2018/7/12 LROニュース(10)

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  • 2018.07.13 UP
    2018/7/12 LROニュース(10)
    • 【1】 PwC: アフリカ経済の発展のためには地域のハブ港湾の効率化が不可欠
      • PwCがアフリカの経済成長と港湾開発の必要性について報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①サハラ砂漠以南のアフリカ諸国(SSA)では、既存の港湾処理能力がひっ迫してからおもむろに港湾の拡張計画が検討されるので、港湾管理者は長期間港湾処理能力の不足に悩むことになる。②こうした港湾整備の遅れが、港湾の競争力を落とし、当該国の貿易実績にも悪影響を及ぼしている。③SAS諸国の港湾処理能力を25%改善すれば、同諸国のGDPを2%押し上げることが可能である。④主要港湾の平均貨物処理能力が倍増すれば、年間22億米ドルの物流コストを節約できる。⑤アフリカ諸国以外では、国別ではない地域のハブ港湾の整備が進んでいるが、アフリカ諸国は未だに国ごとに拠点港湾を整備しようとしている点が問題。⑦南アフリカではダーバン港を、西アフリカではアビジャン港を、東アフリカではモンバサ港を、それぞれの地域拠点港湾として整備していくのが合理的。
      • 原文 Apr, 2018, PWC(長谷部正道)
    • 【2】 VW和解の条件として向こう5年間バルチモア港を輸入拠点として使用
      • VW社は米国のNOx排出規制をかいくぐるためのソフトウェアを搭載した約50万台のディーゼル車を米国に輸出したとして米国内で摘発されていたが、4月25日、メリーランド州と和解協定を締結し、和解金2900万ドルの支払いに加えて、向こう5年間、同州のバルチモア港をVW社の輸入港湾として使用することに合意した。VW社は同港と5年間で450万ドル以上のro/ro荷役契約を締結しない限り、同額の罰金を州政府に追加的に支払わなくてはいけない。バルチモア港は米国内でro/ro船の荷役高が最大の港湾であり、以前からVWの競合他社は物流拠点として利用していたが、VW社は他の米国内の港湾を使用し、過去数年同港での取り扱いはなかった。メリーランド州以外の多くの州政府も、VW社との和解の利益を享受しており、例えばワシントン州は同社から得た罰金で、港湾輸送に使用されるトラック・荷役機械・タグを排気ガスの排出が少ない新機種に更新している。
      • 原文 Apr. 26, 2018, The Maritime Executive(長谷部正道)
    • 【3】 北極海北航路で安全規則を無視したタンカーが再び特例的な扱いを受ける
      • 既報のとおり、ヤマルLNGの輸送に従事する新造のLNG運搬船が3基のアジポッド(船舶の推進装置)のうち1基を破損し、船舶の推進力と操船性が大きく落ちたため、船級が氷海7級から4級に格下げされた結果、本来であれば砕氷船の伴走があっても、冬季の北極海北航路を航行することは安全規則上禁じられているが、こうした安全規則を無視して、砕氷船の伴走もなしで、北極海北航路に突入し、ヤマルLNGの積出港であるサベッタ港に入港していた。入港後同船はロシア沿岸警備隊によって同港沖合で1週間にわたり出港禁止措置を取られていたが、砕氷船の伴走という条件付きで、再度安全規則に反する形で、4月21日同港からの出港が認められ、25日には北極海北航路を離れて、目的地である仏のモントワール港に向けて航行を続けた。モントワール港入港後にドックに入って必要な修繕を行う予定。サベッタ港からの出港許可は政治的な圧力が働いたものと考えられるが、今回の事例により北極海北航路の安全運航の管理を任されてきた北極海北航路庁(NSRA)の独立性と船舶に対する取り締まり、安全運航規則の執行能力が改めて問われることとなった。現在ロシア国内では交通省と国営原子力企業のロスアトムの間で北極海北航路の管轄権が争われており、NRSAは両社のはざまで従来の独占的な安全面での管轄権を失っており、北極海北航路に関する強力な安全規則執行権限を持った組織の一刻も早い確立が望まれる。
      • 原文 Apr. 27, 2018, High North News(長谷部正道)
    • 【4】 シンガポールでASEM海運会合が開催
      • シンガポール海事週間の行事の一環として、4月26日から27日にかけて、独・ノルウェー・比・星政府の共催で「グリーン海運・ブルー経済・一緒に前へ」と題されたアジア・欧州会合(ASEM)海運会議が開催された。共催国から大臣レベルが出席した他、IMO事務局長と海洋問題担当国連事務総長特別代理をはじめ、250人以上が出席した。会議では、より環境面で持続可能な海事分野を振興することにより、国連2030年持続可能な開発目標の達成に貢献することについて議論が交わされた。本年の会合は、4月にMEPC72でGHG削減のための暫定戦略が合意されたことを受けて、環境的に健全で効率的な持続可能な海運を振興することが議論された。
      • 原文 Apr. 28, 2018, MPA(長谷部正道)
    • 【5】 米内務省安全環境執行局が石油掘削リグの安全規制緩和案を発表
      • 4月27日、米内務省安全執行局(BSEE)はDeepwater Horizon事故によって規制強化された石油掘削リグの安全・環境規制の一部を緩和する改正案を公表したが、石油業界の望む大幅な緩和は拒否した。トランプ大統領は連邦政府が管轄する同国の大陸棚の90%以上について、石油開発の許可を与えるとともに、2017年に大統領令を出して、公共の利益を保護するのに必要な規制水準を超えた国内エネルギー産業の発展を不当に妨げる規制を改廃するようにBSEEに指示していた。この結果、海上の作業を常時監視する義務を緩和する等一定の規制緩和案を発表したが、石油業界が求めていた石油井戸の内部で維持すべき圧力に関する規制の緩和など大幅な規制緩和には応じなかった。BSEEの局長は、今回の規制緩和案は、DH事故に出された安全勧告の内容に全て合致するものであり、石油事業者のリスク評価義務や掘削に関する安全基準など、他のDH後に導入された安全規制には影響を及ぼさないことを強調した。
      • 原文 Apr. 27, 2018, Bloomberg(長谷部正道)
    • 【6】 モルディブ:海面上昇対策に付け込んで中国が影響力を拡大
      • 約1200の島から構成されるモルディブは、かつてはインドの戦略的な同盟国であり2009年に初めて民主的に選挙で選ばれたNasheed大統領は、気候温暖化に伴う海面上昇に対する適応策として、海面上昇の影響を最も受けやすい島の住民を移住させるという政策をとっていた。ところが、2012年に警察による反乱で民主主義が大きく後退し、新たに大統領となったYameen大統領は、移住政策を破棄し、大規模な中国資本を受け入れ、島の周辺の埋立を進めることによって、海面上昇対策とするとともに、憲法を改正して、10億ドル以上投資して、埋立事業を行う外国資本に対して土地の所有を認めることにした。中国は同時にモルディブ政府と自由貿易協定を締結し、モルディブは中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも加入して、今や同国はインド洋における中国の海のシルクロードの重要な拠点になろうとしている。豪とNZは中国による気候変動対策を糸口とした影響力の拡大がバヌアツでも進んでいると警告しており、中国は同国内に軍事基地を建設すべく同国政府と交渉中という噂が流れている。
      • 原文 Apr. 18, 2018, Lowy Institute(長谷部正道)
    • 【7】 船舶から排出されるCO₂を捕捉できる監視衛星の開発が課題
      • 4月にIMOにおいて2050年までに船舶から排出されるCO₂を2050年までに半減することが合意されたが、実際に個々の船舶が規制を実施しているか監視する能力の整備が課題となる。欧州宇宙機関(ESA)が昨年10月に打ち上げた最新鋭のSentinel-5P衛星は、軌道上から対流圏モニタリング機器を利用して、大気中のNO₂を観測・補足することが可能で、NO₂を排出しながら航行する船舶の航路がはっきりと観察できる。この衛星では大気中のCO₂は補足できないので、EUはESAに対して二酸化炭素排出を監視できる専用衛星の開発を促しており、2020年代に打ち上げ予定の次のSentinel 7衛星シリーズで実現されることが期待されている。
      • 原文 Apr. 27, 2018, BBC(野口美由紀)
    • 【8】 サイーバーセキュリティ対策に関する様々なマニュアルの一覧表
      • (資料)以下のリンクで、各P&I Club、BIMCOなどの業界団体、IMOなどの国際機関、ロイズ船級協会などの船級協会、英・米主要国が作成したサーバーセキュリティマニュアルの一覧表が参照できる。
      • 原文 Apr. 26, 2018, Safety4Sea(長谷部正道)
    • 【9】 中国の北極海戦略
      • 4月27日、米海軍研究所が北極問題の専門家を集めてパネルを開催したところ、専門家の主な発言の概要は以下のとおり。①中国が近年北極圏でどういう投資行動をとっているかに注目すべき。中国によるグリーンランドへの投資は、グリーンランドのGDPの12%に達しており、また北緯60度以上の北極圏に最近900億米ドルの投資を行っている。②中国は「情報のシルクロード」を構築するために、フィンランドと協力して、新たな海底ケーブルの建設を進めており、またロシアと協力してグリーンランドに複数の空港を建設し、カナダの北西領域に、毛皮とダイヤモンドの中国向けの輸出を促進するためのインフラを建設している。③南極の非軍事化は43か国が締約国となっている南極条約で法的に担保されているが、北極海沿岸国で構成される北極評議会は同様な条約上の規範がなく、環境問題等について、限られた法執行能力しかもっていない。④中国は氷海における作戦能力を高めるために潜水艦と砕氷船の整備を進めている。
      • 原文 Apr. 27, 2018, USNI News(長谷部正道)
    • 【10】 世界初の浮体式原子力発電施設がサンクトペテルブルクから出航
      • ロシアの国営原子力企業のロスアトムは同国北極圏の電力供給を賄うため最低8隻の浮体式原子力発電設備を建造することを計画中だが、2基の原子炉を搭載した最初の発電施設が4月28日、建造されたサンクトペテルブルクから曳航され、ムルマンスクに向かった。浮体式原子力発電所の総工費は7000万米ドルで、排水量21500トン、全長1444m、幅30m、高さ10mで70メガワットの発電能力がある。当初はサンクトペテルブルクで原子燃料を注入し試運転を実施する予定であったが、環境団体等の反対により、北極海のムルマンスクにまず曳航して、同地で燃料注入・試運転を行った後に、さらに北極海北航路を通航して、ロシア北極圏極東のチュクチ自治管区の港湾都市のペヴェクまで回航され発電施設として利用される予定。環境団体は自航能力のなく船底が平らの浮体式発電施設は、津波や台風などの自然災害に脆弱で、事故発生時には北極海の自然環境に大きなリスクを与えるとして反対している。中国は独自に同様の浮体式原子力発電施設の建造を2020年に開始する予定で、アルジェリア・インドネシア・マレーシア・アルゼンチンといった諸国は、浮体式発電所の安全が確認され、量産体制が整えば浮体式原子力発電所を用船することを検討している。
      • 原文 Apr.28, 2018, Daily Mail(長谷部正道)
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