、アセアン地域におけるHNS対応能力の強化の支援のため、2006年から継続的にタイやインドネシアなどで、基礎的な知識を得るためのセミナーや、対応体制を明確にするためのワークショップを開催するとともに、2010年からの3年間では現場で防除にあたる職員を日本に招いて、実働研修を行っています。このような「基礎知識(頭脳)」と「実働研修(手足)」、さらにこれをつなぐための「緊急時計画(神経)」の強化をバランスよく支援していくことで、より実践的な対応体制が確立され、東南アジア地域の環境防災対応能力の強化につながることと期待しています。
<問い合わせ先>
日本海難防止協会
企画国際部 国際室
志水 知也