ミクロネシア3国の海上保安能力強化支援プロジェクト

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ミクロネシア3国の海上保安能力強化支援プロジェクト

1.事業の検討経緯

ミクロネシア各国を含む太平洋島嶼国の海洋管理能力の一層の向上が求められる中、平成20年以降、公益財団法人日本財団及び公益財団法人笹川平和財団の主導により、日本(海上保安庁)、アメリカ(USCG)、オーストラリア(海軍等)の各国海上保安機関の協力を得て、ミクロネシア地域を対象とする海上保安分野での支援項目の検討を行ってきた。その結果、平成22年11月にパラオで開催された「第3回ミクロネシア3国の海上保安能力強化に関する官民合同会議」(パラオ会議)において、ミクロネシア3国に対して支援すべき基本的な項目について合意され、そのうち実施可能な項目から早急に支援措置を実施していくことが合意された。

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2.事業の内容

公益社団法人日本海難防止協会では、日本財団と協力し、上記のパラオ会議で合意された項目のうち、早急に対応が必要な支援措置を実施することとし、ミクロネシア3カ国において詳細な現地調査を実施するとともに、各国政府との協議等を繰り返し、早急に実施すべき支援内容として次のとおり合意した。

(1)装備施設の供与
a.
小型艇の供与(沿岸部での海上保安業務用、15m型多目的型FRP艇、各国1隻ずつ)
b.
通信設備の供与(無線通信機能の改善のため、HFアンテナ等を新替え、VHFレピータ(中継器)を新設、衛星通信装置を新設)
c.
非常用発電機の供与(頻繁な停電に対応するため。パラオのみ)
(2)運用コストの供与

上記の装備施設が一時的な供与で終わることなく、継続して円滑・適切に運用できるよう、平成32年3月までの約8年間、次の支援を行う。

a.
小型艇の供与(沿岸部での海上保安業務用、15m型多目的型FRP艇、各国1隻ずつ)
b.
小型艇の予備品・定期交換部品の供与、整備作業の技術指導
c.
近隣諸国との「合同取締」を実施する際の参加船艇への燃料費補助
d.
衛星通信料の供与
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3.事業の目的

この事業の目的は次のとおりである。

(1)
ミクロネシア3国の海域において、違法・違反船舶に対する適切な取締り能力及び人命救助や災害時の対応能力を充実させ、より安全で秩序ある海域を確保する。
(2)
現在、稼働しているパトロール・ボート(30m型。1980年代以降にオーストラリアより寄贈。パラオとマーシャル諸島は1隻ずつ、ミクロネシア連邦は3隻所有)は、主としてEEZの遠距離海域用であるため、対応が手薄になりがちな沿岸域での海上保安業務用に、多目的型の高速小型艇を供与することにより、各国の総合的な海上保安能力の向上を図る。
(3)
加えて、海上での海上保安業務実施のために必須である無線通信能力を向上させることにより、より効果的に同国の海上保安業務を執行できるような体制を整える。

<図2:オーストラリア寄贈のパトロール・ボート(ミクロネシア連邦)>

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4.事業の進展状況
(1)支援内容覚書(MOU)の締結

この事業を円滑・適正に実施するため、日本海難防止協会と各国政府との間で、具体的な支援策の内容に関する「覚書」(MOU:Memorandum of Understanding)を締結した。
なお、ミクロネシア連邦政府が外国の非政府組織(日本海難防止協会)との間でMOUを締結するのは初めてのことである。
各国とのMOU締結年月日は、次のとおり。

パラオ共和国 平成24年2月16日
ミクロネシア連邦 平成24年1月26日
マーシャル諸島共和国 平成24年1月19日

<図3:支援内容覚書(MOU)への署名:ミクロネシア連邦運輸通信インフラ大臣>

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(2)小型艇の建造

MOUに基づき、使用目的に適した小型艇の仕様を検討して入札した結果、ヤンマー製の「EX46FB」が採用された。
同艇は、日本で最大クラスの多用途型の量産艇であり、主要目は次のとおり。

船質 FRP
全長 約15m(46FT型)
総トン数 約12トン
最大搭載人員 14名
機関最大出力 650馬力
最大速力 約30ノット
航続距離 約400海里(1/2出力)

航海計器・通信装置は、電子海図(ECDIS)、測深装置、航海情報統合装置(NAVNET)、HF・VHF無線機、衛星通信装置(ボイス、メール)を備え、さらに海上保安業務用に、フライング・ブリッジ(FB)方式を採用するとともに、パトライト、サイレン、拡声器、サーチライト、担架、簡易救急備品等を搭載している。
船名は、各国大統領等の命名によるものであり、それぞれの特徴を有する素晴らしいものとして各国民に歓迎されている。

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パラオ共和国:「KABEKEL M’TAL」:パラオ語で「有能で勇敢な監視船」の意
パラオ共和国「KABEKEL M’TAL」の写真はこちら(PDF)
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ミクロネシア連邦:「FSS Unity」:「統一、統合」の意
ミクロネシア連邦「FSS Unity」の写真はこちら(PDF)
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マーシャル諸島共和国:「RMIS LOMOR Ⅱ」:「救助」の意
マーシャル諸島共和国「RMIS LOMOR Ⅱ」の写真はこちら(PDF)
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(3)通信施設の建設

近距離から遠距離海域に至るまで、全体的に通信困難な海域が多いなど極めて不安定・不十分であった。
このため、大型HFアンテナを新設し、無線機の出力もアップした。また、新規にVHFレピータ(中継器)システムを導入し、中距離での通信機能を大幅に改善した。
さらに、通信の品質や安定性で格段に優れた衛星通信装置(ボイス、メール)を新設導入するとともに、その費用を日本側が負担することで、そのシステムの最大限の活用を図っている。
既にパラオでは大幅な通信範囲の拡大が確認されており、円滑な海上保安業務執行への大きな期待が寄せられている。

<図4:パラオ共和国へ供与したHF通信用アンテナ>

(4)「引渡式」の開催

小型艇等の支援施設の供与を記念して、各国では大統領等の幹部の出席の下、盛大な「引渡式」等が実施された。式典では、各国からこれら支援措置へのお礼が述べられるとともに、それらの積極的な活用を約束し、また、日本側からは、今後の職員研修等を含めた一層の支援措置の方針が述べられた。
各国での「引渡式」実施日は次のとおり。

パラオ共和国 平成24年10月12日 パラオ共和国での引渡式等の様子はこちら(PDF)
ミクロネシア連邦  平成24年 8月17日 ミクロネシア連邦での引渡式の様子はこちら(PDF)
マーシャル諸島共和国 平成24年11月23日 マーシャル諸島共和国での引渡式の様子はこちら(PDF)

<図5:ミクロネシア連邦における引渡式>

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(5)招へい研修の実施

小型艇の供与と併行して、それらを円滑に運用するため、各国の職員を日本へ招へいして、供与する小型艇の建造状況の見学や小型艇運行等に関する研修を実施した。研修生は帰国後、小型艇運行のリーダーとして重要な位置を占めており、円滑な運行に大きく寄与している。

<図6:招へい研修の実施状況>

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5.今後の支援計画
(1)運用コストの供与

この事業では、単に小型艇や衛星通信装置等を寄贈するだけでなく、寄贈後も長期間に亘り、それらの運用やメンテンスに必要な諸経費を併せて支援することにより、寄贈施設が長期間に亘り円滑・有効に活用されるように努めている。このような運用コストを含めた総合的な支援は政府開発援助(ODA)では困難な分野であることから、今回、NGO(日本海難防止協会)だからできる大きな特徴となっている。

(2)研修・訓練の実施

オーストラリアから寄贈されたパトロール・ボートの乗組員は主にオーストラリアで研修を受けているが、今般、日本から供与したような小型艇の運行についてはあまり慣れていない面があることから、その運行・運用等について一層の研修・訓練が必要な国もある。また、そもそも海上保安庁という組織のない国々であるので、海上保安業務の円滑な運営のための研修等が必要とされており、今後、アメリカやオーストラリアとも協力して、一層効果的な研修・訓練を実施する予定である。

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6.参考資料
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