2020/12/22LROニュース(7)

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  • 2020.12.22 UP
    2020/12/22LROニュース(7)
    • 【1】 米国は北極海で露・中に対抗するため抵抗力のある戦略が必要
      • 【1】米国が、北極海において露や中国がもたらす安全保障や経済活動に関する多くの課題に対処していくためには、人的リソースや装備の面において抵抗力のある戦略が必要となる。様々な課題に対処していく最良の方法は北太平洋条約機構(NATO)やカナダと共同運営する北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)といった協力協定やグリーンランドのチューレ空軍基地を維持することである。また、同盟国との相互運用性や研究開発への投資が重要であるとともに、演習の実施がプレゼンスを高める意味でも重要な要素となる。露は北極海を新たな軍管区に指定し、戦闘機や極超音速ミサイルを設置し、氷海域を航行できる艦船に様々な武器を搭載すべく強化を進めている。さらにコラ半島には弾道ミサイルを搭載した露潜水艦の基地があり、この動きを監視することは重要であるが、米国には十分な砕氷能力がないことから様々なセンサーや音響監視システムを搭載した無人潜水艇の活用や、通信設備が脆弱な北極海では他の地域より電子戦が重要となることから無人航空システムの活用が提案されている。
      • 原文 December 17, 2020, USNI News(若林健一)
    • 【2】 米国2021年国防権限法:北極海における安全保障強化の概要
      • 【2】米国議会の上下両院は先週、2021年度国防権限法(the National Defense Authorization Act (NDAA) for 2021)を賛成多数で可決した。これにより米国沿岸警備隊(USCG)が計画する砕氷巡視船6隻の調達に関して新たに3隻分の予算が承認されたほか、米国防総省に北極海における安全保障に関する研究を実施する新たな施設の設置が認められ、また、北極海などの高緯度地帯での通信を強化するために、米宇宙軍による低・中高度衛星などの衛星システムの開発に4,600万ドルを充てることが承認された。さらに、米国防総省が北極海における露や中国の活動に対応するための通信システムを確立するための研究を支援するために、アラスカ州に新たに国防総省の研究施設を設置することも承認された。最も重要な点は、西半球担当の副次官補又は国防長官が適当と認める他の副次官補を指揮して北極海に関する問題を監督する国際安全保障問題担当の次官補を指名することにより、米国防総省が北極海に関してより大きな責任を果たしていくことを同法が要求していることである。
      • 原文 December 17, 2020, Breaking Defense(若林健一)
    • 【3】 バイデン政権:気候変動対策関連責任者を発表
      • 【3】バイデン次期大統領は気候変動対策関連責任者の顔ぶれを12月17日発表した。エネルギー大臣候補には前ミシガン州知事のGranholm氏、環境保護庁長官候補にはノースカロライナ州の環境天然資源省トップのRegan氏(黒人男性としては初めての長官)、内務大臣候補にはニューメキシコ州選出の下院議員Haaland氏(先住米国民としては初の閣僚)、環境諮問委員会委員長にMallory氏(アフリカ系黒人として初の委員長)、国家気候問題顧問に自然資源保護協議会会長のMcCarthy氏、次席国家気候問題顧問にZaidi氏をそれぞれ指名した。バイデン政権は、15年以内に電力の脱炭素化を図るために、再生可能エネルギーの振興と連邦政府が管理する地域における化石燃料開発を制限しなくてはいけないが、上院では共和党が最低でも50議席を獲得しているため、政策実現手段として、政省令や大統領令を活用せざるを得ないため、実務経験が豊富なメンバーもこのチームに入っており、McCarthy氏は自然資源保護協議会の会長としての経験に加え、環境保護庁長官時代には、発電所からのGHG排出規制に最初に取り組んだ実績を持つ。
      • 原文 December 18, 2020, Yahoo Finance(長谷部正道)
    • 【4】 米海軍・海兵隊・沿岸警備隊が共同で海事戦略を発表
      • 【4】12月17日、米海軍、海兵隊及び沿岸警備隊は共同で海洋戦略「Advantage at Sea」を新たに発表した。同戦略は、海洋は国際市場を繋ぎ、資源を供給し、社会活動と経済活動を連結する役割を果たしており、米国のみならずすべての国の安全保障や繁栄に不可欠なものであると位置づけ、露や中国が重要な国際水域における覇権を握り、国際秩序を自国にとって好ましい状況に造り変えるべく積極的に海洋に進出している点に特に着目し、次の10年間において如何に日々の競争、危機及び対立に打ち勝っていくかといった戦略的な方向性を示している。同戦略では、同3機関が一体化を図り、戦力の近代化を積極的に追求し、同盟国や協力国との協力関係の強化を継続することを目指すとしている。3機関の一体化を目指す分野には、職員の教育訓練、能力向上やネットワークの構築、訓練や実験、分析と戦闘作戦、投資と技術革新などが含まれる。また、同盟国や協力国とは、能力向上支援や相互運用性の向上等の面で連携していくとし、必要に応じて同盟国や協力国とともに海洋拒否(Sea Denial)と海洋統制(Sea Control)の確立に必要な役割を果たすとしている。
      • 原文 December 17, 2020, Marines(若林健一)
    • 【5】 欧州:独立型洋上Green Hydrogen製造事業を計画
      • 【5】EUは2030年までに、40GWの再生可能エネルギーから生産する水素(Green Hydrogen : GH)を生産するための電解槽の建設と、GHの生産に必要な80-120GWの太陽光/風力発電施設の整備を目指しているが、交通や暖房分野の電化を推進すると電力需要が倍増すると予測されており、欧州の送電業者にとっては、送電量の増加に伴う送電施設の拡充も課題となっている。そこで独の電力事業者のRWE/Siemens/Shell等の企業は、AquaVentusというコンソーシアムを結成し、洋上風力発電施設で発電した電力をそのまま陸上の送電網に送らず、独領北海のヘリゴランド島のGH生産施設で電力から10GW規模のGHに変えたうえで、GHをパイプラインで陸上に送る事業を2035年までに稼働させることを計画している。水素を島からパイプラインで陸上に送るのは、陸上に送電するため海底に送電ケーブルを敷設するよりコストがかかるように思えるかもしれないが、風力発電タービンで発電された電力を洋上で集約する基地の建設や、急激に増加する洋上風力発電量を受け入れるだけの陸上の送電網の調整を考慮に入れると、北海のように既に広大な海底パイプラインが整備されているような場所では、十分に可能性がある事業と考えられる。
      • 原文 December 18, 2020, Green Tech Media(植木エミリ)
    • 【6】 米のGreen New Dealの今後の見通し
      • 【6】(論説)パリ協定への再加入を約束し、John Kerry氏を気候問題担当特使に任命するなど、バイデン大統領が気候変動対策を優先的な政策課題とする中で、今後Green New Deal (GND)を巡る議論が活発になることが予想される。GNDは、2030年までに米国で炭素中立を実現する等の野心的な目標を掲げており、政府はその実現に向けて新たなインフラ/再生可能エネルギー/建物のエネルギー効率の向上/公共交通機関などの分野に重点投資を行うことになり、これまで採用されてきた市場メカニズムに基づく排出権取引制度と比較して連邦政府の権限が大幅に拡大されることとなるが、GNDを実施した場合に必要となるコストはまだ明らかになっていない。こうしたprogressiveな政策を推進していくには、民主党が上下両院と大統領を全て押さえるBlue Waveが達成される必要があったが、選挙の結果、下院において民主党は過半数を維持したものの、共和党との差が縮小し、上院では引き続き共和党が多数派となることがほぼ確実となったため、少なくとも今後2年間は大統領令を通して、より穏健な気候変動政策が実施されると見込まれている。しかし、GNDがリベラル派や若い有権者からの強い支持を得ていることを考慮すると、GNDは今後も民主党の主要政策として生き残り、連邦レベルで実現できない政策を、州レベルで実施する試みがなされ、こうした州レベルでの政策が後に連邦レベルの政策として発展していくことも考えられる。
      • 原文 December 4, 2020, Carbon Tracker(植木エミリ)
    • 【7】 ウィルスの変異種を警戒し既に40カ国以上が英国からの入国を停止
      • 【7】英国政府はイングランド南東部を中心にコロナウィルスの感染者数が急増していることを踏まえ、ロックダウンに相当する警戒レベル(Tier4)を新たに設け、12月20日から首都ロンドンや南東部のケント州など複数の地域に適用させた。英国政府は、ウィルスの変異種が感染者の急速な増加の原因とみており、その感染力は従来のウィルスと比較して7割増と評価している。すでに、スコットランドやウェールズを含めイングランド南東部以外の地域にも感染が拡大しており、この変異種の感染拡大を警戒し、ドイツ、フランス、イタリア、インド、カナダなど既に40カ国以上の国が英国からの入国を停止する動きに出ており、EUも統一的な対応をとるべく現在検討を行っている。大陸との玄関口であるドーバーに向かう幹線道路では物資を輸送するトラックで長蛇の列ができるなど混乱も生じている。ジョンソン首相は12月21日記者会見を行い、現在問題解決に向け取り組んでいることを説明し、食料品などの備蓄は十分でワクチンの入手にも影響はないと述べ、国民にパニックを起こさないよう呼び掛けた。

        ※12/20の英国の感染者数:35,928人(日本2,985人の12倍、緊急事態解除基準47人の764倍)
        ※12/20の英国の死者数:326人(日本45人の7.2倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 December 21, 2020, BBC (若林健一)
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