2020/12/18LROニュース(7)

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  • 2020.12.18 UP
    2020/12/18LROニュース(7)
    • 【1】 欧州の海洋保護区の96%において生物多様性の保護が不十分
      • 【1】NGOのOceanaがEUのNatura 2000海洋保護区(MPA)内の生物多様性の保護の状況を調査して発表したところその概要は以下のとおり。①3449か所あるNatura 2000のMPAのうち、保護区域内で資源開発やインフラの建設を認めていないMPAの割合は4%に過ぎなかった。②この結果、国際自然保護連合が2016年に採択したMPAの国際的基準に従って、生物多様性の適切な保全を実施している海域は、欧州全体の海域の0.5%以下であることが分かった。③またMPAの管理について報告書が作成されているMPAは過半数以下で、報告書が作成されていてもその80%が不十分なものだった。④このような状況となったのは過去10年間、MPAの量的拡大に追われて、MPAの管理の質を犠牲にしてきた結果で、多くのMPAにおいては法定された限定された基準の遵守のみ実施され、海上交通・漁業・浚渫などによる広範な脅威に対応してこなかった。⑤この結果、欧州環境庁が作成した最新の「自然環境の現状」報告書によっても、欧州海域で生息する生物の数や生息域の数の減少が報告されている。⑥EUと英国は2030年までに管轄海域の30%をMPAに指定することを目標としているが、量的拡大を図る前に、MPA内での底引き網漁業の禁止を含む経済活動を規制して、実効性のある生物多様性の保護を担保する必要がある。
      • 原文 December 14, 2020, OCEANA(長谷部正道)
    • 【2】 USCG: 米国議会が3隻の新たな砕氷巡視船の建造を承認
      • 【2】米国議会の上下両院は、2021年度国防権限法(the National Defense Authorization Act (NDAA) for 2021)の一部として、新たに米国沿岸警備隊(USCG)の砕氷巡視船3隻の建造を承認した。この10年間、米国が保有する砕氷巡視船は2隻のみで、いずれも老朽化が進み機器的な問題や信頼性の面での問題を抱えており、USCGは6隻の新たな砕氷巡視船の導入計画のうち1隻目の建造とこれに必要な予算について2019年に議会から承認を得ており、2024年の就役を目指して2021年から建造を開始する予定である。議会は今回の承認で、砕氷巡視船やその他の巡視船の建造、沿岸部のインフラや施設の維持管理などに充てる費用としてUSCGに119億ドルの予算を認めた。このうち砕氷巡視船の建造に充てる費用としては、2020年度に1億3千5百万ドル、2021年度に6億1千万ドルの予算を割り当てている。
      • 原文 December 15, 2020, High North News(若林健一)
    • 【3】 Northern Lights Project: 北海をCCSで回収したCO₂の貯蔵に活用
      • 【3】Northern Lights Projectとは、ノルウェー政府による炭素回収貯留(CCS)実証プロジェクト「Full-scale CO₂ handling chain in Norway」の一環であり、同国の国営エネルギー企業Equinorや、石油メジャーのTotal・Shellと協力して、オスロフィヨルド周辺のセメント企業と廃棄物発電事業者のプラントから排出されるCO₂を回収/液状化し、ノルウェー西岸の陸上ターミナルまで海上輸送し、そこから海底パイプラインで北海海底の貯留施設まで液化CO₂を輸送し貯留するという商業ベースのCCS事業である。ノルウェー政府は12月15日、本事業の第1期事業資金の8割である69億クローネ(約822億円)を出資することを発表した。北海海底を石油・天然ガスの産地から、CO₂の貯蔵場所として活用する事業は当該計画以外にも進行中で、TotalとShellはオランダでも海底油田を炭素貯留施設にするAramisという事業に既に取り組んでおり、英国ではBPが主導する同国初の炭素回収/利用/貯留(CCUS)事業であるNetZero Teeside事業に、Equinor/Total/Shellの三社も参加している。またTotalはデンマーク領の北海におけるCCS事業にも参画しているが、まだ事業としては初期の段階であり、仏ノルマンディーの精油所から排出されるCO₂を回収し、ノルウェーに輸送し北海に貯留することも検討している。
      • 原文 December 15, 2020, Reuters(植木エミリ)
    • 【4】 Net-Zero America: Potential Pathways, Infrastructure and Impacts
      • 【4】米プリンストン大学が標記中間報告書を発表し、米国が2050年までの炭素中立を実現するにあたり、2030年までに実行すべき政策として提案しているものの概要は以下のとおり。①5000万台以上の電気自動車を普及させ、全米で300万か所以上の公共充電施設を整備する。②家庭の暖房用のヒートポンプの普及率を現在の10%から23%に引き上げ、商業用施設での普及率も3倍に引き上げる。③米国の電力の約半分を供給するため、太陽光/風力発電量を現在の4倍となる600GWに拡大する。④再生可能電力の送電のため、高圧変電施設の容量を約60%引き上げる。⑤森林や農地が年間に吸収/貯留するCO₂の量を年間2億トンまで引き上げる。⑥メタン/亜酸化窒素/代替フロン等のCO₂以外のGHGを10%以上削減する。⑦更なる太陽光/風力発電の拡大にむけ、追加で変電施設の拡充計画と認可を行う。⑧全国的なCO₂輸送網の整備と恒久的な地下貯蔵庫の建設を計画し着工する。⑨様々な製造工程からCO₂を改修する技術・製造過程の低炭素化技術・先進的な原子力/地熱/水素燃焼タービンを含むクリーンな発電技術/バイオ燃料の原料となる高収益な穀物の生産とその穀物をバイオエネルギーに変換する先進技術・再生可能電力やバイオマス/天然ガスを原料とした電力(CCS付き)から水素と合成燃料を製造する技術・大気中から直接CO₂を回収する技術などの重要な技術が、2030年以降より安価に普及するために投資する。
      • 原文 December 15, 2020, Princeton University(植木エミリ)
    • 【5】 Poseidon Principles: Climate Finance Disclosure年次報告書を発表
      • 【5】船舶金融を通じて、海運の脱炭素化を進めるため、Citi/Societe Generale/DNBなどの世界的な海運金融機関とマースク/ロイズ船級協会などの海事関係者が、2019年6月に発足させたPoseidon Principles (PP)は、同組織に2019年中に参加した15の金融機関を対象として、各金融機関が実際に環境に配慮した船舶金融を実施したかについての情報を開示した第1回目の報告書を12月16日に発表した。具体的にはPP参加金融機関は融資先海運企業からCO₂の排出実績の報告を受け、IMOで合意された2050年までに船舶から排出されるCO₂の排出量を半減させるという目標に沿って着実にCO₂削減に取り組んでいるかを評価する。次に、融資先企業ごとのCO₂削減に関する評価に基づき、各金融機関が実際にどのようにポートフォリオの見直しを実施したかについての情報が本報告書で公開されている。この結果、対象となった金融機関の内、3つの金融機関のポートフォリオはIMOのGHG削減目標に沿っていたが、残りの12の金融機関のポートフォリオはIMOの目標を達成できていなかった。今回の報告書には、各金融機関が実施した評価から得られた重要な教訓と、当該教訓に基づき今後どのような融資決定を実施していくかについての各金融機関のコメントが含まれている。現在PPに加盟している金融機関数は20で、国際海運に対する総融資額は1500億ドル(約15.5兆円)で、世界の船舶金融の総額の1/3以上を占めている。
      • 原文 December 16, 2020, Poseidon Principles(長谷部正道)
    • 【6】 CSSF: コンテナ船火災に関するコンテナ船社としての考えを表明
      • 【6】マースク/CMA CGM/COSCOなどのコンテナ船社26社が加盟し、TEUベースで世界のコンテナ船の45%以上のシェアを持つ業界団体であるコンテナ船安全フォーラム(CSSF)は「コンテナ船業界としてのコンテナ船火災に対する基本的立場」をまとめて公表したところその概要は以下のとおり。①製造事業者/荷主/サプライチェーンのその他の関係者が無責任に管理した危険貨物によって、コンテナ船に乗り組む船員が生命や健康を脅かされることをCSSFは容認できない。②消火作業はコンテナ船における最も危険なリスクのひとつであり、サプライチェーンや船舶において、火災発生予防措置や火災が発生した時の耐火性の向上によってリスクを軽減することができる。③コンテナ輸送にかかわるすべての関係者は、大規模火災事故に対する抵抗力を強化するため、国際海上危険物規則(IMDGコード)を厳格に順守するだけでなく、業界としてのベストプラクティスに従うことが重要である。④CSSFはコンテナ船の船主に対して、新造船ばかりでなく既存船についても、IMOによる最低の安全規制を超えた消化施設を設置することを勧奨する。⑤船腹共有協定によって、コンテナ船社が単独でコンテナの内容物の不正/無申告の問題を解決するのは困難で、協定に係る複数の船社が共同でこの問題に取り組む必要がある。
      • 原文 December, 2020, CSSF(長谷部正道)
    • 【7】 英国政府:最高の警戒レベル(Tier3)の対象地域を拡大
      • 【7】全国的なロックダウンが解除となった12月2日以降、イングランドでは3段階の警戒レベルを設定して各レベルに応じて地域ごとに対策を実施しているが、各地域の警戒レベルは2週間ごとに見直しが行われることになっており、今回最初の見直しが行われた。改善がみられる一部の地域では警戒レベルの引下げが認められたものの、感染拡大が続く南東部を中心に多くの地域が最高の警戒レベル(Tier3)に新たに分類され、今週既に先行してTier3に分類されたロンドンなどを含め、Tier3に分類された地域で生活する人の数は国内の全人口の68%に当たる3,800万人に達することになる。Tier3に分類された地域では、同居しない人との交流は屋外の公園など限られた場所でのみ認められ、パブやレストランなどの飲食店は配達や持ち帰り営業のみ許可され、他の地域との往来も自粛が求められる。

        ※12/16の英国の感染者数:25,161人(日本2,410人の10倍、緊急事態解除基準47人の535倍)
        ※12/16の英国の死者数:612人(日本45人14倍)
        日本の緊急事態解除基準(直近1週間の新規感染者数の合計が人口10万人当たり0.5人以下)を英国(人口約6644万人)に適用した場合、1週間当たりの新規感染者数は332人、1日当たり約47人となる。
      • 原文 December 17, 2020, BBC (若林健一)
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