2021/01/15LROニュース(7)

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  • 2021.01.18 UP
    2021/01/15LROニュース(7)
    • 【1】 風力推進装置を備えた自動車運搬船「Oceanbird」の開発プロジェクト
      • 【1】スウェーデンの海運会社Walleniusは、海事コンサルタント企業SSPA及びスウェーデン王立工科大学と協力し、同国政府の補助を受けて、風力推進装置を備えた自動車運搬船「Oceanbird」の開発プロジェクトを進めている。Walleniusによると、Oceanbirdは全長200メートル、幅40メートルで7,000台の自動車を運搬する能力を有し、硬翼帆式の風力推進装置を備えることで二酸化炭素の排出量を最大で90%削減でき、2021年には建造発注に至ることが期待されている。プロジェクトにおいては、当初は太陽光や波力の採用も検討したが風力推進が最適であるとの結論に至り、また、風力推進装置としてフレットナーローターやカイトの採用も検討したが、強度、信頼性、安全性、耐久性などの要件から硬翼帆式が最も実現可能性が高いと判断した。現在の計画では最大長さ80メートルの5枚の硬翼帆を装備する計画で、硬翼帆は伸縮構造を採用することで半分以下の長さにまで格納が可能となる。安全性の確保と港内の航行を可能とするため主機も搭載するが、使用する燃料は環境への影響、入手の容易さ、信頼性などを考慮して検討を進めている。現在は7メートルの模型船に硬翼帆を4枚装備して海上試験を実施している段階で、また、DNV GLから基本設計承認を得るための作業も進めている。
      • 原文 January 11, 2021, DNV GL (若林健一)
    • 【2】 ノヴァテクが北極海航路を利用した日本へのLNG輸送を計画中
      • 【2】大寒波の影響と継続中のパナマ運河の渋滞によるLNGの不足により、北アジアのLNGスポット価格は過去9か月で18倍にも上昇しており、過去最高のスポット価格の恩恵を受けるため、海運業界全体で北アジアへLNGを輸送しようとする動きが活発化している。ノヴァテクは、北極海航路(NSR)を利用したアジアへのLNG輸送は、氷の厚くなる冬季は砕氷船による護衛が必須となるため、通常氷のない夏季から秋にかけて、遅くとも12月までしか行っていないが、現在欧州の何倍もスポット価格が高騰している日本へのLNGの輸送を計画中である。同社のNSRを利用した日本へのLNG輸送は2020年の7月に開始されたばかりであり、ロスアトムの子会社で、原子力砕氷船を運用しているAtomflotと協力し、輸送は2月にも開始される予定である。輸送には耐氷性に優れたArc7型LNG船を使用する予定で、同社は今月に入ってから既にArc7型LNG船2隻の試験航海を行っているが、2月・3月は海氷が断続的に形成されるため、1月に比べて難しい状況になることが予想される。
      • 原文 January 14, 2021, HIGH NORTH NEWS(植木エミリ)
    • 【3】 IMBが2020年の海賊・武装強盗事件年間報告書を公表
      • 【3】国際商業会議所の国際海事局(ICC-IMB)は2020年の海賊・武装強盗事件年間報告書を公表したがその概要は以下のとおり。①2020年に世界で発生が報告された海賊・武装強盗事件の数は195件(乗っ取り事案3件、銃撃事案11件、侵入事案161件、襲撃未遂事案20件)で、2019年の162件から増加した。増加の主な要因はシンガポール海峡やギニア湾での事件数の増加である。②誘拐された船員の数は合計135人に及び、このうち95%がギニア湾で誘拐された。ギニア湾で襲撃を受けた船舶の25%で船員の誘拐事件の発生が報告された。③ギニア湾で船員の誘拐事件が発生する海域は平均60海里ほど沖合であるが200海里ほど沖合で発生した事例もあり、遠方で発生する誘拐事件の増加はギニア湾の海賊の活動能力の向上を示している。④シンガポール海峡では23件の事案発生が報告され、2019年第4四半期以降増加を続けている。23件のうち22件で賊が被害船舶に侵入し、1名の負傷者、1件の人質事案、2件の脅迫事案が発生しており、また、14件で賊が刃物で武装していたことが報告された。⑤インドネシアでは26件の事案発生が報告された(2019年25件)。被害船舶は港内で着岸又は錨泊中に賊に侵入されており、2件の人質事件と2件の脅迫事件が発生した。当局による取締活動の成果により事案の発生は低いレベルを維持している。⑥ソマリア周辺海域では事案発生は報告されていないが、海賊は通航船舶を襲撃する能力を維持しており、付近を航行する船舶は引き続き警戒態勢を維持する必要がある。
      • 原文 January 13, 2021, ICC-IMB(若林健一)
    • 【4】 Lloyd’s List : 海運の脱炭素化の鍵を握るのは規制措置
      • 【4】Lloyd’s ListとLloyd Resisterが、海運企業/用船者/投資家/政府代表者/NGO等の利害関係者を対象に、海運の脱炭素化についてどう捉えているか、何によって推進されると思うのか等について共同で調査を行った結果、全体を通して、海運の脱炭素化の可能性には、義務的な規制措置が最も重要と認識されていることが明らかになった。脱炭素化を実現する上での最大の障壁としては、明確かつ詳細な規制の欠如が指摘され、実証済の実用可能な脱炭素化のための手段の欠如も挙げられた。脱炭素化の最大の動機付けとしても、船主/非船主を問わず、義務的な規制が首位となり、次点は僅差で金銭的なインセンティブという回答だった。こうした結果は、規制による確実性が、クリーンな技術の開発と採用に向けた投資を後押しし、脱炭素化実現の礎となることを示している。欧州委員会は今後半年以内に、海運をEU ETSの対象に含める計画について発表する予定であり、この方針はIMOを通じた国際的な規制を望む業界からは反発があるが、市場原理に基づいた地域的な措置が実現する見込みである。またIMOも今年、これまでは主に新造船に重点を置いていた、既存の船団にも影響を与える短期的な運用・技術効率要件について最終決定する予定である。
      • 原文 January 11, 2021, Lloyd’s Register(植木エミリ)
    • 【5】 露が北方艦隊を軍管区に格上げ
      • 【5】露は、2021年1月1日をもって北極圏の防衛を任務とする露北方艦隊を軍管区に格上げし、北極圏のコミ共和国、アルハンゲリスク州、ムルマンスク州及びネネツ自治管区を、これまで属していた西部軍管区から北方艦隊の管区に移管した。露北方艦隊の司令部はムマンスクに近いセベロモルスクに位置し、管内に他に少なくとも6つの基地を有することになる。露北方艦隊は、2014年に西部軍管区の所属から統合戦略司令部に格上げされたばかりで、今回の軍管区昇格はこの10年以内で2度目の昇格になる。安全保障の専門家は、露は北方艦隊に関してこれまで10年以上の歳月をかけて既存の基地の再整備、新たな基地やレーダー施設の建設、近代的な武器の配備などを進めてきたとして、今回の同艦隊の軍管区への格上げは露にとっては順当なステップであると説明している。露国防省は、露北方艦隊に極超音速ミサイルKh-47M2 Kinzhalを配備する考えを明らかにしており、Kh-47M2 Kinzhalを搭載したMiG-31戦闘機の部隊を新たに格上げされた同艦隊の一部としてコラ半島に配備するとみられている。北極海では、露による長距離爆撃機による哨戒活動の再開、米軍とノルウェー空軍による合同訓練やNATO軍による大規模演習の実施など、軍事活動が増加している。
      • 原文 January 13, 2021, HIGH NORTH NEWS (若林健一)
    • 【6】 何故海洋の温暖化は気候変動にとって重要なのか
      • 【6】GHGによって大気中にとらえられた熱は最終的には海洋に行きつき、海洋は余剰な熱の実に90%以上を吸収するため、地球温暖化について理解するには、海洋の温暖化について把握する必要があるが、海洋の温度は年々上昇しており、2020年には過去最高を記録した。海洋は莫大なエネルギーを吸収することが可能であり、セント・トーマス大学等の研究者の測定したデータによると、2020年に海洋は20ゼッタジュールの熱を吸収したが、このエネルギーは、一般的な家庭用ドライヤー6,300億台が360日間昼夜を問わず稼働している状態に相当する。地球の約7割は海洋であるため、海水温が上昇すると大気も温められ、同様に、気温が上昇すると、海水の大気中への蒸発量も劇的に増加する。海洋はこの様な仕組みで大気中の温度と湿度を管理しているため、結果的に天候を管理しているのである。温暖化した海洋は、昨年12月に南太平洋を襲ったサイクロン・Yasaのような強力な暴風雨を発生させ、ある地域では豪雨や洪水が起こる一方で、別の地域では激しい熱波や干ばつ、山火事を引き起こしている。
      • 原文 January 13, 2021, The Guardian(植木エミリ)
    • 【7】 ロンドンの病院の集中治療室が満床状態に
      • 【7】コロナウィルスに感染した重症患者により、ロンドンの病院の集中治療室(ICU)が満床状態となっており、ロンドンの病院に勤務する医師によると、搬送されてきた重症患者を救急車に戻して治療を行うとった事態も発生しているという。これによりICUで治療が必要な重症患者はロンドンの病院から、遠い場所では約480㎞離れたイングランド北部のニューキャッスルの病院や、中部のノーザンプトン、バーミンガム、シェフィールドなどの病院に移送される事態が発生しており、北部や中部の病院にはロンドン、南東部や東部からの重症患者の受入れに備えて数百床のICUを追加的に確保するよう指示が出ている。医療従事者からは重症患者の長距離移送は危険を伴うとの指摘もあり、また、受入側のニューキャッスルの病院に務める医師は、同病院のICUも地域の重症患者ですでに満床状態にあり、ロンドンから流入する重症患者への対応は困難であると懸念を示している。

        ※1/15の英国の感染者数:55,761人(日本6,603人の8.4倍、緊急事態解除基準47人の1,186倍)
        ※1/15の英国の死者数:1,280人(日本82人の16倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 January 14, 2021, The Guardian (若林健一)
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